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「経済」の“次”に来るものは何か?・イトイ式「未来予想図」(宗教もバレ、お金もバレ、野暮で面白い時代に突入です)
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/195.html
投稿者 小沢内閣待望論 日時 2011 年 2 月 28 日 16:03:23: 4sIKljvd9SgGs
 

(回答先: お金の話!信用創造のマジック!・つむじ風(庶民がお金の仕組みを理解した時「ポストマネー社会」が到来する筈です) 投稿者 小沢内閣待望論 日時 2011 年 2 月 28 日 15:44:54)

http://diamond.jp/articles/-/6293
「経済」の“次”に来るものは何か?
――イトイ式「未来予想図」
1234 今回(第4回)はいよいよ最終回です。これまで、吉本さんの言葉をひも解きながら、「エコロジー」や「消費」について考えてきました。そこで見えてきたものは、本来人間は規律やルールを守れない生きものだということです。にも関わらず、新たな規律やルールを作り、さらに自分たちを縛ろうとします。ときにその規律やルールは、支配者や為政者にとって都合よく作られたものであることも多いのです。

 その最たるものが、「経済」ではないでしょうか。いまの世の中は「経済」というルールに縛られている、ともいえます。「グローバル経済」なんてその典型でしょう。どこかの国がくしゃみをすれば、世界中がカゼをひいてしまう――そんな時代にさえなっています。経済は拡大し続けた結果、貨幣だけでなく、あらゆる指標や数値も生み出しました。数字や金額が一人歩きすることも少なくありません。「経済とは何か?」――その正体を見つけることがとても難しくなっているのです。

 しかし近年、地球温暖化をはじめとする環境問題がきっかけとなり、拡大・成長ありきの世界から、持続可能な世界へのシフトも求められています。20世紀が「経済の時代」だったとすれば、21世紀のいまは「経済の次に来るものを探す時代」に入っています。これまでの世の中のあり方を見直す時期に来ているのかもしれません。


吉本隆明
1924年、東京都生まれ。「戦後思想界の巨人」と呼ばれ、1968年に発行した著書「共同幻想論」は当時のベストセラーに。詩人・文学評論家でありながら、社会、政治、宗教まであらゆるジャンルを扱う。著書に『ハイ・イメージ論』『超「戦争論」』など多数。
 最終回の今回は、その「経済」をテーマにしてみたいと思います。もちろん今回も、その答えにたどり着くヒントは、吉本さんの言葉の中にありました。それは、ある講演の中の言葉でした。

吉本隆明氏の肉声(講演録より)はこちら

『経済学は支配者のための学問である』

 そう吉本さんは言い切ります。現代の経済社会の基礎となっている「経済学」は、支配者や指導者のために作られた学問だというのです。言い換えれば、「経済」=「支配者のための仕組み」とも言えるのです。

 そして吉本さんはこうも続けます。

『もともと経済学や経済論は、支配者のために書かれたもの。ときには支配者にとって都合のよいウソが書かれていることもある。学者のように、たとえ支配者でない人が書いたものであったとしても、それは“指導者”としての目線、つまり上からものを見た形で書かれているものがほとんど。しかしそれを読んでいる一般大衆は、その目線の違いに気づかず、「経済とはこういうものだ」とどこかでだまされてしまうのです』

『権力や指導なんかではなく、一般大衆としての目線でものごとを見るとどうなるのか――そういう視点を持つこと、それに目覚めることが非常に重要である』

 しかし残念ながら、現在の僕たちにはそれができていません。経済だけでなく、いろんなことについて支配者になったつもりで語りがちです。

1234  

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コメント
 
01. 2011年3月01日 03:12:09: mHY843J0vA
経済学=マネーと財・サービス、および人間の意思決定に関する客観科学
として定義すれば、単なる科学の一分野に過ぎませんが

>経済だけでなく、いろんなことについて支配者になったつもりで語りがち

吉本隆明氏は、第3者として客観的な視点で語ること
=支配者になったつもりで語ること
と考えているみたいですね

本当は、誰が、どう使うか、の問題ですが
既得権層(上位階層)の方が、経済や法律等の知識や技術を活用し、
社会のルールを既得権維持に有利に変えることで
その地位を強化することが多いという
経験的な事実から言っているのでしょうね


02. 2011年3月01日 16:28:25: X7s6OzPIDc
FRB精鋭チームが大手銀行への監視を強化
増配計画にも口をはさむ

* 2011年3月1日 火曜日
* Bloomberg Businessweek

マネー  FRB  大手機関監視調整委員会  連邦準備理事会  LISCC  ベン・バーナンキ  ダニエル・タルーロ  JPモルガン・チェース 

Craig Torres(Bloomberg News記者)
米国時間2011年2月17日更新「 The Fed's A-Team Hunts for Signs of Risk 」

 一部の米大手銀行、例えばJPモルガン・チェース(JPM)やPNCファイナンシャル・サービシズなどは、これから数四半期の間に配当を増額したいと考えている。増配が本当に実現すれば、経済成長と収益の持続可能性について、銀行の取締役会が信任票を投じたように見えるだろう。だが増配は同時に、現代の金融史上において、規制当局が最も慎重に検討した一例となるだろう。

 これらの銀行の取締役会の判断を陰で導くのは、米FRB(連邦準備理事会)のエコノミストや給与制度の専門家、銀行検査官、計量アナリストらで構成された、まだあまり知られていないチームだ。このチームは、ベン・バーナンキ議長とダニエル・タルーロ理事が主導して2010年初めに立ち上げた。狙いは、金融システムが再発する前に、そのリスクを排除することだ。

ギリシャ危機で最初の活躍

 「大手機関監視調整委員会(LISCC)」と呼ばれるこの新しいFRBのチーム――スタッフは「リス・シック」と発音する――はほぼ1年前、世界の銀行システムが新たな脅威に直面していることを感知し、バーナンキ氏がこれに対応するのを手助けした。ギリシャのデフォルト(債務不履行)を恐れた米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)が、欧州の銀行が発行した債券を投げ売りし始めたときのことだ。

 現在このLISCCチームは、JPモルガン・チェースやPNC、シティグループ(C)、ゴールドマン・サックス(GS)など19の大手銀の重役たちに課題を与えている。株主に利益を還元することよりも、この先3年の間に失業率が上昇し景気が低迷したらどうなるかを先に考えよ、というのだ。タルーロ理事は「各銀行の資本計画を見直すことは、大手金融機関の監督体制のおける、さらに一歩踏み込んだ措置だ」と語っている。

 FRBが昨2010年11月に発行した一連のガイドラインは、景気リスクや規制リスク、貸し出しリスクなどに十分耐えられる資本計画を用意できない銀行に対して、増配を認めず、計画の見直しを求めている。アラバマ州バーミングハムの資産運用会社レイクショア・キャピタルの社長、ジョエル・コン氏は「我々は限りなく大恐慌に近づいた。規制当局が慎重すぎるくらい慎重になるのは当然だ」と言う。

 大手銀行に対するFRBのこうした圧力はうまく機能しているのかもしれない。2月15日に行った概要説明で、JPモルガンのダグラス・ブラウンシュタインCFO(最高財務責任者)は、FRBの想定よりも厳しい景気悪化シナリオを披露した。

 LISCCは、収益を下げかねない多くの新規制に対しても各銀行に備えさせたいと考えている。そして、もう1つLISCCが着目しているのが、不完全な住宅ローン債券に投資した人々が銀行に引き取りを求めてくる場合である。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P、MHP)は、そのような手続きには業界全体で600億ドルかかるかもしれないと推定する。

 LISCCが設立されるまでは、全米12カ所ある連邦銀行が、大手銀に対する日常的な監督業務を担い、ワシントンの理事会に報告していた。この理事会が銀行持ち株会社のルールを定めている。LISCCの設立以降、FRBは、ある特別なリスクが金融システム全体あるいは一銀行に、どう影響を及ぼすかを解明できるようになった。200人以上の博士号保持者が、LISCCを支えている。

「銀行業界全体が保護監察下にあるようなもの」

 報酬から自社株買いまであらゆる点を精査する。これは、通常は銀行の幹部が決めることに、規制当局が口を出すということだ。金融危機調査委員会が公開した電子メールによると、FRBは破綻前にリーマン・ブラザーズのリチャード・ファルドCEO(最高経営責任者)を更迭し、FRBの「影響力」を後任の CEOに対して行使することを検討していた。

 米銀行協会のエグゼクティブ・バイスプレジテントで、フィル・グラム元上院議員(共和党、テキサス州選出)が率いる上院銀行委員会でスタッフディレクターを務めていたウェイン・アバナシー氏は、「これはやり過ぎだ」と言う。「当局は、ビジネスリーダーたちがまだ知らないか、持ってもいない何を、持ち込もうとしているのか? それは、間違ったインセンティブ、つまりリスクを全く取らないというインセンティブだ」。

 一方でプリンストン大学教授で元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏は、「金融規制当局が銀行の取締役会をあまり強く信頼していないと言うこともできる」と指摘する。取締役たちが、住宅価格下落などの事態に十分備えていなかったことが、先の危機で明らかになったからだ。

 ブラインダー氏は「銀行の取締役会が責任をしっかりと果たすのであれば、当局は報酬などの問題を彼らに任せたいと思っているはずだ」と言う。銀行の取締役会は金融危機の間に「その大きな、大きなチャンスを逃したのだ」。

 各銀行の資本が十分であることを算定するために、FRBは19の大銀行に対し、少なくとも2つのシナリオを考えるよう要求している。今後の景気動向見通しに沿った「基本線」と逆シナリオの2つだ。LISCCは、FRBのエコノミストを動員して、独自の景気悪化シナリオを策定して、「悪化する」とはどういうことかを示す公的な基準を定めている。関係者によると、FRBの景気悪化シナリオは、2011年末までにGDP(国内総生産)が1.5%減少するというものだ。

 LISCCはまた、当局への通常の報告義務以外に、FRB史上最も多くのデータを提出するよう要求している。その情報は、ローンや証券のポートフォリオをはじめとして、様々な分野にわたる。これらのデータを使用することで、FRBは、ポートフォリオの健全性に関するどの銀行の仮定においても、銀行独自の分析を査定することができる。

 ワシントンの法律事務所ポール・ヘイスティングズの弁護士で、米貯蓄金融機関監督局の特別顧問を務めていたケビン・ペトラシック氏は「業界全体が保護観察下にあるようなものだ」と評している。

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日経ビジネス オンライントップ>BusinessWeek>Bloomberg Businessweek
米国でいま最も注目を集める経済学者:シカゴ大のラジャン教授(1)

* 2011年2月28日 月曜日
* Bloomberg Businessweek

政治・経済  格差  金融経済学  アラン・グリーンスパン  インド  経済学  ケインズ主義  自由主義  金融システム  FRB  ポール・クルーグマン  ベン・バーナンキ 

Peter Coy(Bloomberg Businessweek経済担当エディター)
米国時間2011年2月10日更新「 Charting the Economic Fault Lines 」

 米シカゴ大学ブース経営大学院のラグラム・G・ラジャン教授は、外交官を父に持つ。少年時代の大半を、母国のインド以外の国で過ごした。11歳のときにベルギーからインドに帰国した同教授は、それまでの人生で最大の衝撃を受けた。

 驚いたのはインドにおける深刻な貧困だけではない。インディラ・ガンジー政権はインド社会を規制でがんじがらめにしており、ラジャン家のような中産階級世帯でも、非常に暮らしにくい国だったという。

 ラジャン教授は「スーパーに行けば玩具などがふんだんにある国からインドに戻った。パンを手に入れることさえ困難で、牛乳は贅沢品だった。裕福な人でも、お金の使い道がなかった」と当時を振り返る。

 ラジャン教授は、子供心にも事態の異常さを直感した。「インドの友人とベルギーの友人で、知的レベルは変わらなかった。政府による過剰な介入が悪い結果を招くという認識はこの時代に芽生えた。だがそれと同時に、政府が好ましい役割を果たせることも認識している」(同教授)。

著書の『フォールト・ラインズ』で脚光を浴びる

 現在48歳のラジャン教授は、少年時代にインドの首都ニューデリーで目の当たりにした問題について、今も思案し続けている。ただし、同教授が現在思案しているのは、世界規模で理論をどう現実に適用させるかという問題だ。

 2003〜2006年に国際通貨基金(IMF)の首席エコノミストを務めた後、シカゴ大経営大学院に戻った同教授は、2010年、話題作となった著書『フォールト・ラインズ―「大断層」が金融危機を再び招く―』を米国で上梓した。タイトルの「大断層」とは、米国における経済格差の拡大や、経済大国の米国が中国からの借り入れに依存している問題などを指す。

 ラジャン教授は対立する複数の理論を包括して、金融界を不安定化させた要因と、それに対する対処法を論じて論壇の注目を集めた。米外交専門誌フォーリン・ポリシーが「世界の主要思想家100人」に推薦書を挙げてもらうアンケート調査を実施したところ、フォールト・ラインズは、米エール大学のロバート・ J・シラー教授や米ニューヨーク大学(NYU)のヌリエル・ルービニ教授などのお墨付きを得て、推薦書のトップに躍り出た。ラジャン教授は、ゴードン・ブラウン前英首相や欧州中央銀行(ECB)のジャン=クロード・トリシェ総裁から祝辞を受けたことを明かしている。

 こうした注目を浴びたことで、ラジャン教授は深刻な経済危機の予防策に関する議論の場で、大きな発言力を持つようになった。エール大のシラー教授は「私が参加した1月19日の米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)主催の会議でも、フォールト・ラインズは何度も引き合いに出された。これは通常の金融学者の著書とは異なる。ラジャン教授は経営大学院の教授の枠にとどまらない、広範な知識を持つ賢人だ」と評価する。

 IMFでラジャン教授の前任の首席エコノミストだった米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、フォールト・ラインズが脚光を浴びている理由を「世界的不均衡の問題について、奥深い政治経済的考察を行っている。(中略)議論が行き過ぎている点はあるかもしれないが、本質をとらえていることは確かだ」と分析する。

“海水派”でも“淡水派”でもない“現実派”

 ラジャン教授は1月、Bloomberg Businessweekの取材に応じた。場所は米デンバーの、米社会科学系学会連合会(ASSA)の年次総会の会場。そこは、暗い顔をした専門家らでごった返していた。米国金融学会(AFA)の新会長として引っ張りだこだったラジャン教授は、パーティションの後ろのベンチに姿を隠してインタビューを受けなければならなかった。

 米国の経済学界は、1970年代以降、“海水派”と“淡水派”の2つの派閥に割れている。海水派はケインズ主義寄りで、リベラル志向が強い。米ハーバード大学や米マサチューセッツ工科大学(MIT)、米プリンストン大学、米カリフォルニア大学バークレー校のような、東西の海岸沿いにある大学がその中心だ。一方、淡水派は(政府主導を重視するケインズ主義とは異なり)より自由市場主義的で、米カーネギーメロン大学やシカゴ大、米ミネソタ大学、米ロチェスター大学など、米内陸の五大湖周辺にある大学が総本山になっている。

 先般の金融危機は、こうした派閥抗争とは一線を画し、両方の派閥から教訓を学ぼうとする(汽水派とも言える)ラジャン教授のような経済学者が台頭する契機となった。同教授は「私は現実主義の経済学者。海水派と淡水派のどちらも、多くの失敗を犯してきたことを熟知している」と語る。

イギリスに増税を提言しブラウン財務省と論争

 ラジャン教授がこれほど称賛されている理由の1つに、同教授が象牙の塔に閉じこもって弾力性や変動性、不均一分散といった学問的分析に没頭するのではなく、貧困や金融機関の影響力などの大きな問題について、積極的に提言していることがある。

 シカゴ大経営大学院の同僚で、ラジャン教授の前著『セイヴィング・キャピタリズム』を共著したルイジ・ジンガレス教授は「議論の正確さが欠けるのと、正確でない議論を避けるのは全く異なる。現在、経済学界は正確でない議論を避ける方向へと進んでいる」と指摘する。

 ラジャン教授は温和で落ち着いた人柄だ。こうした態度は議論の最中でも変わらない。だが、弱腰というわけではない。フォールト・ラインズの中には、同教授がIMFの首席エコノミストだった2005年当時、ある報道関係者に英国は増税路線を取るべきとの認識を示したエピソードが紹介されている。

 この意見はゴードン・ブラウン英財務相(当時)の方針とは相いれないものであり、ブラウン財務相は翌日の記者会見で、IMFを痛烈に批判した。だがラジャン氏と上司のロドリゴ・デラトIMF専務理事(当時)は引き下がらなかった。フォールト・ラインズにブラウン前英首相が祝辞を寄せているのは、こうした経緯があっても同教授に敬意を抱いていることの表れだろう。

断ち切りがたかった経済学への思い

 1966年、少年時代のラジャン教授は、家族とともに政情不安の真っ只中にあったインドネシアに引っ越した。その前年の1965年、インドネシアでは軍事クーデター「9月30日事件」が発生。この事件は、豪作家クリストファー・コッチ氏が小説『危険な年』に描いたものだ。この小説は、映画化もされた。スカルノ大統領(当時)は失脚し、共産主義者の“粛正”が行われ、数十万人とも言われる人々が殺された。

 1969年に一家はスリランカへ、さらに1971年にはベルギーへと移り住んだ。豊かなベルギーで3年間を過ごしたラグラム少年は、インドへの帰国後、思わぬ衝撃を受けることになった。

 幼くして社会・経済問題に強い関心を持ったラジャン氏だったが、「安全な道」として1985年に電気工学で最初の学位を取得した。だが、経済学への興味を捨てきれなかった同氏はその2年後、名門のインド経営大学院(IIM)アフマダーバード校で経営学修士号(MBA)を取得した。

 IIMアフマダーバード校時代の同級生、スリニバス・シャストリさんは、学生時代のラジャン氏を「思いやりにあふれる男だった」と記憶している。それを端的に示す逸話として、シャストリさんは「今でも覚えているが、あるクリケットの試合で、彼は遅い球(野球で言えば変化球)で私を打ち取った。なんとその後に謝罪してきた」とメールに綴っている。

 また、別の同級生、ラディカさんは、その後、ラジャン教授の伴侶となっている。同教授によれば、2人は「あまりに激しく議論したため、互いに2度と同じ場にいるのはやめようと考えた。だが、最終的には結婚した」とのことだ。ラジャン夫妻には10代の子供が2人いる。

若手金融学者の雄としてフィッシャー・ブラック賞を受賞

 IIMを卒業した後、渡米したラジャン教授は、1991年にMITで経済学博士号を取得。MITを卒業した後、シカゴ大学の教員になった。以来、シカゴのハイド公園近くのゴシック様式の同大キャンパスが、同教授の活動拠点となっている。そしてIMF首席エコノミストとしての3年間の任期が始まった 2003年、同教授は、金融の理論と実践に最も貢献した40歳以下の人物を表彰するフィッシャー・ブラック賞の最初の受賞者に選ばれた。

 ラジャン教授はAFAの会長を務めるほか、インドのマンモハン・シン首相の経済顧問も務めている。また、インドの金融改革委員会の委員長を務め、『100の小さなステップ』という答申をまとめ上げた。

 そのほか、米政府監査院(GAO)の院長やさまざまな企業――米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(MCO)、ブラジルのイタウ・ウニバンク銀行、米プライベートエイクイティ(PE、非公開株)投資会社BDTキャピタル・パートナーズ、米経営コンサルティング大手ブーズ・アンド・カンパニー――の学術顧問も務めている。それでも「研究時間の確保に努め、年に数本の論文を書き続けている」(ラジャン教授)という。

2005年の時点で金融システムの不安定さを指摘

 ラジャン教授は2005年8月27日に行った講演で、「独自の視点で世界経済を分析するエコノミスト」という評価を確立した。米ワイオミング州ジャクソンホールで開催された世界中の中央銀行関係者が集まる年次会議で、同教授は、冷静に中銀への警告を発するスピーチを行った。

 この会議の講演者の大半は、当時、絶賛されながら米連邦準備理事会(FRB)議長の任期最後の年を終えようとしていたアラン・グリーンスパン氏に惜しみない賛辞を呈していた。だが出番が回ってきたラジャン教授は、「金融の発展で世界経済のリスクは高まっていないか」と題する論説を発表した。

 同教授は「信用リスクのように、本来なら当事者間だけで取引されるべきものが、無関係な第三者によって取引されている」と述べ、銀行が伝統的な貸し付け業務以外に事業を拡大し、コマーシャルペーパー(CP)の発行企業にバックアップライン(手数料を取って企業に与える与信枠)を提供するなど、よりリスクの高い収益手段に依存するようになっていると指摘した。「競争により、金融機関は常に非流動性の限界に挑まざるを得ない状況に陥っている」。

 ラジャン教授によれば、投資運用担当者のリターンは凸曲線を描くという。すなわち、より大きなリスクを取ることに対する運用担当者本人のメリットは大きく、デメリットは極めて小さいということだ。当時、市場は落ち着いている様子だった。それでも同教授は慢心することの危険性に警鐘を鳴らし、「市場の変動が小さいことと、リスクが小さいことは違う」と指摘した。

 同教授は、金利をあまりに低く設定することには慎重であるべきだと主張。また、運用報酬体系に「投資運用担当者が業務で運用している資産に、自身が得た報酬の一部を投資するよう求める。その職を離れた後も、1年経過するまでは投資資金を引き揚げを禁止する」といった規制を設けるよう提唱した。

 ラジャン教授はこの会議で総スカンを食らった。当時米ハーバード大学学長だったローレンス・サマーズ元財務長官は、「この論の基調にある、合理化を否定する考えは、かなり的外れだ」と辛辣に批判した。さらにほかの講演者数人も、サマーズ氏よりは控え目な表現ながら、相次いで批判した。

 米プリンストン大学のアラン・ブラインダー教授は「ラジャン教授は『自由市場主義を奉じるシカゴ学派の経済学者にふさわしくない』と袋だたきにあった」と当時の様子を語る。ラジャン教授はこのときのことをフォールト・ラインズの中で、「飢えたライオンだらけの洞窟に舞い込んだ旧約聖書のダニエルのような心境だと言っても、さほど誇張ではないだろう」と述懐している。

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米国でいま最も注目を集める経済学者:シカゴ大のラジャン教授(2)

* 2011年3月1日 火曜日
* Bloomberg Businessweek

政治・経済  金融システム  ポール・クルーグマン  経済学  ベン・バーナンキ  自由主義  インド  金融経済学  格差  ケインズ主義  アラン・グリーンスパン  FRB 

Peter Coy(Bloomberg Businessweek経済担当エディター)
米国時間2011年2月10日更新「 Charting the Economic Fault Lines 」

(前回記事はこちら)

ポール・クルーグマン教授との論争に参戦

 結局、ラジャン教授の警告が的中したのは言うまでもない。だが、同教授はフォールト・ラインズで260ページにわたって、ただ「それみたことか」と自分の主張の正しさを力説しているわけではない。同書は危機の根本原因をあぶり出し、次の危機に備えて経済システムをより安定したものにする方策を示している。さらに、政府を全く信用しない市場主義信奉のリバタリアンと、自由市場を全く信用しない左派リベラルとの間に存在する認識の隔たりを埋めようとする試みもしている。

 ラジャン教授は本来「淡水派」で、ベン・バーナンキFRB議長があまりに長期にわたり超低金利政策を続けていることで資産バブルを再発させる恐れがあると懸念する。この点で、ラジャン教授は米ブッシュ前政権で財務次官(国際担当)を務めたジョン・B・テイラー氏などの保守派と同意見だ。

 また、同教授は金融危機を招いた元凶として、米政府系住宅金融機関の連邦住宅抵当公社(ファニーメイ、FNMA)や連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック、FMCC)によるサブプライムローンへの過剰な資金供給や、低所得層が多いとされる地域への住宅ローン融資を拡大するよう金融機関に圧力をかけた米地域再投資法を挙げている。

 こうした意見は「海水派急先鋒」の反発を買った。ノーベル賞学者で米ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストでもある米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は、米書評誌ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスでフォールト・ラインズを激しく批判し、「主として政治的な動機で広められた根拠のない説を鵜呑みにしている」とラジャン教授を非難した。

 これに対し、ラジャン教授は、米保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の機関誌『アメリカン』で、「多くの誤謬」と題した論説を発表して反論した。論説の紹介文にはこう書かれている――「ポール・クルーグマン氏は、他のエコノミストを政治的急進論者と位置づけることで、その信頼性をおとしめられると考えているのかもしれない。だがクルーグマン氏の主張こそ誤謬に満ちており、著しく説得力を欠いている」。

 これは紛れもなく、シカゴ学派を代表する経済学者ミルトン・フリードマン氏とローズ・フリードマン夫人のサイン入りポスターをオフィスの壁に貼っている経済学者にふさわしい主張と言えよう。

インドでの生活が格差に目を向けさせる

 ラジャン教授の思想信条は保守かもしれないが、その心は弱者への思いやりに満ちている。同教授は「サブプライムローンの過剰融資は、所得格差の拡大をはじめとする重大な根本問題に対処しようとした、誤った試みだった」と分析している。同教授は統計データを示しながら、米国の高所得層の経済状況は問題ないが、中低所得層の経済状況は悪化していると指摘する。

 中低所得層は借り入れによって、実際よりも豊かであるかのように消費することが可能になった。だが、そのような暮らしが持続できるはずはない。「中低所得層がより良い教育を受け、グローバル化した労働市場において競争力を高められるよう支援し、格差問題の抜本的解決に取り組む方がはるかに賢明だ」(ラジャン教授)。

 ラジャン教授は「FRBの低金利政策は、もう1つの深刻な問題、米国の脆弱なセーフティネットにも悪影響を及ぼす。米国のセーフティネットが欧州並みに強固であれば、失業の痛みを軽減できる。そうすれば、FRBは雇用創出のために過剰な金融緩和を求める政治圧力にさらされずに済んだ。経済を自然な自律回復に委ねられた」と論じている。

 つまり、フォールト・ラインズの主張は、共和党保守派のロン・ポール下院議員と一致するような意見がある一方で、民主党リベラル派と共通するような意見でもある。ラジャン教授は「この議論において、健康状態が悪くても保護を受けられない移民層を国内に抱えたまま、米国が健全で人道的な社会を構築できるかを考慮している議員は少ない。このまま対策を実行しなければ、格差はますます拡大する」と書いている。

 このような問題意識の背景には、母国インドの影響があるのかもしれない。MITのアビジット・バナジー教授は「政治経済分野で活躍するインド出身のエコノミストの多くにとって、貧困や格差は重要な検討課題だ」と語る。ラジャン教授自身もデンバーでのインタビューで、「私はインドで育った。対策手段は必ず見いだせるはずだと信じている」と語った。

ラジャン教授が提唱する対案の是非は

 フォールト・ラインズに欠点があるとすれば、それはラジャン教授が提唱する対案だろう。一部の対案は、実現可能ではあるが、問題を解消するには不十分だ。一方、問題を解決できるかもしれないが、実現が困難な対案もある。同書で示された処方箋には、次のようなものがある。

・市場トレーダーの運用実績が当初は良好でも後に深刻な結果を招く恐れがあるため、ボーナス報酬の支払いを数年間保留する。
・ファニーメイとフレディマックを解体する。
・ウォール街の金融機関と金融監督当局の間を行き来する幹部人事の禁止。
・貧困層の幼い子供向けの教育・福祉の拡充。
・優れた実績を上げている教師への報酬増。
・チャータースクール(市民が主導して設立し、政府の公認・支援を受ける公共学校)や教育バウチャー(政府が配布した教育利用券を使って子供の通う学校を選べる制度)の推進。
・国民皆保険制度の導入。
・付加価値税や炭素税の導入検討。
・金融機関がより忠実に市場原理の影響を受けるよう、預金保険を段階的に廃止する
などだ。

 ラジャン教授の最も野心的な提案の1つは、IMFが、中国の「知識水準が高い中流層」をはじめ、「特定の国の市民に直接働きかける」案だ。同教授は著書の中で、「効果があるかどうかは分からない。だが、国際機関が現状に安住することなく活動を広げても、無意味な存在でなくなるだけで、デメリットは特にない」と主張している。

“断層”を解消するすべを探す

 ラジャン教授は1月のデンバーでの会議で、激しい批判にも直面した。1月7日午前8時、同教授は図表や方程式を盛り込んだスライドを使って、自身の論文に関するプレゼンテーションを行った。約80人の出席者に対し、「社会は責任をなすり付ける悪役を見つけて、その悪役をつるし上げる。だが、問題がより根深いものである場合はどうするのだろうか」と問題提起した。

 すると、同年代の2人の高名な経済学者が、それぞれのプレゼンテーションで、ラジャン教授の主張をやり玉に挙げた。米プロバスケットボール協会(NBA)の一流プロ選手が競い合う「スラムダンク・コンテスト」の経済学者版のようなもので、あからさまな挑戦だった。

 MITのダロン・アセモグル教授はラジャン教授を称賛した後、ラジャン教授の原因分析は間違っているのではないかと疑問を投げかけた。アセモグル教授は「米議会は貧困層を助けるためにサブプライムローンの融資拡大をけしかけたのではない。むしろ、自分たちの選挙活動を支援してくれる有力金融業者の事業振興を目的に、こうした政策を取った可能性がある」と主張した。

 アセモグル教授は、かつての共和党上院議員マーク・ハンナ氏(1837〜1904年)の言葉――政治で重要なことは2つある。1つは資金。もう1つは何だったか思い出せない――を引き合いに出した。

 ハーバード大と自由市場主義の米マンハッタン研究所(MI)に所属するエドワード・グリーザー教授もラジャン教授を称賛した後、異なる方向から攻撃を仕掛けた。グリーザー教授は「過剰な融資だけでは、米国の住宅バブルの一部分しか説明できない」と問題提起した。

 翌日、ラジャン教授はアセモグル、グリーザー両教授の攻勢をうまくかわした様子だった。同教授は「意見の隔たりは、はた目ほど大きくない」と述べ、サブプライムローン融資を促進した議会の動機に関する自身の主張は、学術論文の考察の場合のような十分な裏付けはないと認めた。「私は飛躍した議論を展開している。一般書ではこうした主張も可能だ。(前著を共著したジンガレス教授の主張と同じく)専門知識は必要だが、より幅広い枠組みで物事を論じる人間も必要だ」(ラジャン教授)。

 経済界の“地震研究者”ラジャン教授は、世界経済の“断層”を突き止めるだけでは満足しない。こうした断層をどうすれば解消できるかを明らかにしたいと考えている。「何もせず手をこまぬいていたら、近年経験した混乱よりもっと深刻な事態が起こりかねない。放置していたら、断層は悪化の一途をたどるだろう」(同教授)。


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