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小出裕章・京大助教を初めて有力な報道機関が真っ正面から取り上げた。だが、小出氏は語ったと思われるが、記事は再臨界の問題には触れていない。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2011040902000088.html
【特報】
“原子力村”推進一辺倒 反骨の学者、小出裕章・京大助教に聞く
2011年4月9日
依然、綱渡りの状況が続く東京電力福島第一原子力発電所の事故。その状況を悔しさや怒り、おそらくは敗北感も抱えつつ、注視している人がいる。京都大原子炉実験所の小出裕章助教(61)だ。原子炉の安全や放射能測定を研究してきた。学生時代に原発推進派から反原発派に立場を変え、その後、四十年間、原発の危険性を訴えてきた。小出助教に事故の現状や原発が推進された背景を聞いた。 (京都支局・芦原千晶)
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「(東北大学で)学生時代を過ごした仙台、反原発運動をともに闘った女川、三陸には友人や知人がたくさんいるが、震災後、今も連絡が取れない人もいる」
大阪府南部の熊取町にある京大の原子炉実験所。百本もの桜は満開になると見事だが、今年は一般公開を中止した。研究棟の部屋も薄暗い。小出助教(旧・助手)は「電気を無駄にしたくない」と断り、話し始めた。
「(福島第一原発の事故で)予測される最悪の状態は、炉心全体や大半が溶け落ちるメルトダウンだ。今も溶融しているのは確実だが、一部にとどまってくれている」
炉心とは燃料棒のウランが核分裂して燃える場所だ。原発の総発熱量の93%が核分裂によるが、地震発生直後、制御棒が入り、この反応は止まった。しかし、燃料棒の中にたまっていく核分裂生成物は、巨大な発熱体として残ったままだ。
核分裂生成物は崩壊熱を発するため、この熱でも炉心溶融は起こる。事故後の三週間で崩壊熱は三十分の一程度には減ったが、その後は大きく減らないのだという。
メルトダウンを防ぐには、発熱している炉心の冷却が何より大切だ。東京電力や国は大量の水を投入し続けてきた。
「綱渡りだが、冷却効果はあり、大規模なメルトダウンの可能性は五分五分よりは低くなった。ただ一〇〇度以下にはなっておらず、冷却は不十分。できなくなれば、炉心溶融は進む」
メルトダウンは旧ソ連・チェルノブイリ原発事故でも起きた。原子炉が爆発した後、残った部分がメルトダウンした。
「福島では原子炉が壊れずに、メルトダウンが進む可能性がある。そうなると、高温の溶融物と下部の水が反応すれば水蒸気爆発が起き、桁違いの放射性物質が飛び出す。これが一番怖い」
水蒸気爆発はこれまでの水素爆発よりはるかに大規模だ。炉心を囲む圧力容器も、その外の「最後のとりで」の格納容器も破壊するという。
「水蒸気爆発が起こって炉心にある放射性物質の大部分が、ガスや微粒子になって空中に飛び散れば、汚染はチェルノブイリと同レベルだ」
チェルノブイリでは三カ月後、二百〜三百キロ離れた場所に猛烈な汚染地帯が見つかった。福島から同じ距離を想定すると、東京も入る。「もし、これが起きてしまえば手の打ちようがない」
停止した核分裂反応が再開される「再臨界」の可能性はどうか。再臨界で生まれる放射性物質の有無について、東電は現在も調査中という。
もし、再臨界すれば、さらなる発熱と核分裂生成物が生まれ、事故処理は格段に難しくなる。
高濃度の汚染水が漏れ出て、海を汚している現状はどうだろうか。
「被ばくはどんな微量でも危険。海に汚染水を捨て、拡散するから安心、安全だという国や専門家の見方は許せない。薄めることで危険性は減るが、逆に広まる。安心というなら規制せず、風評被害を防ぐために確かなデータを出すべきだ」
汚染を調べるには、セシウムやヨウ素を大量に取り込む海藻を調べることが最も大切で、その後、貝、魚と影響が出るという。
「私なら真っ先に海藻を調べる。すでにデータはあるのでは」
汚染は海だけではない。放射性物質を含んだ蒸気は少量ながらも、大気中に漏れ続けている。国は人体への影響について「ただちに影響が出る量ではない」としてきた。しかし、小出助教は「一度に一五〇ミリシーベルト以上の被ばくで起きる急性放射線障害ではないと言うべきだ」と憤る。微量の放射性物質であっても、被ばくの総量によって晩発性の障害、すなわち、がんは発症するからだ。
広島や長崎の原爆被爆者の場合、数年後に白血病が発症し、さまざまながんが十年後から出た。チェルノブイリでは、数年後から子どもの甲状腺がんが確認された。
大気中の汚染については、同僚の今中哲二助教(60)らが、先月末に三十キロ圏外の福島県飯館村で現地調査した。原子力安全委員会が避難の指標とする五〇ミリシーベルトを一カ月で超える地域があり、原発から同心円状の三十キロ圏内の避難設定が十分ではないことが分かった。
「研究者が手弁当で放射線量を調べてから、国はようやく原発から三十キロ離れた地点の積算放射線量データを出した。すべての情報を知らせることが、パニックを防ぐ一番の力になるのだが」
危険な原発が、なぜこれまで推進されてきたのか。
小出助教は原子力利権に群がる産官学の“原子力村”の存在を指摘する。「これまで電力会社からみて、原発は造れば造るほどもうかる装置だった。経費を電気料金に上乗せでき、かつ市場がほぼ独占状態だったからだ。さらに大手電機メーカー、土建業者なども原発建設に群がった」
大学の研究者らがこれにお墨付きを与えた。
「研究ポストと研究資金ほしさからだ。原子力分野の研究にはお金がいる。自分の専門と社会との関わりについて考えられない学者が多い」
小出助教は学生時代、なぜ都会に原発を造らないのか疑問に思い、女川の原発反対闘争に触れ、推進派の立場を変えた。
京大の助手として採用されてから三十年以上たつ。しかし、今中助教とともに准教授にさえ昇進していない。
「私たちに共感してくれる若手研究者も何人かいたが、一緒にやろうとは誘えなかった。ぼくらの仲間に入ると、研究者として安穏とは暮らせなくなる。でも今は後悔している。私と今中さんがいなくなったら、原子力に異を唱える研究者はもう出てこないのでは」
カネと同時に「原発推進は国の方針」という力も大きかった。だが、日本は唯一の被爆国で核アレルギーも強い。なぜ、推進されるのか。
「核兵器を持つというより、その製造能力を維持するため、としか考えられない。原発を推進すれば、その技術と材料であるプルトニウムが手に入るのだから」
今回の事故の教訓については、原発を即刻止めるべきだと強調する。
「今回の事故は進行中で、どれだけ被害が広がるかは分からない。原発が生み出した電気の利益を全部投げ出しても足りないだろう。原発はそういうばかげた物だ」
<デスクメモ> 「東電は安全と言っていた」。避難を強いられた町長の憤りだ。その通りだ。だが、以前から危険をとなえる学者もいた。なぜ、東電を選んだのか。たぶん、国も安全と言ったから、多数派が賛成だったからだろう。「復興のため、国民はひとつに」という声が唱和される。「右へ倣え」は変わるのか。 (牧)
(* 記事のリード部分以外は電子版では読めない。全文は「日々坦々」(http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-968.html)から。
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