http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/151.html
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家計の正味資産は多分、10年は増加に転じたのでないかと思うが、確かに、日本経済が低迷しているのは間違いないし、増税だけで問題が解決するはずがないのも確実だ。
本来は経済成長と財政支出&行政システムの効率化のための具体策を実行に移すべき時期のはずだが。。
このままでは冗談で書いた政治リスクによる、まさかの国債破綻シナリオが現実化しそうだな。
その場合、S&Pも、まさかそこまで日本は愚かだったかとびっくりするかもしれない
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110216/260421
大前研一の「産業突然死」時代の人生論
消費税増税のための「税と社会保障の一体改革」のまやかし
2011年2月16日
国と地方自治体が抱える借金総額が、保有する資産総額(土地や道路など)を2009年末で49兆円上回ったことが内閣府の統計で1月31日に明らかになった。いわば日本という国が債務超過になったということであり、深刻な財政状況が改めて浮き彫りとなった形だ。
また、家計の正味資産(資産から負債を差し引いた額)も2009年末で2039兆円となり、前年比0.8%減少した。3年連続の減少で、1988 年以来、21年ぶりの低水準となった。日本人の持つ資産が名目上21年前のレベルに落ちたということである。何のために20年間働いてきたのかという憤り さえ感じるこのニュースに対しても、マスコミは無反応であった。草食系を通り越して植物人間になってしまったのか、と思わせる一連のニュースである。
一般政府の資産を負債が上回る
まずは資産と負債の推移をグラフで確認しておこう。
1980年代以降、一般政府(中央政府および地方政府・社会保障基金)の資産はほぼ一貫して右肩上がりで伸びていた(左のグラフ)。ところが 2000年代前半は伸び率が鈍化し、07年にはマイナスに転じてしまう。そこへ資産の伸び率を上回る勢いで増えてきた負債が、ついに08年に資産を上回 り、09年末にはその差が49兆円に達したというわけだ。
ここで注意しなければならないのは、資産の額が実際に現金化できる額と大きな乖離があるということである。
現実には大幅な債務超過状態にある
資産の中心になっているのは道路や林野、港湾などである。道路はそう簡単に売却するわけにはいかないし、原野・山林は維持費がかさむばかりでおよ そ利益を生み出すものではない。港湾も黒字になっているところは皆無である。こうした資産を無理矢理に現金化しようとすれば、よほど値段を下げなくてはな らないのが現実だ。
つまり、国や地方自治体の資産とは、投資額から法定償却額(多くの場合60年)を差し引いた数字で、実は資産価値があるという意味での資産ではない。一方で負債は国債・地方債などが中心であるから、これはいずれ国民が返していかなくてはいけない「リアルな数字」である。
したがって、資産と負債の間にはとても49兆円ではきかないほど大きな乖離があり、現実には大幅な債務超過状態にあると言える。実際、公的債務の 全体額(約1000兆円)すべてが資金を生まない資産に化けてしまったと考えれば、事態はいよいよ深刻なのである。もちろんこうした投資が効果を発揮して 日本での生産活動につながっているわけであるが、その付加価値総額が国内総生産(GDP)であるから、そこから生み出される公的資金(すなわち税金)の総 額が40兆円であることを考えると、この国の今の生活は維持していけない、ということを思い知るのである。
今回は、この問題と今国会で消費税増税のために進行している「税と社会保障の一体改革」のまやかしについて考察しよう。
家計の正味資産は減少傾向、企業の資産は伸びず
家計についてはどうか。家計の正味資産は資産過剰の状態にあるが、88年をピークにしばらく横ばいが続いた後はじりじりと額を落してきている(1ページの右グラフ)。
幸いなことにと言うべきか、日本人は経済の停滞に合わせて大きな買い物を控えるようになっているため、負債は増える傾向にはない。ただし、やはり 家計の場合も国や地方自治体の資産と同様、価値の低い不動産などが含まれているため、実質的な資産は見かけの数字よりも低いと考えたほうがよい。
一方、この資産のうち金融資産が貯蓄などを通じて国債の購入に充てられているので、正味資産の減少は国債購入余力の衰退につながっている。国家の無駄遣いの原資が枯渇する日が近い、と見ておかなくてはならない。
私は以前より資産課税制度の充実を唱えてきた。現在の日本で税収を増やそうと思えば、もはや民間(個人・企業)の所得や利益ではなく、資産を当て にせざるを得ない。ところが、その最大のベースとなる家計の正味資産が減少傾向にあり、しかも21年ぶりの低水準を記録してしまったとなれば、現状はいく ら資産過剰な状態にあっても、看過していい問題ではない。
政府、家計と見てきたが、企業についてはどうか。実は企業の資産そのものは決して大きなものではない。下のグラフを見ていただきたい。
企業の資産はこの20年あまり、平均して2000兆円弱で推移している。意外に思われるかもしれないが、実は家計資産よりも額は少ないくらいなの だ。資産と土地(上段のグラフ)から借入金(下段のグラフ)を差し引いたものが資本金や剰余金になるが、苦しい中、これを積み増して来ている。私の提案し ている資産課税では生産に使ってない土地や施設が課税対象となる。
いずれにしても企業の資産がバブル崩壊以降20年にもわたって全く伸びていないし、利益に課税しようが資産に課税しようがベースとなるものが著しく細ってきていることは記憶しておかなくてはならない。
民主党の辞書には「歳出削減」という文字はない
個人と法人の資産が減っていくのに対して、国の総予算歳出額は増える一方だ。財務省が2月1日に発表した、2011年度予算案の一般会計と特別会計を合わせた総予算の歳出は220兆2754億円に達した。これは前年比で2.4%の伸びである。
まずは一般会計の歳出と歳入を見てみよう。下の図だ。
税収が40.9兆円しかないのに、それを上回る44.3兆円の公債を発行して92.4兆円の歳入を見込み、歳出の92.4兆円を賄うというわけで ある。常識的に考えれば、民主党はここで公債発行額はせめて税収以下に抑え、それに見合った歳出計画を立てるべきだ。日本の負った1000兆円もの借金を 考えれば当然の理屈なのだが、しかし民主党の辞書には依然として「歳出削減」という文字はないようだ。
しかし、リップサービスは続いている。経済閣僚はすべて「歳出削減が最重要課題だということは認識している」と発言している。しかし上図のような 緩みきった予算を平気で提出しており、これを国会で通そうという姿勢である。認識していてもやらないのか、実は認識していないのか、消費税にすべてを託す ためにあえて国債暴落を招く作戦なのか、私には判断できない。
総額が400兆円を超える特別会計の恐ろしさ
続いて特別会計の歳出と歳入を見てみよう。国債整理基金、年金、交付金などの各項目を合計すると実に400兆円、一般会計の歳入の4倍以上にもなる。これだけの巨費が国の一般会計の外側にあることに恐ろしさを感じるのは私だけではあるまい。
昭和60年くらいから国債の償還が困難と分かり、一般予算の外側に国債整理基金などの特別会計をつくった。国債は何年物であっても実質的な償還を 60年とし、毎年1.6%を一般会計に繰り入れる、という仕掛けである。日本の場合には10年国債であっても10年後に償還されるわけではない。10年後 には償却されていない部分と等しい借り換え債が発行される。すべてが60年で元本を返すという、まやかしの会計制度になっている。その母体が国債整理基金 であり、919兆円の国債残高のうち毎年組み替えられる部分が今では200兆円もある、というのが下図である。
地方に関しても同じ扱いで国家による地方への長期貸し付けのやりくり部分が54兆円を超える交付金などとなっている。さらに財政投融資などの別枠部分でも38兆円のやりくりがあることが分かる。
今回、「税と社会保障の一体改革」の中で注意しなくてはいけないのが79.6兆円の年金部分と7.6兆円の労働保険部分である。つまり今の政府の 考え方は健康保険や年金、そして失業保険など給与明細で税金以外に取っているものは原則特別会計で処理している。税金ではなく“掛け金”で個人がそうした 保険を“買っている”ことになっているからである。
日本の国家運営の内訳はどうなっているのか
しかし、高齢化社会の進展と共にその掛け金では回らなくなっているのが実態である。一般会計で28.7兆円の社会保障費が計上されているのは一つ にはこの積み立て不足の部分であり、もう一つは基礎年金の半分を国が出すとした“大判振る舞い”による。この税金で補填する額は毎年1兆円以上増加してき ている。
国民健康保険の支払いに関しては保険料を払っている人は88%にとどまり、この部分では大きな赤字が出ている。厚生年金が黒字でも国民年金は赤字 という構図と同じである。だから、サラリーマンにしわ寄せして「派遣」や「パート」でも厚生年金に加入できるようにしようと民主党は言い始めている。 一 般会計の歳出の中にある28.7兆円の社会保障は実は毎年税金から補填する部分であるが、その中には年金や健康保険で掛け金を払ってない人の分も入ってい る。
日本の国家運営には毎年一体いくらかかっているのだろうか? 一般会計と特別会計の合計の内訳を下の円グラフにまとめてみた。これが特別会計と一 般会計の重複部分を除く「税と社会保障一体」の総経費である。つまり、日本の国を運営していくにはどういう形で金を集めているかに関係なく、出費だけで見 れば年間220兆円かかっている、ということである。
一見して分かるのは国債利払い・償還費の大きさで、実に全体の37%を占めている。次に大きいのは年金・医療・介護給付で、こちらは29%を占める。
年間80兆円を超える国債の利払い・償還ができない
ご承知のように菅直人首相は2月1日、4月に社会保障改革の中身、6月には税を含めた一体改革の内容を提示するとの考えを示している。今後の成り行きによっては将来の福祉のあり方も大きく変わってくることになるわけで、我々としても大いに注目しておくべき問題である。
菅首相の言う「税と社会保障の一体改革」がどのようなものになるかは現時点では不明だが、もしすべてを税で賄う北欧型のアプローチをとるのなら、 租税負担率は50%近くになり、それでも保障ラインは最低レベルということになる。増税を嫌うなら保険料率を上げるとか、年金の支給額を減らし、支給開始 年齢をさらに先送りにするといった措置をとらざるを得なくなる。
また消費税で社会保障費(先の円グラフの29%分)を捻出しようとすれば、今の5%どころではなく30%近く徴収しないといけない。つまりヨー ロッパのいくつかの国で見られる25%付加価値税を超える税となる。今の税収が40兆円しかないことを考えれば、75兆円を誰がどのように負担するのかと いう問題と定義しても良い。
そうすると、仮に消費税を30%まで上げて社会負担ができたとしても、年間80兆円を超える国債の利払い・償還ができない。当然利払いを停止するか、償還を停止するしかないが、それはすなわちデフォルト(債務不履行)ということになる。
民主党は財務省の差し金もあって社会保障と言えば(消費税などの)税負担増を提案できると考えているようだが、金融市場的には社会負担をいかに減 らして国債のデフォルトを避けるかのほうがはるかに重大な関心事である。つまり、この議論の過程で否が応でも日本国の生活費は220兆円という現実を突き つけられることになる。
特別会計は国会の審議を経なくて良いという“特権”があったので、今までは衆目にさらされることが少なかった。しかし「税と社会保障の一体改革」となると、この複雑な方程式を解かなくてはいけない。
国民負担の「公平」とは何か
実はその過程で三つのことが明らかになる。
1.税であれ保険であれ国民負担は倍増せざるを得ない2.その場合でも国債利払いと償還原資はない(デフォルトする)3.デフォルトを避けるためには歳出は半減せざるを得ない
こうした最悪のシナリオに至る前の大前提としては、上記1.の負担に関して「公平」とは何か?をトコトン議論すべきだ、ということだ。
民主党は赤字の国民年金・国民健康保険と、現状は黒字を維持している企業年金・企業の健康保険をそれぞれ合体して、赤字を埋めてしまおうとしている。これは言うならば、民間が蓄えてきた富を政府が奪うことに等しい。
また、保険において給与に比例して徴収しながら、支払いには差がないという問題がある。健康保険ではその通りだが、失業保険や年金では若干の差が ある。しかし支払額ほどの差がない。政府が全体としてつじつまが合うようにクロスサブ(補填)しているからである。民主党は年金に関しては基礎部分(月7 万円程度)を税金で一律にしようと考えている。それであれば今のような給与比例部分をなくし、消費税にすればより公平な負担に近づく。
日本のやり方は税金であれ、保険であれ、常に給与所得者(天引きされるサラリーマン)の犠牲の上に成り立っていた。「10−5−3」(トーゴーサン)という捕足率の著しい歪みに対しても「パンドラの箱」が開いてしまえば、サイレントマジョリティは黙ってはいないだろう。
自民党、財務省の「最後の審判」への陳述を聞きたい
菅直人首相はいろいろな案件に「命を懸ける」と言っている。「税と社会保障の一体改革」の議論は首相だけではなく政権の命運がかかっていることは疑いがない。
これがお粗末なマスコミによって「消費税増税議論」となり、賛成か反対かの空虚な議論に置き換えられれば「40兆円の収入しかないのに220兆円の無節操な生活をしてきた日本国」の実態が浮き彫りになる。
今後国民の面倒も見ない(社会保障の財源がない)うえに借金の返済計画もない、という実態がさらけ出されれば金融市場に制裁をくらうことになる。
民主党だけの問題ではない。原因をつくり出してきた自民党と、すべてを60年の彼方に先送りしてきた“マジシャン=財務省”も含めて「最後の審判」への陳述を聞こうではないか。
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大前研一の「「産業突然死」時代の人生論」は、09年4月7日まで「SAFETY JAPAN」サイトにて公開して参りましたが、09年4月15日より、掲載媒体が「nikkeiBPnet」に変更になりました。今後ともよろしくお願いいたします。また、大前氏の過去の記事は、今後ともSAFETY JAPANにて購読できますので、よろしくご愛読ください。
大前研一氏の大人気コラム「『産業突然死』時代の人生論」が本になりました(日経BP社刊)。ビジネスに役立つ情報や考え方のヒントが満載です。お求めはこちらまで。
大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県に生まれる。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博 士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。以来ディレクター、日本支社長、アジア太平 洋地区会長を務める。 2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラム(ビジネスブレークスルー大学院大学)が開講、学長に就任。経営コンサルタントとしても各国 で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権の国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 近著に『さらばアメリカ』(小学館)、『知の衰退からいかに脱出するか』 (光文社)、『ロシア・ショック』(講談社)がある。大前研一のホームページ:http://www.kohmae.comビジネスブレークスルー:http://www.bbt757.com
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