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日経ビジネス オンライントップ>投資・金融>田村耕太郎の「経世済民見聞録」
最悪の愚者が指揮官となる事態を想定せよ!
ハーバード流危機管理の要諦
2011年4月15日 金曜日 田村 耕太郎
東日本大震災 政治家 指揮官 危機管理
4月10日の日曜から、危機管理を学ぶ最高の機会を頂いている。ケネディスクールの危機管理合宿に招待されたのだ。これは毎年1回、世界中から危機管理の専門家が集まり、世界の最新の危機をケーススタディ中心に皆で分析し学びあうもの。
ケネディスクールで危機管理の合宿に参加
初日の最大の学びは「我々を苦しめてきた危機は、最初が天災であっても最後は人災。最悪の愚か者が危機管理の指揮権を持つと想定することから危機管理は始まる」という教えだった。
我々日本人は完璧な指導者の存在を妄想し、神風が吹いて事態が好転することを期待する。この姿勢が真っ先に否定された。「想定外の危機は必ず起こる。事態はますます悪い方向に進むもの」という開き直りから危機管理の議論は始まる。
メンバーが素晴らしい。軍、国務省、保健衛生省、交通省、国家安全保障省、FEMA(非常事態管理庁)、国防総省、入国管理局、CIA、FBI、警察、消防、自治体などから、かなり上級の幹部クラスが集結した。迎えるのは、全米で最も高名な危機管理の専門家と言われるハーバード大学ケネディスクールのダッチ・レナード教授だ。
同教授はこう切り出した。「今年は、この危機管理合宿が20回目を迎える記念すべき年だ。そこで最高のメンバーを迎えた。ニュージーランドに続いて日本で大地震が起き、津波、原発事故、風評被害、電力問題と5重苦が深刻化している。今こそわれわれが貢献しなくてはならない」。
「今年は初めて日本から、元政治家である人物が参加してくれた。皆さんを迎えて興奮している。同時に、私はものすごく緊張している。ハリケーン・カトリーナからイラク、ソマリア、そしてハイチ地震の現場に赴き指揮を執った皆さんに学びを提供できるだろうか?私こそ皆さんから学びたい」
「危機発生後の対応」が危機管理に関する議論の主流
危機管理は3つの段階に分けられる。「危機が起こる前の準備」「危機が起こってからの対応への準備」「対応が終わってからの復興への準備」だ。各段階のポイントをまず整理した。ただし「危機前の準備」は中心課題とならない。これは語り尽くされているし、ここに集まったメンバーは危機前の対応のプロ中のプロだ。
日本ではまだまだ「危機前の準備」に関心が強く、ニーズも高いと思う。しかし、世界の危機管理は「危機が起こる前の準備」についての議論が終わり、中心課題は「危機発生後の対応」と「危機からの復興」に映っている。しいて、危機発生前の準備を議論するなら、「危機発生後の事態の変化や復興を考慮に入れて、それらを危機前にいかに段取り良く想定して準備に加えていくか」が課題である。
危機発生後の中心課題は、組織の問題だ。発生後、危機は自己増幅にする傾向が強い。危機の自己増幅の過程で「危機に対応する組織へのストレス増大」が起こる。加えて「異なるミッションとカルチャーを持つ複数の組織間の連携」が不可欠となり、その連携が各組織へのストレスを増やしていく。今回の震災では、政府と東京電力、政府と米軍との間に連携が不可欠となった、と言えるのではなかろうか。
事態を悪化させる政治家の介入
最も議論され、最も難しいと言われる課題は「政治家の介入」である。危機が自己増幅する過程で必ず「政治家による介入」が起こる。初日は、これに焦点を当ててさらに議論した。
真の危機対応は行政機関だけでは不可能である。異なるミッションを持つ行政機関が機器対応にい参画すると、その時点で、複数の組織を調整する機能が必要となる。各組織間の調整後の対応や、対応の目的や成果について、責任を持って国民に説明する必要もある。ここに政治家の出番がある。危機で不安になっている国民に勇気を与え、ビジョンを示し、それに向かって国民と行政機関の対応を結束させるのが政治家の役割である。
ところが、世界の危機管理を見直すと、政治家による介入は良からぬ方向に向かうことが多い。「危機こそが自らが目立つチャンス!」とばかりに、専門知識やデータを持っていないにもかかわらず、でしゃばってくる政治家だらけなのだ。サンディエゴで起きた山林大火災では、新聞の見出しに載ることを狙った政治家が消火訓練に不慣れな軍隊を無理やり動員し、現場の消防士たちの活動の足を引っ張った。
役割と出番を勘違いしている政治家たち
政治家のおせっかいによる悪影響を、地震や台風のそれと同様に想定して対応するのが世界の危機管理だ。私は合宿で「日本の愚かな“政治主導”が、有効な危機管理をどれほど邪魔をしているか。政治家が危機の中で、役割を間違えているから、危機が深刻化する」と熱弁ふるってみた。意外にも、世界の専門家の反応は「それが何か?」という感じだった。聞いてみると、米国はもちろん、各国とも「政治家の愚かな危機管理介入」が日常茶飯事なのだ。
ハリケーン・カトリーナの被害からいかに復興したのか?
世界の危機管理では、でしゃばりな政治家の介入も、危機が増幅する際の前提として扱っている。参加者からは「やたら専門家を集めたがる」とか、「実施部隊の言うことと違うことをやりたがる」とか、どこかで聞いたような話がたくさん出た。「でしゃばり」は、古今東西を問わず政治家の特徴になっているようだ。
政治家の介入問題について、次号以降で議論を紹介していきたい。乞う、ご期待。
初日の最後は「危機管理の全体をとらえての資源を配分するべき」という話だった。前述の通り、危機管理には以下の3つがある。それぞれに対して、どのようなバランスで投資していくかが重要になる。
1・危機が起こる前の事前準備
2・危機が起こってからの対応への準備
3・対応が終わってからの復興への準備
これらの準備への投資をどのような比重でやっていくか真摯な議論が求められる。危機が発生する可能性や、予想される被害の大きさなどは危機の種類による。準備にどれだけの費用と時間をかけられるかも、ケースによって異なる。さらに、それぞれの準備の先頭に立つ人材も違う!
日本と世界の危機管理の違いは、どれだけ深刻な事態を想定するか、その度合いにある。世界の危機管理は「聖人君主」や「理想の展開」なんて全く想定しない。「ダメなものは相変わらず絶対ダメ」「事態はますます悪くなる」のが常識。この流れをどうやってより良い方向に向けるかが危機管理の要諦だ。
初日の夕食はFEMA(米国緊急事態管理庁)の幹部3人とアメリカンステーキに舌鼓を打った。FEMAはアメリカが誇る緊急事態管理庁だ。災害からテロまでを一手に引き受ける。
ハリケーン・カトリーナの時の対応について、興味深い話が聞けた。ハリケーンや洪水で壊滅した町の復興事例や、洪水を避けるために街ごとそっくりそのままを高台に移した事例について伺った。日本の被災地復興に役立ちそうな事例が一杯だった。これらの資料もくれるという。
世界レベルの最新の危機管理について発信を続けていく。
田村耕太郎の「経世済民見聞録」
政治でも経済でも、世界における日本の存在感が薄れている。日本は、成長戦略を実現するために、どのような進路を選択すればいいのか。前参議院議員で、現在は米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェローを務める筆者が、海外の財界人や政界人との意見交換を通じて、日本のあり方を考えていく。
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田村 耕太郎(たむら・こうたろう)
米エール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェロー。前参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。
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