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放射性廃棄物を巡る問いかけと印象的な映像:『100,000年後の安全』
2011年4月15日
http://wiredvision.jp/blog/takamori/201104/201104152359.html
配給のUPLINKが元々今秋に公開を予定していたドキュメンタリー映画。福島第一原子力発電所の事故後、原発や放射能への関心と懸念の高まりを受け、急きょ4月2日に前倒しして緊急公開した。4月16日(土)から渋谷アップリンク、ヒューマントラストシネマ有楽町、吉祥寺バウスシアター、横浜ニューテアトルで拡大公開されるほか、他の道府県でも順次公開が予定されている。
日本と同様、原発推進国であるフィンランド。同国オルキルオトでは、地層処分という方法により、高レベル放射性廃棄物を貯蔵する世界初の地下施設の建設が始まった。この施設「オンカロ」(フィンランド語で「隠れた場所」という意味)は22世紀に完成し、一定量の廃棄物を受け入れた後に封印され、10万年間保持されるよう設計されている。
オンカロの撮影を敢行したデンマーク出身のマイケル・マドセン監督は、関係者のインタビューを交えながら、この施設の意味と、未来の地球の安全を問いかける。放射性廃棄物が生命にとって無害になる10万年後まで、掘り返される危険はないだろうか? ネアンデルタール人の時代から現代まで1万年しかたっていないことを考えると、数万年先の未来の子孫に「放射性廃棄物が埋まっている、危険だから入るな」と正確に伝えることができるのかどうか。
コンセプチュアル・アーティストでもある同監督は、SF映画の舞台になりそうな洗練されたデザインの広大な施設や、重苦しい存在感を放つ地下のトンネルと巨大な切削機械など、フェティッシュな魅力に満ちた被写体を印象的に映し出す。作業員たちが動く姿を多重露出で半透明にする演出では、10万年という永遠にも近い時間に対する人の生のはかなさを詩的に表現している。
『100,000年後の安全』は、「反核」や「脱原発」といった特定の主張を声高に叫ぶプロテスト作品ではない。美しい映像や音楽の演出を添えながら、放射性廃棄物の処分という現実の問題と向かい合い考える契機を静かに提示してくれる。
福島原発事故が起きるまで「原発は安全」との大ウソを信じ、あまりに無関心で過ごしてきたことを反省しているのは私だけではないだろう。同じ過ちを繰り返さないよう、学び、考え、行動すること。日本の未来のために何をなすべきかについて、新たな視点をもたらしてくれる作品だと思う。
2009年/79分/デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア/英語/カラー/HD/16:9/ビデオ
監督:マイケル・マドセン
配給・宣伝:アップリンク
『100,000年後の安全』公式サイト(字幕付き予告編あり)
http://www.uplink.co.jp/100000/
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