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東日本大震災の影響は長期化しそうだ。特に経済的に大きな影響を与えている計画停電は、4月以降は暖房が減って緩和するが、夏のピーク時には東京電力の管内で1600万kWが不足すると予想され、政府は電力の利用規制を検討している。
このようなリスクは、以前から警告されていたことだ。原発が特定の「原発銀座」に集中立地しているため、「原発が危ない」となると、一挙に大量の電力が失われるのだ。
福島第一・第二原発だけで910万kW、新潟県の柏崎刈羽原発は821万kWだが、2007年の新潟県中越沖地震で止まったまま運転が再開できない。この3カ所だけで1730万kWも電力を失ったままでは、電力不足は数年続くと予想され、日本経済には大きな打撃となろう。
【大震災で露呈した「原発銀座」への集中立地のリスク】
この背景には、政治的に無理を重ねてきた日本の原子力政策の問題がある。1970年代に石油危機で日本経済が大きな打撃を受けたことを教訓に、政府は「脱石油」の目玉として原発の建設を進めた。しかし広島・長崎の経験のある日本では原子力に対する拒否反応が強く、立地は困難をきわめた。
その結果、田中角栄元首相の地元である柏崎や、渡部恒三民主党最高顧問の地元である福島など、有力な政治家の地元に原発が集中的に立地した。地元には「原子力立地給付金」などの形で補助金が支給され、それを出す財団法人に経済産業省のOBが天下った。
いわば原発は、日本の高度成長を支える都市のエネルギーのリスクを地方が負担する代わりに、都市の稼いだ税金を地方に分配するメカニズムになっていたのだ。
原発の出力も、福島第一の1号機の46万kWから柏崎の第7号機の135万kWまで、巨大化の一途をたどった。
今回の事故では、こうした巨大技術と利権分配によるエネルギー供給体制のリスクが露呈した。しばらく日本では、原発の新規立地は不可能になろう。
【「シェールガス」の発見で注目されるガスタービン発電】
しかし代替エネルギーの開発は容易ではない。民主党政権は太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの開発を支援しているが、原発の1kWh当たり単価が6円程度なのに対して、太陽光は70円、風力は250円。とても採算が合わない上に、不安定で業務用の電力には使えない。石油火力も原油価格が上がって高コストになり、産油国が政治的に不安定だ。
コスト的に有力なのは、原子力とほぼ同じ発電単価の石炭火力と天然ガス火力だろう。このうち石炭は発電原価はもっとも安いが、採掘が危険で大気汚染もひどい。従来の天然ガスは油田と同じ地域にあるので政治的リスクが大きいが、最近はシェール(頁岩)から天然ガスを採掘する技術が開発され、ロシアに次いでアメリカに世界第2位の埋蔵量がある。
シェールガスの登場で天然ガス価格は下落し、先物価格は3年前の3分の1になった。これでガスを使ったガスタービン発電のコスト競争力が一気に高まったのだ。アメリカのシェールガスは今後100年分の埋蔵量があるとされる。
ガスタービン発電のイノベーションも活発だ。2011年1月、三菱重工業はアメリカの電力大手から大型ガスタービン設備を受注した。これまでガスタービンは小型の設備が主だったが、この出力は130万kWと原発なみだ。今後、世界的に原発立地が困難になると、こうした大型ガスタービンが有力な代替エネルギーとなろう。
電力会社が地域独占で供給する代わりに、工場などに小型のガスタービンを置いて熱・電力の併給(コジェネレーション)を行う試みは、すでに始まっている。
六本木ヒルズでは3万8000kWの電力をコジェネによって発電している。ここでは企業が電力の消費者ではなく、電力線を通じて東電に電力を売る供給者にもなるのだ。
しかし日本の電力会社は、こうした新技術に否定的だ。彼らは原発に大きな先行投資をしており、それを回収できていないからだ。
例えば青森県の六ヶ所村の再処理施設には2兆円以上のコストが投じられたが、いまだに運転が開始できない。こうした「サンクコスト」(埋没費用)を回収するためには原発を増やすしかないのだ。
【電力会社が送電網の開放を拒む理由】
これは10年前の通信事業に似ている。当時、NTTは電話網に巨額の先行投資をしており、そのサンクコストを守るために電話網を使ったISDN(統合デジタル通信網)を建設していた。
しかしNTTの加入者線を開放する規制によってソフトバンクなどの新しい業者が参入して、ISDNよりはるかに安くて速いDSL(デジタル加入者線)を実現し、日本は一挙に世界のインターネット先進国になった。
同様に電力網でも発電と送電を分離する規制改革が世界的にも進んでおり、日本でも経産省が進めようとしたが、電力会社の抵抗で挫折した。
その1つの原因は、アメリカの大停電など電力供給の不安定化が起こったためだ。
この原因は、送電網だけを持つ会社が設備の保守を怠ったことにある。発電と送電を分離すると、発電会社は電力消費に比例して儲かるが、送電会社はいくら電力消費が増えても設備の維持費用しかもらえないので、なるべく保守に手を抜こうとするのだ。
また、コジェネのような双方向の送電は技術的に厄介な問題を引き起こす。現在の電力網は双方向の送電を想定していないため、電圧が不安定になったり停電したりする。
日本の電力の品質は世界最高で、年間の停電時間はアメリカの73分に対して日本は9分と、極めて安定性が高い。供給源を多様化すると、コストは安くなるが電源の安定供給が保証できないというのが、電力会社の主張だ。
【「スマートグリッド」で日本発のイノベーションを】
しかし、今回の原発事故は、地域独占こそ安定供給の最大の敵であることを示した。
事故の損害賠償によって東電が債務超過になる可能性もあり、政府は東電を「分離処理」することを検討しているという。送電網を東電本体から分離して東北電力と合併させ、他の事業者にも開放しようというものだ。
これは技術的には容易ではない。これまで電力会社が集中的に行ってきた電力の品質管理を分散的に行う「スマートグリッド」は、グーグルなどが提唱しているが、実用化できるかどうかはまだ分からない。日本の電力網は十分にスマートであり、抜本的な変更は必要ないというのが電力会社の主張だ。
しかしエネルギー産業は、日本が今後、世界のイノベーションをリードできる数少ない分野である。分散的に電力網を制御する「電力のインターネット」は技術的には困難だが、成功すれば新興国にも輸出できるイノベーションになるかもしれない。
光ファイバーを全国に普及させようという総務省の「光の道」はナンセンスだが、送電網を電力会社から分離して内外のすべての企業に開放する「電力の道」は、日本経済が再生するきっかけになるかもしれない。
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