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『電力使用制限〜節電ではなくピーク抑制で経済への打撃を最小限に』
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電力使用制限
今夏の計画停電回避へ
電力使用制限発令
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▼電力抑制のための、さらなる施策
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今夏の計画停電を回避する策の一つとして、菅政権が
電気事業法27条に基づく電力使用制限令を発動する方針
を固めました。
石油危機に見舞われた1974年時には量を抑えましたが、
今回は「ピーク」を抑えるため昼間の時間帯の消費電力カットを
狙う方針です。
蓮舫節電啓発担当相には申し訳ないですが、ようやく「節電」
ではなく「ピーク抑制」という私の主張が 政府にも届き始めた
ようです。
この方針は非常に良い傾向だと思います。
兎にも角にも「計画停電」だけは絶対に避けるという強い決意
が必要です。
震災後、私は何度かこのテーマについて提案をしてきました。
これまでは「計画停電による経済的なダメージ」
「節電よりもピーク時の圧縮」などの重要性を説明してきました。
今回さらに突っ込んで、今後の「重要な視点・施策」について
見ていきたいと思います。
まず注目すべきは揚水発電です。
東電の管内には意外と多くの揚水発電所があります。
東電全体のキャパシティの約10%に当たる442万kwhの揚水発電が
可能だと言われています。
原子力発電や石炭火力発電は発電量を上下させるには不向きなため、
ピーク時の発電量のバランスを取る際には火力発電で調整することが
よくありますが、揚水発電はこれをサポートすることができます。
夜間の余裕があるときに原子力発電所からの余剰電力で下池から
上池へ水を汲み上げておき、夏の暑い昼間などに上池から水を
落とすことで発電することができるからです。
日立製作所などは揚水発電が得意ですし、世界最大の揚水発電所は
群馬県にある神流川発電所です。
加えて、東西グリッドの拡大です。私の友人の試算によると、
1000万kwhくらいの送電を可能にするには2年ほどで
約7000億円〜8000億円の工事費になるとのことです。
中部電力の一部では50サイクルの発電が可能で、東電の管内まで
直接送電できる可能性があるそうですが、この辺りも同時に
進めていくべきでしょう。
次世代送電網として注目されている「高圧直流(HVDC)送電システム」に
ついても検討する余地はあると思いますが、
日本勢はアセア・ブラウン・ボベリ(スイス)、シーメンス(ドイツ)、
アルストム(フランス)などの外国勢の後塵を拝していて
追いつけていません。原則として日本の電力会社は外国からの購入
をしていませんが、この際検討しても良いかもしれません。
そして私が菅首相だったら、「今年の夏限定で原子炉の再開」
について認可を得るように動きます。
国家的な危機という点を考慮し、これまでの反省を踏まえて改善
をするので今年の夏だけ限定で原子炉を作動させることを
地元住民の方に協力を仰ぎます。
来年以降も継続するかどうかは別途協議とします。
最後に「警報システム」を作るべきだと考えています。
地震警報や津波警報と同じように、消費電力量が供給上限の5%以内
に迫ってきたらテレビや携帯電話を通じて、国民に警報するという
仕組みです。国民一人ひとりに「あとどの程度余裕があるのか」
に関心を持ってもらうのです。
花粉情報などと基本的に同じ仕組みですから比較的スムーズに
導入できると思います。
もし「5%以内」になったら、冷暖房、テレビ、電灯、PCなどは止め、
5階以下のエレベーターへの乗降を控えてもらいます。
重要なのは絶対に停電は避けることであり、
特に電気が必要な商売や産業は原則停電しないということです。
これから日本は年間の消費電力量が最も多い8月を迎えます。
1年間を通してみると、産業部門と運輸部門で消費電力量の
約70%を占めていますが、この時期は家庭の消費量も増えます。
産業が夏休みに入ると共に、個人が冷房を使ってテレビを見るなど
消費電力が膨らむためです。
ですから私は夏の甲子園の中止・延期を提案しているわけですが、
中止・延期にしなくとも「消費電力が上限の5%以内」の状況
になったらテレビ中継は消すべきでしょう。
これだけでも相当の効果があると思います。
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▼原子力産業、東電の将来とは?
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こうした状況の中、原子力産業の将来にも注目が集まっていますが、
私は次のような指針に基づく「原子力産業の再構築」が必要だと
思っています。
まず海外では一般的になりつつある「垂直分業」です。
原子力発電は民間ではなく公営とし、そこから9電力に売電します。
そして送電網は公営で全国ネットとし、基本的に9電力には配電を
任せるのです。
9電力への売電には外資や民間の参入を許可すれば、オーストラリア
などは喜んで自国のエネルギーを売りに来ると思います。
また、ロシアのサハリンでLNG発電して稚内に送電するという仕掛けも
考えられます。
将来的には稚内から東北を経由して東電の管内まで配電できると思います。
日本では発電所を作る際に住民対策だけで10年の時間を費やすことも
珍しくありませんから、非常に有効な手段でしょう。
企業に目をむけたとき、東芝・日立・三菱の3社は、WH・GE・AREVAの
傘下で仕事量の確保を図る以外に手はないでしょう。
国としては、国策として原子力の技術者の温存を図るべきだと
思います。
そして、「現場の知恵」として今回の事故の反省を活かして、
既存の柏崎刈羽原子力発電所や福島第2原子力発電所などの再生に
役立てるべきでしょう。
東電に関してはGM型の破綻処理をして、
東電生産事業会社・発電会社・配電会社になる以外に
道はないでしょう。
すなわち、原子力は公営会社に売却・譲渡、高圧送電網も
公営会社に売却・譲渡、配電会社として新たに発足する
ということです。
新たに誕生する「公営の原子力発電会社」は、9電力のうち
希望するところから原子力発電所を全て譲り受けます。
そして、安全審査、住民対応、オペレーションは
全て「国の責任」で行います。
同時に安全委員会、保安院などを統合して「経済産業省」とは
独立した組織を作ることが重要だと私は思います。
「経済産業省」はどちらかというと原子力を推進していく組織です
から、規制には力を注いできていませんし、現在の安全委員会、
保安院などの構成メンバーは東電や関電と関係性を持っていて、
とても中立的な立場で判断できるとは思えません。
国の組織としてよりニュートラルな組織を作ることが肝要だと
思います。
今回の事故の結果、「想定外の経済的ダメージ」が大きく、
これを一刻も早く解決することも重要だと感じています。
計画停電と節電を誤解し、東京の街でさえ「暗く」なってしまい、
外国人が気味悪がってしまう事態になっていますし、交通機関が
受けた打撃の後遺症も未だに残っています。
また大げさな自粛ムードもやめてもらいところです。
震災のダメージに加えて自粛し過ぎて経済がダメになったら、
本当に日本は目も当てられない状況になります。
首都圏から関西への疎開もあり大阪の不動産業者が忙しくなった
とか、またコンサートやレストランがこぞって省電をしている
せいで、“商売あがったり”と言う人はたくさんいます。
私には不必要に日本経済の評判を落としているように思えます。
結果、不必要に日本経済に打撃を与え続けています。
一刻も早くこのような行為はやめてもらいたいと
私は強く思っています。
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- 大前研一 『 ニュースの視点 』Re: 電力使用制限〜節電ではなくピーク抑制で経済への打撃を最小限に sci 2011/4/09 10:17:10
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