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◎「レベル7宣言」に過剰反応の必要はない
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2011-04-13
2011-04-13 07:40 永田町幹竹割り
被害状況は天と地の差があるのに事故評価はレベル「7」。この発表は独り歩きすると直感したが、被害状況までが「フクシマはチェルノブイリと同等」という“風評”となって世界中を駆け巡った。東電や原子力安全・保安院が「違う」と説明しているのに、国内でも民放テレビのコメンテーターが「深刻度はチェルノブイリより大きい」などと言い出す始末。ここは首相・菅直人が内外に向けて説明すべきところであった。12日急きょ記者会見したから、風評対策かと思ったが、世界に向けての発信はなく、自己保身に懸命だった。
もともと原子力事故に関する国際評価尺度は放出された放射能レベルを重視して決められる。フクシマの場合は試算では37万〜63万テラベクレルに達するから、放出量がチェルノブイリの1割でも「7」だというなら、それはそれで結構と言うしかない。急きょ政府が発表した背景には「国際的なプレッシャー」がある。欧米には日本政府の対応に基本的な不信感があり、ニューヨークタイムズなどは一貫して「情報隠し」を指摘してきている。ロシアでもチェルノブイリ原発元副所長のアレクサンドル・コワレンコが「チェルノブイリ事故と同じレベル7に達した」と6日に語り、通信社電で大きく伝えられた。中国も報道官が情報公開を強く要求している。結局、政府は一応「7」の「宣言」をしておく必要に追い込まれたのだ。
問題はこの発表が「チェルノブイリと同じだそうだ」という風評被害を招いてしまっていることだ。とりわけヨーロッパは25年前の放射能汚染の恐怖が強く残っており、「チェルノブイリと同等被害論」が浸透しやすい。こうした風評は日本からの食料品輸入はもちろん、工業製品の輸入にまで影響を与えかねない情勢となっている。しかしチェルノブイリは東電副社長・武藤栄が「原子炉全体が暴走し、大量の放射性物質を短時間で放出したチェルノブイリ事故と比べ、今回は放出のされ方や量が相当違う」と述べているとおり、異質なものなのだ。またあまりにもずさんな管理が原因であったチェルノブイリと同一視されるのは“国辱的”なものでもある。
両ケースを比較すれば、チェルノブイリで大気中に放出された放射性物質の量は、分かりやすく言えば広島に投下された原爆(リトルボーイ)の400倍であり、実態は核爆発だったのだ。ヨーロッパでは異常な放射能レベル上昇に当初は「核戦争が始まった」と誤解されたほどだ。チェルノブイリは黒鉛の固まりを制御に使った黒鉛炉で燃えやすい。爆発後は大火災となって放射性物質を巻き上げ欧州にばらまいた。福島原発は爆発とはほど遠い上に、軽水炉で内部に可燃物はない。チェルノブイリには格納容器はないが、福島は厚さ16センチの格納容器に囲まれている。ソ連政府の発表による死者数は、運転員・消防士合わせて33人。長期的な観点から見た場合の死者数は数百人とも数十万人ともいわれ、小児甲状腺癌などが多発している。福島は言うまでもなく死者はゼロ。年間被曝限度20ミリシーベルトを超えた周辺住民はいない。福島とチェルノブイリは根本的に異質なものであるのにも関わらず、発表が同一視する風評を作り上げた。それでもチェルノブイリが放出した放射能の量は、冷戦時代に何度も繰り返された大気圏内核実験1回あたりの放射能レベルの100分の1から1000分の1だった。
もちろん事態を軽く見るのは早計だが、今後の展開を見てもチェルノブイリと同様に臨界爆発を起こすことは原子炉が停止している限りあり得ない。炉心溶融は冷却が続く限りない。放射性物質の放出量もピーク時の1万分の1であり、グラフを見れば一目瞭然なのは、ピークに達して以来下がる一方だ。途中で上がった形跡はない。原子力安全委員会は「1万分の1の放出が継続してもチェルノブイリを上回ることはあり得ない」と断定している。
しかし復旧の過程で圧力を抜くベントを余儀なくされる可能性はあるとみなければなるまい。これは放射性物質を最大限出さない方法でやるしかあるまい。また、大型の余震が頻発しているのも気になる。マグニチュード9・1のスマトラ沖地震では、3か月後に同8・6の余震が発生している。これが直撃した場合や津波となって再襲来した場合に耐えられるかどうかだ。給水と窒素注入がストップした場合には炉心が水素爆発を起こす可能性が残っているのだ。従って一刻も早く恒常的な炉心冷却を達成して炉内を100度未満になる「冷温停止」に持ち込まなくてはならない。マスコミも状況悪化が原因ではない今回の発表を、鬼の首でも取ったように騒ぎ立て、国民の不安感をあおるような報道を慎むべきだ。一番悪いのはみのもんたのように物事を理解せずに、大衆受けを狙った直感だけでセンセーショナルにあおるやり方だ。
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