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福島第1原発の制御室で懐中電灯の明かりを頼りに計器をチェックする東電社員
東電、作業員の安全強化とデータの信頼性確保を−福島第1原発事故
2011年 4月 3日 10:28 JST
http://jp.wsj.com/Japan/node_215408?mod=LatestAdBlock2
ウォール・ストリート・ジャーナル
【東京】福島第1原発事故で窮地に立たされている東京電力は4月1日、作業員安全規則の強化と、事故後これまで発表してきた放射性数値の見直しに追い込まれた。失態続きの事故対応策の実態が新たに露呈する格好となった。
原子力安全・保安院は、放射線被ばく測定のために通常携行する線量計を持たせずに一部作業員を福島第1原発のきわめて放射線量の高い環境下で作業させたとして、東電を厳重注意したことを明らかにした。
保安院の西山英彦審議官は1日の記者会見で、東電の信頼性を大きく損ない大変遺憾と述べた。
東電の原子力立地本部長代理、松本純一氏は別の記者会見で、そうした問題の再発防止のため、東電が今後、データ分析の際に専門家の意見を聞く意向を明らかにした。
震災後の東電の対応はいろいろと物議をかもしてきた。東電は3月11日の地震と津波に見舞われ、過熱し始めた原子炉の冷却活動のため、自社ならびに下請け会社の作業員数百人を動員。しかし監督当局によると、東電はその過程で、いくつかの基本的な安全対策を怠ったとしている
保安院は、そうした手抜かりが先週3人の電気工事作業員が放射能汚染された水とは知らず足を浸して行った作業後に病院へ搬送された事故につながったと指摘。
東電は、原発施設内および周辺の放射線量をこれまで数回発表してきたが、今回、これも撤回した。3月31日の夜から半日間に、東電は地下水と海水についての放射性数値を発表したが、直後に撤回。4月1日、東電と保安院は、第1号機付近の地下水が、限度濃度の1万倍にあたる放射性ヨウ素131をやはり含んでいることが判明したと改めて表明し、3月31日の当初の報告を再確認した。
こうした推移を受けて、東電は4月1日の昼にサンプル分析に使用したコンピューター・プログラムに問題があったかどうかを確認するため、過去11日間に発表したすべて数値を見直すことを表明した。東電は当日中に、数値が実際ほぼ正確だったとの結論に達したことを明らかにした。ただし、いくつかの数値について誤計測がなかったかどうかをまだ確認中という。
東電の問題の一部は、事故対策の当初の混乱のさなか、管理者がとった急場しのぎの対応に原因があるとみられる。
線量計の不足はその典型だ。東電は普段から、放射線量が許容限度を超える線量に達したときにアラームが鳴る小型電子放射線測定器について、危険な場所で作業を行う各作業員に行き渡るよう、十分に備蓄している。しかし、東電広報部によると、今回の震災で多くの線量計が使用不能になったため、東電は、作業員チームに線量計を1台だけ持たせて福島第1原発施設に送り込み、チームのほかの作業員には線量計を持つ者のそばから離れないよう指示したケースもあったという。
作業員からの苦情と保安院からの厳重注意を受けて、東電は1日、追加の線量計を調達するとともに、今後、線量計を携行せずに作業員を送り込まない意向を表明した。
作業員は、緊急時対策室と休憩所を兼ねている免震重要棟内の混雑ぶりなど、原発敷地内のその他の条件についても苦情を申し立ててきた。
免震重要棟で5日を過ごした保安院・福島第1原子力保安検査官事務所の横田一磨所長は、3月31日の取材で、免震重要棟内の様子について「苛酷な環境でした。横になるところはない。皆毛布一枚しかなかった」と話した。
東電はこれまで、作業を終えた作業員はなるべく現場の外に出すようにしていたが、作業の合間や、場合によっては夜通し、作業員を現場にとどまらせることもあった。そうした作業員は、除染エリアを通り抜けた後、免震重要棟で食事、仮眠、休憩をとる。
横田氏によると、定員400人の免震重要棟の混雑があまりにひどいときには、廊下で寝たり、床にしゃがみこんで休息する者もいたという。
東京電力広報部によると、東電は、最寄りの福島第2原発の体育館に500人分の仮眠所を設けており、3月31日以降は、免震重要棟の滞在人数が300人を超えないようにしているという。東電はまた、従来までのビスケットと缶詰以外にも、免震重要棟での食事にバラエティーを持たせるよう心がけているという。東電は、より定期的に作業員を現場外に出すことにも努めている。
横田氏によると、東電は今週、放射線レベルを下げるため、免震重要棟の窓に鉛遮蔽を増設したという。作業員の主な不満を確認するため、先ごろ、作業員調査も実施された。一つの要求は、防護服の下に着る下着の配給を増やしてほしいというものだった。横田氏も、丸1週間同じ下着で通したという。免震重要棟には水道もない。
横田氏によると、原子力安全・保安院は先週、3人の作業員の入院を受けて、放射線の監視を改善するよう東電に指示した。東電広報部によると、この事故の際、作業員チームが作業を行うことになっていた3号機タービン建屋地下1階を放射線専門家が前日に検査したものの、当日は現場におらず、当日までに放射能に汚染された水がそこにたまっていたことを確認できなかったという。3人の作業員は数日後に無事退院の運びとなったが、東電広報部によると、東電は目下、すべての作業チームに放射線専門家を必ず同行させるよう、現場管理者に命じているという。
横田氏によると、東電は原発敷地内の放射線マップも作成し、東電および下請け会社の作業員から提供される測定値を基に頻繁に更新を行うことにしている。
全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)の種岡成一会長によると、一部の作業員、とりわけ、高い放射線量の環境下での作業に不慣れな作業員の間では、放射線の防護方法について東電から十分な研修を受けていないという声がまだ聞かれるという。
種岡会長は本紙の取材に対し、「緊急の作業などで入られた方は一部研修が不十分だったという話も届いている」と語った。
現場の地下水が汚染している事実を東電がつかんでいたことが4月1日に再確認されたことで、汚染源についての疑問が新たに生じた。
東電と保安院の関係者は、地下水汚染の原因について、放射性物質を含むちりが雨水でしみこんだと考えられるとしている。放射性物質が原子炉に直接由来するものであれば、汚染濃度が一層高くなる可能性が高いため、それは考えにくいという。
サンプルは、原子炉建屋のコンクリート構造が岩盤に固定されている個所付近の地下15メートル地点で採取された。すぐ背後に山脈が控えているため、原発施設の地下には地下水が流れ、海に注ぎ込んでいる。関係者は1日の時点、現場地下水を今後さらに詳しく検査すると語った。
記者: PHRED DVORAK and JURO OSAWA
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