11. 2011年4月16日 13:41:41: APtvqoOz2w
きっこさん、いい文章を書いている。 ウクライナやベラルーシを始め、チェルノブイリの周辺の国や町では、現在、25歳から35歳の人の割合が少ない。何でかって言うと、25年前の1986年に起こった原発事故で、多くの子供たちの体内に放射性ヨウ素が入ってしまい、甲状腺ガンを発症して亡くなったからだ。そして、何とか命を取りとめて大人になれた人たちは、みんな首に10cmほどの三日月形の傷がある。これは、甲状腺ガンの手術痕で、通称「チェルノブイリ・ネックレス」って呼ばれている。放射性ヨウ素による甲状腺ガンは、子供に発症するんだけど、特に女の子に多く発症する。こちらの「チェルノブイリの事故後のウクライナとベラルーシの甲状腺ガンに関する報告書」(PDF資料)は、英文の資料なんだけど、26と27ページの統計表だけでも見て欲しい。26ページが「女性」、27ページが「男性」で、事故当時に1歳から18歳までだった子供たちを男女別にして、原発からの位置関係で3つのエリアに分類して、その子供たちが何歳になった時に甲状腺ガンを発症して手術を受けたのかがマトメてある。 細かい項目はそれぞれ見てもらうとして、ザクッと言えば、女の子は、放射性ヨウ素の影響が高かったエリアで1320人、影響が中度だったエリアで1167人、影響が低かったエリアで345人、合計で2832人もの子供が甲状腺ガンを発症して手術を受けてる。一方、男の子のほうは、影響が高かったエリアで495人、影響が中度だったエリアで454人、影響が低かったエリアで93人、合計で1042人と、女の子の約3分の1の発症率だ。もともとの総数は分からないけど、最初から女の子が男の子の3倍もいたとは考えにくいし、実際、男の子よりも女の子のほうが甲状腺ガンを発症するリスクが2倍以上あるって言われてるから、この統計は、そのまま素直に解釈していいと思う。 ‥‥そんなワケで、今日は「いかがお過ごしですか?」は割愛してくけど、この統計は、あくまでも特定の地域だけを調査したもので、チェルノブイリの被害に遭った全域を調べたものじゃない。そして、この調査したエリアにしても、この統計をマトメた2001年までのデータであって、このあとに甲状腺ガンを発症した人たちもたくさんいる。だから、チェルノブイリの事故が原因で甲状腺ガンを発症した子供の総数ってことになると、遥かに大きな数字になるだろう。
チェルノブイリの事故で被曝して亡くなった人の総数は、IAEA(国際原子力機関)の公式見解では「推定4000人」、WHO(国際保健機構)の公式見解では「推定9000人」てことになってるけど、これは「確実にチェルノブイリが原因」という人数だ。たとえば、ウクライナで事故から10年後に肺ガンで亡くなった大人がいたとしても、それがチェルノブイリが原因であることを立証することは難しい。たまたま喫煙者だったとしたら、タバコが原因て言われるだろう。民間団体の調査にしても、「推定1万5000人」て発表してるとこもあれば、「推定4万人以上」って発表してるとこもある。だから、現在でも、チェルノブイリの事故の被害者数はまったく分かっていない。 だけど、ひとつだけハッキリしてることは、現在の東ニポンよりも遥かに人口が少なかった国や町の子供たちが、ものすごくたくさん甲状腺ガンを発症して、そのうちの何割かは亡くなってしまったと言うこと。そして、何とか命は取りとめたけど、大人になった現在も苦しみ続けてて、子供を作ることができなくなってしまったということだ。 子供たちが放射性ヨウ素で内部被曝した経路は、大気、土壌、井戸水、牛乳、野菜、魚、母乳など様々だけど、甲状腺ガンを発症した子供が母乳だけを飲んでた乳幼児じゃない限り、その子供が何を口にしたことによって内部被曝したのかは特定できないだろう。それに、現在の東ニポンと同様に、大気も土壌も飲み水も野菜も魚も汚染されてる状況なんだから、複合的な経路だって考えるのが妥当だろう。 ‥‥そんなワケで、ニポンの政府は、今回の福島第一原発の事故が起こったわずか6日後の3月17日付で、水道水の放射線基準値を大幅に引き上げた。正確に言えば、ニポンの水道水には独自の放射線基準値が設定されてなかったため、これまではWHOが定めた国際基準値をニポンの基準値にしてた。大マカに言うと、ヨウ素131もセシウム137も1リットルあたり10ベクレルだった。だけど、「緊急措置」だとして17日に政府が大慌てで引き上げた数字は、ヨウ素131が30倍の300ベクレル、セシウム137が20倍の200ベクレルだった。そして、「乳幼児に限り、100ベクレルを超えた場合は飲ませないこと」っていう但し書きがついた。 今になって知らされたけど、原子炉建屋が次々と水素爆発して、何万テラベクレルとかって言う想像を絶する量の放射性物質が撒き散らされたのが3月14日と15日で、その翌日の16日に水道水の放射線基準値を大幅に引き上げる要請が出て、わずか1日で認可されて17日から施行だなんて、あまりにも出来杉くんな話だ。ようするに、知らぬは国民ばかりなりってワケだ。 「緊急措置」だか何だか知らないけど、一気に基準値を20倍だの30倍だのにされて、昨日までは10ベクレルを超えたら「危険だ」って言われてたものが、今日からは299ベクレルでもゴクゴク飲んでもかまわないだなんて、普通の神経ならビビッちゃって飲めないよ。つーか、「赤ちゃんには100ベクレルを超えたら飲ませるな」って言ってるものを、大人の自分はともかくとして、幼稚園児や小学生の子供に飲ませられる親がいるだろうか? それに、赤ちゃんに母乳を飲ませてるお母さんだって、自分が飲んだらマズイと思うのが普通だろう。 で、まるで政府のシナリオ通りに進んでるかのように、基準値を大幅に引き上げた翌日の18日、文部科学省が首都圏の1都5県の水道水を検査したところ、77ベクレルの栃木県を筆頭に、群馬県、東京都、千葉県、埼玉県、新潟県の順でヨウ素131が検出された。そして、翌日の19日に、この検査結果を公表した枝野ちゃんは、トンデモないことを口にした。 「1都5県のうち、最大の77ベクレルが検出された栃木県でも、国の定めている基準値の300ベクレルを大幅に下回っておりますので、健康にはまったく影響がございません」
おいおいおいおいおーーーーい!「国の定めている基準値の300ベクレル」って、昨日、国民に分かんないようにコッソリと決めたんじゃないかよ!つーか、今までの基準値の10ベクレルを楽勝で超えちゃうことが事前に分かってたから、その前に大慌てで基準値を引き上げたんだろが!‥‥ってなワケで、テレビの前でひっくり返っちゃったあたしは、枝野ちゃんの次のセリフを聞いて、さらにひっくり返って一回転しちゃったよ。
「今後、もしも基準値を上回った場合には、なるべく飲用を控えるべきですが、他に飲むものがない場合には、飲んでも健康には差し支えありません。仮に基準値ちょうどの放射性物質を含んだ水を1リットル飲んだとしても、東京からニューヨークへ飛行機で移動した時に浴びる放射線の影響よりも遥かに低いのです」
出ました!幼稚園児も首をかしげる矛盾&危険度の高い内部被爆の比較としてレントゲンや飛行機など危険度の低い外部被曝を持ってくるペテンが炸裂!‥‥ってなワケで、17日に政府がコッソリと基準値を引き上げたのは、水道水だけじゃない。牛乳を始めとした乳製品は、ヨウ素が300ベクレル、セシウムが200ベクレル、根菜、芋類を除いた野菜類は、ヨウ素が2000ベクレル、セシウムが500ベクレル、穀物類、肉類、魚介類、鶏卵などは、セシウムが500ベクレルと、それぞれ大幅に引き上げられた。
ちなみに、ニポンは、輸入食品に関して、「セシウム134とセシウム137の合計が370ベクレルを超える食品は輸入禁止」っていう規定がある。どこかの国から輸入した野菜とかを計測して、セシウム134が200ベクレル、セシウム137が180ベクレルだったとしたら、相手の国へ送り返してるのだ。それなのに、自分とこの野菜なら、ヨウ素が2000ベクレル、セシウムが500ベクレルでもOKってことになっちゃったんだから恐ろしい話だ。 ‥‥そんなワケで、百歩ゆずって、この大幅に引き上げられた「緊急措置」の基準値にしても、キチンと守られてるなら、まだギリギリセーフなんだけど、悲しいことに、これがそうでもないみたいなのだ。こちらの4月12日付の「女性自身」の記事によると、4月4日付で厚生労働省が発表した震災後の食品調査結果で、912件のうち75%にあたる702件で放射性物質が検出されてたそうだ。 もちろん、この702件のほとんどは、大幅に引き上げた基準値の範囲内なんだから、3月16日までは問題になったけど、今は問題にならない。何しろ、そのために政府は基準値を引き上げたんだから。だけど、この記事によると、少なくとも5件は基準値を超えたものが流通してたって書かれてる。以下、その部分だけを引用する。 「東京都で流通していた千葉県旭市産の春菊は、放射性ヨウ素が規制値の2倍強の4300ベクレル。長野県では、茨城県鉾田市産のほうれんそうが2倍強の4100ベクレル。愛知県や京都府でも茨城県産の規制値越え野菜が検出されるなど、判明しているだけで5件もあった。」
そして、今度は、民主党の岡田克也幹事長の実家としてもオナジミの「イオン」が、基準を超える放射性物質が検出されたために千葉県が出荷自粛を要請していたサンチュを1都6県の57店もの「イオン」のスーパーで販売してたことが発覚した。「イオン」の広報の説明によると、仕入れ担当者が千葉県旭市の集荷業者「グリーンファーム」と直接交渉して、本部と相談せずに、独自の判断で仕入れたそうだ。ようするに、農協を通したら出荷自粛を守ってないことがバレちゃうから、農協を通さずに直接買い付けたんだけど、本来なら出荷できない野菜なんだから、そうとう買い叩いたんだと思う。
このサンチュは、合計で2200パックが、東京を始めとした「イオン」のスーパー57店に並び、何も知らない人たちが買ってった。イオンの広報は、「仕入れ担当者の処分については検討中です。お買い上げくださったお客様には、お申し出いただければ料金をお返しいたします」とかって言ってたけど、ほとんどの人は食べちゃったと思うし、今さら200円だか300円だかを返されてもジンジャエールだろう。 そして、さらに、この「グリーンファーム」は、こちらの続報に書いてあるように、「イオン」だけじゃなくて、大阪や広島を始めとした各地の小売業者、合計十数軒にも出荷してたそうだ。あたしは、ハッキリ言って、最初にご紹介した規制値の2倍以上の春菊やほうれん草が流通してた件とか、このサンチュの件とかは、氷山の一角だと思ってる。だって、今までずっと指摘してきたように、震災が起こる前から、野菜や魚や肉の産地偽装なんて日常的に行なわれてきたからだ。それが、今になってピタッと止まるワケがない。逆に、せっかく作った野菜が出荷規制や出荷自粛にされちゃう今だからこそ、大部分のマジメな農家が泣く泣く廃棄処分してる裏で、ほんのひと握りの悪どいヤツラは、裏で流通させてるに決まってる。 今回の件にしたって、スーパーだの小売店だのに出荷したから発覚したけど、たとえば、外食チェーンとか加工食品メーカーとかに大量に出荷してたとしたら、消費者は何も知らずに口にしてることになる。「風評被害」で苦しんでる農家の人たちは、ホントに気の毒だと思うけど、消費者の立場から言わせてもらえば、こんな事件が次々と発覚してる状態なんだから、こっちは何を信じていいのか分からない。特に、小さな子供を持つ親なら、なおさらだろう。 ‥‥そんなワケで、大気も、水道水も、食品も、次から次へと放射性物質の基準値が大幅に引き上げられちゃったけど、今度は、あろうことか、文部科学省が、福島県の幼稚園や小学校の屋外で子供たちが遊んだり運動したりする時の許容量を、これまでの年間1ミリシーベルトから、20倍の20ミリシーベルトに引き上げる方針を示したのだ。ちなみに、さっきまで使ってた「ベクレル」ってのは、水や食品に含まれてる放射性物質の量を示す単位で、この「シーベルト」ってのは、人間が放射線の影響で受ける単位だ。だから、おんなじ100ベクレルのヨウ素とセシウムがあったとしても、人間が影響を受けるシーベルトは大きく違ってくる。 で、そんなシーベルトだけど、今までは大人も年間1ミリシーベルトだったんだけど、今回の事故を受けて、政府はさっそく20倍の20ミリシーベルトに引き上げた。まあ、大人は仕方ないとしても、4歳や5歳の幼稚園児まで大人とおんなじ20ミリシーベルトだなんて、まるで「子供なんか死んでもいい」って考えてるとしか思えない。だって、放射線を直接扱う専門職の男性でも、年間の許容量は50ミリシーベルトで、これを超えたら現場には出られなくなるからだ。さらに言えば、こけだって極めて危険な数値で、事実、50ミリシーベルトの被曝で亡くなった人もいる。 詳しくは、こちらのブログの記事を読んでもらえば分かると思うけど、浜岡原発に勤務してたSさんは、別に何の事故も起こってない原発の計測装置の点検作業をしてただけで、累積で50.63ミリシーベルトの放射線を浴びて、白血病を発症して、29歳の若さで亡くなってしまってる。記事に書かれてるように、労災認定されてるんだから、点検作業中の被曝が原因だって認められてるのだ。 他にも、70ミリシーベルトの被曝で多発性骨髄腫を発症した人もいるんだから、小さな子供たちの年間許容量を20ミリシーベルまで引き上げることが、どれほど危険なことなのか分かるだろう。これは、専門家でも何でもないあたしが勝手に言ってるだけのテキトーな感覚の話じゃなくて、専門家もおんなじことを言ってる。原子力安全委員会の代谷誠治委員は、15日の今日、大人とおんなじ20ミリシーベルへの引き上げを決めた高木義明文部科学大臣に対して、「せめて成人の半分に当たる年10ミリシーベルト以下の被爆量に抑えるべきだ」っていう申し入れをした。そしたら、高木大臣は、平然とこう言い放って、代谷委員の申し入れを突っぱねたのだ。 「代谷委員の発言は、安全委員会全体の見解ではない。目標は20ミリシーベルトで、学校を頻繁に移動させることはできない」
ようするに、子供たちの命を守るために年間許容量を設定するんじゃなくて、実際の放射線値のほうに子供たちの年間許容量をムリヤリに合わせただけってことだ。それは、オトトイの13日付の、この記事を見れば分かるだろう。
「福島県の20小学校で土壌検査、19校から検出」(読売新聞)
福島県災害対策本部は13日、福島第一原発の放射能漏れ事故を受け、県内の小学校20校で実施した土壌検査の結果を発表した。4月5、6日、各校で校庭の表層5センチの土壌を採取し、放射性ヨウ素とセシウムの濃度を測定。19校で土壌1キロ・グラムあたり874ベクレル〜5万9059ベクレルを検出し、最高は川俣町立山木屋小で土壌1キロ・グラムあたり5万9059ベクレル。南会津町立田島小では検出されなかった。(2011年4月13日) http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110413-OYT1T00503.htm ‥‥そんなワケで、20校のうち19校からヨウ素とセシウムが検出された上に、最高は1キロあたり6万ベクレル近くもある。もちろん、校庭の土を1キロも食べる子供なんていないけど、これほど濃度の高い場所で遊んだり運動したりしてたら、口や鼻から吸い込むこともあるかもしれないし、ケガをして傷口から体内に入る可能性だってある。それでも、多くの学校の子供たちをすべて安全な地域の学校へ転校させることなんて無理だから、子供たちの年間許容量のほうを放射能汚染された学校のレベルに合わせて引き上げたってワケだ。この、とても文部科学省のやることとは思えない、あまりにも残酷な決定によって、5年後、10年後に、「チェルノブイリ・ネックレス」をつけたニポン人の若者たちを見ることにでもなったら、あたしは、これほど悲しいことはない。未来は子供たちのものなのに、その子供たちから未来を奪うようなことをするなんて、ホントにこの国の政府って、いったいどこを向いて政治をやってるんだろう?‥‥って思った今日この頃なのだ。 http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2011/04/post-7f7e.html
|