http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/135.html
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「交易条件の悪化(安売り、高値買)により、GDPと国民の実質生活水準を低下させている」
という主張は妥当だろう。
ただしそれは
「よい商品を高く売らずに、コストダウンで競争力を高めようという発想は、一国全体にデフレ・バイアスを蔓延させた」のが本質的な原因ではなく、これだけでは全然解決策も出てこない。
実際は
「高く売りたくても、日本の多くの比較優位財(ITや、いわゆるハイテク産業、自動車など)は既に世界市場で絶対優位を失ってしまった=>国内での投資は減少し、さらに優位性はなくなりつつある」結果だろう。
また海に孤立した大国である日本の輸出依存度の低さは既に有名な話であり、タイトルもややミスリーディングな感じがある。
ありきたりな話だが、交易条件悪化防止や生活水準維持のためには、
常に先端投資を怠らずに、新たな分野に進出し、機能や付加価値を生み出し、追いつかれる前に先に進む、
知的所有権なども確保しておくが、新興国では、あまり期待しない
その一方で、欧州の高級ブランド品のように生み出したブランド価値を絶えず磨き、安売りせずに頑張る
そしてそれは輸出産業だけではなく、規制で守られてきた国内産業でも例外なく行い、新たなドル箱企業の登場を促す
くらいしか思いつかないが、他人の税金に依存せず全ての産業で頑張ってもらいたいものだ
http://diamond.jp/articles/-/11154/votes
経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第11回】 2011年2月16日
熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田創,森田京平 [バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト]
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「日本=貿易立国」論への疑問〜なぜ、安く売って高く買うのか?――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト
日本の輸出依存度は上から58番目
本当は貿易だけで食べて行けない?
日本は貿易立国だと信じられている。本当に、日本は貿易だけで食べて行けているのだろうか。
こうした話をすると、「輸出主導の景気回復」とか、「日本の活路はグローバル化」と言うではないかと反論する人はいるだろう。筆者もそれは否定しない。製造業は、好調な中国経済の恩恵を受けられるように輸出に力を入れて、収益確保を果たすことが望ましい。
一方、輸出だけで日本経済全体が経済成長を果たせるかというと、それは輸出を過大評価し過ぎている。
なぜならば、日本の輸出依存度は、他国に比べてそれほどウエイトが大きくなく、牽引役としての限界があるからだ。国内総生産に占める輸出の割合(名目値)がどのくらいかを各国別に調べてみよう。
筆者が集めた70ヵ国のデータで比較すると、日本の輸出依存度の順位は58番目と低い(図表1参照)。実は、米国は日本よりも輸出依存度が低くて 67番目。日本は、輸出依存度が高くなく、かつ米国のように内需拡大で景気を牽引していける国とも違う。日本は、外需をテコにして内需を拡大させるしか、 本格的回復に道筋がないところが悩ましい。
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「日本=貿易立国」は過大評価か?
輸出は値引きをして、輸入は値上げされる
日本が貿易立国であるという過大評価ができた理由には、GDPを実質値で見る習慣にも原因がある。貿易収支について、GDP統計の中身を確認してみると、純輸出(財・サービス収支の黒字)はリーマンショックで落ち込むまでは大きく増加していた(図表2参照)。
次のページ>>値引き輸出と値上げ輸入の日本に、「貿易立国」は過大評価?
しかし、純輸出の状況を名目値で見ると、先の実質値との間に非常に大きなギャップが生じている。名目値で見ると、純輸出のピークは当の昔に過ぎていて、最近は循環的な波動を描きながら漸減している。
エコノミストの話は往々にして実質値の伸びをことさらに強調しがちだが、生身の人間は、名目値の中で暮らしている。輸出が稼ぎ出す所得額の大きさ は絶対値としてそれほど大きくはない。貿易黒字の名目値が増えていないことを知れば、かつて激しかった米国との貿易摩擦がすっかり影を潜めたこともうなず ける。
この問題の根が深いのは、テクニカルな統計上の区分の話ではなく、所得形成の利害得失に大きな問題が生じていることである。貿易収支を輸出と輸入 の片道に分けて、さらに輸出入をそれぞれ名目・実質に分けて実数の推移を見てみると、輸出と輸入には大きなギャップが生じている。
すなわち、輸出は、名目輸出よりも実質輸出が上回って伸びて、逆に実質輸入は名目輸入を下回っている(図表3参照)。
これは、輸出側では電気機械などが輸出品のプライスダウンをするために、「価格×数量=売り上げ」で見て、数量増ほどは売り上げが伸びにないこと が原因である。日本の輸出品目の7割を占めている自動車・電気機械・工作機械などの加工業種は、コストダウンによって競争力を発揮する。
一方、輸入側では、食料・原材料・鉱物性燃料が国際商品市況の高騰によって価格上昇し、輸入数量を増やせないまま、輸入金額だけが大きく膨らんでいる。そのため、輸入は名目GDPよりも実質GDPが大きく下回るような状況になっている。
つまり、日本は輸出では製品を安く売り、輸入では原材料などを高く買っていることになっており、全体の採算性は悪化していることを意味する。
次のページ>>日本は「交易損失」が拡大しやすく、採算はむしろ悪化している
交易全体としての採算は悪化?
日本は交易損失が拡大しやすい体質
原材料が高騰しても輸出価格を引き上げないと実入りが少なくなるのは、ある意味、当然である。しかし、このことはGDP統計の実質値を見ていると実感しにくい。
通常使っている実質GDPは、生産量であって、購買力の指標ではないからだ。
むしろ、購買力の視点で、1単位の輸出品を売って、どのくらいの輸入品の数量を購入できるかという指標、つまり交易条件を計算し、それを実質GDPから差し引かなくてはいけない(図表4参照)。その値は、国民総所得(GDI)という。
このGDIに注目すると、最近の交易条件は著しく悪化して、ほとんど経済成長の伸び代が頭打ちになっている。2010年10-12月の交易損失 は、▲21.8兆円(季節調整値)で、対実質GDP比▲4.0%にも達する。純輸出が実質ベースで26.6兆円なので、交易損失は純輸出の約8割になる。
なぜ、こんな矛盾が起こるのかと言えば、日本の輸出のスタイルに値引きモデルの色彩が濃いからである。輸出産業は、円高になると以前に増してコストダウンに邁進せず、良い製品は値上げするという対応を採れば、円高にも強い体質ができるのに、そうはなっていない。
この問題は、輸出産業のみならず、国内非製造業にも及んでいる。国内には、良い製品、優れた人材、価値のある資産があるのに、その取引価格には十分に反映されなかった。
よい商品を高く売らずに、コストダウンで競争力を高めようという発想は、一国全体にデフレ・バイアスを蔓延させたと考えられる。右肩上がりで経済が成長するときには、数量増で収益が稼げるが、少なくとも日本国内でそうした時代は過ぎ去った。
今後、世界中の資源価格がエネルギー多消費型の新興国の成長によって高騰していくと、日本の交易損失は膨らみやすくなる。日本の貿易構造を変革していかないと、交易損失が国内所得を蝕んでいく脆弱さを引きずってしまう。
質問1 これまで、日本は貿易に依存した国だと思っていた?
68.5%
思っていた
24.7%
思っていなかった
6%
どちらなのかわからなかった
0.8%
その他
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