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http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2011/03/post-2023.php
日本製部品はさほど重要ではなくなったという見方と同様、経済競争でアメリカが日本に勝利したという見方も嘘だった
津波と原発事故が複合した日本の震災の深刻さが明らかになる中、90年代にアメリカが日本に経済的に勝利したという考えもまた、実際には神話に過ぎなかったことが明らかになりつつある。
ボルボは今週、日本製のナビゲーションとエアコンの在庫が10日分しか残っておらず、工場が操業停止になる可能性があることを明らかにした。ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、シボレーコロラドやGMCキャニオンを組み立てているルイジアナ州シェリーブポートの従業員数923人の工場を、日本製の部品が不足しているために閉鎖すると発表した。
アーカンソー州マリオンでは、ピックアップトラックのタンドラなどトヨタ車の後部車軸を作っている日野自動車の製造工場が、日本から輸入されるギアなどの部品が急激に減っていることで操業停止の危機に瀕している。
他の産業でも事情は同じだ。半導体を製造する設備の大半が日本だけで作られているか、または主として日本で作られている。半導体の回路を焼き付けるステッパーは、3分の2がニコンかキャノン製だ。携帯端末やラップトップパソコンに使われる樹脂「BTレジン」の約90%、世界のコンピューターチップに使われるシリコンウェハーの60%は、日本から輸入されている。
日本の混乱が長引けば、アップルやヒューレット・パッカード(HP)は深刻な問題に直面しかねない。今まで誰も気にしたことがないような製品、例えば小型マイクやメッキ素材、高性能機械、電子ディスプレイ、それにゴルフクラブやボーイングの新型旅客機ドリームライナーの羽に使われる炭素繊維など、すべて日本だけで作られているか、または主に日本で作られている。
アメリカが被災しても世界は困らない
最近の報道では、世界のサプライチェーン(部品調達網)の複雑さや、各企業が生産ラインを止めないためにどれだけ競い合っているかが盛んに紹介されている。しかしこの点に関する日本とアメリカの違いについては、誰も論じていない。
考えてみれば分かることだ。北米以外にある世界中の自動車工場で、アメリカ製の部品が不足して操業停止の危機に直面するところなどいくつあるというのか? もしシリコンバレーで地震が起きたとして、アップルはどれだけの危機に瀕するだろうか?
もしそうした事態になったらアップルは被害を受けるかもしれない。特にスティーブ・ジョブズがけがをしてしまったら、事態は深刻だ。しかしアメリカが被災しても、今回の日本の震災が世界の部品調達網に与えている影響には遠く及ばない。
理由は簡単だ。インテルのチップなどいくつかの例外を除けば(ボーイングでさえ国内ではドリームライナーの30%しか製造していない)、アメリカはもう世界市場に向けてそれ程多くの製品を出荷していないからだ。
アメリカが表向きはサービスとハイテク経済の国だということはわかっている。だが実際は、アメリカの1500億ドルのサービス黒字は、6500億ドルの貿易赤字と比べれば極めて小さい。それどころか、ハイテク貿易の収支も実は1000億ドル以上の赤字だ。真実を言うと、世界の市場で競争力があるアメリカ製品などほとんどないのである。
これで思い出されるのは、70年代後半から90年代前半の日米貿易摩擦だ。当時の日本経済は今の中国並みの高成長を遂げていた。日本の製造業は、アメリカの繊維、家電製品、工作機械、鉄鋼などの産業を事実上絶滅させ、アメリカの自動車メーカーから大きな市場シェアを奪い、半導体市場で50%以上のシェアを奪ったときにはシリコンバレーさえ屈服させた。
見せ掛けの繁栄に浮かていただけ
エズラ・ボーゲルのベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』に刺激され、GDP(国内総生産)で日本にアメリカが抜かれてしまうかもしれないという脅威論も生まれた。だが、本当の競争は当時アメリカ政府が日本に市場開放を迫った農業や大規模小売業の競争ではなく、国際市場向けの製品やサービスの競争だったのだ。
結局1985年のプラザ合意で日本は劇的な円切り上げを容認することになり、円は最終的に対ドルで100%も上昇した。この円高と、91〜92年にかけての不動産と株式市場のバブル崩壊は、日本の成長の足かせとなり90年代の「失われた10年」を生み出した。
その一方、アメリカは90年代に入りインフレなき高成長を謳歌した。日本の停滞とアメリカの繁栄を比較すると、いかにもアメリカは日本を打ち負かしたように見えた。アメリカ人は口々に、なんで日本に抜かれる心配などしたんだろうと言い合った。
だがアメリカでもITバブルとサブプライム・バブルが崩壊してみると、90年代のアメリカの高成長もまた見かけ倒しだったことがはっきりした。
今、国際的な部品調達網に日本が与える影響の大きさをアメリカのそれと比較すれば、グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことは明らかだ。
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