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米国原油流出事故と福島原発の教訓 セーフティーネットに代わるもの
2011.04.26(Tue) The Economist(英エコノミスト誌 2011年4月23日号)
技術の最先端では災害は起こらないと決めつけてはならない――いつか起こると想定すべきだ。
ハリバートン、「不安定なセメント」と知りながら使用継続 原油流出事故調査委
福島第1原発、上空からの最新映像 防衛省
1年前にメキシコ湾で起きた石油掘削基地の爆発・原油流出事故(上)と福島第一原子力発電所の事故(下)〔AFPBB News〕
技術は風船のようには膨らまない。技術によって自然を制する人間の力が全方向に均等に及ぶわけではない。
むしろ、その成長はウニに似ている。能力という長いトゲは特定のニーズや欲求を満たすべく、放射状に伸びていく。
一部のトゲは目もくらむほどの長さに成長し、かつては不可能とされていたことを可能にしている。
原子内部の構造を利用して何百万キロワット時もの電力を生み出したり、全長数キロにわたる細い送油管を地殻に通したりすることも可能になった。
しかし、トゲは脆く、1本1本が孤立している。
その1本が折れた時に――ちょうど1年前にメキシコ湾で起きた石油掘削施設ディープウォーター・ホライズンの原油流出事故や、3月の福島第一原子力発電所の事故のように――事態を改善するための技術は、事故を起こした技術のレベルにはどうしても及ばない。
大事故を防ぎ、対処を容易にするルール
その代わり、危機的状況となり、場当たり的な対策が施され、甚大な被害が残る。かつては地中深くから、または原子核内部から奇跡のような力を引き出し続けていたものは、有害で厄介で近づきがたい大混乱の原因となり、何カ月にわたって手の施しようのない状態を招く。
大事故を防ぐ、あるいはどこで問題が起きても容易に修復できるよう、トゲとトゲとの間隙を埋めておく方法は存在しない。しかし、このような脆い技術で問題が起きた際に、対処をより容易にするルールは存在する。
第1のルールは、このような技術に関わる企業は、たとえ日常業務が安全で間違いないように見えるとしても、やはり惨事は起こることを認めなければならないということだ。
ディープウォーター・ホライズンの事故が起こるまで、石油業界は長年、油井の先端の防噴装置がその名の通り原油の噴出を防いでくれることを前提として計画を立ててきた。
原子力業界は、福島で起こったような部分的な炉心溶融(メルトダウン)が起きる確率は過去の実績が示すよりも低いはずだと、常に自らに言い聞かせてきた。
第2のルールは、少なくともある程度広く応用できる修復改善技術を、必要になる前に開発しておくことだ。
メキシコ湾で操業する石油会社は、10億ドルをかけて原油漏れを起こした油井に蓋をするシステムを開発しているが、これは2年前、いや5年前に開発されていてもおかしくないものだった。
福島第1原発事故、深刻度最悪の「レベル7」に
原発にロボットが配備されていなかった(福島第一原子力発電所のがれき除去のために投入されたロボットを遠隔操作する作業員)〔AFPBB News〕
福島などの原子力発電所でも、人間が近付けない、あるいは近寄るべきでない場所にアクセスするためのロボットが、不思議なことに配備されていないようだ。
このような支援技術は常に役に立つわけではないが、役に立つこともある。
その場の判断による対策が必要な場合には、第3のルールの出番だ。ここでは状況を正しく理解することが何よりも価値を持つ。
報道によれば、米国エネルギー庁のスティーブン・チュー長官は、ディープウォーター・ホライズンの防噴装置からの情報を伝える計器がたった1つだと知って衝撃を受けたという。
安全性の自己証明
それも当然だろう。封じ込め装置や海底、さらには陸地から離れたあらゆる場所から情報を得るためのセンサーシステムは、広範囲にわたって多重化して配置する必要がある。
さらに、このセンサーシステムは関連する制御システムとは独立させておかなければならない。制御系が機能しない時でも(むしろ機能しない時にこそ)センサーシステムが必要になるからだ。
企業にこのようなルールを守らせるのは規制当局の仕事だが、そのこと自体が問題の源になる場合もある。
企業は、煩雑になる一方で費用がかさみ、義務が際限なく増えるばかりの規制に反発する可能性があるし、実際に反発するだろう。また、こうした義務が正当な場合とそうでない場合を判別するのも難しい。
拡大し続ける義務という課題に対処する方法の1つとして、「セーフティーケース」規制という考え方がある。
これはあらかじめ安全基準を定め、これに適合するよう企業に単純に求めるのではなく、起こり得るシナリオすべてにおいて安全を確保できるという筋の通った論証を企業自身に行わせ、その論証を審査にかけるというものだ。
セーフティーケースを採り入れる方法は広く普及しており、例えば1988年に167人の犠牲者を出したパイパー・アルファ油田爆発事故のような惨事が北海油田で再び起きるのを防ぐのに寄与している。
セーフティーケースは、あらゆる技術や場所に適しているとは言えない。ある程度長い期間にわたる関係性と規制側の専門知識が必要で、金融業界のように、システミックリスクがあり、規制対象となる企業以外にも被害が及ぶ場合にはうまくいかない。
想定外の事態を想定する
だが、セーフティーケースが最高に効果を発揮する場面では、規制当局と企業が対立することの良い面と、責任を共有することの良い面の両方が得られる。
企業が安全性維持の証明をするだけでなく、事故対応能力の証明もしておけば、効果はさらに高まる。つまり、高度に進んだ技術というトゲの隙間の未知の領域に踏み込んでしまった時の対応能力だ。想定外について想定することは、大いに役に立つのである。
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