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増税しなくて済むなら、それにこしたことはないが
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【第11回】 2011年4月7日高橋洋一 [嘉悦大学教授]
復興対策で細かい財源論は必要ない 増税ショックのない国債発行がセオリー
東日本大震災の復旧・復興のためには大規模の経済対策が必要だ。具体的には補正予算が複数回組まれるだろう。
増税は被災地以外に増税ショックをもたらす
今の段階で、第1次補正予算は、財政規模を3兆円として、その財源は、2011年度の基礎年金国庫負担割合の2分の1維持に向け確保した2兆5000億円の「埋蔵金」を財源に充てるようだ。
補正予算は6月に第2次が打ち出されるだろう。さらに必要なら、その後に第3次補正やその次もあるだろう。
阪神淡路大震災の時にはどうだったのか。1995年1月に大震災が起こり、2月、5月、10月と補正予算が打たれている。震災復旧・復興3.2兆 円のほかに景気対策等を含め、それぞれの予算規模は1兆円、2.8兆円、6兆円の計9.8兆円だった。それらに対して国債発行は9.2兆円だった。
まず、はじめに大震災復旧・復興の補正予算の財源の原則をいいたい。一部に、復興連帯税などの増税プランがでているが、それはまったくセオリーに反する。
大震災という100年以上に一度のショックに対しては、時間分散して対応する必要がある。それは国債発行して負担を平準化するのがいい。増税と国債の違いは、負担を一時にするか、分散するかという点である。
もし増税をするなら、被災地は震災のショックを受け、被災地以外は増税のショックを受けることなり、日本全体が大きなダメージをうけてしまう。
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「災害復旧負担法」が財政負担に枠をはめている
次に、対策の規模だ。今の段階で第1次補正3兆円は、阪神淡路大震災の時の最初の補正1兆円の3倍である。阪神淡路では最終的に震災の復旧・復興 のための予算が3.2兆円だったので、今回の震災関係は10兆円程度になるだろうか。今回の大震災の直接的な被害額が16〜25兆円であるので、少なくと もその程度(20兆円程度でもいい)はぜひとも必要だが、はたしてそうなるだろうか。
そのためには、現在の財政負担制度の枠が邪魔になる。災害復旧負担法といって、復旧を「現状維持」と定めているものがある。その制度の下では、津波被害が来て、本来は高台に復旧されるべき家屋を、再び海岸線の被災地に作らなければいけなくなる。
これは復旧のスタート段階を歪めて、次のステップの復興もうまくできなくする。こういう所こそ、政治力を発揮しなければいけない。
英国では戦時内閣では、財務大臣をメンバーから抜くという。国難のときに財源論からの意見は、国家戦略に有害だからだ。災害復旧負担法の枠をなくして、財務大臣抜きで、復旧・復興プランを作る必要があるが、はたして菅政権にそれができるだろうか。
こういうと、必ず財政再建も重要だという意見が出てくる。ただし、解決すべき時間軸が異なる。大震災からの復旧・復興はすぐやらなければいけない。財政再建はもう少し長い時間軸の下で、解決すべき問題だ。
しかも、大震災での復旧・復興事業は、いわばゼロからのスタートであるので、限界的な生産力アップはかなり大きいから、財政支出としても正当化される。復旧・復興を急がなければ、その後の経済立て直しもできず、財政再建すらできなくなってしまうのだ。
しかも、逐次投入ではなく、財源論に目をつぶって、最初にドカンと投入する方が政策としての投資効果も高くなる。この意味で、普通の投資効率の低い公共投資と同一視することはできない。
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大量の公共投資とマンデル=フレミング効果
第3に、マクロ経済での考慮だ。大量の公共投資を行う場合には、いわゆるマンデル=フレミング効果を考慮しなければいけない。マンデフレ=フレミ ング効果とは、1999年にノーベル経済学賞を受賞したマンデル・コロンビア大教授によるもので、変動相場制では財政政策の効果はなく、金融政策は効果が あるというものだ。
おおざっぱにいえば、変動相場制の下で、国債発行で財政政策を発動すると、行わなかった場合に比べて金利が高くなり、その結果、為替が強くなって(自国通貨高)、輸出が落ち、公共支出増を相殺してしまうのだ。
為替の動向が鍵になるが、まさに1995年の阪神淡路大震災がそうだった。先に財政支出が決まり、それを先取りする形で震災3ヵ月後には円高になっている(図1)。
ところが金融政策は、震災以降の金融緩和の動きは鈍く、公定歩合の引き下げは1995年4月と7月だった(政策金利としての公定歩合は意味が薄くなりつつあったが)。
その時の円高は、今回の円高より前の最高値であった。もっと早く金融緩和に踏み出していれば、その円高は阻止できただろう。
次のページ>>日銀の金融緩和はまだまだ不十分
今回は、各国協調介入もあり、今のところ円高にならず円安にふれている。為替は日本国内事情だけなく、海外の金融政策も関係する。米国では、量的緩和策が功を奏して、出口戦略が具体的になるかもしれない。となると米国の金融緩和が転換すれば、それは円安になる。
ただし、阪神淡路の時も、円高は震災の3ヵ月後だったので、補正予算の状況などから目が離せず、油断はできない。
このところの原油高もあり、円安に対する懸念も一部にはあるが、日本経済全体から見ればマイナスではない。実際、リーマンショック以降各国は通貨安戦争といわれながらも、日本以外は通貨安にして景気回復させてきた。今度は日本がその恩恵を受けてもいいはずだ。
日銀の直接引受の方が経済効果は高い
いずれにしても金融政策が鍵を握る。東日本大震災後の金融緩和は、当座残高増でみて20兆円強である。リーマンショック後の10兆円程度に比べれ ば大きいが、その時の世界各国が中央銀行のバランスシートを2〜3倍にしたのに比べると、バランスシートで20%程度の増加でしかなく、迫力はない。
過去15年程度の金融政策をみると、引き締め基調でその結果、デフレターゲットともいえるデフレ状態が続いている。その流れから行くと、日銀が金融緩和を積極的に行う可能性は低い。
ここで、国債の消化方法が問題になる。国債は大別すると市中消化と日銀直接引受の2方法がある。今年度の国債は、新規財源財44.3兆円、借換債 111.3兆円、財投債14兆円の計169.6兆円、発行される。この分類は財務省の便宜的なもので、市場関係者から見ればどの国債も同じである。これら を金融機関や個人の市中消化で157.8兆円、日銀引受で11.8兆円を消化する。
ここで金融緩和を後押しするために、日銀直接引受が考えられる。もちろん、市中消化であっても、日銀が市場から国債を購入すれば経済効果は同じで あるが、これまでの日銀の行動から考えにくい。さらに、震災以降の金融調節をみても、ほとんど日銀による市場からの国債の購入はない。
次のページ>>実は毎年行われている日銀の国債直接引受
日銀引受と市中消化を比べると、日銀引受のほうが金利上昇を抑えられ、円安効果もできるので、国内の公共投資とともに、民間設備投資増、輸出増になって、経済効果が大きくなるだろう。
日銀による国債の直接引受は実は毎年行われている
日銀直接引受については、マスコミ報道で大きな誤解がある。しばしば禁じ手といわれ、これを行うと、インフレになったり、通貨の信任が失われるという。しかし、実は日銀による直接引受は毎年行われている。
たしかに、財政法5条では、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」と書かれている。
しかし、その後に「但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」と書かれている。さらに、今年度も 含めて毎年度の予算総則では、「日銀保有国債分については、「財政法第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き 受けさせることができる」と書かれている。
ちなみに、これまでの日銀引受と長期金利の推移は図2の通りだ。私が官邸にいたときの日銀引受額は23兆円だったが、金利も上昇せず、インフレにもならず、通貨の信任が失われたこともない。
野田佳彦財務相は、これを知らなかったと国会で発言したが、そういう人ほど、日銀引受を1円でもすると、金利が上昇し、インフレになって、通貨の 信任が失われると騒ぐ。しかし、これまでのデータでは、そうなっていない。これは市場関係者であれば誰でも知っていることである。
質問1 復興財源として国債の日銀引き受けに賛成ですか?
64.3%
賛成
17.8%
条件付きで賛成
11.6%
反対(金利が上がりインフレになる)
6.2%
わからない
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