01. 2011年4月06日 12:51:41: cqRnZH2CUM
内外資の企業移転、円安と株安、内外投資家の日本離れが加速している 日経ビジネス オンライン
投資・金融>時事深層 個人の株離れ、復興に壁 2011年4月6日 水曜日 伊藤 正倫,松村 伸二 マーケット 株価 東日本大震災 株式投資 投資家 福島第1原発の事故で東京電力の株価は急落。多くの個人株主が含み損を抱えた。東電株は安全志向の資金の受け皿だっただけに、株式投資を止める動きも出かねない。復興関連銘柄に買いも入るが、事故の影響の大きさに投資家は疑心暗鬼になっている。 「株価急落にどう対応すればいいのか。保有株は損切りすべきなのか」 3月11日の東日本大震災によって福島第1原子力発電所が深刻な事態に直面して以降、東京都内のあるファイナンシャルプランナー(FP)には、高齢者を中心とした個人投資家からの問い合わせが相次いでいる。その多くが、東京電力株についてのものだ。 東電の株価は震災前日の10日終値で2153円だったが、わずか1週間で3分の1となり、28日には節目の700円も割り込んだ。 株主数が60万人を超える巨大銘柄である東電株を支えるのは個人だ。所有者別の持ち株比率では個人が4割弱と最大勢力で、国内金融機関の合計や外国人をも凌いでいる。 その理由は、事業内容を理解しやすい電力会社だからというだけではない。同社は柏崎刈羽原発の停止などで2008年3月期から2期連続で最終赤字となっ たものの、歴史的に見れば収益が安定しており株価下落リスクが小さいと考えられていた。しかも高配当が得られ、典型的な「ディフェンシブ銘柄」に分類され ていたがゆえに、個人でも安心して投資できる銘柄の筆頭に位置づけられていたのだ。 FPの紀平正幸氏によると、「特に長期保有を前提とした配当狙いの高齢者に人気が高く、100万〜300万円とまとまった金額を投資している人も少なく ない」。しかも最近の円高で、かつて人気を誇ったグローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)など海外債券に投資する投資信託を解約し、為替の影響が 少ない東電株などへの投資額を積み増す動きがあったという。 そこに突如、原発事故が襲った。 高齢者など長期投資家に打撃 株価急落が示す通り、原発事故で東電の経営も非常事態となったのは間違いない。復旧費用や周辺住民への補償など莫大な支出が予想されるが「現状では不確 定要素が多すぎ、アナリストですら損失額をはじきようがない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘・投資情報部長)のが現状。個人株主がうろ たえるのも無理はない。 紀平氏は「急落する東電株を見て、日本航空株を思い出した」と話す。日航は2010年の会社更生法適用の申請で上場廃止となったが、国内線を普通運賃の半額で利用できる株主優待制度を持ち、やはり安全志向で長期保有目的の個人株主を多く抱えていた。 日航の再建案は確定までに紆余曲折があり、その度に投資家は混乱した。財務悪化は明らかだったものの、東電と同様に事業の公益性が高く、「いざという時は国が面倒を見てくれるのではないか」との漠然とした期待を持ち続けた個人株主は少なくなかった。 結局、日航株は上場廃止となって“紙くず”となった。紀平氏は「これによって多額の損失を出して株式投資から手を引き、資金を預金に移した個人が相次いだ」と当時を振り返る。 そして今回の東電株急落で個人の株離れがさらに進みかねないのだ。 投資の世界は自己責任が原則だ。原発リスクを考慮すると、東電株に集中投資する選択肢はなかったかもしれない。だが実際は、「機関投資家も含め、市場全体が原発リスクをあまりに軽視していた」(国内エコノミスト)。 日本の株式市場は短期売買の投資家が多く、企業の安定株主となる投資家を育成することが長年の課題だった。その意味でも今回の震災は、大きな痛手となったのは間違いない。 個人以外の株主も東電株の対応に苦慮している。投資信託や外国人は売りに回るケースが多かったようだが、東電と取引関係のある企業からは「長年持ち合い を続けており、すぐに売却することは考えづらい」(前田建設工業)との声が上がる。メガバンクなども「多額の融資をしている状況では、いくら株価が下がっ ても保有株の売却は考えにくい」と見る市場関係者は多い。こうした大株主の存在は、株価のさらなる底割れを抑止する効果がある。 だが、震災の影響は東電株に限らない。日本企業の株価は広範に大きく“地盤沈下”した。日経平均株価採用の225銘柄のうち、25日終値の株価が震災直前の10日終値に比べ下落したのは195銘柄と9割近くにも上った。 下落率ランキング上位の銘柄で、東電に次いで2番目に大きく下げたのがアルプス電気。東北地方に生産拠点が多く、震災の影響を直接的に受け事業活動が 滞った点が懸念された。同社は震災直後、宮城県と福島県にある6つの工場と1つの開発センターが稼働しなくなった。宮城県内の工場は徐々に稼働にこぎ着け たが、25日時点で福島県いわき市にある小名浜と平の2工場の再開にメドが立っていない。 直接の被災はなくとも、原発事故に伴う電力供給の大幅減が嫌気されている銘柄も多い。下落率上位に目立つ小売業が典型例だ。丸井グループは地震の影響で 休業したのは茨城県の水戸店のみだが、節電を強いられたことで関東地区の店舗の大半が閉店時間を午後6時に前倒ししている。「消費マインドも冷え込んでお り、売り上げの数字は厳しい状況」(広報室)という。東芝や日立製作所といった原発関連メーカーの株価も総じて厳しい。 阪神大震災との違いは原発 一方で、被災地のインフラ整備といった復興需要を見込んだ買いも入っている。上昇率の上位にはセメントや建設、重機などが並ぶ。だが日興コーディアル証 券の西広市エクイティ部部長は「こうした買いも疑心暗鬼の状況だ」という。原発からの放射能漏れが収拾しなければ、復興の妨げになるのではとの疑念がある からだ。 16年前の阪神・淡路大震災では原発問題は起きなかった。そこが今回の東日本大震災と決定的に異なる。西氏は「当面、原発停止と放射能漏れの影響が株式市場に重くのしかかる」と見る。 原発問題の長期化は、長く日本株を下支えしてきた個人投資家の一角を失うだけでなく、企業業績に広く悪影響を及ぼし、日本株全体がさらに下落しかねな い。そうなれば金融機関などが保有する株式の減損リスクは高まり、企業は株式市場からの資金調達が難しくなる。日本経済の新たな火種となる可能性もあるだ けに、政府は復興への道筋を一刻も早く示す必要がある。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110405/219314 日経ビジネス オンライントップ>投資・金融>宿輪先生の通貨のすべて 金利につられる為替相場 米国金利の上昇局面で、なぜ米ドルが買われるのか? 2011年4月6日 水曜日 宿輪 純一 米国債 金利 為替相場 金融緩和 金融引き締め ドル高 円安 金利と為替レートには相関性がある。 ドル円、ユーロ円、ユーロドル、豪ドル円、豪ドル(ドル)のそれぞれの為替レートについて、当該国の2年物の国債の金利差の動きのグラフを作ってみた。ほとんどの局面で相関性を認識できるのではないか。 なぜ、2年物国債の金利かというと、1年以内の短期の金利は年末とか期末は、経済以外の資金需給の影響を受けやすいので、経済の状況を表しにくい。また国債の代表たる10年物は財政状況の影響を受けやすいからである。そのため為替レートの分析では2年物金利を一般的に使用する。 為替レートの分析や予想をするモデルにも、流行がある。筆者が大学生のころ注目されたのは、各国の物価水準に注目した「購買力平価アプローチ」であった。これは「同じものは世界中のどこでも同じ値段で買える」という考えに基づいている。いわゆる「ビッグマック指数」とか「ハンバーガー指数」と呼ばれているものもこの派生物である。 その後、80年代に入って貿易摩擦が激しくなり、その後に円高局面を迎えたころは、貿易収支と経常収支に注目した「フロー(収支)アプローチ」であった。最近は、資産運用に注目した「アセット(資産)アプローチ」が注目されている。世界的に量的緩和基調にあり、流動性が増えていることが背景にある。 資産運用において金利は代表的な指標であり、為替レートに影響を与えるのも実感としても分かる。 BIS(Bank of International Settlement:国際決済銀行)によると、1日当たりの「為替決済」は、売りと買いを合計して約4兆ドルとなっている。その中で、世界の貿易量は、IMF(International Monetary Fun:国際通貨基金)によるとわずか1%程度にとどまる。つまり為替決済の約99%は資本移動、すなわち投資にかかわるものと言うことができる。これが、金利が為替レートに影響を与えるベースとなっていると考えられる。 円の独歩安とアノマリー 為替相場は、震災直後に76円25銭まで進んだ後、円安方向に動くなど様相が変わってきた。これは海外との金利差が広がってきたのが一因である。日本では、東日本大震災や原発事故のため金融緩和が長期化する。一方、新興国ではインフレ懸念から利上げが継続し、欧米先進国でも金融緩和を修正するとの観測が広がっている。 今回のような金利の上昇局面、しかも金利の上昇が継続するという局面で、投資対象国に本当に資金が集まるのか疑問に思う時がある。例えば米国の場合、そのメインの投資対象は米国債である。米国債の金利は、政策金利が引き上げられる時にはともに上昇(米国債価格は下落)する。すなわち、金利が上っていく局面で米国債を買うということは、短期的には米国債で損失を蒙ることを意味する。米国の利上げが終了し次は引き下げといった局面が、米国債を買うベストポイントではないか。 この観点から考えると、現在の円高一服は、一種の「アノマリー(Anomaly:理論では説明できない規則的な現象)」と言うことができる。 最近、ほかに「アノマリーではないか」と考えているのは、「円安で株高」である。このコラムで以前ご説明したように、2010年上期には輸出における円建て比率が41%に達した。つまり、企業収益は、以前に比べて為替レート変動の影響は受けにくくなっている。しかも、日本の貿易収支が赤字になるなど、以前と比べて貿易黒字が縮小している状況においてだ。 為替を中心に取り引きしている投資家やディーラーは、理論付けよりも、流れをつかむことが重視される。つまり、理解することよりも収益を上げることが大事ということである。 もちろん、米国債は、金利がピークに達した時に購入するのがベストである。しかし、実際は難しい。筆者自身のディーラー経験に照らしても、これは確かだ。そこで、取り引きのタイミングを分散することでリスクの分散を図っているとも考えられる。何事も完璧な対応は難しい。 なお、本稿の内容はすべて筆者個人によるもので、所属する組織のものではないことをお断り申し上げます。 このコラムについて 宿輪先生の通貨のすべて テレビでもおなじみ! 第一線で活躍中の博士号(経済学)を持つエコノミストで、早稲田大学で教鞭も執る宿輪純一氏が、大きく変わりつつある国際通貨制度を独自の視点で斬る。通貨理論の基本を解説するとともに、現在進行中のパラダイムの転換を分かりやすく読み解く。 通貨危機の発生を抑える処方箋はあるのか? 円の国際化に展望はあるのか? アジア共通通貨に導入可能性はあるのか? ドルが弱くなった時代の基軸通貨体制はどうなるのか? ユーロと人民元が果たす新たな役割は何か? 検討が進む新しい国際通貨制度は? 新興国通貨の今後は? 投資に必要な通貨の知識は? 通貨と経済の関係は? グローバル化と金融資本主義が進む今、ビジネスパーソンに必須の知識と視点を分かりやすく提供する。 ⇒ 記事一覧 著者プロフィール 宿輪 純一(しゅくわ・じゅんいち) 宿輪 純一1963年生まれ、麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業 (職歴)1987年、富士銀行に入行。国際資金為替部、海外勤務、決済事業企画部などに勤務。1998年、三和銀行企画部に移籍。決済業務部、UFJ銀行(合併)、UFJホールディングス経営企画部、UFJ総合研究所国際本部などに勤務。 (教歴/兼務)2003年東京大学大学院非常勤講師(3年)、清華大学大学院(中国)顧問、2007年早稲田大学非常勤講師(現職)、2009年上智大学非常勤講師。 (現在)博士号(経済学)を持つエコノミスト。早稲田大学非常勤講師。ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。 (専門)通貨、国際金融、市場、決済。マクロ経済、国際経済。企業戦略。 (趣味)映画評論、シネマ経済学。 (委員)アジア開発銀行「アジア債券市場イニシアティブ(ABMI)」、財務省「ASEAN為替制度と金融市場研究会」、経済産業省「グローバル財務研究会」、外務省「アジア太平洋経済委員会」、全国銀行協会「SWIFT委員会」、「大口決済システム検討部会」、「全銀 システム検討部会」ほか。 (単著)『通貨経済学入門』、『アジア金融システムの経済学』、『実学入門 社長になる人のための経済学―経営環境、リスク、戦略の先を読む』(以上、日本経済新聞社)。『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』(東洋経済新報社)。 (共著)『マネークライシス・エコノミーグローバル資本主義と国際金融危機』(日本経済新聞社)。『円安VS円高―どちらの道を選択すべきか』、『決済システムのすべて』、『証券決済システムのすべて』(以上、東洋経済新報社)ほか. オフィシャル・ウエブサイト:http://www.shukuwa.jp/ 過去のコラム:宿輪純一の「逆張り経済論」
|