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一般人が金融商品への投資で何とかなるものでもないが、ちゃんと勉強しないよりはした方がいい程度だな
いずれにせよ自己投資が、一番重要だ
Q:1151 個人が政府に頼らずに生きるためにもっとも必要なものは?
□真壁昭夫 :信州大学経済学部教授
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■■ 編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■
Q:1150への回答ありがとうございました。先週も書きましたが、消費税率を
相応に上げることで劇的に社会保障のサービスが向上するのではなく、現状をとりあ
えず維持できる程度と理解して以来、気が抜けたような、白けた気分が続いています。
今、国民の大半は消費税率のアップに理解を示していると言われています。しかし、
現状を維持するためと正確に把握した上で国民は理解を示しているのでしょうか。こ
れまで以上にお金を政府に納めるのだから、代わりに何かいいことがあるに違いない
と、漠然とイメージしている気がします。年金支給額が増えるとか、産科が充実する
とか、保育所が増えるとか、そういった何らかのはっきりとしたメリットです。
わたしたちは、良い結果が待っているはずだというポジティブな予想ができるとき
に、リスクを伴った変化を受け入れる傾向があります。たとえ消費税を10%に上げ
ても、国民にとって劇的なメリットはないとわかってから、菅総理のとぼけた顔を見
るのがさらにいやになりました。何をどうしたいのかが不明で、できる限り長く政権
を維持したいという意志だけを感じるという意味では、往生際が悪かったエジプトの
ムバラクに共通しているものがあると思いました。政府は、政府にできることとでき
ないことを、まず率直に告げるべきだと思いますが、きっとそんなことはしないで
しょう。我慢してくださいというだけでメリットを示せないために、人気がさらに下
降するのが目に見えているからです。
わたしはこれまでのような政府批判はもう止めようかと考えたりしています。具体
的に何をやるのかわからない政府に対しては、具体的な批判のしようもありません。
もともと、政府に頼るのはリスクがあるという考え方で、たとえば『13歳のハロー
ワーク』のような本を作ってきたわけですが、政治家の考えの甘さや、制度の不備を
指摘しても何も変わらないという思いがさらに強まりました。新しいニヒリズムが台
頭するような気がします。
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■今回の質問【Q:1151】
現在の日本では、「政府には頼らない」という姿勢は重要だと思われます。かなり
曖昧な質問になってしまいますが、個人が政府に頼らずに生きるために、もっとも必
要とされるものは何なのでしょうか。
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村上龍
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■ 真壁昭夫 :信州大学経済学部教授
「その国の政治が頼りないと思えば、企業は海外に出ていけるが、個人にはそれがで
きない」。友人の一人が、そう嘆いていました。その通りかもしれません。もちろん、
企業でも事業リスクやカルチャー等の問題があり、海外に完全に移ってしまうことは
容易ではないでしょうが、それでも、より有利な事業展開の場所を選択することはで
きます。また、国の政治との関わり合いを低下させることはある程度できるでしょう。
一方、個人の場合には、海外との多くの接点を持っている例外的なケースを除くと、
政府が頼りないからと言って、企業の様に簡単に海外に出ていくことは難しいと思い
ます。ということは、政府の政策と完全に決別するために、海外に出ていくという選
択肢はあまり現実的ではないでしょう。国内にいる限り、原則として、政府が作った
様々な仕組みの中に組み入れられることを拒むことはできません。ということは、政
府との関わりを完全に断ち切ることはできないことになります。
そうすると、現実的な手法として、各個人は、何か困ったことが起きたり、困るよ
うなことが予見されるようなケースについて、あらかじめ自分の身を守る手段を講じ
ておくことが重要だと思います。ただ、自分の身を守るという場合には色々な観点が
あるので、ここでは、取り敢えず、経済的な観点に絞って考えます。
最初に思いつくのは、年金、介護、医療などの社会保障制度だと思います。現在、
私たち国民は、国が定めた負担を担っています。そのため、現行の制度が継続されて
いる間は、負担の対価としてのベネフィットを享受すればよいことになります。つま
り、その限りにおいて、困ってしまう状況に追い込まれることは少ないはずです。と
ころが、今後、制度が変更になることが想定されます、というよりも、制度変更が行
われる可能性は極めて高いと言わざるを得ないでしょう。
そうすると、そうした制度変更に備えて、個人としてリスク管理をする必要があり
ます。具体的には、変更が起きる可能性と、それが実際に起きた時、どれだけの負担
が増加するかを事前に考えておくことになります。その時、最も大切なことは、将来、
何かが起きるというリスクに対する、しっかりした意識を持つことだと思います。
ただ、おそらく、わが国の多くの人々は、社会保障制度が現行のままで継続される
と考えている人は少数派ではないでしょうか。つまり、多くの人々は、「その内、社
会保障制度が変更になる」という意識を持っていると思います。そうであれば、最も
大切なことは、リスクに備えて、経済的蓄積をつくることになります。経済的な蓄積
をつくるためには、お金を有効に増やす方法=投資に関する知識が必要になるように
思います。
今まで、わが国では、投資に関する一般的な教育が遅れているとの指摘がありまし
た。学校教育の中では、投資に関するカリキュラムは殆どありません。仮にあったと
しても、あまり実践的な知識が身につくような内容ではなかったと思います。その意
味では、私たちは自分で、投資に関する基礎的な知識を身に着けることも考えるべき
かもしれません。
わが国の債務残高は、先進国の中でも傑出して多くなっています。今のところ、国
内の個人金融資産が潤沢にあるため、国債の消化には大きな問題は出ていません。し
かし、つい最近、海外の格付け会社がわが国の国債の格付けを引き下げました。菅首
相がそれに対する見解を求められたとき、「そういう問題には疎い」という答えをし
ているくらいですから、将来、わが国の国債の価格が大きく下落する可能性を完全に
否定することはできません。
仮に、そのような事態が起きるときには、わが国の経済にかなり大きな変動が起き
ることは避けられないでしょう。著名ファンドマネジャーの一人は、「そうしたリス
クを勘案して、金融機関の株式を一切保有しない」と明言していました。参考になる
かも知れません。
信州大学経済学部教授:真壁昭夫
Q:1150 「高負担・高福祉」という時の「高負担」とは?
◇回答
□山崎元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
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■今回の質問【Q:1150】
「高負担・高福祉」か「低負担・低福祉」か、国民は選択すべき、というような指摘
をよく見かけます。「高負担」とは、だいたいどのくらいの、またどのよう形の負担
なのでしょうか。
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村上龍
■ 山崎元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
国民の「負担」は、租税と社会保険料の合計の国民所得に対する比率である「国民
負担率」で比較されることが一般的です。財務省のホームページで、金融危機前の2
007年のデータに基づく先進国と日本との比較では、日本の39.5%に対して、
アメリカが34.9%、イギリスは48.3%、ドイツは52.4%、フランスは6
1.2%、スウェーデンは64.8%となっています。
大雑把にいって、負担率4割ないしそれ以下なら「低負担」、5割前後なら「中負
担」、6割前後なら「高負担」といっていいのではないでしょうか。日本は支出面で
は中負担レベルにあり、現在の福祉水準を大きく変えないとすれば、将来の長期的な
平均像の下では、税金ないし、社会保険料の増額が必要です。
行政の効率改善が必要であることは当然として、それとは別の問題として、「低負
担・低福祉」「中負担・中福祉」「高負担・高福祉」の何れかの水準を、それぞれの
国の国民は選ぶ必要があります。
ここで、財政収支は、毎年均衡しなければならないというものではなく、経済状況
によっては、赤字であることが自然且つ必要でしょうし、別の経済状況になれば、収
支を大幅に黒字化することが適当になります。現実的な政治と行政のプロセスを見て
いると、財政は歳入・歳出共にかなり硬直的で、ある程度は、この硬直性を考慮する
必要がありますが、現在直ぐに増税による財政収支の改善が必要だとか、逆に、将来
もずっと財政収支が黒字にできないかのような議論は不適切でしょう。
ところで、「負担」ということについては、経費的な支出に対する負担と、移転的
な支出への負担について区別をすることが重要ではないでしょうか。
仮に、日本の負担と支出が中負担・中福祉で、国民負担率50%で均衡していると
しましょう。ここで、支出のうち、年金や生活保護、子ども手当のような、政府を通
じて国民間で富を移転するような支出が国民所得の30%で、公務員の給与、公共事
業、防衛などの経費的支出が20%なのと、移転的支出が20%、経費的支出が30
%なのとでは、かなり意味が違うように思います。
移転的な支出は国民の間で富を実質的に移転する再配分の支出であり、最終的なお
金の使い道は、再分配後の国民が決定します。一方、経費的な支出は政治家と官僚が
支出先の決定に深く関わっています。両者の区別は完全で排他的ななものではなく、
たとえば、教育費などは教育の制度によって経費的な側面もあれば、移転的な側面も
あるでしょう。しかし、お金の使い道の最終的な決定者が個々の国民なのか、政治や
行政なのかの区別は重要であり、先の例では、経費的な支出が国民所得の20%の政
府の方が、経費的な支出30%の政府よりも明らかに「小さな政府」だといえるで
しょう。
私は、移転的な支出は広義の「社会的な保険」であり、セーフティーネットでもあ
るので、充実していてもいいように思いますが、経費的な支出の拡大は「大きな政府」
とこれにともなう非効率及び癒着の拡大につながる公算が大きいので警戒すべきだと
考えています。年金、医療保険、子ども手当、生活保護などは、制度の改善は必要で
すが、一種の保険として充実させてもいいものでしょう。他方、経費的支出には、公
務員の人件費をはじめとして縮減すべき支出がまだまだあると思います。
先般、名古屋市長選、愛知県知事選で、地方税の減税と必然的に議員や公務員の報
酬のカットを掲げる河村たかし名古屋市長の陣営が圧倒的に大勝しました。この背景
には、たとえば、名古屋市役所の報酬はトヨタよりも高い、といわれるような公務員
の厚遇に対する住民の反発があるように思います(たとえばプレジデントロイターの
ホームページの「トヨタさえ上回る!? 名古屋市役所の高給」という記事をご参照
下さい)。
( http://president.jp.reuters.com/article/2009/10/02/24D25F94-A9A9-11DE-842F-0D193F99CD51.php )
国のレベルでも、経費的な支出、特に、公務員の人件費に手を着けずに、消費税率
の引き上げだけを通そうとすると、間違いなく国民の大反発を買うのではないでしょ
うか。与謝野経済相が、氏の宿願である消費税率引き上げを実現するためには、公務
員の給与を大きく引き下げるのが早道だと思います。
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元
( http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/ )
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■ 中空麻奈 :BNPパリバ証券クレジット調査部長
まず、“高福祉”から考えてみます。
以前テレビのクイズ番組でスウェーデンでは赤ちゃんが生まれると、ベビーベッド
から紙おむつ、ミルクなどあらゆるものの支給があり、それがパックになって、市役
所等が配っているというのを見たことがあります。赤ちゃんが生まれるときは、準備
本を購入して必要なものを集めるのが普通なので、市役所等が集めて支給してくれる
なら、そんな楽なことはないなぁと漫然と眺めていたことを覚えています(ただ、今
回の質問に対して答えるにあたり、調べてみたのですが、本当かどうかを調べられま
せんでした。事実かどうかの確認はですのでありません)。
要は、国民に対する高福祉が行き届いている場合には、赤ちゃんのときから、必要
以上(と思える)の保障があるということなのでしょう。小学校から大学まで学費は
無料、19歳以下は医療も無料、年金最低保証額は国民全体に支払われる、となれば、
高福祉国家とはこれだけのサービスが用意されるのだと、その片鱗が見えてくるとい
うものです。またデンマークでも、スウェーデンと同等の子供に対する福祉から高齢
者福祉、低所得者に対する住宅手当など各種助成金制度など、至れり尽くせりの状況
のようです。
こうした高福祉を実現するための“高負担”は、やはり国民負担率から見るしかあ
りません。財務省HPに国民負担率の一覧表が出ています(OECD30か国に対す
る一覧表)。2008年平均で見たものでは、30か国のうち、ベスト10が以下の
とおり。
1位 デンマーク69.9%(社会保障負担率2.6%、租税負担率67.3%)
2位 ルクセンブルグ66.6%(同20%、46.7%)
3位 アイスランド66.6%(同5.1%、60.9%)
4位 ハンガリー63.6%(同21.4%、42.1%)
5位 ベルギー63.4%(同22%、41.3%)
6位 イタリア62.7%(同19.8%、42.9%)
7位 オーストリア61.4%(同22%、39.4%)
8位 フランス61.1%(同24.3%、36.8%)
9位 フィンランド59.3%(同16.7%、42.6%)
10位 スウェーデン59.0%(同12.1%、46.9%)
日本はというと、38.6%(同16.4%、22.2%)となっており、国民負担率だけで見
ると、やはり高負担国との差はあると言えそうです。
ただし、こうした国民負担率が高ければ高福祉国かと言うと、そうでもないと言え
ます。アイスランドなどは、法人税を低くし、国際競争力の高い法人を呼び込もうと
する戦略の上で、国民負担率が高いという側面がうかがえますし、イタリアなどは障
害者福祉で発達しているという話を聞きますが、福祉国家であるがゆえに債務が増え
たという話ではない気がします。そこで、典型的高福祉国家として北欧をモデルとし
てとらえると、国民負担率で60%から70%程度です。よって、60%超というと
ころが、“高負担”の域に入ることを示す水準のようなものと見ていいのではないで
しょうか。
次にどのような形の負担かというと、意外なことに、デンマークもスウェーデンも、
社会保障負担率はそれ程高くなく、租税負担率で足りない部分を埋めていることがわ
かります。どのような形の負担とするかを考えると、必ずしも社会保障負担率で賄わ
なくてもいいということになるでしょう。目下日本でも、消費税を社会保障目的税と
するなどといったことが検討されていますが、そうした決めごとをしないでも、消費
税を高福祉に使うことは出来るはずです。
とはいえ、このところ同じような結論になってしまうのが心苦しいのですが、まず
我々自身が高福祉・高負担国家を目指したいのか、低福祉・低負担国家を目指したい
のか、それとも、中福祉・中負担国家を目指したいのか、のスタイルを決めていくこ
とが何よりも重要だということだと思います。仮に、60%の国民負担率に耐えるこ
とになれば、1000万円稼いでも、400万円しか自分のものにはならないわけで
すから。それでも高福祉を望むのかどうか、選ぶ必要があります。高福祉を選んだと
すれば、それはどれだけ反対があっても、負担比率を60%から70%までの範囲で
あげていく必要がある、というわけです。目標を高福祉国家にするのであれば、段階
的にでもそちらの方向に持って行き、望むべき姿に到達しなければいけません。その
覚悟ができないなら、福祉は最低限のところで耐えるしかありません。
高福祉・低負担国家を選択できるなら、こんな望ましい姿はないのですが、そんな
ムシのいい話は有り得ないことです。自分たちの将来と国の関わりについて、いつま
でも方針を決めないから、何か決めるたびに目先の圧力に負けて政策がぶれてしまう
ということに、もう既に皆気づいているはずです。
BNPパリバ証券クレジット調査部長:中空麻奈
MMホームページにて、過去のすべてのアーカイブが見られます。○○●
( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )
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