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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2459
同位体塩素38が意味すること
運転中だった3つの原子炉に加え、4つの使用済み燃料プール—合計7つの核燃料が、コントロール不能の化け物のように暴走し、いまだ冷温停止へのメドさえ立たない。
1ヵ所を抑えてもほかが危機を迎え、そちらに傾注するとまた別のところから緊急事態が発生する。チェルノブイリ事故ともスリーマイル事故とも違う「フクシマ」の大問題とは、この「7頭の化け物」なのである。
大規模な爆発を起こした3号機に集中的に放水した結果、炉心を低温・低圧力に保つことに成功したが、今度は1号機内の炉心温度が上がり始めた。さらに、定期点検中で休止していた4号機の使用済み燃料プールからも、大量の放射線が漏れている可能性がある。
東京電力幹部はこう話す。
「社内では、楽観視する雰囲気はまるでない。放射性物質の封じ込めには、『最低でも数ヵ月はかかるな』という会話が交わされています。正直言って、いつ頃ヤマを越えるのかも見当がつかない。官邸サイドからは、『福島第一を何が何でも止めろ』と言われているが、(放射)線量が高く、復旧作業には通常の何倍も時間がかかる」
そして、この幹部はこう続けた。
「タービン建屋内の排水が終わったら、電源復旧の決死隊≠ェ行くしかない。線量が高いのは承知のうえだから、人海戦術になる。ほかに方法がない。あったら教えてほしいくらいだ」
別の幹部からも、こう苦しい声が漏れる。
「(原子炉を)冷やすためには水を入れ続けなければいけないが、そうすると汚い水(汚染水)が出てきてしまう。難しい。いつ終わるか、全然分からない。現場の作業員、幹部も、肉体的な疲労以上に精神的に限界に達しつつある。悪夢を見ているようで、満足に仮眠もとれないようだ」
福島第一原発の現状について新聞、テレビなどの報道量は一時に比べかなり減ったが、状況が改善しているわけではない。元東芝の原子炉技術者・後藤政志氏はこう危惧している。
「いまは小康状態を保っているように見えますが、この状態を本当に維持できるのかどうか、心配する声が専門家の間で出ています。いまのように外から水を入れるだけで、圧力容器、格納容器の温度を維持できるのか。水素爆発の可能性も、まだあります。燃料の露出があれば、水素は出てきますし、それが酸素と反応すれば爆発する。すべての水素が出きったとは考えていません」
後藤氏の発言を裏付けるように、東京電力は4月6日深夜から、1号機に窒素ガスの注入を開始した。格納容器中の酸素の割合を相対的に減らすことによって、水素爆発を回避しようという狙いである。
アメリカの原発関連会社副社長を務めたアーノルド・ガンダーセン氏は公表された資料・写真から1号機、4号機について重要な指摘をしている。
「東京電力が発表したデータによると、1号機からはヨウ素131と、テルル129が検出されています。これは、1号機の炉内で核分裂の連鎖反応が起きている明白な証拠です。
その理由として考えられるのは、当初、炉を冷やすために入れた海水中に含まれた成分が、壊れた核燃料と反応し、小さな連鎖反応を起こしているということです。原発は地震の直後、制御棒が入って自動停止したのに、またひとりでに反応が起きているんです。
半減期が8日間と短いヨウ素が、1号機だけほかの10倍も検出されているのは1号機内で反応が起きているためでしょう。また、テルル129は連鎖反応が起きているときにしか、検出されない物質です」
ガンダーセン氏はもう一点、「同位体塩素38」が検出されていることにも注目する。これは自然界に存在しないが、海水に含まれる通常の塩素37が中性子を吸収することによって発生するという。つまり、はじめに原子炉内に注入した海水が核燃料と反応し、塩素38を発生させた可能性が極めて高い。
4号機の燃料も露出
これまでもっとも恐れられていたのは、連鎖的な核分裂反応が始まり、制御できなくなる「再臨界」状態に突入することだった。外部から水を入れ、冷却することで再臨界は避けられたと思われていたが、ガンダーセン氏によると、微弱な連鎖反応は1号機内ですでに起きている。
その結果、放射性ヨウ素が次々に生成され、外部に放出されている状態だという。
「牛乳も、海水も、ヨウ素が放出される限り長期間にわたって汚染され続ける。
それだけではありません。原子炉がひとりでに連鎖反応を起こし、熱を生み出すと、今後また爆発することもありえます」(ガンダーセン氏)
後藤氏同様ガンダーセン氏も、1号機が再度、水素爆発を起こす可能性に言及した。
ガンダーセン氏がいま、もうひとつ心配しているのは4号機である。
「東京電力が発表したデータを見ても、4号機に関する数字がありません。そのこと自体、とても怖い事実です。私が注目しているのは、東京電力が3月24日に撮影し、31日に公表した写真です。上から見ると、4号機の燃料プールがあるはずの部分には、使用済み燃料を納めたラックの上部が見える。つまり、4号機の使用済み燃料は一部、水中から出て露出しているんです。
さらに気になるのは、4号機は水素爆発で建物が大きく損壊し、建屋の上部だけでなく壁も破壊されていることです。おそらく、燃料プールの壁の一部が壊れ、上からいくら水を入れても溜まらずにこぼれてしまう状態になっているのだと思います。最悪の場合、4号機のプールから出火し、大量の放射線を撒き散らす可能性がある。アメリカのブルックヘブン国立研究所の警告のように、13万8000人ががんで亡くなる可能性があるという事態が、本当に起こるかもしれない。また、中性子は非常に計測が難しいので、作業に当たる職員が知らぬ間に被曝してしまっている可能性がある」
いま東京電力の現場部隊は、主に2号機の破損した格納容器から漏れ出した大量の汚染水の処理に躍起になっている。しかしその間も、1号機、4号機の恐怖はじわりじわりと進行中なのである。
格納容器の損傷
今後、事態を好転させるために、切り札となるような手立てはないのか。前出の東京電力幹部が、
「あればこちらが教えてほしい」
と自嘲するように、いま検討されている案はどれも一長一短である。
(1)ロボットを遠隔操作して放射線濃度の高いエリアで働かせる
(2)原発を薄い膜のような構造物で覆い、放射線の漏出・飛散を防ぐ
(3)原発の外部に新たに冷却装置を取り付ける
(4)以前日本が開発し、ロシアに供与した放射能汚染処理が可能な浮体構造物「すずらん」を汚染水の貯蔵に使う
このうち、(1)のロボットは4月6日に試運転が行われ、近日中に実際に使用する予定だという。ちなみに使用されるロボットのうちのひとつはアメリカのベンチャー企業「アイロボット」社製。同社は人気のお掃除ロボット「ルンバ」の開発元でもある。
「ロボットが使えるのは、瓦礫の除去や、消火・計測などの単純作業が中心で、電気配線の復旧などの複雑な細かい作業は熟練の作業員がやるしかない。そこはやっぱり決死隊≠ノなるんです」(東京電力社員)
(2)の原発を覆うテントのような構造物については、前出の後藤氏がこう評する。
「基本的にはできることはやったほうがいいと思いますが、(テントの)下のほう、地面と接する部分をどうやって閉じ込めるかなど、いろいろ難しいと思う」
ほかの専門家も、今後も水素の漏出が止まらなければ、テント内に水素が溜まり、爆発しやすくなると指摘している。
第一、テントの敷設工事をするにも十分に周辺の放射線濃度が下がっていなければ、その作業自体が「決死隊」になってしまう。
(3)の外部冷却装置案も同様で、新しい冷却装置を首尾よく短期間で準備できたとしても、それを炉心に取り付ける作業をするのはかなりの被曝を覚悟しなければできない。それでも東電内部には、
「津波で故障している可能性が高い内部冷却装置を修復するよりも、外部に新たに冷却装置を取り付けるほうが早いのではないか」
という声があるという。いずれにせよ、今後数ヵ月間冷却を続けて放射線の漏出量が十分に下がってからでないと、着手できる作業ではない。
(4)の「すずらん」は、ロシアから無償提供の申し出があるが、今後実際に福島での使用が決まっても、曳航するのにかなり時間がかかりそうだ。
いずれにせよ、長期戦は必至。このままの状態が続けば、今後どのような「不測の事態」が起こりうるのか。
大阪大学名誉教授・宮崎慶次氏は、圧力容器内にある制御棒管が損傷し、燃料が漏出することを危惧する。
「1号機は燃料の約7割が損傷していることが明らかになりました。炉内の上のほうにある燃料棒が溶けると、それがどさっと下に落ちて圧力容器の底に穴が開くんじゃないかと皆さん心配されていますが、構造上、そういうことにはならないと思います。
福島第一の場合、制御棒駆動機構と呼ばれる装置がある。落ちた燃料は、その装置に引っかかってしまうと思う。そうすると下側に水がある格好になるので、燃料が下部に溜まって圧力容器の下部が溶融して貫通するという『最悪の事態』には至らない。しかし、燃料棒を通す管がそれによって損傷を受けることはありうると思います」
後藤氏、ガンダーセン氏が指摘するように水素爆発が起きれば、今度は建屋ではなく、格納容器を大きく破損し、放射線の漏出が甚大なものになる可能性がある。
「東京電力が毎日、放射線の漏出量や、炉内の温度などのデータを公表していますが、それがどのような計器を使って、どのような手法でとられたものかわからないので、評価するのは難しい。計器が壊れている可能性もあるが、東京電力はなにも見解を言わないですから。
私が気にしているのは、圧力容器の外側にある格納容器の温度です。いまは圧力容器のほうばかり気にしているようですが、格納容器のほうも圧力、温度が上がって限界に達してしまう可能性があります。そこで水素爆発が起こると、格納容器が損傷し、非常に高濃度の放射能が漏れる。それがもっとも憂慮すべき事態だと思います」(前出・後藤氏)
現場ももう限界
解決への道筋やタイムスケジュールはいまだに描けていない一方、一歩間違えば重大事態に至る。ギリギリの綱渡りをしながら、長期戦を戦い抜くしかない。しかもその間、放射線の漏出は止めどなくつづく。
現場で働く東電社員たちは、莫大な作業量の前に茫然としているのが実情のようだ。
「水素と酸素のバランスをとるための予防的な窒素注入を6日間かけてやるが、注入によってかえって爆発を招く可能性さえある。そうなったら、作業を中断しなければいけない。
建屋にたまった汚染水を移し替えるタンクの設置もこれから。完全に除去するまでには、かなりの時間がかかる。いまはまだ時期を見通せない。現場で陣頭指揮に当たる吉田昌郎所長は、
『自衛隊や消防、協力会社さんとのコミュニケーションをとって、(放水など)一つ一つの仕事をしっかりとやってほしい』
と言っていますが、最近はさすがに疲労困憊しています。福島第一には500名前後がいて、人数的には以前より改善され、睡眠も取れるようになっているが、それぞれの被曝線量が基準をオーバーしないように管理する必要があり、放射線管理員が計測にてんてこまいになっている」(前出・東京電力社員)
当初最前線で作業にあたっていた人員は被曝線量が基準値をオーバーすると東京の本店などに戻されているが、いつまた声がかかるかわからない。
一方、その本店では清水正孝社長が入院して一時第一線を離れてしまった。4月7日に復帰したが、当面は被災者対策にあたる。原発対策は、勝俣恒久会長を中心に武藤栄・副社長とフェローの武黒一郎氏(前副社長)の二人が支えるという。
「一度役員を退任した武黒まで復帰して事態の処理に当たらなければいけないのが、人材難を象徴しています。しかし、武黒は'07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発で火災が起きたとき、現地で指揮をとっている。技術系社員からの信望が非常に厚いんです」(別の東京電力社員)
一度は退任した幹部までつぎ込むほど、東京電力の「問題解決力」は限界に近づいている。原子力村の学者たちはじめ、いままで専門家と称していた原子力ムラの住人たちは、持てる能力のすべてを問題解決のために提供すべきだろう。
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