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2011年4月25日夕刊から 金子勝
※『この国は壊れかけていると感ずるのは私だけであろうか!』・・・あなただけではない!
・・・以下、全文です。・・・
想定外なのか 『暴かれた無責任体質』
福島第1原発事故は、大量の放射性物質とともに、日本社会を支配する無責任体質を一気に噴出させた。事故に関する情報開示のあり方がそれを象徴している。悪い情報が隠され、小出しに情報が出される。そうしているうちに、どんどん状況が悪化してしまう。
検証しなければいけないことがたくさんある。津波による電源喪失が原因だとされているが、田中三彦「福島第一原発事故はけっして"想定外"ではない」 (「世界」5月号)によれば、原子力災害対策本部の「三・ニ七事故報告書」には「もっとも重要な地震発生当日(三月十一日)のデータが開示されていない」という。田中は、津波が来る前に、配管が地震で破損し冷却材が噴出する「冷却材喪矢事故」が起きていて、原発中枢構造の「耐震安全性の問題」があったのではないかと推測する。
それだけではない。1号機への海水注入は、原子炉圧力が異常値を示してからかなりの持間が経ってからだった。なぜ遅れたのか。また原子力安全委員会は、「風評被害」を埋由にSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワータシステム)のシミュレーションを10日以上も公表しなかった。被害が予想された福島県飯舘村や南相馬市が、後に計画避難区域に指定されたが、水素爆発後の3月15〜20日のデータも多くの地点で公表されていない。さらに、4月12日になって原子力安全・保安院が急に、事故の評価をレベル5からチェルノブイリ並みのレベル7にいきなり2段階引き上げた。だが、その経緯は明らかでない。
この間、東京電力も原子力安全・保安院も原子力学会も、この原発事故が「想定外」の大地震と津波のせいだとしてきた。
柳田邦男「想定外か?-問ねれる日本人の想像力」(「文芸春秋」5月号)は、いくつかの事例をあげて、それを批判する。まず「2009年6月、電力会社が実施した耐震性再評価の中間報告を検討する経済産業省の審議会」で、岡村行信委員(産業技術総合研究所活断層・地震研究センター長)が「869年の宮城県沖を震源とする「貞観地震口」を挙げるとともに、 「1500年頃にも、東北から関東を巨大津波が襲った痕跡があることを報告し、東電が原発の安全対策で、それらの大津波の危険度について全く触れていないのは納得できないと厳しく指摘した」。だが、報告書案では「「想定内」と書かれ、福島原発の耐震構造は今のままで問題なしとされた」。実際、「「貞観地震」の規模はM8.4と推定されている」が、「東京電力が原発沖で想定していた地震の規模はM7.9だった」。
つぎに「2006年衆議院内閣委員会で、吉井英勝委員(共産)が、原発で非常用電源が矢ねれた時にどういう事態になるかを質問したのに対し、当時の原子力安全委員長の鈴木篤之氏は『・・・他のプラントと融通するなど、多角的な対応を事業者に求めている』と答えて、安全性が確保されている事を強調した」と書く。
塩谷菖雄「末曾有の震災が暴いた末曾有の『原発無責任体制』」(Forsight電子版3月15日付)は、前記の事例以外にも、「より高い津波に見舞ねれた東北電力の女川原発は、3基の炉がすべてすんなり停止し、ずっと安定した冷却状態にある」事例をあげる。実際、女川原発は海面から約15メートルもの高さに建設されている。そして、2007年の中越沖地震による東電の柏崎刈羽原発事故が起きる前年に「原発の耐震指針は25年ぶりに改定されていた。(中略)しかし、東電は中越沖地震を起こした敷地の眼前にある断層を精査せず、実質的にバックチェックを怠っていた。原子力安全委員会
や原子力安全・保安院が、これを厳しくとがめたという話は聞かない」という。
「安全神話を吹聴した代償」(「週刊ダイヤモンド」4月16日号)は、こうした馴れ合いの背後に政官財の癒着構造があると指摘する。まず、天下りで「電力会社幹部には当然のように経済産業省出身者がいる」。次に、「政権交代前の2006〜08年に、自民党の政治資金団体「国民政冶協会」に献金していた(電力会社の)役員の一覧」を示す。そして、「経産省は保安院を通じて規制をかける一方で、同じ庁舎内の資源工ネルギー庁で振興策を打ち出した」。つまり、原発を推進する側もチェックする側も「仲間内」なのである。
メディアも例外ではない。内橋克人「巨大複合災害に思う 「原発安全神話」はいかにしてつくられたか?」(「世界」5月号)は、「電気事業連合会、略して電事連の行ってきた「報道統制」を思ねせるおびただしい資料がある」として、「週刊朝日」の「知ってますか? 試運転中六ケ所村再処理工場の切なさ」(06年6月30日号)に加えられた圧力を例示する。そして、「あらゆるメディアへの巨大スボンサーとして君臨するものの発する『抗議』の『ブラフ(脅し)効果』は計り知れないものがある」と述べ、かくして「『原発安全神話』が日本列島を被いつくすところとなった」という。
現在、ドイツ、イタリアなど次々と原発建設計画は凍結されつつあるが、日本は事故調査委員会さえできていない。この国は壊れかけていると感ずるのは私だけであろうか。
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