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「福島を除染ゴミと使用済み核の最終処分場に!」という民主党政権の“本音”が表面化する新年
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31486
2012年01月05日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
放射性物質汚染対策特別措置法(特措法)が、1月1日に施行され、東京電力福島第一原発事故で発生した放射能汚染土壌の除染活動が本格化する。
除染活動は、福島復興の第一歩である。そして原発事故は東電に第一義的責任があるとはいえ、国の原子力政策の一端を押し付けたのだから国も“同罪”であり、特措法で住民を強制避難させた警戒区域や計画的避難区域を、「除染特別地域」として国が直轄で除染するのは当然のことだろう。
だが、この除染作業は、すべての住民に帰還を促すものではない。
除染には限りがないし、どんなに人手と最新の除染技術を投入しても、住環境を整えられない地区もある。
それを見越して、細野豪志原発相、枝野幸男経済産業相、平野達男復興相の3閣僚が、12月18日、福島市を訪れて、佐藤雄平福島県知事らに、避難地域の見直しと帰宅困難地域の設定を伝えた。
■住民ではなく国家にとってのメリット
原発事故後、政府は機械的に「同心円避難」を促し、20キロ圏内を警戒区域、20キロから30キロを避難に備える緊急時避難準備区域とした。その後、風向きによって汚染度が高い地区を計画的避難区域として避難を促した。
その区分を、地上から高さ1メートルの放射線量の年間換算で、50ミリシーベルト以上の帰還困難区域、20ミリシーベルトから50ミリシーベルトまでの居住制限区域、20ミリシーベルト未満の避難指示解除準備区域の三つに組み直した。
区分けの再編は、野田佳彦首相が12月16日に行った「事故収束宣言」を受けて行われたものだけに、一般には、正常化(避難住民の帰還)へ向けた動きということになろう。だが、その裏にある民主党政権の思惑は、「福島を除染ゴミと使用済み核の最終処分場に」というものではないだろうか。
そう思うのは、菅直人政権の頃から政府が、「住環境に戻れない地区がある」というのを自覚、その汚染の激しい地区の将来的な国有化と、そこを核汚染物質の処理場とする案を密かに温めていたからだ。
私は、このコラムの5月19日付けで「試算では費用1兆4100億円 菅政権が言えない『原発被災地の国有化』というタブー」という記事を書いた。
「放射線量が高く、土壌汚染が進み、子供を屋外で遊ばせることができない環境の土地は、国が買い上げるしかない」という政府関係者の声を紹介、そこには@国の責任の明確化、A被災者の前向きな希望、Bエネルギー政策への有効活用、という三つのメリットがあることを指摘した。
当時、松本健一内閣官房参与が、「原発周辺には20年は住めない」という「菅首相発言」を伝え、菅首相が烈火のごとく怒り、訂正したことがあるが、その真偽はともあれ「将来的に住めない土地」が発生するのは、誰しもわかっていた。
12月18日の帰還困難区域の設定は、事故から9カ月が経過、「もう戻れない」という“諦め”が住民に芽生えたことを織り込んでのものである。
そのうえで、「エネルギー政策への有効活用」というメリットの追求も始めた。もちろん住民にとってではなく、国家にとってのメリットである。そこには、国有化した土地を除染で発生した汚染土壌などの中間貯蔵施設として利用したいという民主党政権の思惑がある。
■先送りしてきた使用済み核燃料の処理
すでに、12月28日、福島県を訪れた細野豪志原発・環境相と高山智司政務官が、「双葉郡内での貯蔵期間30年以内の中間貯蔵施設の設置」を要請した。「30年以内」は、政権交代しても守る約束というのだが、当事者の大半がどうなっているかわからない約束など、到底、当てにならない。
原発は、「科学技術の永続的発展」をもとに推進されてきた。その技術への盲信が原子力村の「安全神話」につながり、それが今回の地震や津波を「想定外」にした。要は、自分の代では責任を取りたくないという意味での先送り。あれだけの大惨事を経て、日本の政官界の“性根”は変わらない。
その先送りの最たるものが、使用済み核燃料の処理だろう。
核廃棄物の処理場が日本にはない。「トイレのないマンション」といわれるゆえんで、どの原発も使用済み核燃料を原発内のプールに溜め込んで、冷やし続けている。
将来、この使用済み核燃料は青森県六ケ所村の再処理工場に持ち込まれ、取り出されたプルトニウムで高速増殖炉を稼働させ、残りをガラスで固めて高レベル放射能廃棄物とし、これを最終処分場で数万年かけて冷やすことになっている。
だが、その「将来」が、なかなかやってこない。高速増殖炉も再処理工場も、完成しないのである。そこに福島原発事故が起き、高速増殖炉もんじゅは、廃炉となる可能性が高い。“夢”の核燃料サイクルは、“夢”に終わりそうで、そうなると現実に立ち戻り、使用済み核燃料を、直接、地下500メートルから1キロの地中深くに埋め込んで、長い年月をかけて冷やす最終処分場が必要になる。
■応募自治体がひとつもない実情
最終処分場探しを新たに行うのは、不可能と言っていい。なにしろ候補地選定作業は、30年近くに及ぶが、候補地が取りざたされるたびに、反対運動が起き、2007年の高知県東洋町を最後に、応募自治体はひとつもないのが実情だ。
再処理工場と各原発に溜めこまれた使用済み核燃料は、すでに満杯に近く、いつどんな不測の事態が発生するとも限らない。民主党政権も電力業界も、「国有化した福島原発周辺地、なかでも廃炉となる福島第二原発とその周辺地が最終処分場に相応しい」という“本音”を隠し持っている。
こちらが表面化するのは、汚染土壌などの「中間貯蔵施設」という名の最終処分場より時間がかかるだろう。福島県民の激しい反発も予想される。しかし、どこかの時点で、民主党政権は理解を求めざるを得ない。
そのために、時間をかけカネを投じて容認させる――。
その発想は、原発建設の時と同じであり、それが原発行政を継続する政権の“悲しき宿命”なのである。
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