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国土の広さ、豊かさの違い、日本人は原発アレルギーなど、
違いは大きいので、これがそのまま通用するわけではないが
日本も今後、変わっていかざるをえないだろう
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5822
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ウクライナを見よ、原発事故でも農業は揺るがない2011.04.11(Mon) 川島 博之
筆者プロフィール&コラム概要
福島第一原子力発電所の事故により、福島の農業が大きなダメージを受けている。
一時は野菜や牛乳などに対して、出荷の停止や摂取を制限する措置が講じられた。その後、放射能の影響が低下したために、多くの品目で出荷制限などの措置は解除されたものの、事故がいつ収束するかが分からない現在、今後を見通すことが難しくなっている。土壌の調査が終わるまでは、田植えができるかどうかも分からない有り様だ。
コメも野菜も不足することはない
福島の農業は、風評も含めて、甚大な被害を被った。まず、このことが日本の食料供給にどのような影響を及ぼすか検討してみよう。
農林水産省によると福島の農家数は約9万7000戸、コメの作付面積は約8万ヘクタールである。また、野菜は路地と施設栽培を合わせて4980ヘクタールだ。これが日本の農業に占める割合は、農業人口やコメの作付面積が4〜5%、一方、野菜は2%程度である。
ここで、もし福島県でコメの生産ができなくなっても、日本には100万ヘクタールほどの休耕田があると言われているから、他の地域の減反を緩和すれば不足することはない。また、野菜についても、栽培面積が全国の2%しかないことから、それが需給に大きな影響を与えることはなさそうである。
このため、もし仮に、福島県で農業を行うことができなくなっても、それが日本の食料供給に大きな影響をもたらすことはない。
ただ、原発事故が長期化し、茨城、栃木、群馬でも農業を行うことが難しくなると、そこが首都圏へ野菜の供給基地になっているだけに、大きな影響が出る可能性がある。一刻も早く原発事故が収束し、放射性物質が現在以上に拡散することがないことを祈るばかりである。
ここまでは、比較的短い期間の影響について考えてみた。以下は、もっと長期的な影響について考えてみたい。
農業国ウクライナを襲ったチェルノブイリ事故
原子力発電所の事故の話では必ず「チェルノブイリ」という言葉が出てくる。言うまでもなく、人類が経験した最大の原子力発電所の事故であり、原子炉に用いていた黒鉛が火災を起こしたことにより、多くの放射性物質が放出された。
今後、福島の原発事故がどのような経過をたどるか、予断を許さない状況にあるが、最悪の事態として「チェルノブイリ」を想定しておけばよいだろう。
原発事故で最も恐ろしいのは、体内被曝である。その多くは汚染された農作物を摂取することにより生じる。
ウクライナ・チェルノブイリ原発事故現場からほど近いプリピャチで、学校の床に散乱したガスマスク(2010年9月16日撮影)(c)AFP/GENYA SAVILOV〔AFPBB News〕
それでは、チェルノブイリ原発があったウクライナの農業は、事故後どうなったのであろうか。それは、日本農業の今後を考える上で参考になると思う。
ウクライナは豊かな穀倉地帯を抱えている。ヒトラーがソ連に侵攻した理由の1つが、ウクライナの食料を手に入れるためだったとも言われるほどだ。
ウクライナの国土は6000万ヘクタールと日本の1.6倍ほどしかない。米国やロシアに比べて広い国ではない。しかし、その国土の約7割で農業が行われており、農地と草地を合わせた面積は4000万ヘクタールにも上る。これは日本の約10倍である。
農業生産額がGDPに占める割合が8%、農業人口割合は17%となっている。日本の農業生産額はGDPの約1%で、農業人口は4%である。ウクライナが「農業国」と言われる理由が分かろう。
作付面積も生産量も増えている
結論から先に述べると、マクロな視点から見る時、原発の事故がウクライナ農業に深刻な影響を与えることはなかった。
日本では、「チェルノブイリ周辺の放射能汚染がいまだに除去されない」などと言った報道ばかりを耳にするが、ウクライナ農業は完全に復活しているのだ。
チェルノブイリ原発事故が起こったのは1986年だが、当時、ウクライナはソビエト連邦の構成国であった。旧ソ連の秘密主義は徹底しており、現在になっても、チェルノブイリ原発事故で死んだ人の数も明らかになっていないほどである。そのために、ソ連時代にウクライナの農業が原発の事故により、どのような影響を受けたかを窺い知ることは難しい。
ウクライナは91年に独立するが、それ以降についてはFAO(国際連合食糧農業機関)がウクライナ農業についてのデータを公表している。チェルノブイリ原発事故から5年も経過した後であるが、放射能汚染の長期影響を見る上では参考になろう。
ウクライナで最も重要な作物は穀物であるが、最も古いデータとなる92年の作付面積は1250万ヘクタール、生産量は3550万トンである。それが2009年には、1510万ヘクタールで作付けが行われ、生産量は4540万トンにもなった。作付面積も生産量も増えていることが分かる。
順調に増えている穀物の輸出量
また、92年には穀物を180万トン輸入していたが、2008年には1640万トンを輸出している。92年には輸入していた穀物を、年間1000万トン以上も輸出するようになったのだから、ウクライナ農業はここ20年ほどで強くなったと言っていい。
ウクライナは穀物をどこに輸出しているのだろう。2008年に、ウクライナが最も小麦を多く輸出しているのはスペインである。スペインには190万トンも輸出している。それに、エジプト、イスラエル、韓国、チュニジア、イタリアが続いている。
もし、ウクライナの土壌が汚染されており、そこで生育した穀物に放射性物質が含まれているのならば、外国がそのような穀物を買うことはないだろう。輸出量が順調に増加したことからも、風評被害を含めて、現在、ウクライナ農業はチェルノブイリ原発事故の影響を完全に払拭していることは明らかだ。
ただ、残念ながら、韓国がウクライナから60万トン(2008年)もの小麦を輸入しているのに、日本は輸入していない。
今後、日本の農作物が風評被害に遭う可能性を考えると、日本はウクライナから積極的に小麦を輸入して、ウクライナの農民を助けるべきだったと思う。これまでの日本は、食物の安全と安心について少し過敏に反応し過ぎていたようだ。
農業にも市場主義経済が浸透し、効率が高まった
1000万トン以上の穀物を輸出するようになったウクライナだが、92年の段階では穀物を輸入していた。ただ、それは原発事故の影響ではない。旧共産圏の農業が効率的ではなかったことが理由だ。
ソ連は広大な農地を抱えながら、当時、世界最大の穀物輸入国になっていた。そのために、ソ連を継承したロシアも、当初は穀物の大量輸入国であった。そう考えれば、ウクライナが独立当初、穀物を輸入していたことも納得できる。
その後、ウクライナが穀物の輸出国に転じた理由は、農業にも市場主義経済が浸透し、効率が高まったためだ。
その輸出額の増加傾向は、ほぼロシアと同様である。国レベルで見れば、ウクライナもロシアと同様に「チェルノブイリ原発事故の影響を受けていない」と考えていいだろう。
チェルノブイリ原発から半径30キロメートル以内は、現在でも、立ち入り禁止になっているから、そこで穀物を生産することはできないが、それ以外の地域が長い間汚染に苦しむことはなかったのだ。
原発事故が国全体の農業に対して、長期にわたり悪影響を及ぼすことはない。原発事後が一刻も早く収束することを祈るばかりだが、「レベル7」になったチェルノブイリ原発事故でさえ、国全体の農業には大きな影響を与えることはなかった。この事実は、日本の農業を大いに勇気づけるものになろう。
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