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スウェーデンのオスカーシャムにある研究所で、使用済み核燃料の地下埋蔵処理の実験が行われてきた〔AFPBB News〕
原子力産業を悩ます使用済み核燃料の問題
地層処分に動き出すスウェーデン
2011.04.06(Wed) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5806
(2011年4月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
先月、福島第一原子力発電所の危機が明らかになる中で、スウェーデンが、長らく世界の原子力産業を悩ませてきた問題に取り組むための大きな一歩を踏み出した。30年前から計画されてきた高レベル放射性廃棄物の恒久的貯蔵施設の建設が正式に申請されたのだ。
これが承認されれば、スウェーデンは、毒性の強い使用済み核燃料を生命への危険がなくなるまで地下に埋めておく地層処分を実施する世界最初の国となる。これは少なくとも10万年かかるプロセスだ。
■生命への危険がなくなるまで10万年以上地下に埋蔵
スウェーデンは一歩前進したとはいえ、日本の惨事によって、世界の大部分では、一時的な施設に貯蔵されている何万トンもの高レベル放射性廃棄物を恒久的に処分する解決策を見つけるにはほど遠い状態にあるという事実が露呈した。
福島第一原発が抱える重大な危険の1つは、数十年分の使用済み燃料棒が津波に襲われた施設の冷却プールに詰め込まれていることによるものだ。
使用済み燃料棒には、数種類のプルトニウムをはじめ複数の放射性元素の同位体が致死的なレベルで含まれている。
原発に反対する活動家は、各国政府は原子力発電の拡大計画を推進しながら、増え続ける放射性廃棄物については見て見ぬふりをしてきたと非難する。
■解決策がないなら、原発新規建設を認めるべきではない
グリーンピース英国支部の主任研究員ダグ・パー氏は、「この問題について適切な解決策を持たないのなら、政府は原発の新規建設を認めるべきではない」と話す。
日本は長年、放射性廃棄物をプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料に再処理して原子炉で再利用する道を探ってきたが、事故や遅延が原因で計画は思うように進まなかった。
1999年には茨城県東海村の再処理施設で、2人の作業員が死亡する事故が起きた。誤って、安全対策が取られていないタンクにバケツでウラン溶液を入れた結果、臨界状態に達して連鎖的な核分裂反応が発生し、施設内に放射線がまき散らされた。青森県北部の六ヶ所村にある第2の再処理施設は、建設開始から17年経った今もフル稼働していない。
■大量の使用済み核燃料が福島原発の問題の一因か
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東京電力福島第一原子力発電所には、大量の使用済み核燃料が貯蔵されている(2011年4月2日撮影)〔AFPBB News〕
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福島第一原発を運営する東京電力は、1970年代には既に、恒久的な解決策は簡単に見つからないことを認識し、使用済み燃料棒の保管量を増やすため、貯蔵プールの容量を拡大し始めた。
3月11日の地震と津波の発生以来、福島第一原発は相次ぐ火災と放射能漏れによって損傷を受けており、専門家の間では、プールに貯蔵されている使用済み燃料の量の多さも一因ではないかという声が出ている。
地震の影響を受けやすい日本では地下に埋める処分が他国より難しいため、使用済み核燃料は特に厄介な問題だ。しかし、地質学的に日本ほど不安定ではない地域でも、恒久的貯蔵施設の建設に向けてスウェーデンほど踏み出した国はほとんどない。
業界団体の米原子力エネルギー協会(NEI)によると、米国では6万2500トンの高レベル放射性廃棄物が数十カ所に貯蔵されており、さらに毎年2300トンずつ廃棄物が生み出されているという。福島第一原発のようなプールに貯蔵されているものと、乾式キャスク貯蔵と呼ばれる手法で鋼鉄製の容器に入れられているものがある。
■オバマ大統領は貯蔵施設建設計画を中止
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米ニューメキシコ州にあるロスアラモス国立研究所の低レベルの放射性物質保管施設〔AFPBB News〕
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米国は世界で唯一、地中深くの貯蔵施設を運用している。ただし、ニューメキシコ州にあるこの施設は、兵器の研究や生産による廃棄物しか受け入れていない。
ネバダ州に民生用の貯蔵施設を建設する計画には既に数十億ドルが投じられてきたが、バラク・オバマ大統領が地元の反対を受けて計画を中止した。現在、一部の共和党議員が計画の復活を目指している。
地下貯蔵施設に反対する人々は、プールや鋼鉄製の容器であと数十年は使用済み核燃料を安全に貯蔵できるため、その間、代替策についてもっと研究すればよいと主張する。
ところが、福島第一原発の危機をきっかけに、この主張に疑問が投げ掛けられ、恒久的解決策の推進派が勢いづいている。
英国でも、1956年に最初の原子炉が稼働を開始して以来、廃棄物が蓄積されている。政府は今まさに、地下貯蔵施設の建設地について諮問しているところだ。複数の専門家によると、プロジェクトの規模は英仏海峡トンネルの建設に匹敵するという。
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英北部にあるセラフィールド原子力発電所〔AFPBB News〕
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ある専門家は「貯蔵施設そのものは恐らく地下1000メートルくらいの深さに造られるが、そこまでのアクセス路は緩やかな傾斜のらせん状になるため、数キロの距離になる」と説明する。
住民の同意を得られるかという問題もある。原子力産業との結び付きが強い英国カンブリア地方の3つの町が、地下貯蔵施設の受け入れに関心を示している。これらの町は、2012年3月までに、計画を推進する意思があるかどうかを地方当局に報告することになっている。
■地元の同意を得るまで15年
スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)のディレクター、サイダ・エングストレム氏によると、地下貯蔵施設の建設について地元の同意が得られるまでに15年かかったという。その努力が実り、結局2つの町が20億ユーロの貯蔵施設と数百人の雇用を得ようと手を挙げた。
候補地の権利を勝ち取ったのは、ストックホルムから北に2時間の小さな町エストハンマルだった。近くには、低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設もある。
この計画では、地下500メートルの深さに銅の容器に詰めた廃棄物を埋める。2015年に建設を開始し、2020年までには最初のカプセルが埋められる予定だ。資金は既に、原子力発電への課税によって調達されている。
建設計画を実施するにはスウェーデン放射線安全局の認可が必要になる。反原発活動家は、認可を阻止しようと運動を開始している。反対派は、銅の保存容器が腐食し、地下水が汚染される危険性を指摘する。SKBによると、国際的な第三者専門委員会が科学的な証拠を審査している最中だというが、問題ないと判断されるものと見ている。
By Andrew Ward in Stockholm, Jonathan Soble in Tokyo and Sylvia Pfeifer in London© The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. Please do not cut andpaste FT articles and redistribute by email or post to the web.
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