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福島原発の現状をどう見るか(後藤政志さん談)
明日に向けて(42)
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守田です。(20110414 17:30)
本日のお昼頃、国会で院内集会が行われ、後藤政志さんが、福島原発の現状に関しての説明をされました。社民党の福島瑞穂さんなど、議員さんも参加していました。
【参照】4/14 緊急院内集会Part3 福島原発の現状をどう見るか
原子力資料情報室
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1079
いつもながら、後藤さんのお話は、彼の技術者魂とでも言うべきものが、切々と伝わってくるもので、大変、胸を打たれます。技術者魂とは、技術をもって、人々の幸せに貢献しようとする心だと僕には思えます。
原子力の体系は、そうした技術者魂と殺してしまうものだと思います。後藤さんは全身で、それに抗議しておられるようにも思えました。
非常に示唆的な内容だったので、ノートテークをしましたが、話された内容の全文の書き起こしてはなく、守田による要約的なまとめを行っています。また最後の方で急ぎ足で説明された部分を、省略してあります。
この重厚な内容を、解説的なまとめとともに、みなさんにお届けしたいのですが、今、どうしてもこれ以上、時間をとれないので、まとめは数時間後に行うことととして、先に後藤さんの話された内容をお届けします。
今回も、あくまで後藤さんが話されたそのままの言葉ではなく、守田が聞き取り、ポイントをまとめていることに注意してください。引用などで使われる場合は、原子力資料情報室のページから中継録画にアクセスし、確認をされるようにお願いします。または守田が聞き取った内容と明記してください。なお小見出しも、読みやすくするために、守田がつけてあります。
【動画】2011/4/14 福島原発の現状をどう見るか 後藤政志氏
http://www.ustream.tv/recorded/13994903
以下、後藤さんのお話の要約をお伝えします。
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福島原発の現状をどう見るか 後藤政志さん
4月14日院内集会にて
国際的評価について
格納容器に放射能が閉じ込められれば大事故ではなかった。漏れ出てしまったことに一番の問題がある。
現在はチェルノブイリの1割とか言われているが、海や地下水に出ているものは測られていないので、正確さはない。だんだんより大きい数値に訂正される可能性がある。
福島原発の概要
福島原発はGEが開発した。1号機が一番古く、2号機から5号機までが次世代(改良型)、6号機はその次の世代で、1号から5号までは格納容器の型式がマーク1型、6号機がマーク2型になっている。
電気出力は1号機が460MWe。熱量の三分の一しか電気に変えられないので熱量としてはその3倍ある。2号機から5号機は784MWe、6号機が1100MWeの電気出力がある。
原子炉圧力容器の最大圧力が、1号機から4号機が8.24MPa、5号機、6号機が8.62MPaになってる。ほぼ82気圧から86気圧ぐらい。格納容器の最大圧力が、1号機は0.43MPa、2号機から5号機が0.38MPa、6号機が0.28MPaで、1号機では約4.3気圧である。
格納容器の最高温度が1号機から5号機まで138度。6号機はドライウェル部分が171度、サブレッションチェンバーが105度となっている。
非常用ディーゼル発電機があり、外部電源を喪失したときのためにそれぞれに2台設置されている。6号機だけは3台ある。
事故の概要と再臨界阻止のためのホウ酸水投入
事故時、地震によって、送電線が切れて、外部電源を失い、津波によって非常用ディーゼル発電機が止まって、全電源喪失事態に陥った。このため全ての電源ポンプも止まったが、1号機だけ非常用の復水ポンプが作動し、8時間ほど回っていた。
より細かく見ると、1号機では地震により、運転が止まった。核分裂反応は止まったが、崩壊熱が発生し続けている。しかし交流電源を喪失し、注水機能を喪失した。
そのため12日に原子炉格納容器の圧力が異常上昇し、ベントを開始した。その直後に、水素爆発が起こった。その後、炉心に海水とホウ酸の注入を開始。
内部はぐちゃぐちゃになっている。その場合、燃料と燃料の間に水が入ると、再臨界を起こす可能性がある。それだけは絶対に起こしてはならない。それでホウ酸水を入れている。
今ではこう言ってもそれほど非難はこないだろう。当初は再臨界などというと怒られた、お前、そんなことは言うなと。しかしそんなことはない。原子力ではこんなことは常識だ。水素が出て爆発する可能性がある、溶融物が出てきたら、水蒸気爆発が起こりうる、再臨界を起こしたら最悪だ、これが3原則だ。
普通の設計条件ではなく、それをはるかに超えるシビアアクシデントを研究している人間は、常識としてそうしたことを考える。そのためホウ酸水と注入しているのであって、それをしながら再臨界がないなどというのは詭弁だ。絶対に起こしてはならないから入れている。
だったらそう認識しなければならない。そのためにホウ酸を入れていることを説明しなければならない。それがないために、人々の意識は海に出て行っている放射能に注がれている。それも大変なことだが、それは末端なのだ。
出てくるのは格納容器からだ。そこが破られてしまった。破られて一旦、環境に出たものは回収できない。だからやむを得ないというのは事実だ。しかしこれはもう原子力プラントとしての破たんだ。
止めることには成功した。しかし冷やすことに失敗している。閉じ込めることにも失敗した。この時点でプラントとして破たんしてしまったのだ。
それは初日で分かった。これはもう破たんしたと思った。ところがそうしたことが何ら発表されない。それで私は独自に発表を行った。
それが爆発的に行くと、チェルノブイリのようにより遠くに行くことになるが、ともあれ現状でも漏れていることは事実なのだ。
保安院のデータによる事故の分析
保安院がまとめたデータを解析すると一定の推測ができる。水素爆発が起こった。これの原因解明が必要だが、これは建屋を破壊して、原子炉格納容器への影響は少なかったようだ。幸いだと言える。
ECCS(非常冷却装置)が動いたら、1時間に千トンの水を入れられるのであっという間に冷える。しかしこれが動かないので、消火系から水を入れているが、これは1時間から2トンから10数トンしかない。数十分の一から百分の一で入れているから冷えない。
原子炉が冷えないと、その温度は格納容器にいく。そうなると格納容器が壊れないようにベントしなければならない。そのため圧力と温度の双方が問題になる。
これは明日終わるとか、明後日終わるとかの問題ではなく、月単位以上、かかる問題としてある。
同じく3月の31日までの原子炉のデータを見てみる。しかし初めから、原子炉の圧力が運転時の10分の1になったものから発表されている。それはなぜかが問題になる。
原子力の水位のデータが出ている。1.5メートル以上露出していることが明らかになっている。スリーマイル島事故よりもひどい状況で、非常に深刻だ。私はむしろよく今日まで来ているなと思っている。途中で破局的な事故になることを、何度も心配した。
今は破局に向かっているということはなくなってきているのだろうとは思う。しかし油断を許すような状態ではけしてない。なぜかというと、熱源がそのままある。今も非常に少ない水を入れている。それがとまってしまったらすぐに危機になる。
今はもともとプラントにある設備で冷やしているのではない。それが全部ダメになって、外から非常用のポンプを持ってきたりしている。それを理解しないと、まったく今の事態をとらえることはできない。非常に深刻だ。そのため何をおいても冷却に努力しているはずだ。他を捨ててもやらなくてはならない。
しかしそれが他の問題も作る。原子炉の側に気をとられているうちに、燃料プールが干上がってきたりする。そこにも燃料がある。そこでまた問題が起こりえる。
1号機に十分な水が入っていない可能性
再度、1号機を見ていく。
ここには「隔離時復水器」というものがついていて起動した。これは古いもので1号機にのみある。8時間は動いたがそれで止まった。その後、どんどん悪くなった。そのため緊急で水を入れる経路を作って、細々と入れている。
しかし原子炉の水位低下が起こり、炉心が露出し、過熱して被覆のジルコニウムが溶け、水と反応して水素が発生した。おそらく格納容器の上部に水素がたまり、圧力でフランジがおしあげられて水素が出たと私は考えているが、これは仮説に近い。
今日、一番、お話したいのは次の心配だ。これは私だけの意見ではなくて、他の技術者の方の意見を聞いて考えたものだ。なぜこんなに長い時間、1号機だけ冷えないのか。
炉心を水漬にする必要があるのだが、どのように水が入ってくるのかというと、いったん外側から水が入ると、すぐに炉心に入らない。それで再循環ポンプという経路を通って入るという回路を経る。
その途中で漏れてしまっていると、ほとんど炉心にこなくなってしまう。そのため水を入れていて、冷却できていると思いたいが、実は水が届いていない可能性がある。あるいは炉心の中のある部分までしか入らなくなっている。このことが懸念される。
水素爆発については、小さなことでもありうる。地震が来て、金属がすれて火花が散ると着火しうる。そのため火種はどこにでもある。そうなると問題は水素の濃度ということになる。
ベントに見られた矛盾
1号機について、原子炉の配管には高圧系と低圧系がある。このため高圧用のポンプもある。それ以外に低圧系がある。それの組み合わせが非常用の冷却系だが、それが全部だめだった。
それで格納容器の圧力があがったので、ベントした。しかしこれは本来あってはならず、設計上もつけてはいけない毒ガスが出るバルブだ。当時は過酷事故などないと考えてこうしたものはつけなかった。
しかしスリーマイル島事故があり、過酷事故を考えるようになった。しかしそれは確率的に非常に小さいことでほとんどありえないことだと考えられた。そしてほとんどありえないことのためにと、半端な弁がつけられた。
ヨーロッパでは発想が違う。毒ガスを出す弁になるので、非常に重厚なフィルターがここについている。大変、大きく特殊なものがついている。日本は建前で進んだ。「起きるかもしれないけれど、そんなことは考えなくていい」とした。そのため国や安全委員会はフィルターをつけることを、電力会社に義務づけていない。
民間が自主的に、シビアアクシデントに備えるようにとなっている。法的義務を化していない。しかし毒ガスを出すのは嫌だろう。とても民間の判断でできることではない。それで民間の決定でやるのか、政府の判断でやるのかというやりとりがあった。過酷事故対策全体がこうした構造になっている。
4号機プールについて
4号機の経過をみていく。
運転してなかった。その使用済み燃料プールの温度が84度になり、爆発が起こり、3階で火災が発生した。ここがまた90度になったと言われている。これも非常に危機的な問題だ。
プールの水位が低下すると、燃料棒が損傷し、放射能が出てくる。長期冷却ができない状態にある。
燃料集合体の数を見てみると、炉心に1号機は400体、2号機は548体、3号機も548体ある。4号機は炉心にはないが、プールを見てみると、1号機292体、2号機587体、3号機514体に対して、4号機は1331体もある。もの凄い本数で、もの凄い熱量がある。
そこに水を入れているが、センサーが壊れていて、水位がよく分からない。その状態で水を入れているが、水温があがっていく。これは非常にゆゆしきことだ。
事故の本質は、はじめにどれだけ危険率があるかにかかっている。もともと危険なものがどれだけあるかだ。その点ではチェルノブイリよりも、日本の方がはるかに危険だ。持っている危険物の量がめちゃくちゃに多いからだ。それが破局的な爆発にいたっていなくて、まだ漏れが少ないというのが現状だ。
そうした危険なものを、技術でコントロールできることを前提にしている。しかし「想定外」を口にするような人たちがやっていることは私は絶対に信じてはいけないと思う。想定外などありえてはいけないのだ。
繰り返され、隠されてきた制御棒関連事故
現状を再度、とらえ返してみる。
原子炉の冷却に失敗した。現状では非常に少ない水量で冷却をおこなっている。これでは完全に冷やせないが、止めるとメルトダウンしてしまうので、続ける以外に選択がない。
原子力は安全だということが崩壊している。今回は、止めることはできた。しかしこれまで制御棒の事故はなんども起こっており、地震で制御棒が必ず入るとは言えない。
同時に運転が止まった状態は、非常時への対応がとれない状態でもある。止まっている原発は安全なのではなく、例えば燃料交換で原子炉の蓋があいていればもっとも危険な状態にあり、そのような状態で地震などに襲われれば極めて深刻な事態になりうる。その意味で、止まっている原発が安全なのではけしてない。
1999年6月18日に志賀原発で、制御棒の3本が脱落し、臨界が起こった事故があった。こうした制御棒が入らない、脱落するという事故は非常に多い。これが私が原子力の安全性を最終的に否定した要因だ。
しかし技術者たちはここを認めない。設計者仲間と討論した時に、私がこの点での事故の可能性を指摘すると、そんなことはありえない。ここだけはもの凄く丁寧に作っているので、そんな事故は起こらないという反応しかかえてこなかった。何度もそうした話をした。私もそうだと思いたかった。
ところがもの凄い回数の、挿入時の失敗や、脱落事故が重ねられていたことが長い間隠されていて、かなり後になって発表された。このときに私はもうダメだと思った。
ところがみなさん、これをあまり心配されていない。これは私は最悪だと思った。こんなことをおいておいたまま、原子力などよくやるなというのが私の認識だった。それに加えて次のことがある。
確率的にごく低いからといって、
事故の可能性を容認してはならない
止めるに続いて冷やす、閉じ込めるが安全原則として言われてるがこれも失敗した。2号機、3号機の原子炉圧力は、大気と同じになっている。密閉性が明らかにない。
どこかが溶けているのか、壊れているのか分からないが、普通では原子炉圧力容器に穴が開いているのは、尋常ではない事態だ。しかも格納容器まで損傷している。放射能が5重の壁と突破して出てきている。格納機能が全部突破されている。
これは津波のせいだなどとは言えない。理屈で言えること、物理的に想定できることは、事故では起こりうるのだ。実際に起こりうることは起こると考えて対策を立てるのが、安全上の原則だが、原子力を進めている人たちの考えで信じがたいことは、起こりうるけれど、確率的に低いからいいといって簡単に切ってしまうことだ。
確率が小さいからといって、切っていいレベルではないと私は思う。原子力をまだ進めるという人と、私のように止めるべきだというものとの違いはここだと思う。確率的にあることを無視してもいいと考えるか、無視してはいけないと考えるかの違いだ。私はそのように認識している。
私はこの考えを押し付けるつもりはない。どちらがいいのか、みなさんで判断して欲しい。ただし覚悟していただきたいのは、今の事故は最悪ではないかもしれないということだ。もしかしたら、この事故の中では最善の状態で被害を止めているのかもしれない。
最悪では東京まで深刻な被害がいくかもしれない。そうしたシーケンスを認識しないとまったく勘違いしてしまう。地震一つ見ても、今回の余震ですら女川で、設定条件を超える揺れがきてしまっている。ふざけるんじゃないといいたい。日本で地震のないところなどない。本当にそのことを考えてほしい。そうでないと日本は壊滅する。だから考えて欲しい。心からそう思っている。それが一番、大切だと思う。
格納容器の修理は不可能、そこに危機の本質がある
タービン建屋に汚染水がたまっている問題がある。これもどこから出ているかが分からないことに最大の問題がある。分かっていれば、そこを止めれば問題は終わる。しかしそれが分からない。だから対処療法で、水を移すことなどやっている。やらなければならない状態にある。
もうひとつ批判すると、これだけここに何万トンも汚染水があるのが分かっているのだから、船を持ってくることが考えられるはずだ。私はもともと、「船屋」だが、船は人間が持っている技術の中で、もっともしっかりしている閉じ込め機能を持っているものの一つだ。水が漏れたら沈没するからだ。
だから緊急に水を貯める必要があるならば、船を持ってきて、そこにいれればいいのだ。ところがメガフロートを持ってくる間に「低レベル」を捨ててしまった。なぜか。こんなのは国際問題になるのが当たり前だ。責任問題だ。
高レベルものの方がリスクが高いから、低レベルのものを捨てたというとそうだと見えるかもしれないが、そんなことは分かり切っていたことだ。だから船の手配云々が言われていたのだ。なぜそれをやらなかったのか。ここは問題だ。
格納容器について、どこから漏れているか分からなくなっているが、格納容器の周りは厚いコンクリートで覆われているので、外から見ることはできない。運転を止めて中から見るしかないが、今はそんなことは絶対にできない。だから格納容器が漏れている場所は発見できず、修理ができないというのが結論だ。これが原子力が危険なことの一つの根拠だ。
スリーマイル島事故のときも、中がどうなっているかいろいろと論争があった。実際には、原子炉の底が抜けかかっていた。今回も、どこまでいくか、非常に危機的な状態だ。しかも2号炉はすでに格納容器が損傷している。
ちなみにこれがどうなっているかが分かるのは10年後で、それからさらに10年かけて、どうしてそうなったのかが調べられるだろう。原子力はそんなことをずっとやっている。
(以下略)
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