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SPAニュース http://nikkan-spa.jp/106060
■移住予定がキャンセルに!原発は今や地域振興のお荷物となっている
「原発があるということで、移住予定の人たちにキャンセルされてしまいました」
こう語るのは、鹿児島県薩摩川内市峰山地区コミュニティ協議会会長の徳田勝章氏。同地区は、「あしたのまち・くらしづくり活動賞」で内閣総理大臣賞を受賞するなど、地域振興のメッカとして知られる。
「荒れ果てた山を観光農園として再生させた柳山アグリランドは、年3万人以上が訪れる地域の名所になりました。農業や地域振興の研修者も年3000人、移住を希望する方も増えてきています」
原子力発電所展示館より川内原発を臨む。左から1号機、2号機。柳山アグリランドを下りた目の前にある。
しかし3.11以後、事態は急転した。柳山アグリランドの麓に川内原発が建っていたためだ。
「3.11後、福島第一原発のような事故が川内にも起こるかもしれないという危機感が住民の中に高まってきました。そこで、1・2号機の安全対策と、3号機の計画中止を川内市長に求めました」
「地元自治体も積極的に動いて、国が動かないのならその尻を叩いて動かすべきですよ」
徳田氏は元九州電力の社員で、原発の立地を担当してきた。
「九電に入社して30年以上、一貫して『立地屋』を務めてきました。原子力発電所を設置するため、『チェルノブイリのような事故は日本では絶対に起こらない』と原発の安全性を説得してきました。玄海原発の3・4号機、川内原発の1・2号機の立地にも関わりました。最後の仕事は川内原発3号機の増設についてでした」
峰山地区、川内原発から10km圏内にある県道沿いに建てられた看板。一本の道を隔てて原発推進派と反対派が対峙している。
97年に峰山地区に移り住んだ後、原発はそれほど地域振興に役立たないのではないかと思うようになったと徳田氏は語る。
「徳田は九電で立地対策をしていたのに、今なぜ再稼働に反対してるのかと言われます。私は、コミュニティ協議会という住民組織の代表として、住民の利益・安全を守ることを第一に考えているんです。それは福島原発の事故以前と一貫して変わりません。そもそも、峰山地区への原発の恩恵は直接的にはありません。例えば、九電の社宅は川内市の街中にあり、原発のそばにはない。補助金も川内市に入るだけで、峰山地区に還元されることはありません。
川内原発立地の補償金として漁協には62億円が支払われていますが、峰山など陸部のコミュニティには1円も落ちていません。私たちは、新設される南九州道高江インターに、地産品の販売をする『道の駅』やレストラン、児童・高齢者福祉施設などをあわせた複合商業生活施設を作りたいと思っています。雇用力のある再生可能エネルギーの研究施設なども誘致したい。しかし、九電はそういうことには見向きもしません」
■福島原発の事故原因を津波のせいにしていいのか
鹿児島県薩摩川内市峰山地区コミュニティ協議会会長の徳田勝章氏は、原子力発電そのものに反対しているのではないという。
「地元住民に、原子力発電の安全性に対しての疑問があるから反対しているのです。原発の『技術屋』にはおごりや過信があります。例えば、川内原発の復水器の高さは13mのところにあります。これが浸水するとプラントが動かなくなるという大事な施設です。ところが、この地域には高い津波が来ないということで、防潮堤を作る計画すらありません。
しかし、事故というものは悪条件が重なった時に起こるもの。津波は3mしかなくても、高潮、満潮、大雨や台風などと重なれば、波の高さは最高17mまで達します。それを無視して安全と言われても、安心できるわけがありません」
「耐震設計にしても、もともと川内原発の地震加速度の限界値は370ガル、その後引き上げても540ガルです。じゃあ1000ガルならどうなんだと技術屋に聞くと、大丈夫だが公にできないという。九電で働いていた時、私は『これだけ対策をすれば安全だ』ということで住民を説得してきました。私を含めて電力会社が言ってきた『安全』は、現実には不十分だったということなんですよ」
「事故原因を津波のせいにしていますが、じゃあなぜ女川はすぐ動かさないんですか?と川内の住民も思っています。重油タンクなども壊れているし、動かせるはずがないんです。ところが国も電力会社もそれを公開しないし、質問しても答えない。そういった情報も開示しないのに、地震は問題ないと言われても、原発周辺の住民は枕を高くして寝られません。まずは住民に広く説明しないといけません」
■地震対策の不十分さは、情報公開の不徹底さにとどまらない。
「断層だってどこにあるか分かりません。例えば、この地域は鹿児島県北西部地震(97年、M6.4)に襲われました。薩摩川内市は震度6弱を観測しましたが、その時の断層は見つかっていません。隠れた断層がたくさんあるんです。例えば直下型の大きな地震も起きうるし、それを基準に耐震設計をしなければなりません」
「原発の運転中はテストなしでも稼働させたままでいいというが、本当は運転中のほうが危ないんですよ。運転中も停止中にかかわらず、すべての原発でテストをすべきでしょう。
市や県には振興計画がある。でも、地区単位ではないんです。九電在職中、原子力立地をする時に地域振興の計画がないというのが私の悩みだったし、地元の人たちにも地域のためにならないことがわかりました。コミュニティで振興計画を作って地域おこしをやった現在、全国から年間3000人も視察に来るんです。
3.11で状況は変わったんです。これからは、再生可能エネルギーに舵を切ることも大事でしょう。柳山周辺では、2300kWの風力発電機を12基建てる計画があります。山の中だから騒音の影響もなく、観光資源にもなります。峰山地区では将来的に500戸の定住者増を目指していますが、原発が足かせとなってしまっているのです」
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