http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/139.html
Tweet |
日本経済は衰退しつつあるのに、社会保障コストの自然増などで財政赤字はGDP比年10%を超えて増えつつある
そうしたデフレ圧力が投資を減らし、スパイラル的に日本経済衰退を加速する
さらに資源枯渇や異常気象による食糧増産の限界を考えると、何もなくても実質通貨価値は世界的に低下していくことが予想される。
それにもかかわらず、これまでのようなリスク回避での円上昇が今後も続き、日本国債の実質価値(未来の実質購買力)が未来永劫、上昇すると考えるのは、明らかにリスクが高すぎるだろう。
ポジショントークに従う必要はないが、せいぜい円金融資産は資産の3割程度に抑えておくのが無難だと思うし、実際に、邦銀の資産の分散化は規制もあって否応なしに進んでいる。
最終的には買い手は日銀のみということになり、物価安定を使命とするならば、国債購入にも限界がでてくる。
その前に富裕層なら自分の資産をどうするか、そして現役層なら長期的な財政収支をどうコントロールすべきかを、きちんと考えておいた方がいいだろう。
http://diamond.jp/articles/-/11177
【第5回】 2011年2月18日 安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
国債集中投資の愚――国民の資産はなぜ分散投資されなければならないのか
民主党政権が発足した後、公的年金の運用方針について、長妻厚生労働大臣と原口総務大臣(いずれも当時)の間で大きな主張の隔たりがあったことは 記憶に新しい。長妻氏は国債中心の超保守的な運用を主張したのに対し、原口氏は、寧ろ運用先を多様化し、新興国など海外を含む成長分野への投資を入れるよ う主張していたのである。公的年金は国民の金融資産の代表的な受け皿であり、現在も127兆円もの残高を持つ。公的年金を一つの例にしながら、国民の資産 の運用のあり方を考えてみたい。
「国債100%」の運用は本当に保守的なのか?
長妻氏は、「公的年金の積立金は国民から運用していいと言われて預かったものではない」として、国債100%で運用している米国のSocial Securityに倣って「保守的」に運用する方針を明確にしていた。しかし、そもそも「国債100%」の運用というのは本当に保守的なのだろうか?以下 に簡単な例で検証してみたい。
下の表1は、現在公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がその前提とする「国内債券」・「国内株式」のリスク(標準 偏差)・リターン(期待収益率)プロフィールと、海外PE(プライベート・エクイティ)のデータを用いて推定した「国内PE」のリスク・リターンプロ フィールを並べたものである。
様々な制約の中での推定値なので、このリスク・リターンプロフィールが絶対正しいと言い切れるわけではないが、その「傾向値」が正しいことは合理的に推測され、結論も変わらないと思われることから、ここではそれを用いることとする。
【表1】
拡大画像表示
次のページ>>国内債券と国内株式だけの世界であれば、長妻氏の主張もありうる
さて、現在のGPIFの基本ポートフォリオでは、国内債券に67%を配分することとなっている。下の表2では、それを前提にリスクとリターンの変化 を考えてみる。ここで、単純化のために残り33%を国内株式に配分したとすると、そのポートフォリオの期待リターンは3.59%となる。国内債券100% で運用した場合の期待リターンが3%であるので、リターンの向上は期待できる。
【表2】
拡大画像表示
しかし、その一方で、リスク(標準偏差)は、国内債券100%の運用の場合の5.42%が8.88%にまで上昇してしまう。そして、リスク対比リ ターンを測る最も簡易な手法であるシャープレシオで見ても、国内債券67%・株式33%のポートフォリオが0.1794であるのに対し、国内債券100% のポートフォリオは0.1845である。
この指標が高いほどリスク対比リターンが優れているので、国内債券100%の運用に軍配が上がる。つまり、国内債券と国内株式だけの世界であれ ば、長妻氏の言うように、国内債券100%にしてしまった方がリスクも低く、リスク対比リターンも良好ということもあり得るのだ。
次のページ>>「国債100%の運用が最も安全」という神話は過去のもの
では、ここに代表的なオルタナティブ(代替投資)運用手法であるPEを加えるとどうなるだろうか。表3は、@表2のポートフォリオの中ので、国内債 券67%は不変のまま株式への配分を15%減らし、その分をPEに振り向けたケースと、A国内債券100%のポートフォリオの中の国内債券を15%減ら し、その分をPEに振り向けたケースの2つを試算してみたものである。
【表3】
拡大画像表示
結論から言うと、期待リターンが最も高かったのは、国内債券67%に株式・PEを交えたポートフォリオであり、国内債券85%とPE15%のポートフォリオがこれに次ぐ。
また、ここで注目して戴きたいのは、リスクが最も低いのは、国内債券85%とPE15%のポートフォリオであったということである。そして、 シャープレシオから見ても、国内債券85%・PE15%のポートフォリオは他に比べて断然良好であり、これに国内債券・株式・PEのポートフォリオが続 く。
すなわち、国内債券100%の運用は最も保守的とは言えないことはもちろん、リスク対比リターンも見劣りするという結論になる。PEなどリスク・リターンプロフィールが違う運用資産があることを前提とすると、「100%国債で運用すべき」という長妻氏の意見は明らかな誤りであることがわかる。ましてや、昨今の国債の大量発行の下、国債価格の標準偏差(リスク)が一層高まることが予想され、国債自体のリスクプロフィールは、先の前提値より悪化していくことが十分考えられ、「国債100%の運用が最も安全」という神話は、もはや過去のものである。
次のページ>>公的年金は何を目的に運用されるのか
ちなみに、長妻氏が倣いたいという米国のSocial Securityは、税方式で集めた資金を(非市場性国債購入の形式を取って)国家予算に組み込んで使うという仕組みであって、もともと日本の現在の公的年金の仕組みとは異なるものである。
株式やPEへの投資がないのは、「資本主義国家なのに、国がその予算で個別企業の株を買っていいのか」という議論があるからであって、「リスクがあるから」という理由ではない。
公的年金は何を目的に運用されるのか
現在、日本の公的年金は、「賦課方式」であると説明されている。賦課方式とは、「現役世代が生み出す富の一定割合をそのときそのときの高齢者世代に再配分する仕組み」(厚生労働省)とされている。逆に言えば、自分が納めた保険料が運用されて、その元利が後で返ってくるという仕組み(積立方式)ではないのだ。もっと言えば、現役世代が高齢者世代に所得を再配分し続ける限り、積立金は理論的には不要なのだ。
にもかかわらず、なぜ現在127兆円(09年度末)もの巨額の積立金が存在するのかという事情については、野口悠紀雄教授「未曾有の経済危機を読む」の第86回「積立方式で始まったはずの年金制度は、なぜ途中から賦課方式と説明されるようになったのか?」に詳しいが、要するに、年金制度開始当初は積立方式が想定されていたために、実際に給付が始まるまでの間に積立金が溜まっていったという過去の事情によるものであろう。
その良し悪しは別にして、現在我が国の公的年金は、家計部門のネット金融資産の10%以上を預かる、そして、世界で最も巨額の資産運用をしている 機関投資家になってしまったのである。2001年度までは、このお金は、郵貯資金と共に資金運用部に預託され、「第二の予算」とも揶揄された財政投融資計 画が毎年国会の承認下で策定されていたのだ。その時代の公的年金の使われ方は、原資が保険料である点を除き、先述した米国のSocial Securityに近いと言ってもいいかもしれない。
ただし、こうして財投が活用されていた時代の日本は、高度成長期にあった。国や企業が成長するために必要なインフラは山積しており、財投による高 速道路や新幹線の整備が果たした役割は大きかった。その結果として企業や家計は潤ったのであるから、言ってみれば、この投資は国民経済的にはROI(投資 収益率)が高いものであったと言ってよいだろう。
しかし、高度成長期が終わり、財投で不要不急の橋や道路、ハコモノを作ってもROIは非常に悪く、成長に寄与しないことは明らかである。従って、財投改革が行なわれ、年金積立金が徐々に市場運用に回されるようになったのは正しい政策であった。
次のページ>>公的年金は賦課方式なのだから、短期的な運用の成否は給付水準には直接関係ない
ところが、現在公的年金の資産配分は厚生労働省が定める基本ポートフォリオで67%が国内債券、11%が国内株式、8%が外国債券、9%が外国株 式と定められており、その枠を出ることはできない。先に、財投改革は国がROIの悪い支出をすることを防ぐ狙いがあることを述べたが、今の運用は、その3 分の2を国債購入の形で結局国に返しているだけである。そうして賄われた国債がROIの悪い国の支出となり、無駄なハコモノ投資が行なわれた結果が昨今の 低成長と国の過剰債務であることは明らかだ。
では、年金積立金はどのように運用されるべきなのだろうか。既にリスク対比リターンの観点からは、国債偏重の投資が好ましくないことは説明した。それに加えて、高度成長期と違って、積立金が国に還流してROIの低い投資に回ることも回避すべきということも説明した。
結論から言えば、賦課方式という公的年金の性格に鑑み、積立金は国民経済的に成長を促す政策に使われるべきである。誤解を恐れずに言えば、短期的な運用の是非ではなく、国民経済的にROIが高い使われ方をしなければならないのだ。なぜならば、公的年金は賦課方式なのだから、短期的な運用の成否は給付水準には直接関係ないからなのだ。
別の言葉で言うならば、以前は財投が国民経済的に最も効率的な運用であり、それによる国富の増加が企業や家計を潤した結果、長期的に見れば年金財政も安定したのであるが、その財投に変わる国民経済的に効率的な運用は何かということなのだ。
現に、年金給付には下方硬直性がある(給付水準の引き下げは困難)にもかかわらず、経済成長率・賃金上昇率が財政再計算の想定(各々1%・ 2.5%)より低いということは、現役世代からの保険料収入が想定を下回ることにより、将来の年金支払いに多大な困難を伴う(保険料率の極端な引き上げな どが必要となる)ことが予想されるのであるから、現に手許にある積立金は、長期的視野で経済の成長を促し、結果的に経済成長率や賃金が伸びるような方向に 使われるのが正しく、それが結局は年金制度を安定させることにもなるのだ。
次のページ>>PEへの投資は政策的見地から是非とも実現すべき では、現在の日本で、何が最も企業や経済の成長を促す政策なのだろうか。もはや国にはROIの高い投資はできない。現代においては、ROIが高い 投資とは、国際競争の中で常にROE10%台を掲げて戦っている企業に、成長や構造改革のために必要なリスクマネーを投下することなのだ。この役割は、銀 行にはできない。銀行の行動は、飽くまでも債権保全を基本とするのであって、企業にリスクを取らせて高成長を促すインセンティブは持っていない。寧ろ、リ スクを低くし、安定した収益を上げ、財務を傷めないような安全運行を促すのが銀行の基本的な仕事なのだ。
そもそも銀行融資はリスクマネーではないし、銀行が企業にエクイティを出すことが禁止されていく方向であることは連載第3回で 述べた通りである。そしてまた、この役割は、公的年金が直接企業の株式を取ることでも達成できない。そもそも国に準ずる機関が民間企業の議決権を取ること の是非もあろうが、何よりもパッシブに株式を買ったとしても、直接的に企業経営を改善させる手助けはできないのだ(緊張感を与えるという効果は否定しな い)。
結局のところ、公的年金が日本企業と経済の成長を目指して長期的スタンスで投資をするのであれば、日本のベンチャーキャピタルやバイアウトファン ドといったPEファンドにお金を入れ、それらPEファンド経由で構造改革や成長のために必要なリスクマネーを企業に投下していくことが求められるのだ。
以上のように、公的年金は、そのリスク・リターンプロフィールの改善のためにも、そしてまた運用目的に照らしても、運用を多様化 すべきであり、特にPEへの投資は政策的見地から是非とも実現すべきである。(余談であるが、日本の成長を促すと言う投資目的からすれば、原口氏の主張す る新興国への投資などがそれに該当するかどうか、筆者は疑問に感じている)
今回は家計部門の金融資産の受け皿の代表格である公的年金を例にしたが、ほぼ同じことは公的金融であるゆうちょ銀行やかんぽ生命、更には企業年金 にも当てはまることであるし、生損保などその他の機関投資家も、更に運用を多様化することが日本経済にとって望ましいことは言を俟たない。
日本のPEファンドには長年のトラックレコードがないことや、モニタリングに手間とコストがかかるなど、PEでの運用を始めるに際しては幾つかの テクニカルな論点はあろうが、部分最適ばかり考えていたのでは全体最適にはならない。もっと長期的かつ戦略的に国益を考えた政策的な判断が求められている のではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/11191?page=3
TOP経済・時事野口悠紀雄 人口減少の経済学【第18回】 2011年2月18日野口悠紀雄 [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]
増税分を飲み込む歳出増!歳出構造の見直しをどう進めるか
3
前回示したように、消費税率を5%引き上げる程度の増税では、すぐに歳出増に飲み込まれてしまう。だから、歳出構造の見直しがどうしても必要である。
「歳出の見直しなしに、財政再建はない」とは、きまり文句のように言われることだ。しかし、どこに問題があるかは、必ずしも正確に把握されていない。多くの議論は、多分に感覚的なものだ。そこで、まず、問題の根本がどこにあるかを把握しておこう。
歳出伸び率は、税収伸び率より高い
改めて言うまでもないことだが、増税というのは、歳入の「レベル」を引き上げることである。しかし、長期的に問題になるのは、歳出と歳入の「伸び 率」の差だ。ところが、現在の日本の財政は、歳出の伸び率が税収の伸び率より高いという問題を抱えている。具体的には、つぎのとおりである。
2011年度一般会計歳出総額92兆4116億円のうち、国債費が21兆5491億円、社会保障関係費が28兆7079億円、地方交付税交付金等 が16兆7845億円を占めている。これ以外の歳出は、防衛費4兆7752億円、公共事業費4兆9743億円、文教及び科学振興費5兆5100億円などを 含めて25兆3701億円だ。
ところで、日本経済の状況を考慮すれば、年率1%を大きく超える税収の伸び率を期待することは難しい。
他方で、制度を大きく変えなければ、社会保障関係費は、これまで見てきたように高齢者の増加率にほぼ等しい率で増加する。それは、1%を超える。
また、地方交付税交付金は、税収の一定率とされているので、制度を変えなければ、税率とほぼ等しい率で伸びる。
国債費は、利子率が変わらなければ国債残高の増加率とほぼ等しい率で増加する(正確には、少し違う。これについては後述する)。ところが、ここ数 年の国債残高の増加率は、税収伸び率を遥かに超えている(2008年度末の546兆円から、11年度末の668兆円に増加)。将来の利子率がどのようにな るかを予測するのは難しいが、国債残高の増加が続いて国債消化に支障が生ずれば、上昇する可能性が高い。そうなれば、国債費の増加率もさらに高まる。
このような構造があるので、税率引き上げ幅をいくら増やしても、増税直後には歳出と歳入のギャップが縮まっても、いずれは増税分が飲み込まれてしまうのである。
次のページ>>消費税の「目的税化」は際限のない負担増をもたらす恐れがある
「伸び率の差」という問題は、「社会保障と税の一体改革」の本質にかかわる問題を含んでいる。それは、「消費税の目的税化」という点と重大なかかわりがある。
まず、「消費税の目的税化」というだけでは、何の意味もない空虚なスローガンであることに注意しよう。なぜなら、消費税収入の総額は、社会保障費 に対して遥かに少ないからである。2010年度予算では、一般会計歳入中の消費税収入は9.6兆円であり、地方交付税を除くと6.8兆円に過ぎない。これ に対して、基礎年金、老人医療、介護の3経費の合計は16.6兆円である。
したがって、「税による増収分は3経費に充てている」という説明は、消費税増税額のうち地方交付税に充てる部分が10兆円を超えるまでは、何ら特 別の措置を講じることなく、達成できる。つまり、「消費税の目的税化」というスローガンは、予算編成に何の違いももたらさないのである。その意味で、これ は空虚なスローガンだ。
違いが生じるのは、このスローガンが「3経費の全額、またはかなりの部分は、消費税によって賄われるべきである」と解釈される場合だ。その場合には、まず、消費税増税額が10兆円になるまでは、増税が正当化されることになる。
そして3経費の合計が消費税だけで賄われることとなった後の時点では、「伸び率の差」が重要な意味を持つことになる。なぜなら、3経費の伸び率 は、消費税の伸び率よりは高いからだ。したがって、消費税の自動的な増税が行なわれることとなり、際限のない負担増がもたらされる恐れがある。これは、 「租税法律主義」という財政民主主義の基幹を揺るがしかねない重大な問題だ。
この点については、これまでも何度も述べた(例えば、『日本を破滅から救うための経済学』第5章の2)。しかし、きわめて重要な問題なので、ここで改めて指摘しておきたい。
事業仕分けでは無駄の排除はできない
歳出削減の必要性はつねに言われていた。そして、無駄の排除が必要と叫ばれた。
このために、「事業仕分け作業」が行われ、関心が集まった。しかし、重要なのは、「仕分けの場に何を持ち出すか」なのだ。実際に選定を行なったの は、財務省主計局だ。つまり、これまで行なわれたことは、従来の予算編成作業から一歩も踏み出していない。単に、そのプロセスの一部を劇場化しただけであ る。
とくに重要なのは、ここには、社会保障制度の見直しも、地方交付税制度の見直しも持ち出されなかったことだ。つまり、事業仕分けが対象とした経費は、最大限に拡大しても(一般会計歳出では)上記の25.3兆円である。
次のページ>>ほとんど進捗しない公務員の人件費削減
ところが、民主党は、当初、16.8兆円の「無駄の排除」が可能だとしていた。これは、25.3兆円の約3分の2にあたる。
このような大規模な削減が、容易に達成できるはずはない。実際、事業仕分けで削減された歳出額は、3000億円程度であった。
16.8兆円の財源ねん出という目的は、もともと達成が不可能な夢想事だったとしか言いようがない。現在の日本の財政は、このような仕掛けで処理できる範囲を遥かに超えているのだ。
もちろん、これは、「無駄の排除が必要ない」ということではない。無駄の排除は大変重要な課題だ。
ただし、「無駄をどのように探し出すか」という方法を明確にしなければ、無意味なメッセージである。それなしでは、いくら「経費の削減」を叫んでも、建設的な議論にはならない。それは、他の対応手段を取らないことの言い訳にしかならないのだ。
ほとんど進捗しない公務員の人件費削減
削減の対象としてしばしば言われるのは、公務員給与の削減である。自民党内閣時代の2005年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」では、2010年度までに、公務員を5%(およそ1万6600人)以上削減し、それによって総人件費を減らすという目標が掲げられた。【図表1】に示すのは、このときの資料である。しかし、成果を挙げずに、政権が交代した。
民主党は、2009年衆議院選挙におけるマニフェストで、柱の一つとして「2013年度までの国家公務員総人件費2割削減」を掲げた。人事院勧告 制度見直しによる給与引き下げと、大幅な人員削減、退職手当の見直し、出先機関の地方移管などを組み合わせて、総人件費を削減しようというものだ。 2009年度の総人件費は5兆3195億円であったから、要削減額は1兆1000億円になる。
しかし、実際の削減状況は、これには遥かに及ばない。10年度の総人件費は、1400億円減の5兆1795億円、11年度は1590億円減の5兆1605億円だ。09年度予算比では、約3%減にとどまっている。残り2年間で公約を達成するのは、ほぼ不可能な状況だ。
民主党は、マニフェスト見直し作業を進める予定だが、「公務員給与2割削減」も修正対象になる可能性がある。
なお、みんなの党は、「国家公務員10万人削減、給与2割カット」「国会議員は衆院300、参院100の計400に削減」を標榜している。
http://moneyzine.jp/article/detail/194150
日本経済に生じている問題にフォーカス!
「格付け会社を信じるな」は本当か 日本国債が市場から締め出されるリスク
第55回課長 今調査役
2011年02月16日 10:00
格付けの影響を理解しよう
1月27日、S&Pが日本国債の格付けをAAからAA−へ引き下げました。国債の格付けが引き下げられたにも関わらず、日本の金利は低下、円は上昇しました。格下げはどのような影響を与えるのでしょうか?
民間格付け会社が発行する安全基準
格付けとは、民間の格付け会社が発行する債券の安全性の基準です。格付け会社として、グローバル基準では米系の3社(S&P、ムーディーズ、フィッチ)、日本では米系の3社に加えて日系の2社(R&I、JCR)が主に市場で参照されています。
格付け会社は手数料を得て債券の安全性について審査を行い、AAA(一番安全)などの格付けを付与します。投資家や証券会社はその格付けを使用し、商品開発や投資を行っています。
格付けの使われ方
民間会社の発行する「格付け」は、どのような使い方をされているのでしょうか?
まず一番目の使われ方は、いわゆる投資適格債券の「足切り」としての使われ方です。シティバンクやバークレイズキャピタル証券などが提供している債券インデックスでは、米系格付け会社によるBBB−という格付けが足切りとして設定されています。
BBB−という足切りラインから格下げされた債券は、ジャンク債として取引され、一般的な債券市場から締め出されてしまいます。
実際、ギリシャ国債は格下げにより、国債の債券市場より締め出された状態になっています。証券会社側も投資家側も格付けを足切りとして使っているため、格付けがある一定水準を下回った瞬間、事実上取引停止に陥ることがあります。
次に、ポートフォリオのリスク管理としての使われ方です。銀行資産の債券ポートフォリオ、取引先の与信管理など様々です。その中でもとりわけ影響力の大きいのは、国際的に活動を行う銀行資産ポートフォリオに対するリスク管理規制、いわゆるBIS規制です。
BIS規制では、金融機関に高格付けの債券または国債を始めとする政府系機関の債券を多く保有するよう求めています。国境をまたいで活動を行う金融機関が リスクを取りすぎて経営危機に陥るのを未然に防ぐのが本来の趣旨ですが、そのプロセスに格付けが大きな影響力を持っています。
格下げは、格付けをリスク管理に使用しているポートフォリオの質の悪化を意味します。格下げされた会社の与信は絞られます。そしてその債券を保有していた銀行の債券ポートフォリオの質は劣化し、資本を傷めます。
サブプライム危機とは何だったか?
サブプライム危機とは何だったか、格付け会社との関係を整理してみましょう。
2000年代、BIS規制のため金融機関は常に利回りと共に債券ポートフォリオの質を求められました。そこに登場したのが格付けはAAAでかつ高利回りのサブプライム証券です。(次ページへ続く)
金融機関、機関投資家はサブプライム証券を数百兆円の単位で買い込みました。何と言っても、高格付け、高利回りなので、この債券を買わない理由はありませんでした。
米系格付け会社はこれらサブプライム証券にAAAの格付けを付与しました。理由は簡単で、その当時、米国は不動産神話に沸きかえっていたからです。大恐慌以来米国の不動産価格は一時期を除いて上昇し続けていました。
日本でいう70年代から80年代後半の状況です。サブプライム証券の裏にあるサブプライム・ローンも延滞することなく返済されました。
「サ ブプライム証券は危ないのか」「不動産神話が崩壊したらどうする」などの議論は米国でも行われましたが、あくまでも小さなリスクシナリオの1つで、サブプ ライム証券のAAA格付けを否定するだけの、「統計的な裏付け材料」はありませんでした。この当時、サブプライム証券よりもさらに奇怪なCPDOというク レジット商品でさえ、同じ理由でAAAの格付けを付与されて販売されていました。
当時の格付け会社のAAAという評価について、さまざまな意見が事後的に挙げられています。「格付け会社が証券会社と結託し、格付けを甘くした」と大きく報道もされました。
その一面もありますが、それよりも何十年も続いた不動産神話が格付け会社だけでなく、米国全体に浸透していたことがAAA格付けの一番大きな要因であったと考えています。
結果としてAAAの格付けは間違いだったと後で分かりましたが、あの当時それを間違いだと言える人も材料も世の中に存在しませんでした。
不動産神話が崩壊して何が起きたか?
2006年後半より下落を開始した不動産価格は、2007年にサブプライム証券に影響を与えました。住宅価格の下落によりサブプライム・ローンの延滞率が急増したため、格付け会社は格付けを引き下げた、というより、正確に言えば格付けを見失いました。
急増するサブプライム・ローン延滞に関するデータが全くなかったため、リスクの判定が出来なくなりました。その結果、数百兆円あったサブプライム証券価格 は紙屑同然へ暴落、格付けもAAAから一気に格下げされ、それらを保有していた金融機関の資本を毀損し、世界がひっくり返るくらいの影響を与えました。
その後は、米国政府の不動産市場へのサポートなどもあり、サブプライム・ローンの延滞率が安定、格付け会社のサブプライム証券に関するリスク判定能力も復活、サブプライム証券の価格も回復しました。
格付け会社の評判は?
格付け会社は、手数料ほしさに格付けを甘くしたとの非難を受け、営業部門と審査部門の分離、社債の格付けとサブプライム証券等証券化商品の格付けの分離など、さまざまな改善策をとってきました。
今回日本国債の格付けを引き下げたS&Pや、その他の格付け会社の評判はどうなっているのでしょうか?実は彼らが格付けを付与する社債、国債、証券化 商品の3種類の商品のうち、証券化商品の格付けは評判を落としましたが、前者2つの格付けはまだまだ信憑性が高いままです。S&Pは毎年日本の国 債についてコメントを発信し、その信頼を保ち続けています。格付けシステムは生きて存続しており、S&Pはその一部分として大きな地位を占めてい ます。
ただ一つ注意すべき点は、格付け会社の経営姿勢です。サブプライム危機は、格付け会社の経営姿勢と格 付けを、より保守的なものに変えさせた可能性があります。日本は巨額の対外債権を保有する国であり、歴史上参考にできる事例がないため、今後の格付けの見 通しは極めて不透明ですが、従来より保守的に、早めに引き下げられる可能性があるため、その動向に注意が必要となります。
日本の格下げと今後のシナリオ
日本の格下げが今後どのように進展していくかを考えてみましょう。
あまり報道されていませんが、政府機関、都道府県、電力会社などが、S&Pの格下げと同時に格下げされました。万が一格付け会社が、財政赤字と政治に焦点 を絞り、保守的に評価することで格付けを引き下げ続けることになれば、日本国債とこれら政府系機関は、間もなく国際金融市場から締め出されます。国債は国 内で消化出来たとしても、日本企業が海外と取引を行う際、ペナルティが科されるようになります。いわゆる「ジャパン・プレミアム」の再来です。
日本国債を大量に保有する都銀も、ある時点で格下げされ国際競争能力を失うことになります。格付けというシステムの影響で、金融機関、政府、企業が国際金 融市場から排除され、ドルの調達のために海外から債権回収を始める必要に迫られます。大企業は格下げを避けるため、何らかの行動をとると考えられます。
日本は世界一の債権国であり、日本国債の将来がどうなるかについて様々な意見があります。格付けというシステムは、そんな日本の国債を紙屑にし、世界経済に甚大な影響を与えるトリガーの一つだと考えています。
格下げを防ぎ財政再建を実行できる強い政府が必要
一方足元では、日本円よりもドルやユーロなど他の通貨の方が明確なリスクを抱えているため、その結果として円高が進行しました。しかし、機軸通貨で格付け会社の属する米国、財政赤字削減の傷みに取り組むユーロと英国に比べ、日本の政治と財政赤字に対する理解と取り組みは極端に見劣りして見えます。
国際金融市場で活動している国である限り、その番人である格付け会社の顔色を無視するのは得策ではありません。どこの政党や連立政権でもかまいません。格 下げを防ぎ、財政再建、税制改革などを含め、日本が少なくとも今後30年存続できるシステムを構築出来る政治体制を切望しています。
【関連記事】
・「日本円は間違いなく紙屑になる」 格下げの恐ろしさを理解できない日本の政治家
・まだまだあぶない世界経済 米中「2つの暴走機関車」が抱えるリスク
・2011年の世界経済を大胆予想 中国バブル終焉、北朝鮮崩壊、そして日本売り
・政治と経済の危うい関係 世界経済回復に立ちはだかる人々
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。