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日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>熊野信一郎のクロス・ボーダー
「日本を反面教師に」中国は冷徹に評価
2011年4月18日 月曜日
熊野 信一郎
中国 リーダーシップ 四川大地震 日本 反面教師 評価 社会主義
中国では「大事をなす」という表現がよく使われる。「力を集めて」と枕詞を置くことも多い。皆で一体となって大きな成功を収めよう――。要は社会主義の優位性を示すスローガンで、共産党のリーダーも多用する語句だ。
北京五輪や上海万博といったイベントでは、こうした国家総動員の姿勢が鮮明になる。それは危機対応でも同じだ。2008年5月に発生し9万人近い犠牲者を出した四川大地震ではこの「大事をなす」が強く押し出された。
持ち前の指導力によって難局を乗り越える、または乗り切ったと見せることは、共産党一党独裁体制の正当性をアピールする機会になる。反対に失敗すれば、政治体制そのものの信任を失いかねない。危機時こそ、共産党政権の存在意義が問われるとも言える。
四川大地震の発生直後、温家宝(ウェン・チァバオ)首相は地震発生の2時間後には被災地に向かう航空機上で緊急会議を招集していた。現地で救援活動を指揮し、被害者を慰問する当時65歳の温首相の姿は中央電視台(CCTV)を通じて全土に流され、「頼れる人民の味方」としてのイメージを巧妙に作り上げた。
軍や警察、地方政府の人材、物資は被災地に総動員され、半ばノルマと課した企業からの義援金は大量に集まった。腐敗や格差問題といった国民の不満もこの時ばかりは薄まり、一体感が演出された。巨額の財政出動と人海戦術によって被災地のライフラインは急速に復旧し、復興が進んでいる。
今の日本の姿は、そんな中国から見ればもどかしく映るに違いない。
当初は“ミクロ”で日本を評価する声が多く伝えられた。耐震性に優れた建築物に驚き、冷静かつ規律正しい被災者や支援者の姿に感動する。中国人研修生 20人を津波から救い、自らとその家族が行方不明となっている宮城県女川町の佐藤充さんのエピソードは、中国でも有名になった。
首相の資質よりシステムに欠陥
しかし福島第1原子力発電所の問題が長引いていることで、日本の意思決定システムへの冷徹な評価も目立ち始めた。復旦大学日本研究センターの郭定平主任は「政府も電力会社も官僚も最善の努力をしているに違いないが、危機時に各界の力を結集できないのが日本の課題。常に合意に基づいて行動する日本の意思決定システムは危機管理面でマイナスが目立つ」と話す。
政府が東京電力に責任を押しつけたり、与野党が駆け引きをしたり。あらゆる面で、一体誰が責任を持つのかはっきりしない。多元的な民主主義社会の特徴なのかもしれないが、共産党が指示すればすべてが動く国から見れば極めて非効率に映るのだろう。
リーダーシップの欠如に関して日本では、菅直人首相の言動や資質などにも批判の声が出ている。それも外から見れば、個人の資質よりも日本というシステムの欠陥として捉えられる。そもそも、万能なリーダーでなければ機能しないような危機管理は、意味をなさない。
中国にとっては、今の日本の姿は反面教師である。リーマンショック後の大規模な財政出動によって再び成長軌道に乗せたことで、既に経済運営面では自信を持っている。日本を含む先進国の経済が低迷を続けていることから、その自信はさらに深まっている。郭主任は「高度経済成長を牽引した日本の55年体制は中国にとって勉強の対象だった。それがどう変化し、国としての一体感を失うに至ったのか。1つの反面教師としてこれから中国でも研究の対象になるだろう」と話す。
中国とは政治体制が違う、と片づけるのは簡単。ただ、天災や人災と同じく「日本型システムが生む被害」も最小化しなければならない。
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熊野信一郎のクロス・ボーダー
日本では知られていない、しかし重要なニュース。知られているようで、本質が見過ごされているニュース。時に中国、時にASEAN(東南アジア諸国連合)、そして時には外から見た日本の姿を、アジアの「へそ」香港からボーダレスにお届けします。
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