http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/433.html
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「東日本大震災による電力供給不足が数年にわたり続く見通しが強まり、生産の空洞化や需要の海外流出が進むとの観測が浮上している。震災の影響が長期化するほど海外シフトの動きが強まるとみられ、日本の経済規模縮小への懸念が強まっている。」(4月6日 ロイター)
電力制約長期化で強まる空洞化と需要の流出
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20461720110406
福島第1原発などの事故を受け、専門家の間では電力不足は数年にわたり続くとの見通しがコンセンサスになりつつあり、震災が日本経済に与える影響について、「トヨタファイナンシャルサービスの平野英治・取締役副社長も『電力不足は、当座の混乱が収まった後に来る最大の供給ネックになる』と述べ、その影響は数年以上続くとしている」。
大震災によってこれまでの原子力政策への批判が高まる中、日本経済にとって死活問題である電力確保の問題は、どのようなエネルギー政策によって可能だろうか。電力確保の問題は、景気対策などの経済政策の根幹となる問題だ。
■ @ 世界のエネルギー事情を一変させるシェールガス
原子力大国であるアメリカのオバマ政権は3月30日に、新たなエネルギー安全保障政策を明らかにしたが、原子力利用については従来の路線を現時点では変更していない。
「次は原子力エネルギーしかない」と考えていた前ブッシュ政権は、原子力発電所建設への政府の支援に力を入れた。ブッシュ政権時に原子力発電所の工事がメリーランド州、サウスカロライナ州、テキサス州の3ヶ所で始まった。このうち政府が資金面でも大きく協力するテキサス州のものについては現在、工事が中断されている。このことについて米国のエネルギー省のスポークスマンが、
「オイルシェールの地下での天然ガス化が成功し、世界各地で安い天然ガスが供給されることになれば、原子力発電は先延ばしになるだろう」
と言っているという。(『いまアメリカで起きている本当のこと』 日高義樹著 2011年3月刊)
オイルシェール(油母頁岩)、シェールガスについては、この数年エネルギー分野で「シェールガス革命」が唱えられ、次世代エネルギーとして世界的に注目され期待がかかっている。
「オイルシェールとは、油母を多く含む岩石である。これらを化学処理して液状もしくはガス状炭化水素とすることができる」(Wikipedia)。「シェールガスとは、頁岩(けつがん)と呼ばれる固い岩の層に含まれる天然ガスを指す。以前から存在は知られていたが、採掘が難しくコストがかかるため、ほとんど利用されずにきた。だが、岩に小さな穴を開け、高い水圧をかけてガスを取り出す技術が確立されたことで生産量が急増している」(2010年10月18日 日経)。
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「オイルシェールが燃焼しガス化したものがシェールガスであるが、近年、世界の天然ガス事情が米国の商業化成功により大幅に変わった。米国エネルギー省が2004年発表時に2025年は消費量の28%が輸入と想定していたものを、最近、2030年時点で消費量の3%が輸入と見通しを変更した。
天然ガスの世界最大手のロシアもこれにより天然ガスの輸出量が大幅に減り、混乱している。現在、ロシアに依存していた欧州でもシェールガスの分布調査が行われており、エネルギー事情がさらに発展する可能性がある。世界の埋蔵量も未知数的に存在し、日本の各大商社も動きを激しくしている。」(2010年10月12日 SBIホールディングス)
http://sbif.jp/r/w.cgi?title=%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB
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「(新しい代替エネルギーとして)有望なエネルギーがある。天然ガスだ。掘削技術の発達で、米国内では岩盤に眠る大量の天然ガスが安く手に入るようになった。外交評議会のレビ氏は『天然ガスは国際的なエネルギー価格の影響も受けにくく、そもそも米国の原発建設が遅れた理由』と話す」。(4月7日 日経)
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天然ガスの国際価格の推移をチャートで見てみると、リーマンショックが起きた2008年以降原油と天然ガスの国際価格はしばらくは急落をみせたが、その後原油が世界の株価上昇とともに緩やかに上昇してきたのに対して、天然ガスの価格は上下動を繰り返しながらもほぼ変わっていない。
これは、この数年でシェールガスの掘削技術が急速に進んだことにより、世界中でのシェールガスの供給量が飛躍的に増大したためだ。下記のチャートでは赤線が天然ガス、青線が原油で、レインジを10年にしてもらえれば両者の比較が明確に現れる。
天然ガスと原油価格の推移の比較(チャート)
http://www.wikinvest.com/commodity/Natural_Gas#Natural_Gas_Prices_.28NG.29_.26_Crude_Oil_Prices_.28CL.29
■ A シェールガス鉱脈
世界の脱石油の動きはその枯渇が非常に大きな要因であるが、オイルシェールの埋蔵量は原油の2倍から3倍といわれ、世界各地に広く「未知数的に」分布し、欧州などをはじめ各国が盛んに調査を行っている。コンサルタント会社アドバンスド・リソーシズ・インターナショナルがまとめた報告によると、最大のシェールガス埋蔵量を誇るのは中国の1,275兆立方フィートだそうだ。
中国ではオバマ政権の協力のもとに、2009年、重慶市キ江県で中国初のシェールガス資源調査プロジェクトが始まったが、今年3月、中国国家エネルギー局は「中国は今後シェールガスの調査・開発に力を入れ、できるだけ早いシェールガスの産業化を目指していく」との考えを明らかにしている(3月25日 朝日)。
http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY201103250281.html
米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は、4月5日に世界に埋蔵されるシェールガスの分布に関する調査の報告を公表した。この調査報告は「最初の評価」とあり調査対象となったのは32カ国で、これからもこの委託調査は行われるようだ。
World Shale Gas Resources: An Initial Assessment of 14 Regions Outside the United States
http://www.eia.doe.gov/analysis/studies/worldshalegas/
EIAの報告のページの中ほどにある分布を表す世界地図の中で、白色は調査が余り進んでいない地域、灰色はまだ調査が行われていない国と地域を表している。日本は今回の調査対象のリストには入っていない。
この報告を受けて書かれたウォールストリート・ジャーナルのコピー記事があったので下記に記した。
http://blog.goo.ne.jp/ringo1244/e/e93c836ca8ca70f370cca0006e1d38ce
「米EIA報告:世界32カ国のシェールガス埋蔵量、米の7倍」(4月8日 ウォールストリート・ジャーナル)
http://jp.wsj.com/World/China/node_218259
4月6日放映のテレビ朝日の池上彰さんの番組では、代替エネルギーとしてシェールガスをとり上げていたが、日本では埋蔵されていないと放送されていた。その時に映されたフリップはシェールガスの分布を表す世界地図であったが、調査された年は不明で一石油企業のものであった。
しかし前出の日高義樹氏の著作レポートによれば、米国エネルギー省の調査では、日本列島をはじめとする環太平洋地域の地下にも大量のオイルシェールが眠っているそうだ。米国エネルギー省の今回の調査では地図を見てもらえればわかるように、中国とオーストラリアを除く環太平洋地域の西側の地域の国々は調査対象に含まれてはいない。
ブッシュ政権下の米国エネルギー省で政策担当を務めたクリストファー・ガイス前次官補は、オイルシェールのガス化の専門家であり日高氏と親しいようだが、別ルートでの情報かと思われる。
■ B ガスタービンによる発電
シェールガスがもたらす環境問題では、地下深く(最深3000M )で行われる「水圧破砕法」と呼ばれる採取方法と化学処理によって生じる環境汚染の問題、そして温室効果ガスの問題があるが、これらへの取り組みについて述べることは、またの機会にしたい。
また重要だと思われる事項に、地下でガス化され地上へ噴出させるこの採取方法によって、地層がどのような影響を受けるのかまだよくわかっていないことが挙げられる。
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シェールガスは、世界のエネルギー安全保障の枠組みを塗り替える可能性を秘めているとされ、既にその変化は国際政治や世界市場のさまざまな局面で顕在化しつつあります。
(中略)地球上の限られた地域で産出される石油や在来型天然ガスと違い、シェールガスは根源岩としての性格上、在来型資源を含む広範囲に埋蔵されています。米国やカナダには、自国消費を補って余りある量が眠り、その量は3,800兆立方フィートといわれています。
シェールガスは在来型天然ガスと比べて高度な採掘技術が必要ですが、コスト的には在来型天然ガスに比肩するレベルになりつつあります。2009年時点でシェールガスを含む米国の非在来型天然ガスの産出量は在来型を既に超え、ロシアを抜いて世界一の天然ガス生産国(20.5兆立方フィート)になりました。」(三菱商事HP)
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/mclibrary/morechallenges/vol01/page4.html
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「米国発の「シェールガス革命」の行方を、発電設備を手掛ける重電メーカーがかたずをのんで見守っている。最近になって採掘技術が確立し、生産量が急増しているシェールガスが世界のエネルギーの需給構造を一変させ、メーカーの戦略にも大きな影響を与える可能性があるからだ。
(中略)シェールガス革命が追い風になりそうなのは、ガスを燃料に発電するガスタービンだ。ガス価格が下がれば、ガスを使った発電単価も下がり、他の発電手段と比べた競争力が高まるからだ。IHIの橋本伊智郎副社長は「最近、ガスタービンの引き合いが増えてきた」と語る。
(中略)ある原子力関係者は「ガス価格がこれ以上下がれば、原発はコスト面で太刀打ちできない」と懸念する。
「天然ガスとCO2の価格次第で、エネルギーのバランスは変わる」。三菱重工の佃嘉章常務はグラフを片手に説明する。「天然ガス、CO2ともに価格が高ければ、原子力や風車など非化石燃料が主流になるが、その逆なら天然ガスが主流になる。」(2010年10月18日 日経)
http://blogs.yahoo.co.jp/material735/2926363.html
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中期的に見て、シェールガスは原子力に替わる新しい有力な代替エネルギーの候補となるだろう。
日本の場合は、シェールガスの埋蔵が確認されなければ天然ガスを輸入しての発電になる。
前出の米国エネルギー省のクリストファー・ガイス前次官補は、日高氏にこう言ったそうだ。
「技術が一般化すれば、天然ガスの値段は原子力発電のコストより安くなる。しかも、向こう数十年、アメリカはエネルギー問題で悩まなくてよくなる」
シェールガス採取のこの画期的な技術進歩は国際政治にも影響を与え、フィナンシャルタイムズ紙が、天然ガスの供給大国であるロシアとイランの政治的影響力を低下させることを指摘しているのが興味深い。
「シェールガスは世界を変える」 (フィナンシャルタイムズ 2010年5月26日)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3569
■参考リンク:
動画:「シェールガスについてみなさんが知っておくべきこと」(2011年3月30日 広瀬隆雄)
http://markethack.net/archives/51712342.html
DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html
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