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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2410
雨の日は外を歩けなくなる
原発事故沈静化の切り札となる冷却機能の回復が、地震から3週間経っても実現しないなど、誰が想像しただろう。レベル7の大事故・チェルノブイリ原発では発生から10日後、レベル5のスリーマイル島原発事故では16時間後に冷却がスタートした。
いまや世界的に有名になった「フクシマ」では、それらよりはるかに長い時間がかかっている。その間、肝心の炉心がずっと不安定なまま放置され、放射線が漏出しつづけている。
いったい事態は、どこまで進行するのか。そして、「最悪」の場合、どういった事態が起こることが考えられるのか。
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は、現状を「きわめて深刻な事態」だと分析する。
「東京電力の勝俣恒久会長は、3月30日の会見で今後の見通しを問われ、何も答えられませんでしたが、それは事実彼らにも見通しがつかないからです。いま現場では、破滅的状況に至るのをなんとか回避している、という状態でしょう。
止める、冷やす、閉じ込めるという3段階のプロセスのうち、すでに冷やすのが2週間続いて現在に至っています。私はこの事故の発生時、1週間で閉じ込めることが可能だと思っていました。しかしその後、専門家にとって『想定外』のことが次々に起こっています。仮にこのまま冷やし続けても温度が下がらなかった場合、破滅的な事態が起きてしまう可能性がある。いま、測定されている放射線量の10倍から20倍が放出されるでしょう」
関東近辺に雨が降った3月22~23日には、東京でも0・1マイクロシーベルト前後の放射線が測定され、水道水中の放射性ヨウ素が「乳児に飲ませることを避けたほうが良い」レベルまで上昇した。
仮にこれが20倍になれば、東京では大人も雨の日は外出を避け、水道水はいっさい飲めないようになるだろう。風呂に入るのも、神経を使わなければいけないかもしれない。
福島第一原発には6つの原子炉があるが、それぞれに抱えている問題は違う。
とくに、地震発生時運転中だった1~3号機は、それぞれに深刻な事態を迎えている。
2号機は圧力容器に直接繋がる圧力抑制室が損傷した可能性が高く、3号機は超高温の爆発の結果、大量の放射線が放出した。
しかし、2号機、3号機は爆発後炉内の温度、圧力とも低いレベルで収まっている。
現在原子炉内の温度・圧力が高いのは、皮肉なことに圧力容器が健全性を保っていると思われる1号機。
炉のなかで熱の逃げ場がないために圧力が上がり、温度も一時400度以上と設計限界を超えた。慌てて炉内に水を注入、いったん温度を下げることに成功したが、その後も329度まで急上昇するなど、コントロールに四苦八苦している。
チャイナシンドローム
元東芝の原子炉格納容器設計者・後藤政志氏は、29日の講演で聴衆から「最悪の事態はどのようなものと想定されますか」と質問を受け、「いまのところ可能性は低いと思いますが・・・」と前置きしながら以下のように回答した。
「すでに炉心はかなり溶融(メルトダウン)していると思いますが、さらにこれが進んで圧力容器の底に落ち、熱い核燃料の塊ができて、それが圧力容器を突き破り、底に抜けた場合です。
そこに少量でも水があれば、大きな爆発的事象≠ェ起こる可能性がある。可能性は低いですけれどもね。そうなれば、チェルノブイリのように大規模に放射性物質を噴き上げるかもしれない。いわゆるチャイナシンドローム(地球の裏側まで届くような深刻な放射線被害)と言われるような現象ですね」
後藤氏は質疑応答で簡単に触れただけだったが、チェルノブイリ事故では500km以上離れた場所で放射能汚染が検出されている。
チェルノブイリ以上のエネルギー量を持つ福島第一原発で核燃料が爆発、噴出すれば、名古屋、函館の先まで放射線が届く計算になる。日本だけでなく、風に乗って中国、アメリカ、太平洋全域まで放射線が降り注ぐだろう。生態系もメチャクチャになる。国際社会が躍起になって福島第一原発を抑えこもうとするのも、このシナリオが頭にあるためだ。
後藤氏と同じくかつて東芝に勤務し、原子炉の安全性研究に携わっていた奈良林直・北海道大学大学院教授は、途中までの進展は後藤氏同様の見解だが、結論では意見を異にしている。
「今回のようなシビア・アクシデントで欧米諸国が心配していたのは、炉内が冷やしきれなくなって圧力容器の底が融点に達して溶け、核燃料ごとドンと下に落ちるというメルトダウンです。しかし、今回の場合はすでに4000tもの水を外部から入れているわけですから、圧力容器の外側にある格納容器にはかなりの水が溜まっていると考えられる。
2号機、3号機は圧力容器底部の、制御棒を差し入れる管の溶接部分などの比較的弱い部分が損傷して、すでに核燃料が漏れてぽたぽた落ちている状態だと見ています。これが少量ずつ下に落ち、底にある水のなかでジュッと冷やされて固まっている。だから2号機、3号機は炉内の圧力や温度が上がらないで済んでいるのではないでしょうか。いわば、炉の損傷が結果的に弁の役目をして、ベント(圧力を逃がすこと)してくれたんだと思うんです。
おそらく、すでに燃料の半分以上が漏れ出して下の水の部分に溜まっていると考えています。
1号機は、まだ燃料が漏れないで炉のなかにあるのでしょう。これは冷やし続けるほかない」
一方、日立関連会社のエンジニアとして福島第一原発4号機の設計にかかわった田中三彦氏も、同様の事態を想定するが、漏れ出す核燃料の量が問題だ、と指摘する。
「いちばん心配されることは、圧力容器の底が抜けて、燃料と制御棒が下に落ちることです。圧力容器の底には140本くらいの制御棒が刺さっていますが、その溶接部分はこれだけの高温を想定していませんから、比較的弱い。そこが溶けてしまうと、下に燃料が漏れてしまうわけです。
燃料が下に落ちたときに、格納容器には水が溜まっているだろうから、そのときにどんなことが起こるかは落ちた燃料の量と、温度による。すでに燃料を覆っていたジルコニウム合金という被覆は溶けていると思われますから、水素が出る可能性は低い。可能性として考えられるのは、水蒸気爆発です。熱いものが大量に水に落ちれば、水蒸気爆発が起こるかもしれません。逆に少量であれば、焼け火箸を水に突っ込むように、ジュッとなって温度が下がる」
田中氏は、さらにその先のストーリーを案ずる。
「一ヵ所でも炉に損傷があれば、最終的に炉のなかのものは全部溶け出します。メルトダウンが延々続くことになる。それに格納容器のコンクリートが耐えられるのか、正直分からない。少量ずつであれば水のなかでマグマのように固まって溶岩のようになってくれるかもしれないが、冷え切らずにコンクリートを突き破るところまでいくかもしれない。どうなるかは、現段階で誰にも分からないんじゃないですか」
格納容器が破壊される
アメリカの原子力エンジニアで、スリーマイル島原発事故の復旧を手がけた会社の副社長も務めたアーノルド・ガンダーソン氏は、「格納容器には水が残っていないのではないか」と言う。
「格納容器の外にあるトレンチ(作業溝)で、放射線を含んだ水が大量に見つかっています。つまり、格納容器内には水がないということでしょう。
原子炉の圧力容器の底の防水シールドあたりに損傷があれば、その隙間から燃料が漏れてくることが考えられます」
ガンダーソン氏は、スリーマイル島原発事故で傷ついた炉心を調べたときの経験に照らし合わせ、こう語る。
「スリーマイル島で事故を起こした原子炉の燃料棒は、ひどく破壊されていました。炉内に水がなく、空焚きの状態が10時間から12時間続いただけで、炉心はメルトダウンしていた。しかもスリーマイルでは、燃料棒は事故の3ヵ月前に入れられたばかりで、発生していた崩壊熱はとても少なかった。
一方福島の場合、事故が起こる4年前から運転が続いていたことを考えると、燃料棒はより高い崩壊熱を持っていた可能性が高いし、数日間にもわたって冷却もされなかった。炉心のダメージは大変なものだと思います。
スリーマイルでは炉心の3分の1が溶融していましたが、福島の場合、70~80%が溶融していてもおかしくない。その場合、溶けた核燃料が圧力容器の底にたまり、防水シールドにダメージを与え、核燃料が圧力容器の外に漏れるかもしれない。また、海水を入れたために、熱と塩によって格納容器が腐食していることも考えられます。最悪の場合、漏れた燃料が水蒸気を生み出し、水蒸気爆発を起こして、格納容器を破壊するでしょう。格納容器が破壊されれば、いまよりももっと大量の放射線が放出されます」
ガンダーソン氏は水蒸気爆発が格納容器まで破壊する可能性があると見る。
炉内に注入される水は海水から真水に置き換えられたが、それも大きな効果はないという。
「真水を注入していますが、これは現状の悪化を抑えることはできるかもしれませんが、好転させることは難しい。第一、放射線の放出を食い止めるには、どうしたらいいか見当がつきません。ただ、水を注ぎ続けるしかない。
こういうことを言うのは悲しいですが、鎮圧には何ヵ月という単位ではなく、何年もかかるでしょう。その間、水を注ぎ続けるしかない。それで燃料プールを冷却できますから。ただ、それだけではもちろん十分ではない。だからといって、どんな手立てをとったらいいのか私には分からないです」(ガンダーソン氏)
居住不可能になる地域
燃料の温度が下がり、放出する放射線量が下がるまで数年の間、冷却に成功したとして、原発の周囲の地域はどうなるのか。ガンダーソン氏の見立ては、残酷だ。
「今後どのくらいの放射線が放出されるかわかりませんが、最悪の場合、チェルノブイリに近くなるほど悪化する可能性もある。福島原発の周囲80km圏内が、居住不可能になるでしょう」
半径80kmといえば、福島県の半分以上が含まれる。
もはや行政区としての福島県が今後維持できるのかどうかも、難しいという事態になりかねない。
しかもこれは、格納容器を破断するような「大爆発」を避けることに成功した場合の想定である。田中氏らが指摘するような水蒸気爆発が起これば、被害はもっと広範囲に及ぶ。
地震発生当時、福島第一で働いていたエンジニア・田所信也氏(=仮名、52歳)は、「中性子線が観測されたという報道にぞっとした」という。
「中性子線があるということは、(重金属の)コバルト60が外部に漏れているということでしょう。2号機か3号機かわからないが、圧力容器の一部が欠損して、内部の核燃料が漏れている可能性が高い。圧力容器の格納機能が落ちているんです。当然、東電はそれをわかっていたと思う」
田所氏は3月14日の3号機の爆発の瞬間、原発近くにいた。
「原発関連施設にいたのですが、原発のほうからドン! という大きな音がしたので、車に乗ってともかく原発に向かいました。途中、作業員や住民たちが逃げてきたので車に乗せ、関連施設まで送りました。施設内にある機械でサーベイ(放射線計測)すると、何人かはすでに被曝していたので、服を着替えさせた。そのときの線量は20ミリシーベルトでした。
枝野官房長官が、400ミリシーベルトという数値を公表したときに、これはどうにもならない、と悟りました。一度自宅に荷物を取りに帰りたいのですが、もう車には乗れません。壊れたのではなく、あのときに放射能で汚れてしまったからです」
すでに原発周辺は、人の住める地域ではなくなりつつあるということではないだろうか—。
冷却系の復旧遅れ、3号機にあるプルトニウム、高濃度放射線を含んだ水たまりなど、現在の福島第一原発は、チェルノブイリでもスリーマイルでも人類が経験しなかった悪条件がそろっている。
「最悪の事態」を避けるため、今日も多くの専門家、作業員らが持てる能力のすべてを傾けて奮闘を続けている。祈るほかない。
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