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東京電力の会見から希望は見えてくるのか
2011-04-18 11:22:21
更新が遅れてすいません。専門家の先生ときのう僕がうまく話ができなかったこともありますし、僕の個人的な都合もあって遅れました。
まず、僕が思ったことは、事態収束と言うレベルには、半年から九ヶ月の時間は最低限かかるということです。安全に一定程度冷え切ると言う、この状況にならなければ、原子炉を制御できているとは言いがたいものがあります。とすると、東京電力の思っている最善の状況が展開したとしてこの秋から来年の初頭まで、現況のような一進一退の状態が続くと言うことです。これだけでもシビアな問題です。これは、東京の経済にも大きな影響を与えるのは、間違いないだろうと思います。ただし、時間のメドが、現実にどうなるのかは別として、示されたと言うことは大変に大きいと思います。最善であれば、こうした流れになるということが、国民の頭に入ったと言うことは、今後の皆さんの展開を考える上で、重要なファクターだと思います。
さきほど、小出先生ともお話をしました。先生は「木下さん、このとおりの工程で、うまく収束できるのなら、本当に望ましいです。私もそれを期待はしますよ。まず、そう思っていることは伝えます」とおっしゃいました。その上で、今回の工程に関しての評価をうかがったのですが、「まず、正直に言って、東京電力がこれまでおこなってきた対応が、うまく展開したと私が思えたケースはほとんどありません。ですから、この工程もうまくいけばよいですが、このような希望的な観測で東電が事態の推移をきちんとできるとは僕には思えません。こういう感じでうまく事が進められるなら、とっくに状況は改善しているはずですから」と、概説的にお話になります。さらに、「具体的なプランを見ていくと、元々僕が思っていた格納容器と圧力容器との間に水の循環をつくるということは、よくわかります。ただし、格納容器をきちんと水で浸すという考え方は、現実に対応可能なのか、私は疑います。格納容器は、損傷が激しいものもあるのです。放射能がかなり高濃度の中で、格納容器を補修するということが、どれだけ現実性があってできることなのかと言うことです。できるなら、もっと早く対応していることですから、ここまでそういう風にできていないことをどうやったらできるのかと言う見通しが具体的にあるのなら、まだわかりますが。そうした見通しがある中で出てきている話ではないと思います」とおっしゃっています。格納容器の損傷のレベルをどう考えるのかなど、東京電力にとっては、一貫して歯切れよく語らないストーリーとなっていますから、ここをどうするのかと言うことの具体論に、リアリティがあるのかと言う疑いは僕も持っていましたが、小出先生も同様の見解でした。この流れは、できるのなら、とっくに行われるはずの事についてのやりとりですから、何をいまさらなのです。「木下さん、作業員の皆さんの線量と体力気力を考えたときに、格納容器の修復と言う、危険でかつかなり手間がかかる作業を、どうやったら現実化できるという感覚が、きのうの工程から伺えませんでした。私は、今の状態も、かなりシビアだと強く思っています。危険は差し迫っているままなのに、この流れでどうやったら改善できるのかという考えが、はっきりしません。今回の工程を見ていても、強く思いますよ。」と。原子炉の建屋の中の線量は高いままです。1号機は原子炉の建屋の内側だと少なくとも、毎時二百五十ミリを超えているそうですから、ほとんど何もできる状態ではありません(1号機は本当に大丈夫なのかと懸念します、従来、このブログのコメントなどでも、懸念が続いてる情報が寄せられているのは、1号機のことのようです、危険な状態が続いていることだけは間違いありません)。こうした点から考えると、いったいいつになったら線量が下がるのか。そして、高被曝を覚悟して作業員が破損箇所を点検して、無理やり何とかすると言う話だと思います。兵站も含めて、超えなければならないステップが何段も何段もあります。そのステップの一つでさえ、適正に越えられる見通しがよくわからない中で、一体どうするのかというお話な気がします。これで、菅総理は「少し前進できた感じがする」と述べたそうですが、この点についても小出先生と話しましたが「木下さんの方が分かっていると思うけど、菅さんは何も考えてきめていかないから、物事の本質が分かっていないのですよ」と。勿論、この工程の発表と言うのは、政権が東京電力に見通しを示させるようにした訳ですから、政府の意向が大きく影響をしていることは間違いありません。僕からすれば、本来東京電力がこういう素案をまとめて、政府部内や原子力安全委員会で検討して、政府として見通しを国民に伝えると言うのが本来あるべき姿であって、まずそれを政府そのものから語りかけずに、東京電力に発表させておいて、「少し前進した気がする」という他人任せなコメントになるのは、本当に菅総理らしいなと思います。
福島第一原発も担当していた技術者の友人は、まず1号機については心配をしていて、1号機給水のノズル温度も高いし、圧力容器も高いと見ています。線量もかなり高いことを考えると危険な状況なのだが、減速材入れるしかないだろうしとも。今後の展開は予断は許さないと言います。また、どの号機も、水が漏れ続けているのであるのだから、これをいったいどうするのかと言うことの解決がかなり難しいかもとも、その上で六ヶ月から九ヶ月というのは水で格納容器を満たせればどうなるのかということなんだけれども、きちんと冷温停止にもっていけるかどうかまで考えるとなかなか大変だろうと言います。彼に言わせれば、少なくとも、東芝や日立のメーカーの工程表が今回の話のベースであるのだから、最低限の蓋然性はあるのだろうと。ただし現場の状況、例えば、瓦礫どうやって、どこにどける作業から見るだけでも、今の東電の見立てよりも、恐らくそれ以上にかかるだろうとは思うとも。確かメーカーの工程はもう少し長いスパンだったから、どちらにしても、ちょっと余分にかかるはずですよと。そうすると、結局そこに到達するまでの間が綱渡り的な状況になることは間違いないだろうとも。冷却を考えると、給水ノズルの温度を百度前後にできるのかと言うこともそうだし、とにかく水で満たして冷却するというのは、漏れを止める方法をどうするのかということになる。そのためには、まずこういう工事をやれるかどうかの基礎的な情報はあるのかないのかと言うことから考えなければならないし、本当に見立てどおりに工事が進行していくのかどうかというのは、現況の情報ではわからないと話しています。これは、現場レベルの細かい情報がないと判断がつかないということです。ただ、この工程を聞いて、「大丈夫」と確信を持てるような感じではないということだけは言えるだろうとも。
今、官邸のスタッフとも話しましたが「本当は、ネガティブ、深刻な事態を想定すべきで、その場合はこうなるといった見立ても言わなければならないのに、会見では楽観論に終始したと思うよ。彼らの言説から爆発と言うワードがないのが不思議だけど、官邸の内部でも同じような感覚で、爆発可能性という感覚は内部には全然ない。楽観的見通ししかない。まだ数ヶ月は爆発は回避できているわけではないのに、それを伝えない。何かあったら、こうなるかということを伝えると言う感覚もない。みんな、収束収束モード。もう官邸の内部では、危険性を言うこと自体がタブーになっていると私は見ている。菅さんもきのうのコメントからすれば、信じ込んでいるんじゃないかな。大丈夫と。」
希望的な観測が正しくて、危機を指摘する声がおかしいのであれば、確かに望ましいかもしれませんが、現実はどちらにあるのかが、見通しがどこまで立っているのかを正確に捉えられている感じがしたのなら、安心ができるのですが、その方策を聞いているだけでは、安心と言う言葉とは、少し遠い現実が浮き彫りになっている気がします。きょうの朝刊各紙が報じているように、現地の皆さんは「疑心暗鬼」というワードでくくれるような対応だろうと思います。道筋の立つ説明でなければ、人は納得ができませんし、大変な状況で避難を余儀なくされている皆さんですから、心労はいかばかりかと思います。こうした人々に対して、あの程度の説明ではとても納得というものではないと僕も思います。一つの目安を示したということは事実ですが、根拠が見えない目安が提示されたと言うことでしかないのかもしれません。クリントン国務長官はアメリカの専門家の見解として「福島第一原発の事故は前代未聞の規模の危機と認識している」とのべています。こうしたときに、外交の正規のやり取りの中で、こういう文言が出てきていることは冷静に私たちは捉えなければなりません。アメリカ政府の見立ては今回の問題に対しては、一貫して厳しい見立てが続いています。いまだに八十キロ圏内は立ち入りをさせていません。つまり、日本政府の見立てよりも、さらにシビアにアメリカの目があると言うことです。前代未聞の規模というのは、今後起きることも想定していくと、過去の経験値を超えた状況が、どういう形にせよ、おこりうる可能性があるという認識を、アメリカ政府はもっているということだと思います。専門家見解の紹介と言う形をとりながら、こうした見解をアメリカの国務長官が伝えている現実を、日本政府よりも、皆さんに知っていただきたいと思います。
「追記」
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