http://www.asyura2.com/11/genpatu19/msg/875.html
Tweet |
全国の患者調査から福島を除外/「被ばく隠しでは」/県民から疑念の声
東京新聞 2012.01.07 朝刊 「こちら特報部」
全国の病院や診療所で三年に一度行われる「患者調査」に、福島第一原発事故や大震災が影を落としている。調査は昨年秋に行われ、結果は早ければ今年十二月にも公表されるが、福島県の全域が除外されていた。この“福島外し”に十分な説明はなく、県民らからは「被ばく隠しでは」との疑念の声も聞かれる。調査は一体どのような理由で見送られたのか。 (小坂井文彦、小倉貞俊)
「患者調査を福島が全くやらないのはおかしいと思っている県民は少なからずいる」と疑問を口にするのは、福島市の「市民放射能測定所」理事の岩田渉さん(38)だ。
同測定所は昨年六月、子どもたちの健康と生命を守ることを最優先する市民らが開設。市民から悩みや相談を受けたり、放射線問題の情報を提供したり、食品の放射線測定などを続けている。
患者調査は医療施設を利用する患者が対象だ。厚生労働省によると、調査の結果は主に、専門医療の拠点整備や、入院用のベッド数を増やすなど、都道府県が地域医療計画を立てる際の基礎的な資料として使われる。
調査が始まったのは一九五三年。厚労省が都道府県別に、地域や診療内容に偏りがないように配慮して約六千五百の病院、約七千の診療所を選定。都道府県が調査票を配って回収し、厚労省が最終的に約三百二十万件の調査票をまとめ、結果を公表する。費用は全額国の負担だ。
当初は毎年、全国の病院のニ〜三割を調査していたが、八四年から患者の実態をより正確に把握するために約七割に拡大。と同時に事務量が増えるため、調査回数を二年に一度に減らした。
最新の調査は昨年九〜十月に行われたが、福島県の全域を調査地域から外すことは、厚労省が昨年六月中旬に決めた。同月末、都道府県の担当者を厚労省に集めた会議が開かれる直前のことだった。一方、東日本大震災で津披により大きな被害を出した岩手県は従来通りに、宮城県では石巻と気仙沼両市を除いて調査をすることになった。
岩田さんは「福島県は原発事故の影響があり得るだけに、現在の患者の状況を把握しておくことが重要で、何もしないのはいかがなものか。調査が、地域医療計画を立てるための色合いが濃いのは分かるが、ある種の疫学的調査にもなり得るのに」と憤る。
患者調査で分類している傷病は三百六十七種類に及ぶ。がんや脳卒中、心臓病、糖尿病の四大疾病をはじめ、放射線の影響が心配される白血病や甲状腺障害も含まれていることからの指摘だ。
傷病分類には、「周産期に特異的な感染症」の項目もある。岩田さんは今後、生まれてくる子どもたちのことも気掛かりで、「ドイツなどの研究で、チェルノブイリ事故で放射性雲が到達したであろう時期に受胎した子どものダウン症が増えたと報告されている。人口動態調査と合わせて注意していかなければ」と調査の重要性を説く。
また、「被ばく隠し」も疑いたくなるという。「チェルノブイリの健康被害で小児甲状腺がん以外は疫学上ないとか、感染症や免疫低下による体調不良や疾病もない『被害隠し』が行われたが、日本も同じようなシナリオで進んでいると疑われかねない。本当に怖いのは、きちんとした議論もされずに物事が決まっていくことです」
<デスクメモ>
「県内で白血病が増えても分からない」。福島除外間題を不安視するこんな声がプログで広がり、今も続く。紙面にある厚労省の審議会資料の在りかもネット発だった。新聞よりもネット情報が早いときがあり自戒する。負担は大きくても健康が最優先だ。傷病の調査を定期的に行ってはどうか。 (呂)
----------------------------------------
県「多忙、人手なく」「異常数値出れば、独り歩き」/厚労省「無理強いできず」
東京新聞 2012.01.07 朝刊 「こちら特報部」
福島県全域の患者調査除外が明るみに出たのは、昨年十月二十日に開かれた社会保障審議会統計分科会の会議だ。その際、理由を問う委員もいたが、了承されていた。
なぜ調査が見送られたのか。担当の厚労省保健統計室の笠松淳也室長補佐は「大切な調査なので国で実施したいと思い、福島県に足を運んで話し合いをした」と話す。
「県からは県庁、保健所、病院とも人手が足りないと説明を受けた。事前説明会から調査票の回収まで八月から四カ月間はかかるので、無理強いできなかった」
「被ばく隠し」の指摘には、「全く当たらない」と反論。「被ばくによる病気の増加がみられるなら、さらに調査が必要です」と付け加えた。
福島県側はどうか。
「医療機関や医師らの負担が大きく、とても頼める状況ではなかった」と保健福祉総務課の宇佐見明良企画主幹。県内の約百八十の医療機関を調査する予定だったが、避難所や人手の足りない地域の支援で医師らは多忙を極めていた。放射能汚染の恐れから他県に避難する医師もいたという。
もうひとつの理由として「調査する地域に偏りが出れば、統計データとしての性質が下がりかねない」と続ける。「(原発がある太平洋側の)浜通りの分がなく、内陸部ばかりでは正確な調査といえるかどうか。そもそも全県的に被災し、一部地域だけ調査するという選択肢はなかった」
一方で「震災、原発事故は平常時の状況と違う。もし、傷病に関する異常な数値が出れば、数字が独り歩きする恐れもある」とも。とはいえ、医療行政に生かすためのデータの空白の時期をつくっていいのか。宇佐見主幹は「放射能の身体への影響などは、県と県立医大が担う『県民健康管理調査』で集中してやっている。調査不足とは思わない」と強調した。
その県民健康管理調査だが、約二百万人を対象にした問診票の回収率は昨年十二月中旬で二割と低迷。県健康増進課の小谷尚克主幹は「震災から時間がたちすぎ、当時の記憶があいまいになっていることが要因」と分析する。十八歳までを対象にした甲状腺検査の受診率は、南相馬市など四市町村で計73%。今月からは妊産婦への聞き取り調査なども始めるが、出遅れ感は否めない。
県立医大付属病院(福島市)前で患者らに聞いてみると、不安の声も。糖尿病という主婦(74)は「えっ、どうしてやらないんですが」と驚く。原発事故後に浪江町から避難してきたといい、「放射線の影響は心配。子や孫の世代のためにも、定期的な調査を続けることは必要でしょう」。
「影響が未知数の放射能災害の後だからこそ、積極的に調査するべきだった」と語るのは、市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の中手聖一代表(50)だ。「県民健康管理調査では甲状腺疾患以外ほぼ捕捉できないなど、不十分な内容。患者調査なら多種多様な疾患を調べられる」
そして「人手不足や負担増は医療機関だけの話ではなく、『忙しいからやらない』という理由は説得力がない。県民が生命や健康への不安を抱いている中、説明責任を果たし、事故の影響を把握してほしい」と話した。
ならば、福島県はたとえ時期がずれても参考データとして今年調査したらどうか。「協力を惜しまない」と厚労省。その際は調査費用も含めてお額いしたい。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素19掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。