http://www.asyura2.com/11/genpatu7/msg/388.html
Tweet |
https://www.monex.co.jp/static/jpmorgan/2011/03/18/JMISC28105.pdf
JP モルガン証券株式会社
北野 一
無知が生む恐怖のリスク
• スウェーデンの核問題の専門家が、次のように語っていた。「Absence of
detailed information creates fears that are much greater than real
danger.」至言である。原子力発電所の仕組みや核反応について、我々は
詳しくはない。当たり前のことだ。従って、連日のように報道される情報を
我々は完全に理解することはできない。現在、我々が置かれている状況
は、阪神・淡路大震災よりも、いつ二次的な攻撃があるか分からない不透
明な状況に置かれていた9・11 テロ後に近いであろう。
• 海外からも、今回の原発事故について、参考になる情報がいくつも寄せら
れている。例えば、MIT のリサーチ・サイエンティストのJosef Oehmen 博士
のレポートは、日本でも広く読まれている。彼と、前述のスウェーデンの専門
家で意見の一致があるように思われるのは、チェルノブイリと福島は違うとい
う点である。両者の違いを、素人的に理解するならば、核連鎖反応(核分裂、
臨界)が続いていたか、それとも停止しているか。核連鎖反応が停止してい
ても問題が生じるのは、核が熱を生みだし続けているから。すなわち、余熱
の問題。専門家は、この連鎖反応と余熱の間に一線を引いているように思
われる。
• では、日本のマスコミは、この差をどのように伝えているか。キーワード検索
をしてみた。まず、「原発、核分裂、余熱」という言葉を含む記事は、3 月12
日〜16 日の間に2 件だけだ。「原発、連鎖反応、余熱」はゼロ、「原発、臨
界、余熱」は1 件である。日本のマスコミは、核連鎖反応と余熱の問題を上
手く伝えていないように思われる。因みに、「原発、核分裂、余熱」を含む2
つの記事のうち、両者の関係について述べているのは、3 月13 日付けの読
売新聞だ。「原子炉を停止する場合は、炉内の核分裂反応を抑制する「制
御棒」を挿入する。しかし、反応を止めても核燃料は高い余熱を持っている
ため、安全で安定した状態にするには、さらに冷却を続ける必要がある」。
• 今回の福島では、制御棒が挿入された。海外の専門家は、この点を評価し
て、楽観的な見通しを述べている。ただ、日本のなかでは、新たに次のよう
な懸念が台頭している。「2 号機では放射性物質を隔離する最後の砦(とり
で)といわれる格納容器が破損し、非常用の水の注入ができない状態が続
くと、圧力容器内で燃料棒が水から露出しつづける可能性が高い。すると、
露出部分が高温で溶け、下に燃料そのものが落ちる。制御棒で囲まれてい
る間は核分裂を抑えていたが、溶け落ちることで圧力容器の底で、再び核
分裂が始まる。燃料棒の冷却が進まず、「メルトダウン」と呼ばれる完全な炉
心溶融が起きる可能性も高まり、放射性物質が完全に建屋の外に出る可能
性が高くなる」(3 月15 日、日本経済新聞)。
日本経済新聞は、あっさりと「再び核分裂が始まる」、つまり再臨界の可能性に
言及しているが、果たして、どの程度のリスクがあるのだろうか。この点は、重要
だ。チェルノブイリと福島の差は、核連鎖反応が起きているのか、それとも余熱
の問題か、であった。それが再び核分裂が起きるなら、福島とチェルノブイリの
差はなくなる。素人的には、そう理解できる。なお、「原発、再臨界」を含む記事
数は、8 件ある。3 月15 日付けの日本経済新聞は、「現時点で(炉内で再び核
分裂反応が起きる)再臨界は起こらないと思う」という東京電力の武藤副社長の
言葉を引用している。この再臨界が完全に否定できなくなった時点で、先に引
用したMIT のJosef Oehmen 博士のレポートは、「気休め」になった感はある。
ただ、物理学者によると、再臨界の危険性は極めて低いという評価もある。MIT
のJosef Oehmen 博士のレポートは、3 月12 日に作成された。彼は、「大量の
水があるので、コアは深刻な圧力上昇を引き起こすだけの十分な熱をもはや生
み出すことは出来ません」と書いているが、現実に福島第一原発では、大量の
水がなくなり、圧力上昇が起こっていた。彼には、この状況を踏まえた上でのフ
ォローアップを期待したい。
さて、これは素人ゆえの飛躍かもしれないが、万が一、再臨界ということになれ
ば、福島でもチェルノブイリ的なリスクが生じることになる。その最悪を念頭にお
いた場合、どの程度の距離があると、通常の生活に支障を来さないのであろう
か。J.P.モルガンが米国の核専門家に聞いたところ、最悪のシナリオの場合、
福島原発から30〜50Km が危険区域となるが、最悪の危険性は低く、再臨界
の危険性も極めて低いという。ただ、最悪を超える地震と津波を経験した日本
人には、それを簡単には信じることができない。それが現在のメンタリティーで
もある。
議論を纏めてみよう、チェルノブイリと福島の差は、核連鎖反応が続いているか、
止まっているか。余熱によるリスクは、ずいぶん違う。ただし、再臨界ということ
になると、両者の差はなくなる。専門家は、そのリスクは極めて低いと言うが、日
本経済新聞は、あっさりとその可能性に言及している。いずれにせよ、以上を
整理した形での報道は非常に少ない。結果として、「Absence of detailed
information creates fears that are much greater than real danger.」という状況
が生まれている。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素7掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。