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外国為替市場で円安がじりじりと進んでいる。今のところ円高修正の範囲内だが、日本経済に悪影響を及ぼしかねない「悪い円安」の側面を市場が見いだし始めているのも事実。日銀内でも「嫌な感じ」を持つ人が出てきている。今後の焦点は、外国為替証拠金取引(FX)を手がける個人など日本勢が、円売りの動きに本格的に加わるか否かだ。
円安が目立つのは、金利の先高観が強い通貨に対してだ。対ユーロ相場(1ユーロ=121円程度)は約11カ月ぶりの安値圏、対豪ドル(1豪ドル=88円程度)は約2年半ぶりの安値圏にある。米国は利上げがすぐにはなさそうなため、対ドルでの下落度合いは相対的に小さいが、それでも1ドル=85円程度は約6カ月ぶりの安い水準だ。
円下落は「世界で取り残される日本」を象徴している。欧米やアジアと異なり、東日本大震災のショックがあった日本だけは景気の先行きに対する悲観的な空気が強まり、超低金利政策を長期化せざるを得なくなっている。金利面で円は売られやすくなっているわけだ。さらに、震災被害からの復興財源確保に向け、政界の一部で日銀の国債引き受け論も浮上。円という通貨の信認低下の恐れを感じる人が増えても不思議はない。
株式市場も「輸出にプラス」という単純な評価はしなくなっている。震災で生産は落ち込み、円安による輸出促進効果は出にくいからだ。原材料などの輸入価格が上がり、むしろ日本経済に打撃を与えかねない。
短観での想定レート(1ドル=84円程度)を考えれば、まだ円高修正の範囲内。現状程度の動きなら深刻視する必要はないだろう。ただ、原子力発電所の問題などを背景に、震災被害の景気に対する悪影響が予想以上に大きくなるのではないかという不安感も広がっている。円の下落が止まる保証はなく、日銀内でも個人的な感想として「嫌な感じ」を口にする人が出てきた。
背景には、「悪い円安」がさらに進むようだと、ゆくゆくは金融政策の自由度を下げかねない点もあるだろう。緩和は金利面で円売りをあおると見られると、思ったように政策を動かしにくくなる。国債の買い増しも、財政規律が緩む印象を与えるなら円売り圧力を強めかねない。結果的に政策の手詰まり感が広がれば、株価にマイナスだ。
今のところ、円を売っているのは主に海外の投機筋。今後FX利用者や機関投資家など日本勢が本格的に加わるなら、資本逃避のような印象を与えそうだし、円下落の持続性も増すかもしれない。
(編集委員 清水功哉)
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