http://www.asyura2.com/11/genpatu7/msg/391.html
Tweet |
原発事故と原爆の違い。 この記事は必ずしも正確ではない可能性があります。ただ、ある程度の資料を読んで来たので、こうした違いが原発と原爆にはあるはずだと言うものです。何か間違いがあれば、ぜひ指摘していただければと思います。 まず、基本的な用語の意味から。 1.崩壊:自然な状態で放射性元素が放射線を出し、より安定な元素に変わることを言います。この時に出る熱を崩壊熱と言います。放射性の元素は全て常に崩壊しています。よって、自然界にあっても崩壊熱を出し続けていて、放射性元素のこの崩壊熱を当初考慮しなかったため、地球のマグマがいつごろ固まるか、地球の熱がいつごろ冷めるかの計算が狂ったと言われています。当然、原子炉の中でも、使用済み燃料保管プールの中でも、放射性元素があれば、常に崩壊熱が発生します。普通は、放射線の中でも、電子や電磁波を出してより安定な状態に変わることを崩壊と言い、中性子など重い粒子を出して別の元素に代わることは意味しないことが多い様子です。中性子などを出して分裂する元素はまとめて核分裂性物質ということが多いようです。 2.連続核分裂:連鎖反応とも言う。ある核分裂性物質が分裂して、中性子が飛び出し、その中性子が他の核分裂性物質の原子にあたって、中性子のエネルギーがその原子に吸収され、その結果、その原子が分裂して新たに中性子を放出するという連鎖反応のこと。中性子以外では、こういった連続核分裂は起こりません。一定量の核分裂性物質があれば、崩壊した元素からの中性子が常に存在するので、連続核分裂は小規模に起こっている。普通は、連続した分裂が一定期間(ほとんどの場合、マイクロ秒の単位しか持続しない)起こると、その付近の核分裂性元素の密度が低下してしまい、自然に停止する。 3.臨界:連続核分裂で、吸収される中性子数と新たに放出される中性子の数が等しい状態で、一定の熱が持続して生産される状態のこと。つまり、一定の強さで核分裂が続くことを意味する。原子炉の中ではこの状態が維持されていて、そのため、一定の高温状態が保たれている。制御の方法は幾つかあるようですが、制御棒を使って中性子の速さや数を制御することが基本のよう。あくまで、臨界は一定の強さで連続核分裂が継続的に起こって、一定のエネルギーが産出され続ける状態を言う。原子炉内で、臨界状態のまま冷却水が回らないと、臨界状態で作られた熱がどんどんたまり、短期間で原子炉が壊れてしまう。しかし、これは、原爆の爆発とは比べ物にならないくらい小さいエネルギーなので、何キロ四方にもわたる地域が原爆のように焼き尽くされ、破壊されることはない。福島原発の場合は、制御棒がきちんと働き、臨界状態ではなくなっているので、熱の発生がかなり抑えられている。このため、まだ、原子炉の破壊などの事態になっていない。なお、1999年に起こったJOC事故では、ウラン溶液を一定量以上丸い形のバケツに入れてしまったことが臨界になった理由だと言われている。つまり、臨界に達するには、ある限度以上の量がまとまった状態で必要。例えば、薄い紙のようにウラン溶液を広げれば、量がいくらあっても、普通は臨界にならない。丸い球状の入れ物に入れればかなり少ない量であっても臨界になる。 4.超臨界:臨界状態の時、核分裂性の物質が一定量以上、一定の密度を超えてあったとき、連続核分裂がどんどん進み、中性子の数が幾何級数的に増え、それに伴い、分裂する原子の数も幾何級数的に増え、結果的に一瞬で巨大なエネルギーを生み出す状態。だから、この状態が長時間、たとえば数分間以上続くことはない。あくまでも一瞬で核分裂が大規模に進むことが必要で、この状態を制御することはできない。出てくるエネルギーの規模はどの程度の量の分裂性物質がどの程度の密度であったかによる。原爆の場合、原子炉燃料よりも格段にウランなどの核分裂性物質の密度が、つまり、純度が高い。反対から言えば、原子炉燃料は純度が低いので、超臨界になることは原則としてない。よって、原子炉内で、通常状態では、原爆のような巨大なエネルギーを一瞬に生み出す超臨界にはならない。原爆などは、爆弾の内部で、ウランなどを最初は分散して配置し、それを爆薬で一か所へ押し固めることで密度を一瞬に高め、超臨界状態を作り出している。ちなみに、核分裂性ウランの濃度は原子炉の燃料では5%ほどであり、原爆などでは90%程度。 と言うことで、福島第一原発が原爆のように爆発することはまずありません。一安心ですが、問題はまだあるのです。 5.核分裂生成物:ウランなどが核分裂をすれば、中性子やその他の放射線が周りの原子に当たり、取り込まれていろいろな物質ができます。その中には、放射性ヨウ素、放射性セシウムなどが含まれます。これらの元素は、ある意味、外部からエネルギーを不自然な状態で取り込んでいるので、それをまた外部へ放出しようとします。つまり、核分裂生成物の多くは、放射性同位体が多く安定同位体は少ないのです。放射性がありますから、こういった物質が環境下にあれば、そこからの放射線を人間が浴びることになりますし、また、呼吸や食物を通じて体内に取り込み、内部被ばくを起こすことになります。核分裂の結果これらが作られるので、原爆でも原発でも同じように作られます。ただ、原発の場合はウランなどの核燃料の割合が低い分だけその他の物質が多く、核分裂生成物の種類も多くなるようです。 6.原爆と原発の放射性物質の量の違い:原爆の場合は、核分裂性の物質の量が原発と比べて格段に少ない。広島に落とされた原爆は、50キロのウランが使われ、このうちの1キロのウランが分裂したと言われる。したがって、核分裂に伴って作り出される死の灰も最大限50キロに収まる。これがかなり広い地域に拡散されるので、原爆の場合の放射性物質の影響はあまり危険性がないと言われる。しかし、原発の場合は、一つの原発で何トンまたは何十トンの放射性物質をため込んでいます。崩壊熱によって高温になった原子炉に水が加わって大量の水蒸気が発生すれば、水蒸気爆発と言われる状況になり、多量の放射性物質が四方へ拡散して、環境汚染が起こります。原爆の場合は、超臨界によって多量のエネルギーが一気に発生し、それは熱エネルギーとなって周囲を焼き尽くします。コンクリートとか石なども溶かしてしまいます。その意味で、原爆は恐ろしいのです。原発の場合はそういった意味の脅威はまずないのですが、その代り、長期間に渡って、大量の放射性物質を周囲にまき散らすと言う危険性があります。 7.放射化:原子が外部から中性子やエネルギーを受け取り、不安定な状態になって、外部へまたそれらを放射することを言うようです。原爆の場合、爆心地の地面は強い放射線を浴びるので、放射化され、地中にある金属原子や水の酸素原子などが放射線を出すようになります。もともと不安定な状態なので、一週間とか一月で強い放射線を出す時期は過ぎてしまいますが、その期間に爆心地に立ち入った人たちは、強い放射線の影響を受けることになります。原発の場合は、建物を作っているコンクリートや鉄骨などが放射化され、それらの体積が大きいので放射化が長期間続くことになります。その結果、核燃料を取り出して、核分裂生成物の細かいチリなどを取り去っても、何年間も原子炉自体が放射線を出し続けます。このことが、原子炉を廃炉する際、時間がかかる理由の一つです。 8.半減期:放射性元素が崩壊してもとの半分になる期間。定義的には放射性原子の数自体が半分になるまでの期間だが、放射線の強さが半分になるまでの期間と考えてもいいようだ。放射性を持つとは不安定な状態から安定した状態へ戻るために放射線を出していると言うことなので、半減期が短いものは、急激に安定した状態へ戻ろうとしていることになり、それだけ外部へ強い影響を与えることになる。例えば放射性ヨウ素は半減期が一週間ほどであり、ウランやプルトニウムが持つ放射性より強い影響を人体に与える。原爆に使うウラン235は連続核分裂を起こすがウラン238は起こさない。つまり、ウラン235は不安定さがより強いので半減期もウラン238より一桁短い。逆から言えば、半減期が何万年も何億年もある場合は、放射毒性は一般的に言って小さい。ただし、健康に影響がないと言うことではない。 9.ウランやプルトニウムの毒性:ウランやプルトニウムは半減期が長い。だから一般的に言って放射毒性はあまり強くない。しかし、放射毒性とは別に化学毒性がある。よく塗料に鉛が含まれているので、商品を回収すると言うようなニュースが流れる。これは重金属が体内へ入ると化学毒性を持つためだ。ウランもプルトニウムも鉛と同じ重金属なので化学毒性を持つ。劣化ウラン弾に使われるウランは放射毒性よりも化学毒性を意識したものだとされる。なお、ウランもプルトニウムも同位体は全て放射性を持つ。つまり、ウランやプルトニウムは全ての同位体が放射性同位体であり、半減期、つまり、不安定さの度合いが異なるだけだ。原発は原爆に比べて格段に多い量のウランやプルトニウムを持つので、これらの放射毒性を別にして化学毒性だけでも *6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<422>>
原子炉内や保管プール内でも、崩壊熱がたまり高熱になってウランなどが液体になり、一か所に一定量以上溜まれば臨界状態になる可能性はかなりあります。制御棒自体の耐熱性が1000度ほどのはずで、原子炉内は崩壊熱で2000度を超える状況にはなり得るからです。つまり、制御棒が壊れ、変形し、燃料棒が溶けて、ウランなどが原子炉底部へ溜まり、そこで核分裂性のウランなどが分離すれば、超臨界へ進む可能性もかなり薄いですが、一応はあり得ると思います。
更に、圧力容器は金属製で融点が2000度もないため、ウランが溶けて炉底にたまり、そこでまた崩壊熱によって熱が高まり2000度以上になれば圧力容器の底は溶け落ちるが、その外側にある格納容器はコンクリートなので融点が2400度ほどあり、格納容器の底が抜けることはない、とされるようですが、これについては疑問があります。基本的に崩壊熱は数万度以上の環境下でもエネルギーを出し続けるので、熱がこもる環境なら、2000度以上、多分、3000度以上にもなり得るからです。
広島や長崎に原爆が落とされた後、これらの地域には一生、または、何百年も住むことが出来ないと言われていたました。ところが、現実には、放射能の後遺障害で苦しまれた方は、原爆投下後、一週間とか数か月以内に地域へ長時間いた方が大部分でした。つまり、広島や長崎では、原爆が破裂した数か月後にはかなりの程度放射能の影響は消えていたのです。ところが、チェルノブイリ事故の場合は何十年も事故後経過しているのに、未だに立ち入り禁止、居住禁止の地域が広くあります。この違いはなぜでしょうか?
かなりの悪影響を環境に与える。しかも、化学毒性は放射能とは違って減衰しない。何万年、何億年たっても化学毒性はそのままなので、もし一度ウランやプルトニウムが高濃度で環境へ吐き出されると、その環境は二度と使えなくなる。ただし、化学毒性は体内へ取り込んだ時に問題となるので、単に居住するだけなら問題はない。しかし、農業に使ったり、その土地の地下水を飲用などに使うことはできない。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素7掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。