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【東日本大震災】 日銀引き受けによる「復興国債」の発行は、場合によっては数十兆円規模でも十分可能だ。勤勉な日本国民が営々と築き上げてきた膨大な貯蓄が新規に創出される日銀資金を裏付けるので、円価値の信認を保てる。ちまちました規模でもたつくひまはない。
被災の規模や原子力発電依存のエネルギー・インフラの再構築を勘案すると、阪神・淡路大震災の復興対策をはるかに上回る財政資金需要が見込まれる。数兆円程度の規模に限定するなら日銀引き受けという非常手段をとる必要はない。
例えば、戦後欧州復興のための「マーシャルプラン」の場合、米国が欧州の経済規模の2.2%を援助した。復興国債を10兆円発行しても日本の国内総生産(GDP)比でも2%強にとどまる。
確かに、復興のためとはいえ、日銀がお札を発行して政府の財政資金を供給する政策はいかにも法外な非常手段だが、政府は国債の暴落懸念を引き起こさずに、100兆円を上限に国債の形で日銀から長期借り入れできるだけのゆとりがある。というのは、政府はこれまで国民の預貯金を100兆円借り上げて米国債を保有している。政府は必要なら、日銀に米国債を担保として差し出せばよい。米政府の了解は必要だが、米国債を売却する必要は全くないので、米金融市場の動揺を引き起こす恐れはない。米国の了解も取り付けられるはずだ。
実行は時間との勝負である。現時点では、国際的に日本国債が買われ、円高基調が続いている。日本の生保など金融機関や企業が国内財務対策のためにドル資産を売って日本国債を買う結果、円高が進行するとの予想のもとに、米欧の投資ファンドが投機的な日本買いに奔走しているからだ。この傾向はいつまでも続かず、いつ逆に国債売り、円相場急落に振れ出すとも限らない。政府は確かな復興計画を国際金融市場に提示する必要がある。
阪神大震災の場合、政府は当初こそまごつきながらも、国債発行など順次、短期間のうちに財政出動に打って出た。財政支出を呼び水に、企業設備投資は震災から半年後に急速に回復し、住宅投資は1年後にめざましい回復を遂げた。
この結果、1994年に1.5%だった日本全体の実質経済成長率は震災の95年は2.3%、96年2.9%と上昇していった。国民資産は10兆円規模で破壊されたが、被災した地域や住民ばかりでなく国民全体の奮闘によりわずか2年間で21兆4150億円も経済規模を拡大するのに成功した。
阪神大震災復興後の97年以来、自公政権を含め政府は財政資金の投入は経済成長に結びつかないとみなし、公共投資を削減し、民主党政権に至っては末端消費者へのばらまきに終始してきた。この間に実需が減り、物価下落以上に家計の所得が縮む日本型デフレが慢性化している。今や未曽有の大震災を奇禍として、思い切った財政資金の投入をてこに、大々的な日本再生の機会に変えるべきだ。
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