86. 2012年6月26日 09:43:17
: Mnxczxr6Dw
下記の文章は示唆に富んでいると思い、ここに紹介しました。 この筆者が批判している「あってはならない妄想」とは、原発安全神話や 被曝安全神話を指しています。 政府の枝野その他の気休め的アナウンスメントや、 有象無象の御用学者、池田信夫その他のようなインチキ学者もどき、 副島隆彦その他のような詐欺的言論屋や、マスゴミの連中などが、 「あってはならない妄想」に囚われている人々だということになります。我々が生存のために必要なのは、「あってはならない妄想」にとらわれて 現実から目を背けて気休めに甘んじる、という自己欺瞞から、勇気と知恵を もって訣別することです。 ……但し、下記の文章に即して言うなら、「海外でも未承認の急性放射線障害治療薬」の 使用について、我々が自分の判断と責任にもとづき自分を被験者として試みる分には 他人から咎め立てを受ける筋合いはありませんが、メンゲレ山下みたいな「放射線医学」の 専門学者が、受け身的に彼のような御用学者を頼っている無知の人々をモルモットにして 生体実験を行ない、そうしたエリート主義的な生体実験を「リーダーシップを発揮するのは 日本人を置いて他にありません」などという言い草で正当化するのは 許すべきでありません。医学業界の連中は、こうした落とし穴に嵌りやすい ように思えます。まさに緊急事態下での「医療倫理」の落とし穴です。 ------------------------------------------------------------------------ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201110/521832.html 日経メディカルブログ:池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」 2011. 10. 3 “あってはならない妄想”の否認 ----------------------------------------------------- 著者プロフィール 池田正行(長崎大学 医歯薬総合研究科教授)●いけだまさゆき氏。1982年東京医科歯科大学卒。国立精神・神経センター神経研究所、英グラスゴー大ウェルカム研究所、PMDA(医薬品医療機器総合機構)などを経て、08年10月より現職。 ブログの紹介 神経内科医を表看板としつつも、基礎研究、総合内科医、病理解剖医、PMDA審査員などさまざまな角度から医療に接してきた「マッシー池田」氏。そんな池田氏が、物事の見え方は見る角度で変わることを示していきます。 ------------------------------------------------------ “3.11”から半年以上が過ぎましたが、福島第一原子力発電所の事故について、東京電力や原発規制にかかわる公的機関への攻撃に情熱を燃やす人々は、いまだに後を絶ちません。しかし、その攻撃の成果は一体何なのでしょうか? それとも、情熱を燃焼させることに意味があるのであって、その成果の検証などはどうでもいいことなのでしょうか?
海外でも未承認の急性放射線障害治療薬を、原発事故に対処する作業員に投与しなくてはならない事態が出来した場合、どのような手続きをすれば、日本に輸入して使用できるのか。大学で臨床開発を旗印として掲げる私のところに、海外のある企業から問い合わせが来たのは3月19日の土曜日でした。ご存じの通り、第一原発が極めて深刻な事態を迎えていたときのことです。 私は早速各所との接触を試みました。週末にもかかわらず、国内外の規制当局や関連機関の要職の方々から貴重な助言をいただきました。その結果、このような特殊な薬を開発し、使用する際には3つの大きなハードルがあることが分かりました1)。 1. 対照を置いた臨床試験ができず、動物モデルにおける有効性と健常人への安全性データのみでヒトに投与しなければならない特殊な医薬品の開発に対して、欧州、日本にはルールがない。唯一、米国食品医薬品局(FDA)のみが、「Animal Rule」と呼ばれるガイダンスを作っている。 2. 研究倫理に基づき、緊急事態下における健康被害者への医薬品投与のデータを効率良く収集する、いわばemergency GCP(臨床試験の実施基準)というべき制度が、全世界的に見ても全く未整備である。 3.急性放射線障害も含めた、CBRN (Chemical、Biological、Radiological & Nuclear) hazardsによる健康被害に対する医薬品開発・規制の国際調和(harmonization)が全く行われていない。 原発事故の現状を見れば、以上の問題について緊急に解決が必要なのは明らかです。ですが、事故発生から半年以上経った今でも、対処の動きは全く見られません。 CBRN hazardsはいつ、どこで発生するか分からず、発生した際には複数の国の問題となり得るため、一国だけで開発・規制を考えても意味がありません。一方、今回の原発事故にかかわる問題は、少なくとも現時点では被害が日本に限局しており、当事者ではない日本以外の国は当てにできません。裏を返せば、ここでリーダーシップを発揮するのは日本人を置いて他にありません。 ではなぜ、日本人の活躍が求められるこのような機会に、東京電力や原発規制当局を非難するばかりで、世界に貢献する行動できないのでしょうか。その背景に、「あってはならない妄想」(最悪シナリオの否認)2)があると私は考えています。 --------------------------------------------------------------------- http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201110/521832_2.html
否定と違って、否認に客観的根拠は必要ありません。日頃は頭脳明晰なように見える人々が「あってはならない妄想」に簡単にとらわれてしまうのはこのためです。最悪シナリオを否認する例として、最も分かりやすいのは薬害への反応です。「治療薬で害が起こってはならない」との否認により、「あってはならない薬害」のスローガンの下、企業や規制当局に対する攻撃が行われます。原発事故も同様です。事故発生後に企業や規制当局を攻撃している人々だけでなく、彼らの攻撃にさらされている人々も、この「あってはならない妄想」から離れられないでいるのです。 「あってはならない妄想」から生じる最も重篤な障害は、ダメージコントロール(被害の最小化のための施策とcontingency planの策定)と2)の “失認”です。事故発生までのプロセスにのみ注目する「危機管理」と、事故発生後の対策であるダメージコントロールは別物です。事故そのものを否認する「あってはならない妄想」は、リスク顕在化の手前で思考を停止させます。その結果、実際に事故が生じた時どうするかを考えなくなってしまうので、事故の被害は最小化するどころか、逆に拡大します。 実際に放射線が放出されている今も、「被曝はあってはならない」が基本的な理念として根付いてしまっているため、「急性放射線障害治療薬の開発戦略と規制をどうするか」といった議論も「あってはならない」ことになってしまっています。 「あってはならない妄想」から脱出し、当事者意識を持ってダメージコントロール思考を取り戻すにはどうしたらいいでしょうか? 国を癒やす大医の気概をお持ちの方はともかく、日々の診療に集中したい中医の方々なら、まずは、最も身近な最悪シナリオから考えてみたらいかがでしょうか。 最も身近な最悪シナリオ、つまり誰にでも必ずやってくる自分の死を否認できる人はいません。多くの人は生命保険を購入することで、「リスクマネジメントは終了!」と考えがちですが、生命保険は「リスクのごく一部を金銭で担保するだけの商品」に過ぎません。自分の価値が金銭だけで担保されると考える人はいないでしょう。 自分の思い・考え・知恵といった大切な財産を、どのように次世代につなげていくかを考えていけば、ダメージコントロールの方法も自ずと違うものとなってきます。 関東大震災後の復興を指揮し、現在の東京の都市計画の礎を築いた後藤新平は、「金を残すは下。仕事を残すは中。人を残すは上。」との言葉を残しています。「金を残すは下」とは、蓄財や生命保険加入を全てと考える人々への警告です。自らの死について考えたとき、果たして仕事と人を残すことまで思いが及ぶでしょうか。 原発事故についても同じように考えることができれば、企業や規制当局への攻撃は「中長期的に見て何が必要になるのか」「そのためにはどのような人材を育てるべきなのか」といった議論に変わってくるでしょう。 私には日本全体のことを考える余裕はありません。まずは自分の死のダメージコントロールを考える、つまり教育・人材育成を優先順位の第一に考えたいと思っています。ですから、今後とも、「出前授業」と題して、学生や研修医だけでなくベテラン指導医も対象とした教育活動のために全国各地を飛び回り、また、今回Lancetに公表1)したような学習資料も、どんどん公開・提供していくつもりです。 -------------------------------- 1)Shimazawa R, Ikeda M. Development of drugs against chemical, biological, radiological, or nuclear agents. Lancet 2011;378 (9790):486
2)計見一雄 戦争する脳―破局への病理。 平凡社、2007. -------------------------------------------------------------- |