115. 2011年4月19日 22:48:10: 65A5ENIHV6
週刊現代オンラインより引用 4.11 ↓-------------------------------------------------------------------- 【原発推進派が「極めて深刻」】と -------------------------------------------------------------------- それでも、いまだ「安全」を繰り返す政府や原子力安全委員会に対し、原発を推進していた人々からも怒りの声が上がっている。 〈はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします〉 そんな書き出しで始まる一通の緊急建言書がある。4月1日に発表されたこの建言書の起草者は16人。松浦祥次郎、佐藤一男両氏の元原子力安全委員長を筆頭に、いずれもこれまで原発推進の立場で研究・開発に関わってきた研究者たちだ。彼らの危惧がストレートに伝わってくるので、少し長くなるが、建言書を抜粋する。 〈私達は、事故の発生当初から速やかな事故の終息ママを願いつつ、事故の推移を固唾を呑んで見守ってきた。しかし、事態は次々と悪化し、今日に至るも事故を終息させる見通しが得られていない状況である。(略) 特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである。(略) 福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になることも予測され、一東京電力だけの事故でなく、既に国家的な事件というべき事態に直面している〉 建言書は、この後、日本が持つ専門的知識や経験を結集して、国を挙げて対応する態勢を作るよう政府に求めている。 建言書の起草者の一人、元原子力安全委員会委員長代理の住田健二・大阪大学名誉教授が語る。 「我々が出した建言書を、政府もメディアもほとんど黙殺しました。なぜ、これまで原発は安全だと言ってきた我々を責めないのか。自分たちは原発は安全で、あったほうがいいと信じてやってきた。しかし、誤りもあれば結果責任もある。科学者の責任として、そこはちゃんと認めないとならない。 現在の現場の状況を見ていると、ともかく初めて出くわした事態を前に、決死隊が出てきて、まるで特攻のようです。私にもどうすればいいかわからない。ただ、正確なデータが示されれば、私のような年寄り(住田氏は80歳)でも何か役に立てるかも知れない。そう思うと黙ってはいられなかったのです」 【動揺するからと数値を隠す】 --------------------------------------------------------------------------- しかも、これまで垂れ流してきた汚染水に加え、4月4日からは建屋内などに溜まっていた基準値の1万〜1億倍という汚染水を移すスペースを作るために、1万1500tに及ぶ低濃度汚染水(基準値の100倍程度)を海に流した。これには韓国やロシアから非難の声が上がっており、海洋汚染防止のため、不法投棄などについて定めたロンドン条約違反という指摘もある。 1993年、ロシアが過去30年にわたって日本海に放射性廃棄物を投棄していたことが発覚した。もちろん、ロンドン条約違反である。これに対し、日本側は強硬に抗議を繰り返したが、いまや立場は完全に逆転してしまった。炉心を冷やすために注水作業を続けるしかない以上、汚染水を再び海に流す事態も十分に考えられる。 「原子力安全・保安院は一貫して『海は広く、放射性物質が拡散するから問題ない』と言っていますが、投棄した汚染水にしても、正確な汚染濃度や、どんな放射性物質が含まれているかを公表していません。それで安全だと言われても判断のしようがない」(日本大学専任講師・野口邦和氏) 放射性物質には、よく知られるようになったヨウ素やセシウムの他にも様々な種類(核種)がある。核種によって、体内に取り込んだ場合、どこに溜まりやすいかも異なる。たとえば、ストロンチウム90は骨に、セシウムは筋肉に溜まりやすい。より大きな魚に汚染が拡大したとき、骨を食べなければよいのか、それとも身を食べるのもダメなのかを判断するには、どんな核種が漏れたかも重要になる。 また、水については海や川が汚れ、魚などが汚染されるのとは別に、直接的に人間が摂取する影響も考えなければならない。東京都では3月23日に暫定基準値を超える放射性物質が検出されたとして、乳児への摂取制限を決めたが、翌日には解除。それ以降は基準値を下回ったとし、最近の測定結果には「不検出」の文字が続く。 【しかし、そこにはカラクリがあった。都庁関係者が言う。】 「都は東京都立産業技術研究センターに都内3ヵ所の浄水場の水質調査を依頼しています。その際、水については1kgあたり20ベクレル以下の場合には、放射性物質が検出されても『不検出』として報告するよう指示が出されました。理由は都民に動揺を与えないため、というものです」 本誌が東京都立産業技術研究センターに確認したところ、検出する機械が1台しかなく、長時間の検査ができないので微量の場合は誤差も考えて「不検出」としていると回答。なお、空気の汚染についても都は、1m3あたり0.1ベクレル以下は「ND(ノーデータ=不検出)」として公表していない。 この空気の汚染について、原子力安全委員会が、福島県浪江町で放射線量積算値が高くても、線量そのものが減少傾向にあるから大丈夫だと言っているのは前述した通りだ。だが、放射性物質は一度漏れ出したら、空気中を漂い、長期にわたって拡散していく。福島、茨城、栃木、群馬、千葉(一部)の各県でほうれん草などの出荷制限が行われているのも、こうした野菜が空気中の放射性物質を取り込んでしまったからに他ならない。 「野菜が放射性物質を取り込む経路は大きく二つあります。ひとつはガス状の放射性物質を葉の気孔から内部に取り込むケース。もう一つは粒子状のものが直接、葉に付着するケースです。後者の場合は、よく洗えばある程度、放射性物質を取り除くことができます。しかし、気孔から内部に入ったものについては、洗っても簡単には取り除けません」(環境総合研究所・青山貞一所長) Top > 特集記事 > 社会 > 2011.4.18
福島第一原発が津波の被害で大きなダメージを負ったのをテレビで見ていて、私はつい「こんなのは想定外だ」と漏らしてしまった。それを聞いていた妻から言われました。 --------------------------------------------------------------------------- 【このまま逃げていいのか】 --------------------------------------------------------------------------- 「『想定外』なんていう言葉は、『そんなことも考えていなかった自分がバカでした』と言ってるだけじゃないの」 その言葉を聞いて、確かにその通りかもしれないと痛感したんです。原発の状況がどんどん悪化していくのに、これまで原発を推進してきた者として、このまま黙っていていいのか。なんとかしなければ取り返しの付かないことになる。そういう焦りから、同じように原発推進の立場で関わってきた先生方と話し合い、あのような「建言書」を出すことにしたのです。「建言書」では、まず多くの方々にご迷惑をおかけしたことをお詫びするのが、科学者としての責任だろうという思いでした。 住田健二氏(80歳)。原発の安全性について議論する原子力安全委員会委員を'93年から'00年まで務め、'98年からの2年間は委員長代理。その後、日本原子力学会会長も歴任した原発ムラの重鎮とも言える人物である。住田氏が言う「建言書」とは、16名の科学者や医師たちが、福島第一原発にはいまだ水素爆発や火災の可能性があることを指摘し、危機回避のためにオールジャパンで事故対応に当たる体制を作るよう、政府や原子力安全委員会に求めた文書のことだ。文書の冒頭はこんなお詫びの文言で始まる。 〈はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします〉 本誌は今回、この「建言書」に名を連ねた推進派の重鎮たちに話を聞いた。住田氏の話を続けよう。 「建言書」をまとめるにあたって、田中俊一先生(73歳、前原子力委員会委員長代理で、元日本原子力学会会長)や松浦祥次郎先生(75歳、元原子力安全委員長)らと、文書の中身についても議論しました。自分たちが安全だと信じていた原発が、結果的にあのような事故を起こした以上、その結果責任は当然ある。まずはお詫びが先だろうと。その責任を認めないと、日本の原発研究者の力を結集させようと訴えたところで、世間の皆さんに聞いていただけるはずがありません。 それから2〜3日で、我々の考えに賛同していただけそうな方に、名前を連ねていただけないかと連絡を取り、集まったのが我々を含む今回の16名でした。本当はもっとたくさん集めたかったのですが、原発の状況を見ていると、とにかく急いで「建言書」を出す必要があった。賛同して名前を連ねていただいた先生方からは、最初にお詫びすることに対して異論はありませんでした。 ただ、私はそれ以前に新聞の取材に対して、国民の皆様にお詫びの言葉を述べている(朝日新聞3月16日付朝刊)のですが、それを読んだ学界関係者の反応は様々でした。ほぼ3割の人からは「なんで自分たちが謝る必要があるのか、ミスをしたのは原子力安全・保安院や東京電力だろう」などと言われました。「建言書」への賛同を求めたときも、「私はそこに名前を連ねるような大物ではありませんから」というような理由を付けて逃げた人もいます。やはり、原子力に関わっている人間にとって、自分たちの非を認めて原発の危険性を指摘するというのは、学界から干されるかもしれないという恐怖心を伴う行為なんです。そういう理由もあって、賛同者は私のような年寄りばかりになってしまった。 --------------------------------------------------------------------------- 【甘かった 】 ---------------------------------------------------------------------------
だが、覚悟の「建言書」はメディアにも政府にも無視された格好だ。4月1日に開いた会見には、多くの記者が集まったが、取り上げたのはごく一部のメディアだけ。政府にいたっては、「建言書」の受け取りすらも拒否したという。 今回、事故の大きさがレベル7に相当すると認定されていますが、日本中のあらゆる原子力専門家の知恵を結集しないと、この事故は乗り切れない。原子力安全委員会が中心になってそういう体制を作れば、私たちのような年寄りも協力を惜しまない。それが「建言書」で訴えたかったことなのです。 「建言書」を出したメンバーのひとり、齋藤伸三元日本原子力学会会長(70歳)も言う。 私は'99年の東海村臨界事故を受けて、オフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)の設立に関わりましたが、残念ながらそれがまったく機能しなかった。いろんな意見を聞いて作ったのですが、魂が入っていなかったということなのでしょう。最初に原発の冷却システムが壊れたと聞いたとき、これは大変な事態になると思い、東電など関係者に連絡しようかと迷いました。しかし、すでに現役を退いた身だからと止めたのです。ただ、今でも声が掛かれば、すぐに現地に駆けつけたい気持ちです。 【次に水素爆発があればアウト】 --------------------------------------------------------------------------- 次に語るのは、住田氏の話にも登場した田中俊一氏。3月15日に皇居に呼ばれ、天皇・皇后に対して、事故状況の説明を行った人物でもある。その田中氏は具体的に現在の福島第一原発の危機的状況について語った。 私は皇居で天皇・皇后両陛下にご説明した際、「この事故はスリーマイル島原発事故よりも悪い状況です」と申し上げました。おそらく、それが3月16日に天皇陛下が出された「関係者の尽力により事態の更なる悪化が回避されることを切に願っています」という「おことば」につながっているのだと思います。しかし、実際は陛下のおことばと逆になっていることが大変申し訳ないことだと思っています。 3月12日に1号機で水素爆発が起き、14日に3号機、15日に4号機でも爆発と火災が起きましたが、いまも水素爆発が起きる危険は消えていません。しかし、官邸や保安院なども危機感が薄い。だいたい、炉心溶融が起きていることはとっくの前からわかっているのに、その事実を東電が公表したのは4月8日になってからです。圧力容器内の燃料が溶融したから格納容器に放射性物質が漏れ、さらにその一部が外部に漏れた。いまはまだ全体の100分の1くらいしか漏れていないと思いますが、次に水素爆発があれば残りの放射性物質が一気に漏れ出す危険性もあります。それを考えると居ても立ってもいられないほどの焦りを感じます。 【田中氏も住田氏同様、政府と東電中心で、広く意見を集めない対応のまずさを指摘する。】 事故処理は一義的には東電がやるべきですが、その能力がないのは明らかです。なぜなら、原子炉を作るのは東芝や日立のプラントメーカー、メンテナンスもメーカーやその下請けがやる。東電がやっていることは原子炉の運転だけで、炉が壊れたときにどうするかという知識は不十分です。たとえて言えば、自動車の運転はできるけれど、そのメカニズムを理解していないのと同じです。それなのに全部、自分たちでコントロールしようとしているように見えます。 ある民主党議員は「統合対策本部に行っても東電側から専門用語をまくし立てられ、煙に巻かれてしまう状態だ」と語っています。それも当然でしょう。東電が専門的なことを言っても、その間違いを正すことができるような体制を官邸は用意していないのですから。そういう体制ができていれば、炉内の水が減った時点で、すぐに水素が発生し、爆発する危険性に気付いたはずです。スリーマイル島原発事故を勉強していればわかることなんです。それなのに海水を入れるかどうかで10時間程度も悩んだ挙げ句、爆発させてしまった。しかも1回だけでなく次々と爆発させた。 現在、1号機を手始めに、水素爆発を避けるために窒素ガス注入が行われている。これはアメリカ原子力規制委員会(NRC)の意見を参考にしたとされる。また、日本政府はフランスの原発メーカー「アレバ」からの技術支援も受けている。にもかかわらず、田中氏らへの協力要請はない。田中氏は今後の見通しを次のように語る。 今は注水をして、冷却を続けるしか手立てがありません。当然、水素が出てくるので、爆発させないように気を配ることが重要です。そのうえで冷却水の循環システムを回復させるというのが東電などの方針ですが、既存の循環システムが地震と津波で壊れて使えないであろうことは、早い段階からわかっていたんじゃないでしょうか。新たに原子炉の外側に熱を下げるためのシステムを構築する必要があるから、それだけで何ヵ月もかかる。 技術的な面を言えば、新たな外部熱除去システムを作っても、ポンプなどを炉内にある配管につなぐのが極めて難しい。当然、人海戦術になるので、原子炉の周囲にある瓦礫も除去しなければなりません。瓦礫には放射性物質が付いていて、これらが放射線を発する源になっていますから。要するに安定的に冷却しなければならないけれど、その前にやらなければならないことが山積しています。 また、いま注水している冷却水は垂れ流し状態です。原子炉内部を通った高濃度汚染水をどう処理するかが問題になっていますが、この問題はまだまだ続く。高濃度汚染水を移す場所を確保するために、1万t余の低濃度汚染水を海に放出し、国際的な非難を浴びたばかり。しかし、毎日500〜600tの高濃度汚染水が出るので、それが半年も続けば10万tになる。1万t分のスペースを確保しても、1ヵ月もしないうちに、そこが満杯になってしまうわけです。今のうちからその対策も考えなければなりません。いろんなことを想像すると、不安ばかりが募るのです。 田中氏は、原発が撒き散らす放射性物質による人体への影響についても語った。 マスコミの報道を見ていても「ただちには人体に影響のないレベル」などと言っていますが、国際的な放射線防護の考え方からすると極めて異様です。放射線は長期的な影響を考慮して、公衆に対する基準が決められています。現に30km圏外でも避難しなくてはならないようになっているじゃないですか。原発を進めてきた者の責任として、どの地域がどの程度汚染されているのか、細かい汚染マップを作り、将来、地元に戻りたいという方々に情報開示できるようにしなければならない。文科省が線量調査をしていますが、これは計測地点が少なすぎて、住民の居住や耕作の是非を判断するのには不十分です。そのため今後、できるだけ早く30km圏内に入って、詳しい線量調査を進めなければならないと考えているところです。 ------------------------------------------------------------------------- 【被曝してもいい 】 ---------------------------------------------------------------------------
30km圏内の線量調査をすることに関して、16人のメンバーのひとりで、放射線管理の専門家である柴田徳思とくし氏(69歳、東大名誉教授)に聞いた。 福島第一原発から半径30km以内の範囲のうち、ほぼ半分にあたる海の部分を除いた地域で放射線量を測定しようと動き出したところです。仮に300m2に1地点の割合で測定すれば、約1万5000ヵ所になる計算です。これくらいなら1000人もいれば測定できるでしょう。この測定には若い者を行かせるわけにはいかない。自分たちのような年寄りや教授連中が行く。被曝して発がんリスクが上がっても、実際にがんになるのは20年先とかで、その時は我々はもうこの世にいないはずですから関係ない。それに我々のような研究者は放射線業務従事者といって、年間の被曝限度量も50ミリシーベルトが上限になっている。一般の人は1ミリシーベルトだから、それよりは長時間の作業ができます。 そうやって細かく調査しておけば、自分の家の周囲がどのくらい汚染されているのかわかる。自宅の1km先の地点の数値を言われても、住民の方が自宅に戻るかどうかの判断には役に立ちません。そのためにweb上で、計測に参加してくれる研究者を募ろうと思っています。地図も載せて、調査が終わった地点は色を付けておくなどすれば、同じ所を計測することもないし、効率的でしょう。 また、継続的な健康調査も必要です。今回のように放射性物質が長期にわたって放出され続けた場合の人体への影響というのは、国際的にもデータがない。後々のためにも、この事故の影響をしっかりと調べて、残しておかなければなりません。 大先輩にあたるこの科学者たちの懺悔や警告を、 【現職の原子力安全委員会委員長である班目まだらめ春樹氏】はどう受け止めるのか。本誌は福島第一原発事故がレベル7に当たるという発表があった4月12日、都内の自宅に帰宅した【班目氏】に聞いた。 ――【OBらの「建言書」をどう見ているのか。】 「皆さん、お気持ちとしてそういうものがあることはわかります。ただ(委員としての任期を)終えられたわけで、それは仕方ないことです。だから、私はそれについて何かを申し上げることはありません」 黙っていれば、功成り名を遂げた原発ムラの住人として余生を過ごすことができたはずの科学者たちが、あえてお詫びして、一刻も早い事態収拾を願って声を上げた。その警告を無視し、被害がさらに拡大したとき、原発ムラどころか日本が大ダメージを負う。 【住田氏が最後に言う。】 原発推進の流れを支えてきた者として、いまの状況に心を痛めないほど、無神経ではいられない。我々には将来のポストも関係ない。ただ、この悲劇的な事態に、自分たちが研究してきたことが、少しでも役立てばいい。我々のような年寄りたちでも、それぞれの持ち場でまだやれることがあるはずです。 引用終わり
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