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以下にブログ『五十嵐仁の転成仁語」の記事を転載いたします。政治学者の五十嵐先生は、現在、法政大学で教鞭をお取りになっています(Wiki)。
正直に申し上げれば、日常、先生のご意見に賛成しかねる部分も多いのですが、この記事は現在の原発問題と影響が手短によくまとめられ、参考になるのではないでしょうか。
(転載はじめ)----------
福島第1原子力発電所による被害が拡大し続けています。大地震や津波は天災ですからその発生は避けられませんが、原発による被害は人災ですから避けられたはずのものです。
福島第1原子力発電所は東京電力の要請によって政府が認め、地元が受け入れました。建設を許可せず、地元が反対していれば、原発はそこに存在せず、今回のような被害が発生しようがありません。
原発が建設されてからでも、共産党の吉井議員の国会での質問や福島県議団の申し入れなど、その危険性や災害対策の不備などについては、数々の指摘がありました。もし、東電が、コストを優先せず、これらの指摘を無視することなくきちんとした対策を取ってきたなら、このような事故は起きなかったかもしれません。
事故が発生した後の対応にも問題がありました。もし、事態を軽視せず、早くから適切な対応を取っていれば、事態はこれほど深刻にならず、被害がこのように拡大することがなかったかもしれません。
全ては、人間の対応如何によって、未然に防げたかもしれない災害であり、被害なのです。「自然の猛威」や「想定外の天災」などという言葉で、人災であることを曖昧にしてはなりません。
地震や津波などの天災の場合であっても、事前の準備や対策によっては被害を少なくすることはできます。しかし、その発生をある程度予見はできても、押さえることは不可能です。
これに対して、原発事故の場合には、事前の準備や対策によって被害を少なくすることができるだけではありません。人間の力によって事故の発生を押さえることは可能であり、当然、それについては責任問題が生じます。
今回の福島第1原発の事故は、今もなお予断を許さない状況にあり、その被害がどれだけ拡大するかは不明です。しかし、すでに現状であっても、スリーマイル島事故のレベルを超えたことは明らかでしょう。
チェルノブイリの事故に匹敵するレベルにまで至るかどうかは、これからの被害の拡大にかかっています。しかし、すでに現状であっても、事故による被害は予想を超えて拡大し続けています。
その被害は、放射能汚染による作業員などの被曝という直接的なものだけではありません。様々なレベルで、多くの被害や損害を及ぼし続けていることを軽視してならないでしょう。
第1に挙げなければならないのは、すでに生じている甚大な被害です。例えば、半径20キロ以内からは何万人もの人々が故郷を追われ、近隣の農家は経済的な損失に打ちひしがれています。
第2に、放射能汚染によって将来予想される被害です。乳幼児の甲状腺ガンや若年者の白血病の発生などが懸念されますが、それがどの程度のもになるかは誰にも分かりません。
第3に、無視してはならない重要な間接的被害、つまり震災に遭われた人々の救援や復興の足を引っ張っているという問題があります。もし、原発事故がなければ注ぎ込むことが可能であったはずの政府のエネルギーやマンパワー、物資などが、原発事故への対応や放射能被害の防止に割かれてしまいました。
日本経団連の米倉会長は、「津波に耐えた日本の原子力行政は胸を張るべき」と語ったそうですが、今もなお、そう考えているのでしょうか。原発事故のために故郷を追われたり、野菜や牛乳を廃棄しなければならなかったりした被害者の前で、これと同じことが言えるのでしょうか。
(転載おわり)----------
以上の記事にかぎり、問題点があるとすれば冒頭部分のここ、
>原発による被害は人災ですから避けられたはずのものです。
ではないでしょうか。これでは原発を容認する前提で、事故の原因は技術的な問題だったと限定されます。東電、政府にとっては歓迎するべき内容になるでしょう。技術的に杜撰だった東電と旧政権以来の日本の核行政の責任を追求すると同時に、現在の原発そのものに反対されるのが、五十嵐先生の主張されたかった方向じゃなかったのかな。それとも、代替エネルギーの問題に迷っていらっしゃるのか。
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