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1【町田徹「ニュースの深層」】
国際社会をも震撼させた政府と東電の稚拙さは「国有化」では解決しない
2011.03.29
国際社会はここへきて、菅直人政権と東京電力の福島第一原子力発電所の事故対応への懸念を強めている。
欧米を中心に、多くの国々がいち早く首都圏あるいは日本からの避難を自国民に促す動きをみせたことに続き、3月25日には、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が声明を発表。改めて「日本の現況は国際的な緊急事態への対応と原発の安全管理体制の見直しを迫っている」と指摘し、日本と東電の対応の不備を浮かび上がらせた。
さらに、米国がより踏み込んで政府と東電の事故対応に疑問を呈しており、原子炉に注入する水を海水から真水へ切り替える形で転換を迫ったことも明らかになっている。
いずれの動きについても、底流には、深刻な事態を前にもたつき、機動的に有効な手を打てない政府と東電への苛立ちが横たわっていることは、日本国民として看過できない。
これ以上の混乱を避けるため、当面の事故対策は両者に委ねる以外の選択肢はないと信じるが、それだけでは将来へ向けての経済の立て直しや、安全・安心な国作りがままならないだろう。我々は、事態の収拾後を見据えて、今から政府や東電の国際社会などの評価をきちんと記録に留めておくべきだ。そして、今後の危機管理や電力・原発行政を見直す礎にする必要がある。
基準の緩和へ動く菅政権へ国連から「牽制球」
米国、英国、オーストラリア、ニュージランド、韓国が福島第一原発の半径80km圏内からの避難という、日本政府の対応を上回る措置を打ち出したほか、ドイツが東京と横浜からの退避を勧告。フランスやベルギーは自国民の出国に便宜を図るため軍用機を派遣する動きまで見せた。いずれも、東北関東大震災の発生から4、5日しか経たない初動での動きだった。
こうした避難の動きだけならば、幼い子供を抱えて慣れぬ外国で暮らす家族も少なくないことから、目くじらを立てるほどのことではないだろう。各国政府の通常の危機対応策の一環として鷹揚に眺めていることもできた。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2331
しかし、福島第1原発事故が依然として終息に至らず、国際社会は危機感を募らせている。国連の潘事務総長は、傘下の国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長と同様に、繰り返し日本政府に積極的な情報開示や、いたずらな楽観論に基づく対応を諫めてきた。
その潘事務総長が25日の声明で、各国に対し、日本の教訓を踏まえて、より革新的な安全管理体制を築くだけでなく、健康、食品供給、環境維持のため可能な限り高い基準を整備するように要求したことは衝撃的である。
声明の内容は、日本の食品安全委員会が現行の国内基準を厳し過ぎるとして緩和する構えをみせているのと対照的であり、菅政権をけん制していると取れなくもない。
また、米国はオバマ大統領が早くから「トモダチ作戦」を掲げて、再三にわたり日本への支援を惜しまない姿勢を鮮明にしていた。独自に取材したところ、実は、米国は様々なレベルで、大統領の公式発言よりもさらに踏み込んで、積極的、かつ具体的に、広範な救援・復旧活動を打診していたという。
それらの多彩な申し出を受けるのか受けないのか、肝心の日本政府は、なかなか回答せず、米側を苛立たせたとの証言があった。その原因は、普天間基地移転問題で強まった米軍へのアレルギーを癒やすのに役立てたいという“下心”がミエミエと判断したからではないらしい。首相官邸が何でもかんでも抱え込んでしまい、権限委譲をしないため、それぞれの窓口で判断できない状況が続いたからだというのである。
しかし、さすがの米国も、福島第1原発の事故だけは、これ以上、放置できなかった。日本が、原発本来の冷却機能をなかなか回復できなかったからだ。事は急を要する。しかも、いつまでも不純物の多い海水を注入し続けると、思わぬ2次災害が招きかねないと危機感を募らせて、まずは、早急に真水に切り替えることを政府・東電に迫ったという。
その辺りの事情を公表したのは、25日に記者会見した北沢俊美防衛大臣だ。記者からの質問に答える形で「(背景に)腐食を防ぐため早く淡水に変更すべきだという米側の非常に強い要請があった」と認めた。米側がオーストラリアから購入して日本に空輸したポンプや、1隻当たり1100トンの水を積めるバージ船(はしけ)を使って近く注水の真水への切り替えを行うことにしたと内幕を明かしている。
真水への切り替え問題について、北沢大臣はこの会見で、東電も同様の問題意識を持っていたと庇ってみせてはいる。だが、米側が痺れを切らすほど、政府や東電の対応がもたついていたことは否定できない。
「測定する装置を当社は持っていない」
そして、先週後半、国連や米国でなくても、政府や東電の事故対応能力に首を傾げたくなるミスやお粗末な対応が立て続けに発生した。
第1の問題は、24日に起きた。福島第一原発の3号機のタービン建屋の地下にできた水溜りが濃度の高い放射能で汚染されていることをきちんと連絡せず、下請け会社や孫請け会社の作業員3人が被爆するという事故を起こしたのだ。現場でリスクを負う作業員を思いやらない、安全軽視も甚だしい事故である。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2331?page=2
第2は、27日の騒動だ。2号機のタービン建屋で通常運転中の原子炉の水の1000万倍という高濃度のヨウ素134を検出したと午前中に発表した。が、数時間後、この発表を取り消し、ヨウ素134ではなく、「コバルト56の可能性がある」と軌道修正。さらに、28日未明には「放射性物質はセシウム134など。濃度は10万倍だった」と二転三転するお粗末な情報公開を行ったのだ。
しかも、この渦中で、1日4回の記者会見が重荷なので、2回に減らすと変更方針を表明。記者団から猛反発されて方針を撤回し、従来通り4回行うことにしたというのだ。
第3は、やはり、27日に明らかになったこと。半減期が2万年以上のものもあり、漏えいした際の危険性が桁違いに高いプルトニウムによる土壌汚染の可能性を問い質されて、おもむろに「測定する装置を当社は持っていない。測定していない以上は、絶対ないとは言えない」と答えたのだ。
この答えは、東電が、実に被災から16日もの間、ろくに土壌汚染のリスクを調べずに放置してきたことを意味するものである。誠意の感じられない東電の情報開示姿勢にうんざりしていた記者たちでさえ、これには空いた口が塞がらなかった。
列挙した3つの“事件”だけを見ても、菅政権や原子力安全・保安院(経済産業省)、東電に原発事故の対応や、原子力発電所の運転・監督などを行う能力も資格もないことは明らかだろう。言い換えれば、国際社会の厳しい視線は、正鵠を射ているのである。
いまだつながらない案内ダイヤル
さらに首都圏に暮らす市民の立場から言えば、東電が28日からの実施方法の変更を打ち出した「計画停電」も、インフラの担い手としての東電の資質に疑問を投げかけるものに他ならない。
東電は早々に、これまで5グループだった区割りを25に細分化し、「計画停電の対象をわかり易くした」と説明した。ところが、実際には区割りの詳細が実施前日になっても発表されなかったのだ。加えて、利用者が問い合わせようにも、東電の案内ダイヤルが一向に繋がらない状況が放置されていた。
ユーザーから見れば、今回の見直しでは、停電の実施がなかなか決まらない不都合がほとんど改善しない。みしろ、一段と複雑になり、不便さが増したとの印象が拭えない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2331?page=3
岩手、宮城、福島、茨城など深刻な被害を受けた被災地の復旧へ向けて、首都圏の住民も痛みを分かち合うのは当然だが、いつ起きるかわからない1日3時間か6時間の細切れ停電が続くようでは、経済的打撃は増幅する一方である。
製造業、流通業だけでなく、病院のような機関も含めて、たとえ停電が1日とか数日連続することになったとしても、あらかじめ決められたスケジュール通りに行われた方が対応し易いところが多いはずである。東電の見直しは独りよがりに過ぎないのではないだろうか。
原発事故で放射線を広範囲に撒き散らして、各地で飲料水や農産物を汚染した半面で、計画停電も強行して大きな混乱を引き起こしておきながら、被災や渋滞が原因で検針できなかった306万世帯に対し、一方的に2月分と同額の暫定料金の支払いを求める請求書を送付した東電に呆れた読者も少なくないだろう。
国有化による体制温存は看過できない
歴史的に電力各社が相互乗り入れを嫌い、1社で発電・送電を完結して行うために、隣接地域からの電力融通の充実を拒んできたことは、よく知られた話である。
そもそも、今どき、50Hzと60Hzという電気の周波数の違いによって使えない電気製品がいったいどれだけあるのか、疑問である。ところが、今なお、電力融通の拡大努力を怠ったまま、今年夏以降の電力不足を避けるため、東電や経済産業省は計画停電に加えて、電気料金の引き上げによって需要を抑え込む計画という。
独りよがりはいい加減にしてほしい。電力の値上げは、一般企業の経営コストを押し上げるだけでなく、家計の負担を増して、経済の足を引っ張る行為に他ならない。
こうしたインフラ事業者にあるまじき対応が相次ぐ背景にあるのは、長年、地域独占に胡坐をかき、利用者を軽視してきた企業ならではの経済社会における常識の欠如と、競争導入の努力を怠り、その地域独占を容認してきた電力行政の未熟さだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2331?page=4
福島第1原発の事故処理に目途が付き次第、例えば、通信、鉄道、航空など競争導入の経験が豊富な当局を広く包含した公益事業省の創設などを念頭に置いて、抜本的な体制見直しを行うことが必要だ。
株式市場では、売買をはやし立てるための材料として、東電の国有化論を唱える向きが少なからず存在するという。
しかし、両者の体制維持や温存を前提とするのは、論外である。国有化による東電の存続支援など、国民の支持を得るとは思えない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2331?page=5
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現代ビジネス
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