http://www.asyura2.com/11/genpatu8/msg/749.html
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≪広瀬 隆 著『パンドラの箱の悪魔』 第6話 2番目の陽もまた沈む より抜粋≫
Roentgenium:今回は広瀬 隆さんの著作などから、ITER(イーター、国際熱核融合実験炉)について取り上げたいと思います。時の政権はこれまで、国民の多くが無関心なのをいいことに、このプロジェクトに膨大な予算を垂れ流し続けてきました。政権交代後も、野党時代、このプロジェクトに強く反対の態度を見せた蓮舫行政刷新大臣は、その作られた虚像に反して、記憶に新しい先の事業仕分けでは、見直し対象とされたはずのこのプロジェクトに、あっさりと予算計上を許してしまいました。
それ以外にも、(独)原子力安全基盤機構、(独)日本原子力研究開発機構、(独)原子力環境整備促進資金管理センター、(財)原子力安全研究協会、(財)原子力安全技術センター、(財)原子力国際技術センター(財)日本原子文化振興財団、原子力委員会(JAEC、内閣府)、原子力安全委員会(NSC、内閣府)、原子力安全・保安院(NISA、経済産業省)、原子力発電環境整備機構(NUMO)、(社)日本原子力産業協会(JAIF)、(社)日本原子力学会(AESJ)、(財)原子力安全技術センター(NUSTEC)、(独)原子力安全基盤機構(JNES)、(社)日本原子力技術協会(JANTI)、(財)原子力安全研究協会(NSRA)、(独)日本原子力研究開発機構(JAEA)、(財)原子力研究バックエンド推進センター(RANDEC)、(財)日本原子力文化振興財団(JAERO)、(財)原子力発電技術機構(NUPEC)、(社)火力原子力発電技術協会(TENPES)、(財)原子力国際協力センター(JICC)、(社)原子燃料政策研究会(CNFC)、(財)原子力環境整備促進・資金管理センター(RWMC)などの原発利権の温床となっている天下り団体の存続も結局認めています。
未だに気付いていない人も多いですが、そもそも彼ら(菅・岡田・前原ら)は双頭政治の1頭として、野党時代には小泉政治を野党側から支え演出し、与党になった今は“クーデター”後、小泉政治の流れを汲んで、売国奴のDNAをしっかりと受け継いでいる。変節したと言うより元々それが彼らの本性なのです。彼らの不遜な態度と嘘っぱちの“クリーンな政治”など「原子力はクリーンで安全です」と嘘を平気で吹聴するのと大差ない下衆の極みなのです。それを疑いもせず、信じ込み、騙される方も悪いのです。「誰がなっても一緒」とか言う言い逃れは不勉強で無責任な人間が使う詭弁に過ぎません。それはそうと、実は薬害と原子力の地下人脈は深く繋がっていて、菅“クーデター”政権の下でこうした原発大事故が起きたのも或る意味、一種の皮肉であるように思えてなりません。色々興味深い人物が関わっている問題ですが、複雑な閨閥ネットワークの一端が垣間見える構図ですので、追々この点に関しても広瀬 隆さんの著作などから資料を起こし投稿してゆきたいと思っています。
ところで、信憑性が疑われる地震兵器(HAARPがそれであると指摘されている)やケム・トレイルですが、この、最終的には数兆円の無駄な投資になるとも囁かれているITERの実現性に比べれば、遥かに現実味があると言えるではないでしょうか。これは絵空事どころか、実際に日本が膨大な資金をこれまで注ぎ込んで進めてきたプロジェクトであるだけでなく、恐ろしいことに日本の原発推進者達は当初、これを本気で六ヶ所村に誘致しようとしていたのです〔2005年6月、建設候補地として六ヶ所村と仏カダラッシュが誘致を競った結果、建設地は仏カダラッシュに決定した〕。そして現在も日本が半ば主導する形で研究及び実験に邁進し、そこに日本国民の血税から莫大な予算がじゃぶじゃぶ流し込まれています。当然、プロジェクトが成功した暁には日本にも建造しようという思惑があるからこその投資でしょうが、その裏目的は核武装の為、最終的には、純水水爆を持つことなのかも知れません。
◆ ◆ ◆
〔広瀬 隆 著『パンドラの箱の悪魔』 第6話 2番目の陽もまた沈む より P.250−P.284〕
■第2の太陽をつかめ
太陽では、絶えず核融合が行われ、その膨大な熱が我々の地球に注いでいると言う。人類が、“第2の太陽”と呼び、“地球上で無限に存在する原料を使ってエネルギーを生み出すクリーンな核融合”が、何れ成功するという話がある。
しかし、「何れ・・・・何れ」と言いながら、いつまで経っても実現の兆しがないどころか、実現する予定日がどんどん後に送られている。大体このように予定日が延びる話は、不良債権処理や借金の返済と同じで、怪しいのである。
20世紀末には、全世界が核融合によって無尽蔵のエネルギーを使えるようになっていたはずだが、20世紀はとうとう終わりの日を迎えてしまったのだ。それどころか、それからまた50年以上先の21世紀の後半になっても、実現の見通しが立たないというのは、実に奇妙な話なのである。
「核融合実験炉の計画が日本のそちこちにあり、多くの人が不安を抱いている」と言われ、「またしても、莫大な税金を使って、実現の可能性が全くない事業に5000億円ないし1兆円が投じられようとしている」と、そちこちで批判されている。ひょっとすると、これは詐欺ではないのだろうか。
批判されているのは、北海道や青森県〔六ヶ所村〕など日本の各地で誘致計画が進められてきた通称“ITER(イーター)”と呼ばれる国際熱核融合実験炉である〔2005年6月、フランスのプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏のカダラッシュに建設することが決定された〕。「国際」とは、現在では日本・アメリカ・ヨーロッパ・ロシア・カナダ・中国・韓国の7極による共同開発を意味する。
〔資料〕ITER(イーター、国際熱核融合実験炉) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ITER
〔資料〕ITER - the way to new energy
http://www.iter.org/
〔資料〕国際熱核融合実験炉 ITERウェブサイト - JAEA(独立行政法人日本原子力研究開発機構)
http://www.naka.jaea.go.jp/ITER/
〔資料〕ITER計画・幅広いアプローチ:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021.htm
〔資料〕2010年7月ITER臨時理事会において合意されたITER建設スケジュール(建設期) - 文部科学省 2010年8月17日 ※5頁
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo43/siryo2-1.pdf
〔資料〕ITERの問題点 - よくわかる原子力
http://www.nuketext.org/topics1.html
〔資料〕「少しの燃料で大きなパワー」と言うけれど 小さなウラン燃料が出来るまで - よくわかる原子力
http://www.nuketext.org/uranium.html
最近では、物理学者達が、「核融合による商業用の発電は、余りに現実離れした計画で、あり得ない夢物語だ」と、呟く言葉さえ耳にする。ところがこれを馬鹿にしていると、いつしかプロジェクトが進み、予算が付いてしまう。予算が付くと、事業に関わる人間が熱中して暴走し始める。一体、成功しないものに半世紀も莫大な研究費が使われてきたプロジェクトには、どのような問題が横たわっているのであろうか。
そこで核融合についての本や文献を、国会図書館などで探してみたが、殆どない。つまり小難しい核融合の理論書は何点か見つかったが、核融合の何処に問題点があるかを書いた書物そのものが存在しない。莫大な国民の金が浪費されているというのに、これは不思議な社会現象の落とし穴である。それでも最近の色々なものを読むうち、「うん、これが種本だな」というものが見つかった。
『誰にもわかる核融合の話』(山科俊郎・日野友明 共著、日経サイエンス社)という本で、著者は2人とも北海道大学工学部で高真空工学を教えている教授である。90年に初版が発行されたので、古い本ではない。読み進むうち、私の目の玉がまん丸になり、なるほどこれがベースになってITER(イーター)計画の誘致が進んでいるのだと気付いた〔2005年6月、フランスのプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏のカダラッシュに建設することが決定された〕。
〔資料〕山科俊郎、日野友明 共著『誰にもわかる核融合の話』(日経サイエンス社 1990年刊)
http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%B0%E3%81%AB%E3%82%82%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88%E3%81%AE%E8%A9%B1-%E5%B1%B1%E7%A7%91-%E4%BF%8A%E9%83%8E/dp/4532062780
〔資料〕山科俊郎北海道大学名誉教授 ※故人
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/news/jihou/jihou0509/618_33.htm
〔資料〕日野友明北海道大学プラズマ理工学教授・日本原子力学会核融合部会表彰委員会委員長、他多数の要職を兼任。
http://www.sangakuplaza.jp/page/138549
〔資料〕日本原燃 ※本社は青森県六ヶ所村。また北海道には世界に日本製鋼所室蘭製作所〔Rothschild系〕もある。
http://www.jnfl.co.jp/
〔資料〕東電のカネに汚染した東大に騙されるな!- INSIGHT NOW! 2010年3月27日
http://www.insightnow.jp/article/6430
ITER(イーター)というおかしな名前の核融合とは何であろうか。核融合の基本的なことから説明しよう。
新聞にはよく、核融合の図が出ている。カタツムリのような巨大なドーナッツ型の容器が描かれ、その内部にプラズマというものがある。プラズマが出す熱を冷却水で取り出し、その後、タービン発電機によって発電する。火力発電や原子力発電と同じ原理で、お湯を沸かしてタービンを回し、それで発電する。
そうした核融合の1つの実験炉に“ITER(イーター)”という名前が付いている。ITERとは、国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor)の頭文字をとった言葉だが、ITERと書けばヨーロッパ人はイターかイテルと読み、アメリカ人はアイターと読むだろうから、偉い日本人の命名に違いない〔〔現在、公式にはラテン語で「道」を意味するiterに由来するとされている〕。核融合にはレーザー核融合など、他にも色々な方法があるが、ここで話すのは、核融合の中でも、ITERで使われようとしている手法である。
ここには、DTトカマク炉という変な言葉が出てくる。トカマク(tokamak)とは、ロシア語で「磁場を利用したドーナツ型のカメラ」という意味で、英語で言えばtoroidal camera with magnetic field となる。そのカメラと同じメカニズムを利用し、磁場を作って核融合する方法が、トカマクである。
〔資料〕トカマク型 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%82%AF%E5%9E%8B
その頭に付いているDTという記号は何であろうか。
人間の肉体も含めて、全ての物質は原子から成り立っている。その原子は、陰と陽の電気を帯びた粒から出来ており、原子核を作るプラスの陽子●の周りに、マイナスの小さな電子×が飛び回っている。太陽の周りを惑星が飛び回っているように、原子核の周りに電子×が飛び回っているのだ。この電子×が、ある原子核から別の原子核へと動いてゆく時、そこに電気が流れていると言う。
このように、プラスの陽子●とマイナスの電子×が組み合わさって中性になったものが、人間の体や物質を作っている様々な原子である。そして、この世にある原子の中で最も小さなものが「水素」であり、水素の原子核を融合させる現象が、核融合である。
水素の原子核は、陽子●1個から成り立っている。それが普通の水素である。ところが、これとは別に、陽子●とほぼ同じ重さで、中性子○という粒がある。電気的にプラス・マイナスがゼロなので中性な粒子と呼ばれるが、この中性子○が水素の原子核(陽子●)にくっつくことがあり、そうなると普通の水素と違って、重い水素になる。それで「重水素」と呼ばれる。化学用語ではジューテリウム(deuterium)と言い、その頭文字のDをとったのが、DTトカマク炉のDである。つまりITERでは、原料として重水素を使う。
Tは、更に水素の原子核(陽子●)にくっつく中性子○がもう1個増えて2個になった水素のことで、三重水素と言い、一般に「トリチウム(tritium)」と呼んでいる。語源は、デュエットのDと、トリオのTである。
□H――普通の水素 =陽子● +電子×
□D――重水素(ジューテリウム) =陽子●+中性子○ +電子×
□T――三重水素(トリチウム) =陽子●+中性子○+中性子○ +電子×
http://www.nifs.ac.jp/virtual/qa/images/4-2-1g.gif
このトリチウムが、生物にとって大変危険な放射性物質なのである。「水素」2個に「酸素」1個がくっつくと、普通のH2Oで、水になる。「重水素」も「トリチウム」も、化学的な原子としては水素である。その為、同じように、「重水素」2個に「酸素」が1個くっつくと、重水素の水が出来、これを重水と言う。重水は、第2次世界大戦中に、アメリカが原爆を最初に製造した時代、極秘のマンハッタン計画の為に北ヨーロッパから輸送した物質として有名で、その頃スウェーデン生まれの大女優グレタ・ガルボが、デンマークの原子物理学者ニールス・ボーア博士をスコットランドに脱出させる手伝いをしたのである。またトリチウム2個に酸素が1個くっつくと、トリチウム水が出来る。トリチウム1個+水素1個+酸素1個でも、化学的にはH2Oになって、トリチウム水である。
〔資料〕グレタ・ガルボ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%9C
〔資料〕ニールス・ボーア - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A2
〔資料〕重水 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E6%B0%B4
〔資料〕トリチウム水 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E9%87%8D%E6%B0%B4%E7%B4%A0
※“クリーンなエネルギー”“CO2削減(二酸化炭素温暖化は大掛かりな詐欺)”を嘯きながら、海水温を上昇させ、生態系を破壊し、原発や再処理工場から、トリチウムを大気中や海水に放出し続けている。例えば六ヶ所村の沖合の海洋放出管の放出口からは、トリチウムだけでなく、ヨウ素、コバルト、ストロンチウム、セシウム、プルトニウムなど、あらゆる種類の放射能が廃液に混ざって海に捨てられる。
〔資料〕放射能ミニ知識:1.トリチウム - 原子力資料情報室(CNIC)
http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php?cat_id=1
〔資料〕核融合発電は実現不可能 ITER誘致の裏目的は核兵器 - 核開発に反対する物理研究者の会 2001年12月
http://env01.cool.ne.jp/ss03/ss03039.htm
〔資料〕韓国独自の「人工太陽」 プラズマ発生に成功 - 東洋経済日報 2008年7月18日
http://www.toyo-keizai.co.jp/news/general/2008/post_36.php
≪≪重水でもトリチウム水でも、どちらも外見は、我々が飲んでいる普通の水と全く変わらない。しかしトリチウムの水だから、放射性物質である。トリチウムがきちんと管理されていないと、日常生活をする時、食べ物や空気から、簡単に放射性物質が体の中に入ってきてしまう。これでは、我々には普通の水と区別出来ないので、侵入を防ぎようがなく、危険極まりない。従って核融合は、放射性物質を燃料にして使う発電法であり、クリーンだという話は、とんでもない嘘であることが分かる。≫≫
この重水素(D)とトリチウム(T)を融合させる時に膨大な熱が出るので、原子の核だけを取り出してくっつけようというのが、DT核融合である。しかし、事はそう簡単ではない。
重水素とトリチウムの原子核は、「プラスの陽子●」と「中性の中性子○」で成り立っているので、どちらもプラスの電気を帯びている。プラスのものとプラスのものをくっつけなければならない。すると、両者が、電気的に反発する。従って重水素とトリチウムをくっつけること自体、大変な作業になる。それにはどうしたらいいだろうか。そもそもカクを融合させると、どうしてエネルギーが出てくるのだろうか。
陽子●と中性子○は、それぞれの質量が、一定であることが分かっている。「陽子●」は 1.00728 「中性子○」は 1.00866 である。この2つを足すと、陽子● 1.00728 +中性子○ 1.00866 =重水素 2.01594 となるはずだ。ところが実際に、この2つを足して出来た重水素の質量は、こうならない。陽子● 1.00728 +中性子○ 1.00866 ⇒重水素 2.01355 と少し小さくなる。
2.01594 −2.01355 =0.00239 の質量が、何処かへ消えてしまい、陽子●と中性子○を足した数字が合わないのである。不思議なことに2個を足す前の質量と、出来上がったものの質量が違う。「これは一体どういうことなのか」という謎が生まれた。
アインシュタインの相対性理論で説明されるように、「質量」と「光の速度の二乗」を掛け算すると「エネルギー」になるという有名な式がある〔付録 1を参照〕。
E=mc2 (E:エネルギー m:質量 c:光の速度)
従って質量とエネルギーは、相互に変化し得るものである。2つの粒子を足して質量が少し小さくなったのは、この世にあったはずの物質が、エネルギーとして放出されたことになる。核融合する前と後の質量の差が 0.00239 とごく僅かでも、それに「光の速度の二乗」というとてつもなく大きな数を掛け算するのだから、核融合によって発生するエネルギーは膨大なものになる。このように、2つの原子核が融合すれば、大変なエネルギーが放出される、ということに人類が気付き、この核融合反応が、水素爆弾(水爆)の中に組み込まれた。つまり水素爆弾とは、トリチウム爆弾のことだったのである。
この事実は、ビキニ環礁などにおける無数の核実験で証明されてきた。そこで、この莫大なエネルギーを、発電に利用出来ないか、ということで始まったのが核融合の研究である。
≪≪前述のように、プラス同士の原子核をくっつけるのは大変なことで、水爆の場合には、内部に原爆を仕込んでおき、原爆を爆発させることによって、そこから出てくる大量の熱で、周りに置いておいた重水素とトリチウムを融合させ、核融合を実現することが可能になる。この核融合によって放出された中性子が、ウラン238をプルトニウム239に変え、一瞬で巨大な爆発に進展してゆくのが水爆である。しかし発電の為の核融合では、この反応を“爆発ではない形”で、静かに実現しなければならない。≫≫
それには先ず、原子核の周りに飛び回っている電子×を取り払う必要がある。
物には、固体、液体、気体の3種類がある。温度が低いと固体だが、熱してゆくと、溶けて液体になり、更に熱してゆくと気体になる。氷が溶けて水になり、その水が更に水蒸気になる3段階である。ここまでは原子の構造は変わらないが、それ以上に加熱すると、第4の状態と呼ばれる「プラズマ」となって、原子核の周りにある電子が全部バラバラになる。原子核と電子がバラバラに離れて、裸の原子核が出てくるのである。
しかし、このような裸の状態にするには、想像も出来ないほど大変な高温度にして電子を引き離すまで、熱エネルギーで激しく揺さぶらなければならない。実際には1億度か2億度というとんでもない温度にして、プラズマ状態で重水素とトリチウムの原子核を融合させるのだ。うまく融合すれば、次のような反応が起こる。
□重水素の原子核 =陽子●+中性子○
+
□トリチウムの原子核 =陽子●+中性子○+中性子○
↓
□ヘリウムの原子核 =陽子●+陽子●+中性子○+中性子○
+
□中性子○ =中性子○
こうして4個と1個の新しい形になり、ヘリウムという新しい原子の核が誕生する。これは一般的にアルファ線と呼ばれる放射線であり、その他に、中性子○が1個出来る。次に、こうして出てきた中性子○を使い、そこにリチウムという別の原子核を反応させる。トリチウムと名前が紛らわしいが、リチウムは金属である。リチウムと中性子○が反応すれば、今度は1個と6個が、3個と4個になる。
□中性子○ =中性子○
+
□リチウムの原子核 =陽子●+陽子●+陽子●+中性子○+中性子○+中性子○
↓
□トリチウムの原子核 =陽子●+中性子○+中性子○
+
□ヘリウムの原子核 =陽子●+陽子●+中性子○+中性子○
つまりトリチウムとヘリウムになる。以上のような反応が順々にぐるぐる回れば、熱を放出し続ける。これが核融合発電の原理である。
ここまでで、誰でも気付く問題点がある。先ずこの原料に使われる放射性物質のトリチウムは、最初から核融合炉の中に存在するのではなく、人間が作らなければいけない。しかもトリチウムは、原子炉の中で作られるのだ。核融合を推進する人達は、「原発が駄目になった後にクリーンな核融合を」と宣伝してきたが、実際には核融合の最初の原料になるトリチウムを作るには、原子炉がなければいけない。先年、アメリカのクリントン政権が「商業用の原子炉で、核兵器用のトリチウムを製造する」という計画を明らかにしたとおりである。
しかもそのトリチウムは、放射能の単位で示すと、最初の1億キュリーというとてつもない量を準備しなければならない。この放射性物質は、半減期が12年もあり、前述の『誰にも分かる核融合の話』という本を読むと、この著者は、いま日本中の誰もが知っているチェルノブイリ原発事故の被害や放射能について子供よりも無知で、「トリチウムの半減期は短い」と書いている。
12年とは、いま生まれた赤ちゃんが中学に入るまでの歳月である。子供達の体が大きくなってゆく期間、それが12年であるから、特に危険な子供達にとっては重大な意味を持ってくる。しかも半減期とは、放射能が消える期間ではなく、12年後にも36年後になっても8分の1が存在する。その間に水としてトリチウムを体に取り込めば、放射性物質が血液に入って全身を巡り、ベータ線を体の中に出し続け、様々な異常が起こってくる。
彼らが描く簡単な絵のようには、実際のプラントは出来ないのである。
「核融合反応を進める間に、高いエネルギーを持った中性子線やガンマ線、アルファ線などの危険物が飛び出し、容器の壁をどんどん削ってゆく。容器が放射性物質に変わってゆく。更に、核融合炉全体が、一瞬で破壊する危険性がある」
こう言われているのは何故なのか。
核融合の話が出てきたのは、石油やウランの涸渇によるエネルギー問題の為であった。ところが核融合で使われる原料を見れば、前述のように金属リチウムが使われる。正確には、リチウム6という金属である。この6という数字は、先程●と○で示したように、原子核を作る陽子と中性子を合計した数である。リチウム7は一般に大量にある普通の金属リチウムだが、リチウム6はこの世にごく僅かしか存在しない物質で、残念ながら有限な物である〔天然リチウムの7.5%〕。
従って核融合は、無限に存在する原料を使ってエネルギーを生み出すのではなく、その原料が足りない為、実際には核融合が万一成功したとしても、リチウムを考えただけで、100年そこそこしか未来がない。「天然ガスの実際の埋蔵量は限りない」或いは「これからは無限の水素エネルギーの時代だ」と言われている現状とは比較にならない。果たして初めから不可能に近い研究や実験をする為、莫大な金を投入する価値があるのかどうか、という本質的な疑問が出てくる。
温度を高くしなければ核融合の反応は起こらないが、温度の目盛を見ると驚く。普通我々が使うのは、10度か100度で、工場でも鉄を溶かすのに1535度がいいところだ。ところが核融合では、単位が1億度である。10度、100度、1000度、1万度、いやいや、10万度、まだまだ、100万度、まだまだ、1000万度、その次がようやく1億度。想像も出来ない温度だ。
「DT反応」の核融合を起こすには、温度だけでなく、「プラズマ密度」と「閉じ込め時間」が関係してくる。つまり原料の密度が高く、反応の持続時間が長いほど、低い温度でも核融合が起こりやすい。これら3つの因子で、反応の可能性が決まってくる。ある程度長い時間が保てなければ、温度を高くする他ないので、大体1億度以上が必要だと言われ、理想を言えば、2億度ぐらいになれば、密度や持続時間を低く出来るので、出来るだけ温度を高くしたい。
以上が基本的なことである。
核融合を推進している人達は、「DT反応の次は、うまくいけばDD反応だ」と言っている。DD反応は、重水素とトリチウムではなく、重水素と重水素の核融合である。「重水素そ重水素の核融合が将来の本命である。これが成功すれば、原料の重水がもっと沢山ある」という話だが、重水素とトリチウムの反応より遥かに高い温度が必要になる。DT反応でさえ成功しないのに、DD反応など出来るはずがない。
では、何故核兵器が核融合に成功したのか。
水爆という兵器が、このような超高温での核融合に成功したのは、爆弾というものが、全てのエネルギーを外に解放してよいからである。大量のエネルギーを“無責任に解放する”のが、人間を殺す爆弾の性格であった。ところが発電では、その天文学的に大きなエネルギーを、静かに、ゆっくり制御して取り出さなければならない。従って水爆の理論と技術は、実際には、平和目的の核融合発電の現場では使えないのだ。その実際を具体的に検証してゆこう。
(2頁へ続く)
(1頁からの続き)
■核融合ITER(イーター)を実現する為の問題
【1】ITERの原料
核融合を推進する人は、「無限に原料がある」と言うが、それは大いなる嘘である。DTトカマク発電に必要な原料のうち、一番ネックになるのが、前述のリチウム6という原料で、有限な金属である〔天然リチウムの7.5%〕。
ベリリウムという金属も補助燃料に使われるが、金属工場では、最も恐い金属である。ベリリウム銅という合金があり、電気接点などのバネ材料としてよく使われる。しかしベリリウムは、僅かでも体に触れたりして傷が出来ると、肉腫を作る危険物として工場労働者の間ではよく知られている。医学辞典には、ベリリウム中毒について、次のように書かれている。
――ベリリオシスと言われる灰の肉芽腫症を呈し、肝臓、腎臓、脾臓、骨髄にも生じ、皮下結節も見られる。ベリリウム曝露を中止し、安静により数週間から数カ月で治癒する。重症で10〜20%の死亡率――
曝露とは、ベリリウムに曝されている危険状態であり、それを中止すれば、治るかのように書かれているが、私がエンジニア時代によく知っている実際の被害者では、治癒していない。重い肉腫になるので、金属を扱った人で、特に非鉄合金の仕事をした人であればよく知るように、最も恐ろしい金属の1つである。
≪≪放射性物質トリチウムだけでなく、これらの極めて危険な金属や原料を大量に使うのが核融合である。≫≫
【2】ITERの容器と電磁場
次に問題となるのが、メカニズムの危険性である。
先ず最初に、カタツムリのような巨大な容器の内部から空気を抜き、真空状態にして、完全に何も存在しない状態にしてから、重水素とトリチウムの原料を入れる。その外側を、巨大な磁石がとり囲んでいる。巨大なドーナッツ型の磁石の容器内部で、プラズマをぐるぐる走らせる。それが原子核を融合させる全体的なITERの電磁場のメカニズムである。
〔資料〕iter the world's largest Tokamak
http://www.iter.org/mach
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/07/07050307/03.gif
http://www.naka.jaea.go.jp/BA/gaiyou_mokuteki/jt60sa.html
巨大な磁石が必要なのは何故か。核融合を実現するには、1億度か2億度にしなければならない。ところが、最初から1億度か2億度にすることは出来ない。そこで、原子核と原子核が近付き、ぶつかって核融合反応を核融合反応を起こさせるには、プズマ同士の衝突の確立を高くし、燃料の密度を高くすればよい。
≪≪一方、内部が1億度になれば、その超高温に耐えられる容器はない。鉄でさえ、1535度で溶けてしまい、2730度でガスになって消えてしまう。それより5桁も高い1億度のような高温度で存在する固体は、この世にない。それでも重水素とトリチウムの反応を容器の中に閉じ込めなければならないのである。≫≫
超高温で、電子と原子核を引き離し、バラバラのプラズマ状態にある時、電子×を失った原子核は、イオンと呼ばれる。核融合では、重水素やトリチウムが、プラスの電気を帯びた陽イオン●になる。その周りを飛んでいた電子×はマイナスである。そこに磁力線を流すと、両者とも、磁力線に引きつけられて集まってくる、つまり核融合では、強力な磁場を利用して、プラズマを空中に浮かせた状態にしておき、燃料を集め、走らせるので、本当の意味での容器というものはない。容器として一応塊はあるが、それは真空の場を生み出す為の囲いであって、プラズマに接触しながら封じ込めておく容器ではない。もし高熱のプラズマが壁に触れれば、一瞬にして全部が溶けてしまうから、そうした一瞬の容器は存在しないのが核融合である。
この原理に、とてつもない危険性が潜在している。
炉の内部で、プラズマを中空状態に浮かせたまま、ドーナツの中で、ぐるぐる走らせる。コイルで磁力線を作り出し、その磁力線の周りに原子核と電子が絡み付いた状態である。周りには超伝導コイルを使った巨大な磁石が必要である。ドーナツの中心に、1本のプラズマ電流が走っている。この電流によって、内部を次第に高温にしてゆき、やがて核融合反応を進めてゆこうというのが全体的な原理だ。なるほど面白そうで、理論的には可能である。
しかしそのまま放っておくと、ドーナツの中心に走らせておいたはずのプラズマが、少しずつ外側を走ってゆく。そこで、螺旋状に流れをねじるような形で走らせて制御しなければならない。デリケートであり、僅かでも設計を間違え、巨大な円形のドーナッツの一部でもおかしくなれば、とんでもない事態になる。反応中に大地震のような衝撃があれば、超高温のプラズマはどうなるか。
ディスラプションと呼ばれる事故では、磁場が制御不能になって、プラズマが破壊される。TNT火薬1トンに相当する巨大なエネルギーが一瞬で放出され、核融合炉が破壊される事故となれば、燃料の放射性トリチウムが、周辺住民に襲いかかる。
【3】超伝導のメカニズムと危険性
核融合の技術の中で特に懸念されるのは、超伝導磁石を使って、このような強力な磁場を作る点にある。極めて電気を伝えやすい状態のことを、超電気伝導と略して超伝導と言い、この言葉は、「超」「伝える」「導く」と書くが、電気の「電」を当てて、超電導と書くこともある。この現象は興味深い。金銀銅などの金属は、電気を伝えやすい物質である。電気の配線に使われている長いコードの銅線の中に電子が流れ、電気が通じている。銅線を使うのは、銅が金属の中でも電気抵抗が小さく、発熱しにくいからである。逆に、電気抵抗が高い金属を使う時もあり、ニクロム線を使ったオーブンのようなものは、電気抵抗を高くし、そこで発熱させ、その熱でパンを焼いたりする。
超伝導の原理の前に、温度の単位を説明しておこう。普通に私達が使っているのは、水が固まって氷になる0度を基準にした摂氏だが、この世に存在する最も低い温度を絶対0度と言い、これを基準にした、絶対温度という目盛がある。絶対0度は、摂氏でマイナス273度である。
超伝導という現象が最初に発見されたのは、水銀であった。水銀は金属だが、金属は普通、温度が低くなるほど電気抵抗が小さくなる性質を持っている。ところが或る時、不思議な現象が発見された。温度をどんどん低くしてゆくと、或るところで水銀の電気抵抗が全く無くなり、ゼロになったのだ。それは、絶対温度で4度であった。絶対0度が摂氏マイナス273度だから、零下269度で発見された異常な現象であった。このような極限状態になると、電気抵抗がゼロになることが分かったのである。この状態で電気を送れば、抵抗が無いので電気のロスが無く、極めて効率良く大量の電気を流せるので、これまで考えられなかったような巨大な磁力線を作ることが可能になる。それを超伝導と呼んでいるが、この磁力線を核融合に利用しようと、巨大なマグネット―磁石が登場したわけである。
但しこれは、大変な精度を必要とし、巨大な物体である。これほど大きなものには、必ず欠陥が出る。一部に欠陥があれば、途中で様々な電気的トラブルが発生する。回路の故障か、地震の振動によって、何か異変が起こり、超伝導状態を保てなくなったとすると、超伝導が、いきなり常伝導という普通の電気伝導に戻ってしまう。電気抵抗がゼロだったはずのものが、突然に電気抵抗が高い領域に跳ね上がると、発熱が始まる。瞬間的に大量の発熱が起こり、巨大なカタツムリのコイルが発熱すると、TNT火薬60トンに相当する爆発が起こり、大惨事の可能性が出てくる。それが、核融合で危惧されているクエンチ爆発という現象である。
【4】無数にある核融合炉の破壊の危険性
クエンチ爆発だけではない。核融合炉の破壊の危険性は無数にあるが、不思議なことに、国会図書館で本を探しても、前述のように核融合を批判する本は殆ど無い。それは現実性が殆ど無く、まともな物理学者がどんどん研究の第一線から離れているからであった。残っているのは、殆どが工学関係者で、放射能などの危険性を知らないからであろう。
プラズマというものが、電磁石の中を突っ走る。その時に発生する危険な因子として、中性子がある。高速の、高いエネルギーを持った中性子が、第1壁と呼ばれる防御用の壁にぶつかって、壁が破損してゆく。
http://www.iter.org/doc/www/edit/Lists/WebsiteText/Attachments/51/demo_diagram_1.jpg
この第1壁は、構造材である。ところが輻射熱(ふくしゃねつ)や、プラズマから発生する様々な粒子の衝突によって、第1壁が熱を持ち、温度勾配が生まれる。温度勾配とは、内側の表面が熱くなり、外側が冷たい、そのような時に材料に温度差が出来ることである。すると、内側は膨張が大きく、外側はそれほど膨張しない為、内部から大きな力が掛かってくる。その為第1壁を出来るだけ薄くして、温度勾配が小さくなるようにしなければならないので、やがて自分で破壊してしまう恐れがある。アルファ線による熱の影響や、中性子が壁を食い破ってゆくエロージョンという侵食作用やや、真空容器の破損の危険性など、多数の現象がそこに重なり合う。
現在まで核融合について語られてきた夢とは、そうした危険性に対する対策が殆ど未知でありながら、全て解決されるという仮定で話されてきた内容であった。実際には、材料も技術も殆ど未知の世界であり、ここで述べられているような危険性に、どのように対応してゆくかという疑問には、具体的に何1つ答えていない。ただ、「将来それを克服する。それが研究だ。実験だ」と言っているだけであった。勿論、研究や実験そのものが悪い訳ではない。核融合に問題がある、取り分けITERには意味がない、と言わなければならないのは、その研究や実験が、途轍もない危険性を伴い、成功する確立が限りなくゼロに近いからである。
【5】ITERの巨大構造物と放射性廃棄物
現在の日本の状況を考えてみよう。誰にとっても心配なのは、放射性廃棄物の問題である。「巨大、巨大」と言って来たが、重量が5万トンもある装置がITERである。これを既に存在しているものと比較すれば分かる。ウランの核分裂による発熱を利用する原発は巨大な装置だが、その重量は、ほぼ1000トンと言われている。それに対して核融合炉は、その50倍もある5万トンだと言う。日本全土にある原発が、今ほぼ50基〔2011年4月6日時点で全54基〕だから、日本中の原発を全部集めた重量に達する。
96年6月号の『エネルギーレビュー』という雑誌では、日本原子力研究所(原研)の人達が核融合炉を大々的に特集している。その中に出ている絵を見ると、核融合炉の手前に、人間が蟻んこのように描かれている。ドーナッツ型の部分だけで32メートルと書かれているので、本体部分に、様々な装置が追加され、これからどんどん巨大になってゆき、最終的には直径がほぼ50メートル位になるだろう。50メートルとはどれ位の大きさであろうか。95年12月8日に事故を起こした高速増殖炉“もんじゅ”〔核兵器を持つことを目論んで建設された施設〕は、原爆200個分のプルトニウムを抱えた原子炉だが、それを遠くから包んでいるコンクリートの格納容器の直径が丁度50メートルであった。従ってITERは、“もんじゅ”の格納容器の内部の殆ど全部が、鉄の塊で埋め尽くされたものと考えてよい程の、想像を絶する巨大な怪物である。原子炉とは比較にならない。
〔資料〕iter the world's largest Tokamak
http://www.iter.org/mach
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/07/07050307/03.gif
http://www.naka.jaea.go.jp/BA/gaiyou_mokuteki/jt60sa.html
http://www.iter.org/proj/buildingiter
http://www.iter.org/doc/www/edit/Lists/WebsiteText/Attachments/61/buildings.jpg
〔資料〕原発:全54基中26基が運転中、2433万キロワット―稼働率50% - Bloomberg.co.jp 2011年4月3日
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920016&sid=a7SsqacH0oU8
〔資料〕雑誌『エネルギーレビュー(Energy Review)』 - ERC出版
http://www.erc-books.com/ERC/ER/ER-Main-F.html
その壁が中性子やアルファ線、ベータ線などを受け、絶えず破損しながら、大量の放射性廃棄物が発生してゆく。容器そのものの金属が、放射性物質に変わってゆくので、『誰にもわかる核融合の話』の著者達が本に書いているように“クリーンな核融合”などということは、絶対にない話であった。1つの試算として、毎年600トン位の放射性廃棄物が発生するという計算がある。これは、原発が毎年1基ずつ廃炉になってゆく程の量に匹敵する。その核融合炉の材料の中に、例えばコバルトのような金属が入っていれば、それが放射性物質に変わって、極めて長い寿命の放射性物質として残る。従って、工学者が未知の材料を頭の中で空想して語ってきた問題は何1つ解決しないまま、原発と同じように大量の廃棄物を発生する運命にある。
テストプラントとして実際に建造された外国の核融合炉では、既にプラズマが炉の壁をどんどんえぐる為、とても持たないことが明らかになっている。イオン、電子、中性子、光、エックス線、ヘリウム、熱・・・・こうしたものがプラズマから放出されて壁にぶつかり、リミターと呼ばれる防御の壁(第1壁)に凄まじい作用をする。ところが核融合の研究者は、「このような高度な技術を全部クリアするのだから、大変な技術が核融合によって生まれる」と、おとぎ話のような言葉を語ってくれる。確かに夢のある人達だが、この夢は無残にも破れ、悪夢に転ずる。何回か使って、5万トンの巨大な放射性の屑が残るのだから。
【6】地震に襲われた時のITER
絶えず地震に見舞われるこの日本で、重量が5万トンもある巨大なITERが、まともに耐えられるとは、地質学者の誰1人考えまい。アメリカ・ヨーロッパ・ロシアと日本など7極で行われる計画のITER建設について、これら外国の責任者が、“積極的に誘致している日本”の地震問題について最近ようやく不安を指摘し始めたが、地震については、他言を必要としない。
直径50メートルもある5万トンの装置を、断層だらけの軟弱な地層の上に建てれば、たとえ地震がなくとも、そのまま建っているとは思えない。装置が僅かに傾いたり、完璧にコントロールされなければならない電磁石のマグネットが、磁場に突然の変化を起こしたりすれば、大惨事が予想される。地震があった時、対策が万全で、夢のような話が全部成り立たなければならないことになる。1カ所がコントロール不能になっただけで、核融合炉は大惨事に直結する。あらゆるもの全てが100%完璧にコントロールされて初めて、夢が成り立つのだ。
■深刻なトリチウム汚染と中性子の危険性
≪≪最も心配されるのが、トリチウムの問題である。トリチウムについて、私はある考えに基づいて語りたい。ITERの危険性を考える時、1つの言葉を知って頂きたい。それは、“未必(みひつ)の故意”という法律用語で、「故意」とは、わざとすることである。
『広辞苑』の説明によれば、――行為者が、罪となる事実の発生を積極的に意図・希望した訳ではないが、自己の行為から、或る事実が発生するかも知れないと思いながら、発生しても仕方がないと認めて、行為する心理状態――と書かれている。
この法律用語を、順に解釈してみよう。例えば薬害や、原発、核融合などの問題を頭に置いて読んでみれば、「行為者が」――とあるのは、製薬会社、電力会社、日本原子力研究所などに相当する。「罪となる事実の発生を積極的に意図・希望した訳ではないが」、つまり誰も他人を殺そうなどと思っている訳ではないが、「自己の行為から」――非加熱血液製剤を販売したり、原発やITERを建設する時に、「或る事実が発生するかも知れないと思いながら」――どこかで危険性について知識を得て、恐らくかなり危ないと気付きながら、しかし「発生しても仕方がないと認めて行為する心理状態」、となる。これは、明らかに犯罪である。しかも法律上、過失ではなく、それより罪が重い故意になる。
何故この言葉を記すかと言えば、95年の“もんじゅ”事故を見て、まさしくこれが、未必の故意と思われたからである。実際に“もんじゅ”の事故は、日本全土の人が危険性を警告していながら発生し、北陸を廃墟にする一歩手前だったことが分かっている。最悪の事態になれば、福井県を中心に大量の死者が発生し、大阪では200万人が癌で死亡する可能性があったのだ。
〔資料〕高速増殖炉“もんじゅ” - Wikipedia ※脚注で事故に関する動画及び資料多数が紹介されている
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%85
〔動画〕YouTube - 動燃が隠そうとしたもんじゅナトリウム漏れ直後のビデオ(95年12月9日撮影):NPJ動画ニュース第3回 [8分44秒]
http://www.youtube.com/watch?v=Wm3yuygUXQ0
〔動画〕YouTube - 西村さんの死を招いた2時ビデオ隠し:NPJ動画ニュース第4回 [7分58秒]
http://www.youtube.com/watch?v=G7NbFMH_XZw
〔資料〕YouTube - 動燃がカットしたもんじゅナトリウム漏れ事故の映像―いわゆる16時ビデオのオリジナル:NPJ動画ニュース第5回 1 [6分13秒]
http://www.youtube.com/watch?v=UgSV4wxXjQM
〔資料〕YouTube - 動燃がカットしたもんじゅナトリウム漏れ事故の映像―いわゆる16時ビデオのオリジナル:NPJ動画ニュース第5回 2 [9分58秒]
http://www.youtube.com/watch?v=9YNy1en5kVE
〔資料〕“もんじゅ”訴訟 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%85%E8%A8%B4%E8%A8%9F
〔資料〕動力炉・核燃料開発事業団 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E5%8A%9B%E7%82%89%E3%83%BB%E6%A0%B8%E7%87%83%E6%96%99%E9%96%8B%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%9B%A3
そのような事故が発生した場合、我々が動燃(動力炉・核燃料開発事業団)などの責任者を「未必の故意」として訴えられるかどうかを“もんじゅ”訴訟の弁護士に尋ねると、それは当然だと言う。「動燃だけでなく、原子力委員会、原子力安全委員会、それから学者、科学技術庁などの様々な責任組織の幹部は、みな未必の故意になる」と。大事故の発生を食い止める為に、責任者に自覚を持って発言し、行動して貰う目的で、この視点が必要である。ここに記している危険性は、あらかじめ分かっている事実だからである。
それだけ責任を持つ人が、「大丈夫」と保証するのであれば良いが、これまでの原子力や核融合の行政はそうではなかった。誰が責任者か全く分からない。“もんじゅ”でプルトニウム大事故が起こっていれば、誰が大惨事の責任者だろうか。首相か、科学技術庁長官か、動燃の理事長か、原子力委員会か、原子力安全委員会か。スリーマイル島やチェルノブイリで発生した原発事故のように、最後には責任者が逃げて、現場の末端の作業者に責任が押し付けられるようにしてはなるまい。“もんじゅ”事故に関しては、安全論を喋りまくって来た本人達が、事故後の調査をしている。核融合では、誰が責任者なのか。
ここで公に危険性を指摘した以上、「被害が出れば、責任者達は未必の故意になる」という事実を、事前に本書に明記しておきたい。何故それほど厳しい言葉を記すかと言えば、トリチウムが、大変な危険性を持っているからである。しかも核融合で使おうとしているトリチウムは、極めて危険な量である。≫≫
トリチウムが染色体異常を起こすことは、かなり古くから知られている。トリチウムは、近くに人間が立っていても、外部から被曝しない物質である。しかしトリチウムが漏れても、これを商業的に取り出す技術がこの世に無い為、全て排水などに流してしまう他、“処分”の方法が無い。トリチウムは水素の1種であるから、水に入り、そして、飲み物や食物に、音もなく侵入して来る。
我々人間の体を作っているのは、血液を始めとして、大部分が水分である。体の脂肪や筋肉などを構成しているものは、みな有機物で、水素を含む分子として出来ている。その為体のあらゆる所に、トリチウムが組み込まれてゆく。前述の『誰にもわかる核融合の話』という本には、次のように書かれている。
――トリチウムを炉の外へは出さないようにするので、原子炉のように燃料の再処理の為、使用済み燃料を別の工場で処理するというようなことは不要なのです。・・・・トリチウムは、・・・・他の物理的性質及び化学的性質は水素と殆ど変わりません。水素と異なる点は、トリチウムが放射性物質であることです。・・・・トリチウムから出て来るベータ線はエネルギーが低いので、体内に入ることはありませんが、もしも大量に体内に入った時は問題が出て来ると考えられています。トリチウムガスは直接体内に取り込まれることは余りなく、主に水或いは水蒸気の形で消化器系、皮膚、呼吸器を通して取り込まれます。また、トリチウムガスが水の形になるのは1日当たり1%以下とされています。体内に取り込まれても、水の代謝は比較的早いので有効半減期は10日程度です。――
〔資料〕山科俊郎、日野友明 共著『誰にもわかる核融合の話』(日経サイエンス社 1990年刊)
http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%B0%E3%81%AB%E3%82%82%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88%E3%81%AE%E8%A9%B1-%E5%B1%B1%E7%A7%91-%E4%BF%8A%E9%83%8E/dp/4532062780
〔資料〕山科俊郎北海道大学名誉教授 ※故人
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/news/jihou/jihou0509/618_33.htm
〔資料〕日野友明北海道大学プラズマ理工学教授・日本原子力学会核融合部会表彰委員会委員長、他多数の要職を兼任。
http://www.sangakuplaza.jp/page/138549
〔資料〕日本原燃 ※本社は青森県六ヶ所村。また北海道には世界に日本製鋼所室蘭製作所〔Rothschild系〕もある。
http://www.jnfl.co.jp/
この、「ベータ線はエネルギーが低いので、体内に入らない」とは、一体どのような意味であるのか、にわかに理解出来ない文章である。これが事実であれば、ベータ線を出す放射性物質は、全て安全になってしまう。チェルノブイリ事故の後、甲状腺癌を大量に発生させているヨウ素131は、ベータ線を出す放射性物質である。白血病を起こすストロンチウム90も、ベータ線を出す放射性物質だ。しかも10日で半分が体の外に出てしまうとは、嘘にしても酷過ぎる。そして著者は、安全論の根拠として、次のように書いている。
――280万キロワットの電気出力の核融合発電所が、世界中に約2100基出来たとして、1基当たりのトリチウム・インベントリー(保持量)を6キログラムと仮定します。発電所からのトリチウムの漏れの割合を1日当たり100万分の1として、漏れ出た場合、海水に深さ75メートルまで拡散するとします。――
この著者が想定する280万キロワットという出力は、日本の原発で最大出力の新潟県柏崎刈羽原発6号炉と7号炉の135万キロワットと比べて、2倍以上の巨大な出力の炉である。しかもそれを2100基造ると言う。異常としか思えない。原発でさえ、全世界でようやく400基〔2008年1月現在で531基〕を超えたところである。
「漏れ出た場合、海水に深さ75メートルまで拡散するとします」という文章は、このような仮定をする計算の根拠が不明である。核融合炉から外にトリチウムが漏れ出ると、何故トリチウムが、海水の中に75メートルまで拡散するのか。実際には、炉の周囲に住民が生活し、そこには海水はないはずだ。そこに広大な海水を持って来て、トリチウムを全部薄めてしまい、「この値はICRP(国際放射線防護委員会)の許容量の約1000分の1です」という結論に導く。何という人間であろうか。これが、大学教授の学問であるとは。続いて、こう書いてある。
――今後、建設される計画の実験炉では1キログラム程度のトリチウムを用いますが、環境への影響は極めて小さいと考えられます。――
極めてとはどれ位か、これにも根拠がない。更に事故が発生した時のことは、次のように書いてある。
――極端な仮定ですが、核融合炉が爆撃されて破壊されたらどうなるでしょうか。炉の容器は大気圧に比べ極めて低圧ですから、容器は完全に潰れてしまいます。炉内の燃料気体は大気中に拡散しますが、トリチウムは軽いので上空へ風船のように舞い上がり発散してしまいます。地上には殆ど残りません。――
核融合炉が破壊されれば、内部が真空なので、容器が潰れるそうだ。内部の超高温ガスのエネルギーが一瞬で放出される爆発力は、関係ないそうである。しかも周りに住民がいても、全然関係ないと言う。トリチウムは全部風船のように飛んで行きます、という説明には茫然とするばかりで、言葉もない。このような教授によって行われている大学の講義は大丈夫であろうか。もし風船のように飛んでゆけば、全世界にジェット気流に乗ってばら撒かれるだろう。それ以前に、周りの住民は、想像を絶する被曝を受けるのである。実際のトリチウムの危険性は、次の通りである。
@小さな原子である為、高温度の金属をザルのように通り抜ける。
A核融合の超高温のプラズマから、ヘリウムを取り出す時、一緒にトリチウムが流れ出す。
B核融合で生じた中性子をブランケットに導き、エネルギーを発電の為に熱交換する時、大量のトリチウムが熱交換器から放出される。
C核融合炉の外部に漏れた場合には、普通の水素と同じ性質なので、回収出来ない。
D半減期12.3年の放射性物質であり、化学的には普通の水素として、水や有機物となって人間の体内に入り、細胞に影響を与える。12.3年とは、赤ちゃんが中学生になるまでの歳月である。影響としては、染色体の切断による遺伝的作用、精子及び卵巣への影響、ダウン症、新生児の死亡、小児白血病、若い世代の皮膚癌や腫瘍など、数々の影響が報告されている。
Eベータ線を出す放射性物質なので、外部被曝は殆どなく、それを基準に許容値が決められた為、問題となる内部被曝を考慮していない。@ABCDを考えると、実際の被曝量は、遥かに大きい。
FITERでは、数キログラム程のトリチウムを使うが、これは水爆300発分に相当する。毎日、外に放出されるトリチウムは、0.01グラム程度とされている。0.01グラムは、現在日本全土で1年間に使用される量のトリチウムに匹敵する。96年2月29日、北海道電力・泊原発の2次冷却水からごく微量のトリチウムが検出され、大きな問題となったが、核融合では、それと比較にならない程のトリチウムが放出される。
〔動画〕YouTube - 北海道電力・泊原発近くに未知の活断層か:渡辺満久東洋大学変動地形学教授 [2分04秒]
http://www.youtube.com/watch?v=GH5FKRSOsiI
〔動画〕YouTube - 渡辺満久教授、現地での活断層説明後のインタビュー [7分23秒] ※原燃の矛盾を指摘
http://www.youtube.com/watch?v=Ywm4UdIjWAg
G今までの核融合実験炉では、水素と重水素だけでプラズマ実験を行っており、トリチウムが使われていない。従ってITERは生体実験になる。
H既に物理学者の殆どはITERの実現性に疑いを持っており、原研の関連予算も削られている。残ってITERに熱中しているのは、殆どが工学者の人脈であり、トリチウムなどの放射能の危険性について、驚くほど無知である。トリチウムだけでなく、中性子を含めて、日常の運転で被曝の危険性がある。その1つが、スカイシャイン現象である。スカイシャインと言うと空が晴れわたるようで言葉は綺麗だが、そうではない。核融合炉で生まれる中性子という粒子は、コンクリートをスカスカと通り抜けてゆく。中性子爆弾が、核融合反応によって発生する大量の中性子だけを殺傷力として利用する爆弾であるのは、コンクリートでも何でも、建物を通り抜けることが出来るからであった。核融合炉から空に向かって飛び出した中性子が、大気中の空気の分子にぶつかって跳ね返り、その為、周りの住民が日常被曝する現象がスカイシャインである。もう1つ、ストリーミングという現象がある。これは、配管などから中性子が外へ出て、直接人間が被曝することを言う。このスカイシャイン現象とストリーミングが、様々な形で直接の被曝を齎す。
(3頁へ続く)
(2頁からの続き)
■絶滅危惧種に指定される技術
結論を述べたい。今までは、重水素と普通の水素を使って、予備テストの実験が行われていたに過ぎなかった。しばしば「プラズマの1秒保持に成功」といった大きな記事が華々しく報道されてきたが、僅か1秒単位では、発電の実用化にとっては、殆ど意味がないニュースである。それを巨大な装置で完璧に出来るかのような話をして、既に半世紀」が費やされてきた。技術者の常識から考えればあり得ない話だが、それでも巨額の予算が付くのは、研究の殆どが、学者や研究者の失業対策になっているからである。大掛かりな実験を1回か2回やって、大失敗することが間違いない技術であることが、次第に分かってきた。
「いや、アメリカやイギリスでは、トリチウムを使った実験をやっています」と、核融合研究者達は平然と言うが、実際には失敗し、クリントン政権時代のアメリカがITER誘致を断念して、ヨーロッパとロシアもやる気を無くしていた。2003年になってブッシュ政権が再び復帰を声明したが、アメリカが熱中しているのは、ITERによるトカマク炉ではなく、レーザー核融合である。欧米で立派な核融合炉を建設して成功し、大量に電気が出てきましたという話であれば、多少は信じられようが、実際にトリチウムを使った人間が脱落しているのである。
96年7月下旬にロシアで開催された国際会議では、「核融合炉ITERを誘致した国が、総費用の50〜70%を負担する」ことになった。従って当時の見積りでも総額1兆円を超えるこの計画では、日本が誘致すれば、出資する金は、机上の計算で最低5000億円以上、実際には間違いなく1兆円以上を負担することになる。本体以外の部分を考えると、楽に2兆円に達する。その前に途中で終る可能性の方が高い。
〔※2005年6月、建設候補地として六ヶ所村と仏カダラッシュが誘致を競った結果、建設地は仏カダラッシュに決定した。また比較参考として、もんじゅを例に挙げると、田中 優氏によるともんじゅ1基で1兆円、うち350億円が電力会社の儲け分、周辺施設を含めると2兆3000億円掛かっているとのこと〕
〔資料〕ITER - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ITER
クリントン時代のアメリカが断念という結論に達したのは、危険性と材料とエネルギー収支、という決定的な3つの壁に気付いたからであった。米ソの冷戦崩壊によって、経済的な論理が崩れたのである。かつては、核兵器開発の必要性があると主張し、巨大な核兵器産業を維持しながら、その利権に多くの人間が群がる世界があった。その為、「水爆」製造に使われる原料と人材を、「核融合」開発に転用することが、無謀な国家予算の中で可能であった。
米ソの冷戦崩壊後は、核兵器の予算が激減した為、核融合が経済的に自立しなければならなくなった。そして「独り歩きしろ」と言われた途端、核融合の全ての欠陥が、露わになってしまったのである。その後、2001年の世界貿易センタービル崩壊事件によって、再びアメリカが核兵器に力を入れ始め、ITERに復帰したと言うが、発電は100年後だと言うから驚く。
産業崩壊しつつある原発の場合、高レベル放射性廃棄物を処理する核燃料サイクルだけで、過去に電力会社が投入した金とこれから使う金で、1世帯当たり、ほぼ100万円である。過去に、大体10兆円ぐらい投資され、何にも生み出さなかったのが核燃料サイクルであった。その他、動燃の維持費、高速増殖炉“もんじゅ”、再処理工場、高レベル放射性廃棄物の永久管理、これら全部を合計するとどれ程になるか、誰にも分かっていない。エネルギー予算のうち、4分の3を原子力産業に投入し、太陽や風力などの再生可能エネルギーには3%、省エネルギーには7%しか投入しない日本の政策では、時代からどんどん引き離されるのである。
〔関係者達の〕失業対策は大事だが、他にも使い所がある。建設的なことを真剣に考えなければならない時代を読む、それが人間である。
≪≪高レベル廃棄物は、原発の未来を完全に閉ざしているが、ここに、虚をつくような形で、“原発ほどに失敗が認められていない”核融合が、息を吹き返してきた。実は、我々がその存在を忘れていただけで、その道の研究者達は、50年間ずっと不可能に挑戦し、金を浪費してきたのだ。
原子力が終れば、その次は核融合の時代だと言う人がいる。原子力は繋ぎのエネルギーで、核融合に期待すると言う。核融合に、仄かな夢を抱いている人は、日本にまだ極めて多いだろう。しかし、原子炉が無くては核融合の原料が出来ないのだから、論理性の無い話である。物理学者の間で、核融合が将来実現すると思っている人も、クリーンなエネルギーだと言う人も、殆どいなくなっている。核融合の専門家によれば、予算も落ち、人間もどんどん減っている。その為、内部では「新聞で核融合の大きな記事が出ると、みんな変な気がしてくる」と、語っているのだ。
現在我が国で、この核融合計画を進めている関係者は、主に原研を中心とした人脈である。その原子力研究者達が、1950年代から60年代にかけて、大声で次のように主張したことを思い出そう。
「将来のエネルギーは、核分裂を利用した原子力発電によって容易に解決される!電気代は、メーターで測れない程安くなる」と。実際にはどうだったか。核分裂や核融合が無限のエネルギーを生み出すという話を、子供の頃に聞かされてから50年の歳月が流れた。
〔資料〕広瀬 隆 著『赤い楯』の要約 - 日本人が知らない 恐るべき真実
http://d.hatena.ne.jp/rainbowring-abe/200706
〔資料〕ノーベル賞はロスチャイルド貢献賞。 - 日本人は知ってはいけない。 2009年10月13日
http://cosmo-world.seesaa.net/article/130177057.html
〔資料〕「原爆ホロコースト」の実態 - HEXAGON
http://hexagon.inri.client.jp/floorA4F_ha/a4fhc700.html
ウランの原子核を分裂させて得られるエネルギーは、殺人兵器の原爆と、原子力発電所という形で利用されながら、最後には今日(こんにち)のように悲惨な形で、何れも産業崩壊する時代を迎えた。研究の成功と産業の実用化は別の話である。核融合は将来、人類が原子力発電で犯したと同じ道を辿るであろう。ノーベル賞〔Rothschildが深く関与〕を受賞した小柴昌俊氏が、2003年に首相宛てに出した嘆願書には、ITERのトリチウムの危険性と、大量の放射性廃棄物による汚染が警告され、最後は、「我々は良識ある専門知識を持つ物理学者としてITERの誘致には絶対に反対します」の言葉で結ばれている。
アーネスト・ヘミングウェイは『陽はまた昇る』を書いたが、2番目の陽もまた沈む運命にある。
〔資料〕広瀬 隆 著『パンドラの箱の悪魔』(文藝春秋 2004年3月刊行)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784167425036
◆ ◆ ◆
[付録 1]
〔資料〕「少しの燃料で大きなパワー」と言うけれど 小さなウラン燃料が出来るまで - よくわかる原子力
http://www.nuketext.org/uranium.html
〔資料〕被ばく者援護連帯:世界の被ばく者の証言・資料 - 日本原水協
http://www.antiatom.org/GSKY/jp/Hbksh/j_usHaague.htm
〔資料〕アメリカの被曝者 - 月刊『生活と自治』 1997年1月号
http://homepage2.nifty.com/kasida/environment/hibaku.htm
〔資料〕プレスルーム:住友商事株式会社、米国に於ける新規ウラン鉱床開発プロジェクトの事業化調査に参画 - 住友商事(株) 2007年7月27日
http://www.sumitomocorp.co.jp/news/2007/20070727_114636.html
〔資料〕3.資源開発(探鉱・開発) JBIC・NEXIの主なプロジェクト ※5頁
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90406b09j.pdf
〔資料〕プレスリリース:カザフスタン共和国におけるウラン鉱山プロジェクトへの参画について - 東京電力(株) 2007年4月24日
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07042402-j.html
〔資料〕【図解・行政】カザフスタン産ウランの輸送新ルート - 時事ドットコム 2011年3月3日
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_seisaku-energy-kazafuuran20110303j-05-w370
◆ ◆ ◆
(全3頁完)
≪広瀬 隆 著『パンドラの箱の悪魔』 第6話 2番目の陽もまた沈む より抜粋(1)≫|MelancholiaT
http://ameblo.jp/antibizwog/entry-10854961675.html
≪広瀬 隆 著『パンドラの箱の悪魔』 第6話 2番目の陽もまた沈む より抜粋(2)≫|MelancholiaT
http://ameblo.jp/antibizwog/entry-10854966358.html
≪広瀬 隆 著『パンドラの箱の悪魔』 第6話 2番目の陽もまた沈む より抜粋(3)≫|MelancholiaT
http://ameblo.jp/antibizwog/entry-10854970258.html
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