http://www.asyura2.com/11/genpatu7/msg/229.html
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図表が抜けていますので以下のURLを見ていただいたほうがよくわかります。
マスコミや行政は実際の数値や状況をはっきりと公開しないと恐怖ばかりが募る事になります。
誤解を受けるといけませんので言っておきますが、あくまでマイクロシーベルトのオーダーの話です。
放射線は少し浴びたほうが健康によい(近藤宗平:大阪大学名誉教授)
http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/kondo030117.html
1 はじめに
JCOの臨界事故では,事故現場にいた作業者3人のうち,2人が約18Gyと約8Gyの放射線被ばくで亡くなり,l人は約3Gyの被ばくで助かった。これは,「放射線の急件被ばくの場合,50%致死量は約5Gyで、3Gy以下なら急性死亡の危険はない」という経験法則が正しいことを証明した。
3Gy以下の放射線被ばくなら,成人の場合,たとえ一時的に身体の被ばく部位に障害が起こってもほとんどは正常に治る。しかし,胎児の場合は,原爆放射線1.4Gyの急性被ばくで,重度精神遅滞症が70%の高頻度で発生した。ただし,この精神遅滞症も,0.2Gy以下の被ばく線量では,被ばくしない場合に発生する頻度まで低下し,放射線の危険はなくなった。ところが,0.2Gy以下の放射線被ばくは胎児に異常を起こさない事実I)は,一般には知られていないようである。JCO事故の直後,事故現場から遠く離れた所に住んでいた妊娠女性の多くが,放射線の扱ばくで胎児に異常が起こるかもしれないと夜も眠れないほど心配したと聞いた。
放射線は徴量でも危険であるという誤解のな原因は,放射線の徴量の洩れも,放射線の事故だと週大に取り扱うマスコミなどの不誠実とも青える対応によっていると思われる。このような実例が最近起こった。
平成14年4月4日,大阪の河内長野市の日本農薬総合研究所で,廃液処理施設の配管の徴小な損傷で,放射性炭素が徴量外部に浅れた。新聞は,「放射性廃棄物施設で爆発」などの見出しで誇大報道をした。このとき洩れた放射能の量は,法的に安全であると許容されている範囲内であった。しかし,法的規制以内の放射性物質の洩れであったという事実を,取り締まり責任当局は明言しなかった。これらの結果,河内長野市では住民の間に放射性物質の便用そのものへの恐怖が広がった。
放射線は,かなり浴ぴても,痛くも痒くもない。放射線が怖いのは被ばくによる健康影響の程度で決まる。被ばく線量がわかれば,どの程度の健康影響が起こるかは,放射線の健康影響の調査資料と放射線の生物影響の研究資料から,正しい予測が得られるはずである。しかし,最近までは,放射線の健康影響の資料は,原爆被ばくの資料以外は,限られた資料しかなかった。原爆の資料は,被ばく線量が0.2Sv以下の低線量では信用できない。JCO事故と河内長野の放射能洩れの場合には,原爆影響の資料は道用できない。幸いにも,最近,英国放射線科医の過去100年の健康調査の結果と米国の原子力船修埋作業中に徴量被ばくした作業者大集団の便康調査の結果が報告された。これらの調査結果は,JCO事故と河内長野の放射能洩れの場合に適用できる。本稿では,この二つの資料の概要を紹介する。
2 適量の放射線被ばくが英国放射線科医の寿命をのばした
論文‘100years of observaion on the British radiologists:morality from cancer and other causes
1897~1997’by A.Beington,S.C.Darby,H.A.Weiss and R.Dollは2001年6月発表された2)。
これは放射線の健康影響に関する論文として今後長く引用されると恩われる。この論文には,1897〜1997年の100年間にわたって,英国放射線科医2,698人の死亡率と,放射線を浴ぴなかった一般の英国男性,ソーシャルクラス1の男性,または一般臨床医男性の死亡率を比較したものである。調査は,放射線科医が初めて放射線学会に登録した年によって4期に分けてなされた。
2.1死亡率の比較(初期1897-1920)
男性放射線科医の観察死亡数(0)と放射線を浴ぴない参照群(一般男性,ソーシャルクラスlの男性,または一般臨床医男性)の死亡率を用いて計算する期待死亡数(E)の比を,SMR(stndardized mortality ratio:標準化死亡比)とよぶ。Eは次式で求める:
E=n1P1+n2P2+n3P3+・・・・+nkPk (l)
ここに,n1は放射線科医集団のi番目の年令階級の人数,P1は参照集団の1番目の年令階級の死亡率,kは調査集団で採用した年令階級数である。SMRがlより大きいか小さいかで,放射線科医の死亡率が参照群より高いか低いか判断する。表lに初期(1897−1920)に最初の登録をした放射線科医の観察死亡数と期待死亡数の比SMRが,死因の違いによってどのように変わるかを示す。これによれば,ガンによる死亡では,放射線科医の死亡率が一般臨床医の1.75倍ソーシャルクラスlの1.45倍で,いずれも統計的に有意に高い。一般人と比べても,有意の違いではないが,放射線科医のガン死亡率は高い。これらの事実は,1920年以前に最初の登録をした放射線科医は,臨床現場で,かなりの量のX線を毎日のように被ばくしたためであることは間違いない。ところが,表1によれば,ガン以外の原因による死亡では,放射線科医の死亡率は,一般臨床医の死亡率の0.86倍で,これは統計的に有意の滅少である。一般人やソーシャルクラス1に比べても,放射線科医のガン以外の死亡率は,有意の違いではないが低い(表l)。すなわち,ガン以外の原因による死亡では,放射線科医が浴ぴた大量のX線は,死亡を防ぐ健康増進効果があったことを示唆する。
原爆放射線の影響では,ガン以外の死亡で放射線の有害効果があると報告されている3)。なぜ英国放射線科医の場合と違いが起こったのだろうか?原爆放射線の被ばくは瞬時に起こった。他方,X線による医擦現場での被ばくは少しずつ慢性的であった。医師として勤務した生涯(20年と仮定)被ばく線量は20Gyと推走されている2)。20Gyは,急性被ばくの場合なら50%致死線量の4倍である。こんな大量被ばくでも,放射線科医に急性死亡がゼロであったのは,毎日少しずつの被ばくであったため,X線傷害はその日のうちに治って,累積しなかったからと思われる。事実,全原因による死亡では,放射線科医の死亡率は一般臨床医とほとんど変わらない(表1)。これは,死亡の20%がガン死であるから,ガン以外の死亡に対するX線の死亡抑制効果が,X線のガン死促進効を相殺したためと考えられる。放射線の健康影響では,被ばくが一気の場合は危険が多いが,少しずつの慢性被ばくの場合は,健康を増進する証拠が得られた。これは,酒の一気のみは しばしば危険を伴うが,同じ量の酒でも少しずつ飲むと百薬の長の効果があるのに似ている。
2.2死亡率の比較(中期1921-54)
1920年に,英国ではX線安全委員会が設立された。これにより,1921年以降では放射線科医の被ばく量が激滅した。この結果,中期(1921-54)に最初の登録をした放射線科医の健康は向上した。
表2に示すように,ガンによる死亡では,放射線科医の死亡率は,一般臨床医の死亡率に比べて,中期前半(1921-35)で1.24倍,中期後半(1936-54)では1.12倍である。これらの少しの死亡率過剰は,統計的には有意でない。この中期放射線科医の生涯(20年)被ばく量は中期前半の医師で3.8Gy,中期後半の医師でl.25Gyと推定されている2)。
2.3死亡率の比較(後期1955-79)
後期(1955-79)に最初の登録をした放射線科医の健康向上はめざましい。表3から明らかなように,全原因による死亡率では,放射線科医は,一般臨床医,ソーシャルクスlの男性,一般の男性に比べて,31%から50%も低く,これは統計的に有意の低下である。ガン死亡率でも,放射線科医の値はいずれの参照群の値より低い(表3)。後期放射線科医の生涯(20年)被ばく量は約0.lGyで,年間約5mGyと推定されている2)。
表3は,毎年約5mGyのX線を停年退職するまで浴ぴ続けた放射線科医では,X線を浴ぴない一般医師よりも,死亡率が有意に滅ったことを意味する。すなわち,人工放射線を全く浴ぴないより,少しは浴ぴた方が健康によいことを示す信頼度の高い疫学的証拠が得られた。
3 米国の原子力船修理作業者は放射線の適量被ばくで健康が増進した
放射線の少量被ばくは健康によいか悪いかは放射線管埋上最大の基本間題である。放射線の健康影響は科学間題であるから,科学的証拠に基づいて,少量被ばくの影響に関する結論を出すのが筋である。このためには,放射線を長期間少しずつ浴ぴる作業現場が多数存在して,そこで被ばくした多数の作業者について長期問の健康調査が実施されていれば,それは最重要資料となる。
米国では,原子刀潜水艦などの原子力船が製造され長年使用されている。これらの原子力船は走期的なオーバーホールその他の修理がしばしば必要になる。このような修理に従事する作業者(造船工,機械工,電気工,溶接工など多種多様の専門工)は,作業期間中少量の放射線を被ばくする。被ばくはほとんどがCo-60(これは船に塔載されている原子炉から放出される中性子により,炉周辺船体部の鋼材内のCo-60が放射性同位体に変換したもの)からのγ線である。これらの原子力船修埋作業者の被ばく線量は,初期にはフィルムバッジ,1976年以後は熱ルミネッセンス線量計を用いて測定された。被ばく放射線が単純なγ線であり,被ばく線量測定が信頼性の高い方法で実施された点は,この被ばく集団の資料の信頼性を高めている重要な要素である。この被ばく作業者の健康調査は,米国エネルギー省の要請で,疫学者G.M.Matanoski教授が責任者となって行われた。その最終報告は1991年に提出された4)。しかし,報告書の全容は科学雑誌にまだ発表されていない。この調査に対する査察委員会の委員であったJ.R.Cameronは,この報告書を重視し,概要を原稿にまとめて,Health Physics誌に投稿した5)。本稿は後者に基づいて概要を述べる。
3.1 放射線の被ばく線量
原子力船修埋作業は米国の8か所の造船所でなされたりこのうち調査された6か所の公立の造船所の作業者の年間被ばく量の総括資料を表4に示す。被ばく量の中央値は年間0.28cGyである(表4。なおlcGy=10mGy)。
3.2 被ばく集団に対する対照集団の選定
この調査の特徴の一つは,被ばく集団と比べるための対照集団の選択に偏りが入らないように細心の注意が払われた点にある。もし,対照集団に米国の一般人を選べば,調査した造船所作業者は本来健康な人であるため,病弱な人も含む一般人より,調査集団の方が健康状態がよいという結果になる場合が多いだろう。このような健康作業者効果(healthy worker effect:より健康な作業者が調査集団に選ばれるための偏り効果)をさけるため,対照集団の選択には,次のような借置がとられた。
l)原子力船の修埋を行ったことのない造船所の作業者を対照集団に選んだ。
2)原子力船修理造船所の作業者でも,原子力船のオーバーホール作業に従事しなかった人は除外した。
3)造船所での作業期間がl年以下の人は,被ばく集団からも対照集団からも除外した。
4)対照集団は,年今・作業の種類と危険度・就業年数が被ばく集団と同じになるように選んだ。
5)健康記録の調査は完璧に近くなされた。健康状態不明の割合は被ばく集団と対照集団で等しい。
3.3 全原因死亡率の比較
原子力船修埋に従事した被ばく作業者群と原子力船修理には全く従事しなかった対照作業者群の問で,全原因による死亡率を比較した調査結果を表5に示す。調査した人数は対照群が32、510人,0.5cSv以下の被ばく群が10、348人,0.5cSv以上の群が27、872人である(lcSv=10mSv)。「人・年」は作業者の人数と作業者が仕事に従事していた期間の積を意味する。
表5の調査集団客群の死亡数(○)に対応して,全米の一般白人における全原因死亡期待数(E)を計算して,0:Eの比からSMR(標準化死亡比)を求めた(計算法は2節の式(l)とその後の記述参照)。
表5に示すように,対照群のSMRに比べると,0.5cSv以下の被ばく群のSMRは19%小さく,0.5cSv以上の被ばく群のSMRは24%小さく,両者は統計的に有意の滅少である。すなわち,γ線を毎年少しずつ浴ぴて10数年間に0.5cSv以下または0.5cSv異常の被ばくに達した作業者群では,γ線を浴ぴなかった対照作業者群より,健康が増進し死亡率が有意に下がった。0.5cSv以上の被ばく群を3亜群,0.5cSv〜1.0cSv およぴ5cSv以上,に分けて比べると,死亡率はこの順に滅少傾向を示した(表5)。
C
3.4ガン死亡率の比較
表3に紹介したように,1955〜79年に最初の登録をした英国放射線科医のガン死亡率は,一般臨床医の死亡率より,SMRで比べると29%も少ないのに,続計学的には有意の滅少ではない。これは調査集団が小さかったためである可能性が高い。原子力船修理作業被ばく者集固は英国放射線科医集団より桁違いに大きい。表6に示すように,全ガン死亡では,0.5cSv以上被ばく作業者集団のガン死亡率は対照棄団の死亡率より17%少なく,これは統計学的に有意の滅少である。すなわち,毎年微量のγ線を10数年以上被ばくして,累積被ばく量が0.5cSv以上になった作業者群では,γ線を被ばくしなかった対照作業者に比べて,適量γ線の有益効果として実際にガンの抑制が起こったという証拠が得られた。
4むすび
英国の放射線科医として1955−79年に最初の登録をした集団(以下“英国被ばく医群”と略称)は,X線を毎年約5mGyずつ,約20年の勤務期間で,累積被ばく線量約0.lGyになったと推定されている2)。他方,米国で原子力船の修埋に従事し0.5cSv以上被ばくした造船所作業者集団(以下…‘英国被ばく作業者群”と略称)は,γ線を毎年約3mGyずつ10数年浴ぴ続け,累積被ばく線量が約3cGyとなった(表4,表5)。
英国被ばく医群では,ガンまたは全原因による死亡率が,被ばくしなかった一般臨床医師より,29%または32%低かった(表3)。米国被ばく作業者群では,ガンまたは全原因による死亡率が,被ばくしなかった対照作業者群より,17%または24%低かった(表6,表5)。
すなわち,似たような低線量率のX線またはγ線を慢性被ばくした二つの集団で,数値的に同程度に放射線の健康増進効果が実際に起こった。これは,死亡率の滅少が二つの集団で偶然に同様に起こったのではなくて,放射線の健康増進効果が実際に被ばくした人に現れた証拠であると考えるほうが自然である。すなわち,放射線は自然放射線以外を全く浴ぴないより,人工放射線を少し浴ぴた方が健康によいという有力な科学的証拠が得られた。したがって,放射線は微量でも危険だと主張するのは,科学的に間違いで倫理に反する。
謝辞
投稿前の原稿を送信して下さったJ.R.Cameron悼士と,原稿作成中に,内容について有益な批判・助言をいただいた祖父江友孝博士,上谷雅孝博士,梁治子博士,原稿のワープロソフト化を助け,原稿の誤りを指摘してくださった中島裕夫博士,原稿に対する助言と機器を便わせてくださった野村大成教授に感謝する。
参考文献
1)近藤宗平:「人は放射線になぜ弱いか一少しの放射線は心配無用一」第3版,講談社,ブルーバックス(1999)
2)Berrington,A.et al :Br J.Radiol 74 507 (2001)
3)Shimizu,Y.et al: Radiat.Res 152 374 (1999)
4)Matanoski,G.:Heath effects of low level radiation in shipyard workers.Final report,471pp.
Baltimore,MD,DOE AC02−79EV10095. National Technical lnfomation Service,Springfield,Virginia.
5)Sponsler,R.and Cameron,J.R.:Nuclear shipyrd worker study(1980−1988):a large cohort ex‐
posed to low dose rate gamma radiahon. Haelth Phys.(submitted).
Isotope News 2002年8月号
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