03. 2011年3月11日 14:06:08: cqRnZH2CUM
単なるリバランスか、トレンド変換か 【コラム】英米で再び高利回り債志向−金融危機前とは異なる事情 HEARD ON THE STREET 2011年 3月 11日 10:07 JST イングランド銀行(BOE=英中央銀行)のキング総裁は先週、銀行をやり玉に挙げ、金融危機の背景にあった高利回りを銀行が再び追求し始めていると批判した。BOEの総裁がこうした発言をするのは奇妙に思われる。キング総裁は昨年、よりリスクのある資産を投資家に購入させるため、量的緩和プログラムに基づいて2000億ポンド(約27兆円)を投入しているからだ。
実際、BOEの政策はこうしたリスク資産へのシフトを助長し続けている。債券ファンド会社のパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は財務省証券(国債)利回りが人為的にあまりに低く抑えられていると主張し、同社の「トータル・リターン・ファンド」からあらゆる政府関係証券を売却した。 しかし、最近の高利回り志向はリスクがあって危険なのだろうか。 根本原因の一部は、潤沢な流動性(危機当時は規制を回避するシャドーバンクによって供給され、現在は中央銀行によって供給されている)と中銀の政策金利(危機当時は低金利、現在は超低金利)で同一だが、今回の利回り志向はシステミック(連鎖的)なレベルではそれほど脅威ではないとみられる。 確かに、投資家たちは明らかにより大きなリスクを引き受け始めている。バークレイズ・キャピタルによると、米国のジャンク債発行規模は今年これまでに621億ドルで、昨年同期を84%上回った。強気市場の構造が再登場しつつある。例えば、返済条件の緩いコブナント・ライト融資や、借り手がクーポン支払いにあたり現金ではなく新たな債務で充当できるトグル・ノート(債券)といったものだ。新興市場の社債発行はブームになっている。 しかし違いはレバレッジ(外部借り入れ、負債比率)にある。金融危機以前には投資家は過剰なレバレッジをとることで狭いスプレッドをあおっていたが、今回はスプレッドは依然として広いし、銀行はいずれにせよあまり大きなレバレッジを供与したがらない。ブーム期の大きな問題は、トリプルA格付けのモーゲージ(住宅抵当)担保証券など、一見して安全と想定された資産の多くが、実は全く安全でなかったことが判明した点だった。 これとは対照的に、今日のジャンク債投資家は、デフォルト(債務不履行)リスクを抱えているとはいえ、他方でそこから収益が得られることを熟知している。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによれば、欧州では、高利回り債券の利回りは現在、政府債のそれを4.7%上回っている。これは危機以前の利回り格差1.8%を大幅に上回っている。米国ではトリプルC格付けの債券利回りは米国債のそれを8%近く上回っている。 このことは、投資家行動に懸念すべき根拠が全くないということではない。しかし、投資家たちが一見して安全な低利回り債を避けていることは、彼らが危機から教訓を少なくとも一つ学んだことを示している。キング総裁が懸念する銀行の高利回り志向は、高リスク債に対する利回りを追求するためであるのと同時に、国債投資に対する損失を回避ようとしているためなのかもしれないのだ。 [ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に 駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく] 原文公開記事 バックナンバー≫ WSJで英語を学ぶ ビジネス英語トップへ≫ 原文: The New Search for Yield 【コラム】金投資は利益確定の時期 マーケットウォッチ 2011年 3月 10日 12:50 JST 【ボストン】金投資家が過去10年で利益を得たかどうか疑問に思う人はいないだろう。だが、そろそろ利益を確定し始めるべきかどうかについてはどうだろう。ましてや、一部が提案しているように金と銀は果たして富を確保するための新たな通貨になるのだろうか。 金価格が過去10年で5倍以上上昇したのは事実だ。この間、株式市場は2度暴落し、世界経済は著しい混乱に見舞われた。だが、カナダのヨーク大学シューリック・スクール・オブ・ビジネスで金融学を教えるポーリーン・シャン准教授は「その10年、20年前は、金のリターンは非常に乏しかったことを忘れてはいけない」とし、「金がこの先10年も過去10年と同様のパフォーマンスで推移すると期待するのは非現実的だ」と述べた。 画像を拡大する Bloomberg とは言いつつもシャン氏は、金は従来株式と相関性が低いため分散投資としてのメリットは確かにあるとし、「だが、現在の水準からすると、著しい下ぶれリスクが存在する。現在の政治的不透明さが解消されれば、需要が落ちるからだ」と述べた。 ほかにも同様の意見はある。米経済研究団体アメリカン・インスティテュート・フォー・エコノミック ・リサーチ(AIER)のスティーブ・カニンガム氏は、今後1年については多少上ぶれする可能性はあるが、金相場の急騰ぶりは既にピークを迎えていると述べた。「高過ぎだし、買われ過ぎだ」とし、利食いにより金へのエクスポージャーを10%にまで減らし、そのまま維持することを推奨した。 金銀比価 カニンガム氏の根拠は何か。1つは、金の生産量が増加している主な理由が、宝飾用ではなく「投資用」の金需要が増加しているためであることだ。カニンガム氏によると、金生産量は昨年1年で約3%増加した。一方、宝飾用の金需要は、金価格の上昇を受けて落ち込んでいる。 それだけでは納得できないという人に対して、カニンガム氏は金銀比価(金1トロイオンスでどのくらいの銀が購入可能かを示す比率)も秩序を逸していると述べた。ある研究資料によると20世紀の平均金銀比価は1対47だ。現在の比価は、ついこの間までは1対60であったのが、1対39にまで下がっている。 カニンガム氏は、これは短期的に金相場が問題を抱えることを意味しているとした。複数の公表リポートによると、歴史的にみて、この比価が低ければ低いほど銀は金に対して割高であり、この比率が高ければ高いほど、銀は金に対して割安だ。 中東の政情不安や食料価格の高騰、銀行の金余りなどを受けて、投資家が金上昇に賭けているのは確かだ。それらの事実はすべて金が今後も上昇し続けることを示唆している。だが、カニンガム氏は、現在の上昇ペースを考えると、金価格は向こう1年で1トロイオンス=1500ドルを大きく上回ることはないとみている。 強気の見解 驚くことではないが、金相場に対して強気の意見もある。USAA貴金属・鉱物ファンドの共同運用者、マーク・ジョンソン氏はインタビューで、金価格が今後1年で上昇すると考える根拠は多々あると述べた。 1つは、実質金利がマイナスであること。「金はマイナス金利とスティープなイールドカーブを好感する。今はその状態だ」と、ジョンソン氏は述べた。 2つ目は、米連邦債務(現在、国内総生産(GDP)の11.5%に相当)などの構造的問題や、ドルが対ユーロと人民元で弱含んでいること、ソブリン債問題などがすべて金にとっては好材料になることだという。 「投資家は資産を保護する必要があり、その1つの方法が金投資だ。金は他の資産と逆相関性があるため、少しの保有は有効なリスク軽減手段になる」と、ジョンソン氏は述べた。 ジョンソン氏としてはポートフォリオの5%を金に投資することを推奨するとし、10%以上の投資は貴金属のリスク軽減機能を減じることになると警告した。 金と銀は通貨にはならない 一方、金と銀を新通貨にすべきと提案している人たちについて、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の経済学教授で米ヘッジファンド、カベゾン・キャピタル・マーケッツのパートナーでもあるマイケル・ドゥーリー氏は、「どうかしている。金と銀が再び通貨や通貨の裏付けに使用されることはない」とし、国の通貨が信頼性を失ったり、支払い手段として受け入れられなくなる日が来たとしたら、金よりも「農地と銃と缶詰を手に入れた方がいい」と述べた。 (ロバート・パウエル氏は、マーケットウォッチ発行の退職者向け投資情報誌「リタイアメント・ウィークリー」のエディター) Market Watch 最新グローバル投資情報へ≫ スペイン銀行の資本不足推定で食い違い−中銀とムーディーズ 2011年 3月 11日 10:38 JST 【マドリード】スペイン中央銀行は10日、同国銀行の資本不足額は151億5000万ユーロ(約1兆7400億円)になるとの推定を発表した。
一方で、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、資本不足額について同中銀の推定をはるかに上回る400億〜500億ユーロとの試算を公表、同中銀の数字の信頼性に疑問を投げ掛け、市場を大きく動揺させた。 Associated Press スペイン中央銀行 スペイン中銀は、すべての上場銀行については狭義の自己資本比率を8%以上、非上場の銀行については10%以上と義務付ける新たな規制を受けて、経営難の銀行の健全化の目安を示すとともに投資家の信頼強化を図るため銀行の資本不足額を算出した。
だが、ムーディーズはスペイン国債の格付けをAa1からAa2に引き下げるとともに、見通しをネガティブとした。同社は格下げの一つの理由として、銀行の資本不足額が多くのアナリストの推定と一致する400億〜500億ユーロに上るとの試算を示した。 同社は、景気が予想より厳しければ資本不足額は1100億〜1200億ユーロに達すると予想した。フィッチ・レーティングスは、スペインの銀行の増資必要額を380億〜967億ユーロと見込んでいる。 ムーディーズの格下げを受け、世界の株式市場は急落に見舞われた。また、スペイン国債とドイツ国債の利回り格差は前日の2.20%ポイントから2.27%ポイントに広がった。為替市場では、ユーロの対ドル相場が急落した。 スペインはユーロ圏で信用不安に襲われた国の中では最も経済規模が大きく、投資家の間では同国が債務不履行となっても他のユーロ圏諸国は救済できるだけの資金も意思もないのではと懸念されている。 一部アナリストによれば、スペインの銀行規制当局は狭義の自己資本について、英国などその他の国とは異なる定義を用いているという。例えば、保険会社への投資を控除することを義務付けていなかったり、一定の条件の下で強制転換社債を含むことを認めたりしている。強制転換社債は、株式に強制的に転換できる証券。英国などでは強制転換社債を自己資本に参入できない。 フィッチのアナリストであるマリア・ホセ・ロッカービー氏は「スペインの規制当局は資本の定義付けがやや甘い」との見方を示した。ポルトガルのエスピリトサント投資銀行のアナリスト、ジョセフ・ディッカーソン氏(在ロンドン)は、スペイン中銀が公表した数字は同国の金融機関の健全性を測る尺度としては有効ではないと断じ、「本当に知りたいのは、妥当なシナリオの下でどの程度の資本が必要かということだ」と強調した。 スペイン中銀によれば、資本不足が最も大きいのは、最近未上場の貯蓄銀行7行が合併して誕生したバンキアで、不足額は57億8000万ユーロに上る、ただし、同行が予定されていた新規株式公開(IPO)を果たせば、最低自己資本比率が下がるので、不足額は18億ユーロになるという。 上場銀行で資本不足が指摘されたのは国内銀行のバンキンテルのほか、バークレイズとドイツ銀行それぞれのスペイン子会社の3行。スペイン中銀によると、バンキンテルは近く4億0600万ユーロの転換社債を発行する予定で、これにより資本不足はカバーされるという。 記者: Jonathan House and Sara Schaefer Muñoz |