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なぜ未達が起こりうるのか
通常、経済成長を遂げている国では、成長に伴い個人金融資産が増える。そのうちの何割かが預金だ。その預金の何割かが国債購入に回る。したがって経済が成長している限り国債購入の新しい原資が生まれる。しかし日本はこの10年間、個人金融資産が増えていない。これでは新しい購入原資が生まれてくるはずがない。では、なぜ今まで毎年何十兆円もの国債購入原資が生まれていたのだろうか。それは日本銀行の購入に加えて個人金融資産の配分変更によると考えられる。景気が悪かったので、金融機関が融資をはがして国債購入に回す。株式を売却して国債を買う、というようなことをやってきたのだと思う。個人が株式市場から銀行預金に切り替えるということもあったかと思う。このような配分変更では、いつかは壁にぶち当たる。そろそろ壁にぶち当たると思う。国債購入原資がない。それが未達という現象で表れるのだ。
株・債券・円のトリプル安が襲う
国債の大半は毎月の入札によって販売されている。この入札で予定額が集まらないのを未達という。入札結果は午後1時に発表となるが、国債未達のニュースが流れれば、瞬時に国債先物市場は値幅制限まで下落し、ストップ安となるだろう。このストップ安は何日も続くものと思われる。先物市場と現物市場の間は裁定が効くために現物債も急落(長期金利が急騰)する。同時に株の先物市場もストップ安をつけ、同じように値がつかぬまま数日間続くだろう。同じ理屈で株の現物市場も急落する。これに伴い円も急落すると考えられる。このような国の通貨は誰も欲しがらないからだ。こうして、とどまるところを知らない「株・債券・円」のトリプル安が私たちを襲うのだ。
ハイパーインフレと取り付け騒ぎ
このニュースと同時に銀行では取り付け騒ぎが起きると考えられる。国債が暴落すれば金融機関の資産価値暴落で預金がまともに返ってくるか心配になるからだ。ゆうちょ銀行などは預金の8割を国債購入に充てているわけだから国債が暴落すれば預金の返済原資がなくなる、という発想は多くの人が共有することになるだろう。ペイオフなど一定の程度の国の保障があるといっても、国自身が危ないのだから預金引き出しに走るわけだ。こうなると政府・日銀は事態沈静化に動くだろう。入札で民間金融機関の代わりに日本銀行が購入する。そうやって、日銀は財務省に金を渡し、国は国家公務員の給与支払いや子ども手当てのお金をやっと確保する。この日銀の国債買取りは「国債引き受け」と言い、過去にハイパーインフレを引き起こした経緯から現在は法律で禁止されている。しかしこのような非常事態では法律改正が早急に行なわれ、「国債引き受け」を可能にすると思う。また取り付け騒ぎも早急に沈静化しなければならない。沈静化のために日銀が民間金融機関に資金を大量供給するだろう。これは日銀が民間金融機関保有の国債を買い取ることによって資金を大量供給する形をとるのだ。
これらの緊急処置により、銀行の取り付け騒ぎは収まると考えられる。しかし、これだけのお金が世の中にばらまかれればお金の価値は急落する。タクシーに1回乗れば100万円がなくなってしまうハイパーインフレの時代の到来だ。日銀が莫大な現金を市中にばらまいた結果だ。
ハイパーインフレの結果、国の借金は一挙に解決する。その代償として国民は塗炭の苦しみを味わうことになる。そして数年後、がらがらポンの後の日本は目覚ましい経済発展を遂げているだろう。
「その日」はいつか
未達がいつ起こるかは残念ながら予測できない。次の大きな山場は「2011年度の予算案作成時期」とも考えられるが、5年後であっても驚かない。大地震の予報と同じなのだ。「起こる確率は高い。でもいつかは分からない」というところだ。
日本破綻 「その日」に備える資産防衛術 藤巻健史 著 より、一部モデファイして引用
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著者は85年米モルガン銀行に入社。東京屈指のディーラーとしての実績を買われ、当時としては東京市場唯一の外銀日本人支店長に抜擢される。2000年に同行を退社後は、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務めた。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役社長。
政治家や評論家が何と言おうと、市場プレイヤーとしての百戦錬磨のディーラー経験を持つ藤巻氏の主張は、市場の動向を正確に描き出していると思う。
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