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http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/1112.html#29
NHK 追跡! 真相ファイル: 低線量被ばく
揺れる国際基準(宣伝の web page) (12月28日 22:55〜23:23)
をこちらのサイトで視聴したので忘れないうちに(注意:これは、ぼくの雑感的な web 日記(ブログじゃないですよ)なので、「放射線と原子力発電所事故についての・・・な解説(←長すぎて自分でも忘れた)」に比べるとずっと気楽に書いています。また、後からちょこちょこといじったりもします。その点をご了承ください)。 テレビ番組だから短い時間で情緒に訴えることが求められるのだろう。そう思えば、比較的まともな番組だったと思う。
低線量被ばくによる健康被害について実証的に迫るという努力はもとより放棄していると解釈した。いくつかの見解(有名なトンデル先生も登場した!)と具体例を紹介して危機感を煽る。まあ、それがテレビのやり方なのだろう。何が信頼できて何が信頼できないかの検討はもっとじっくりやるべきで、そういう空気を盛り上げるのが番組の狙いなのだと思うから、そういう意味では成功していると思う。ぼくにとっての最大の「山場」は、「ICRP は核エネルギー推進派の圧力を受けている」という主張を、名誉委員である Minehold さんの証言で裏付けようとしているところ。これはきわめて興味深いし、こういう論点を真っ向から取り上げて、重要人物のインタビューをとってくるところは高く評価したい(せっかくなら、もっと掘り下げてほしいのだが)。
ただし、ICRP の Chris Clement さんにインタビューして、「クレメント氏は私たちに驚くべき事実を語りました」と盛り上げるあたり(16:50 近辺)は純粋に品性下劣なので、そのことを以下に説明しておく。
ここでいう「驚くべき事実」というのは、「ICRP が採用している低線量の被ばくによるガンのリスクは、広島・長崎での被爆者(LSS 集団)の追跡調査の結果から得られたリスクの約半分だ」ということ。でも、こんなのは、専門家だけが知っていた知識ではないし、まして機密情報でもない。被ばくリスクについて真面目に考えている人ならだいたいは知っている「常識」の一つなのだ。(一部では)かの有名な「わかりやすい解説」の
被ばくによってガンで死亡するリスクについて
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/cancerRisk.html
にも、書いてあるくらい(読んでね)。
公式の理屈は、
低線量の放射線をゆっくりと浴びた場合は、強い放射線を一気に浴びた場合よりも健康被害が少ないので、それを補正するために DDREF(線量・線量率効果係数)で割ることにする。 ICRP では DDREF を 2 に選ぶ
ということ。
一応、動物実験などの知見がもとになっているとされるが、DDREF の概念がかなり曖昧であることは確か。「体制派」の報告書を見るだけでも、米国 BEIR は(確か)DDREF を 1.5 くらいに取ろうと言っているし、国連(UNSCEAR)はそもそも DDREF の概念を認めていない。まあ、そのくらいのもの。「えいやっ」と半分にしていると言って大きな誤りはないと思う。
くり返すけど、これは「関係者に取材して」はじめてわかるような話じゃなくて、ぼくみたいな素人が(ほとんどは無料で公開されている)文献を短期間に読んだだけでわかるようなこと。
これを本気で「驚くべき事実」だと認識したなら、番組制作者は犯罪的なまでの知識不足・準備不足ということになる。そのような準備のままこういった深刻な問題に関する番組を作ったとしたらまったく許し難い。おそらくは、さすがにこれくらいのことは知っていたが、番組の中にスクープ的要素を取り入れて山場を作らなくてはいけないということで、敢えて「驚いてみせた」というのが事実だろうと推測(あるいは、邪推)する。しかし、そうだとしたら、それはやっぱり欺瞞だ。 ICRP の体質を批判するのは結構だが、嘘をもとにした批判は無意味。
いずれにせよ、番組制作者は批判されるべきだ。ぼくは、こういうのは大嫌いなので、強く批判します。
(付記:「そういうのは、田崎が放射線リスクの話に詳しすぎるから出てくる感想で、普通の人は DDREF なんか知らないよ」というご意見もあるみたい。いや、別に NHK の視聴者が DDREF を知ってるべきだとは思ってない。でも、こういう番組の作りをすると、「こうやって専門的に放射線のことを追いかけているスタッフにとっても『驚くべき事実』が取材で明らかになった!」と受け取る人が多いだろう(というか、実際いらっしゃた)と思うわけです。「半分にしていた」ことは、NHK の放射線関連番組のスタッフなら絶対に知っているはずなので、そういう報道の仕方は随分と誤解を与えるだろうということ。 DDREF についてはスタジオで基礎知識として説明すればよかったと思うよ(で、盛り上げるのは、もっとあと)。)
それにしても、わざわざインタビューに応じた Chris Clement さんが実際に何を語ったのかには大いに興味がある。番組のナレーションの要約では、ICRP が低線量のリスクについて見直しを始めているということだった。そのあたりを、もっとちゃんと聞きたい。
番組で二カ所、Clement さんの肉声が聴けるので、聞き取った内容を(字幕と対比させて)書いておこう。
まず、最初の登場シーンは、
16:36〜
One is the question of DDREF, and one is the question of extrapolation. So, we have ah ... dose in this direction ...
一つは DDREF(線量・線量率効果係数)についての疑問であり、一つは外挿についての疑問です。さて、ええと、こちらの軸に線量をとり・・・
(字幕:問題は低線量のリスクをどうするかです)
という感じ。ちゃんと DDREF の話をしているのだが、そういうことはまったく番組に反映されていない。で、まあ、このあと「驚くべき事実を語った」になるわけですが・・
で、かれの二つ目の(最後の)語り。こっちは、冒頭がわからなくて何度か聞き直してしまった。たぶん、We do know that ... と話しているのを途中から流していて、最初の We が抜けているのだと推測。そうすると意味が通るのだ。でも、これは 100 パーセントの自信があるわけじゃないので、分かる人がいらっしゃったら教えてください(付記:大丈夫そうです)。
17:04〜
(We あるいは I が録音から抜けていると推測)do know that they're looking not just at the numerical value of the DDREF but also the whole concept whether or not it really still applies.
かれらが(←これが誰を指すのかは不明)DDREF の数値についてだけでなく、概念そのものについて、これが本当に今でも有効なのかどうかを、検討していることはよく知っています。
(字幕:低線量のリスクを半分にしていることが本当に妥当なのか議論している)
(ぼくの聞き取りが正しければ)字幕は(「議論している」の主語は「われわれ」と受け取るのが自然なので)誤解を与える書き方になっていると思う(しかし、Chris さんの言う they が誰なのか気になる。ICRP 関係ではないはずなので。)。上で説明したように DDREF について、概念の正当性も含めた議論が(「体制派」のあいだでも)あることは周知の事実。そういう意味では、Chris が言っていることは、当たり前のことに聞こえる。
「番組では、おまえはこういった事になってたけど、本当はどうなの?」ってメールしてみるのも面白いかもね。
番組のもっとも重要なメッセージは、(ぼくの言い方に直すと)「DDREF は低線量被ばくの健康影響についての真摯な考察から生まれたのではなく、原子力産業などからの圧力に答えてリスクを低めに維持するために導入された」ということだ。これが正しければ、DDREF に伴うもろもろの理屈は、すべて「後付」の説明ということになる。
ぼく自身は、低線量での平均的個人のリスクを議論する際には(もともと、ものすごく誤差の大きい話なので) 2 倍程度の違いに大きな意味はないと考えている(←リスクの数字は、あくまですごく大ざっぱな「目安」だから)。だから、DDREF の導入そのものについて大騒ぎする気にはなれない(むしろ、重要なのは、リスクの個人差、特に年齢依存性だと強く思っていて、それについては、現行の ICRP のやり方には不満をもっている)。しかし、それが本当に政治主導で「後付」的に導入されたのだとしたら、やっぱり、気に入らないのは確か。
番組で、この主張の論拠となっているのは、ICRP 名誉委員の Charles Minehold さんへのインタビュー。たしかに、かれは ICRP が政治的圧力で動いていたことを明確に批判しているように見える。これは興味深い。
ぼくはこっちの話のほうがずっと重要だと思うから、是非ともこっちで「驚くべきなんちゃら!」と盛り上げてほしかったなあ。(まあ、演出的には、真ん中くらいで盛り上げるべきだったんだろうけど・・・)
せっかくだから、こちらもインタビューをちゃんと聞きたい。特に、最後、字幕が「科学的根拠はなかったが ICRP の判断で決めたのだ」というところのインタビューがまったくわからない。ぼくが聞き取った範囲では、
22:13〜
We're not suggesting the there's any ... any, ah, difference between those (聞き取れない) and we, we approached (←よくわからない), We didn't have that data.
という感じで、やっぱり字幕とは違う。でも、(なんせ、おじいちゃんだし)もごもごしているし、わからないんだなあ。
ちゃんと聞き取れた方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。
と書いたら、さっそく英語のわかる人が教えてくれた。ありがどうございます。上のを知らんぷりして直すのもあれなので、正解をこっちに書きましょう。
22:13〜
We're not suggesting the there's any ... any, ah, difference between those, but that's the way we, we approached. We didn't have that data.
(訳は、ちょっと適当)私たちは、両者のあいだに(これは、この直前に言っていた、労働者と子供・老人を指す)相違があると言っているわけではなく、ええと、まあ、私たちはそのように考えたのです。それについてのデータはありませんでした。
ということで、まあ、意訳しまくれば「科学的根拠はなかったが ICRP の判断で決めたのだ」でしょうか??(注意:この部分で話しているのは、DDREF の導入の話ではなく、労働者のリスク評価を低めに変更したときの話。)
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/
目次 // この事故って / 放射線とか放射能 / シーベルトとベクレル / 放射線と体 / これからの生活 / 原子力発電所
公開: 2011年6月18日 / 最終更新日: 2011年12月30日
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放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説
ここでは、放射線や原子力発電所について、多くの人が知りたいだろうと(ぼくが)思うこと(の一部)について、わかりやすく、要点だけを短く(←というつもりで書き出したんだけど、けっこう長くなってしまった)、でも、ごまかしのないように説明しようと思う。本文は中学生以上なら時間さえかければ読めるはずだ。また、もっと知りたい人のために、詳しい(そして、少しむずかしい)解説もいくつか用意した。これから先も、必要やリクエストに応じて書き直したり書き足したりしていきたい。
ぼくは数理物理学を専門にする大学教員なので、実は、放射線についても原子炉についても「専門家」というわけじゃない。放射線の体への影響についてはまったくの素人(しろうと)だ。ここに書いてあるのは、ぼくなりに、いろいろな文献をていねいに調べいろいろな人の意見を読んだ上で、信じていいだろうと判断したことである(考え違いなどがあったら、是非とも教えてください)。よくわからないことについては、「よくわからない」とはっきり書いた。どのくらい「よくわからない」のかを知った上で、これからどうしていくべきかをみんなで考えていくべきだと信じているからだ。
2011 年 3 月の震災のあと、放射線や原子力発電所のことをあつかった本や雑誌が次々と出版されている。もちろんしっかりしたものもあるが、不正確なことが書いてある出版物も少なくないようだ。自分でよくわかってないことや、ネットで見ただけの不確かな情報や、うろ覚えの知識なんかを本に書いてしまうのは困ったことだと思うけれど、まあ、それが今の日本の現実なのだ。この解説は本でも雑誌でも売り物でもないけれど、内容がかなり正確だということには自信をもっている。何かを書く際には、もとになる文献を自分でしっかりと読んで確認し、計算などもすべて自分でやり直して確かめることを心がけている。おまけに、いろいろな専門知識をもった人たちがぼくの解説を読んでくれていて、間違いがあれば、厳しく優しく教えてくれるのだ(「これを書いたほうがいい」と教えてくれる人もいる)! これは実にありがたいことで、そういう人たちのおかげで、この解説の品質は(ぼくの能力をはるかに越えて)高くなっていると思っている。
ぼくの力が及ばなくて取り上げていない重要で切実な問題もたくさんある。たとえば、食品の安全性、他の原子力発電所の状況、政治や経済のこと、などなど、いくらでもある。もちろん、そういったことについても何かが書ければうれしいのだが、今の段階のぼくの理解では人にお見せできるものは書けそうにない。どうかお許しいただきたい(もちろん、少しずつ学んで考えていくつもりだが)。
震災がおきてから、日本の社会ではいろいろなことが変わってきたと思う。それにともなって、ぼくらが知っているべき「常識」というものもやはり変わっていくはずだ。ちょっと大げさかもしれないけれど、ぼくの書いたこの(不完全な)「まとめ」が、みんなが新しい「常識」をつくっていく作業のために少しでも役に立てば、ぼくにとってこれ以上の喜びはない。
田崎晴明(たざき はるあき)学習院大学理学部
主なページの目次
順番に読んでいけるようになっている。もちろん読み飛ばしても、好きなところから適当に読んでもいい。
この事故ってやばいの? もっとひどいことになるの? そうしたらどうすればいい?(2011年12月22日更新)
放射線とか放射能ってなに?(2011年8月28日更新)
シーベルトとかベクレルってなに?(2011年12月30日更新)
放射線って体に悪いの?(2011年12月30日更新)
これからどう生活すればいいんだろう?(2011年6月18日更新)
原子力発電所ってけっきょく何をやっているの?(2011年9月27日更新)
基礎知識についての解説
10 のべき乗 --- 大きい数と小さい数の表わし方(6.02×1023 とか 5.5E-2 みたいな「謎な数の書き方」についての初歩的な解説、2011年12月23日更新)
放射線の物理に関するメモや解説(難易度はさまざま)
原子・原子核・放射線(原子、原子核、放射線の物理についての少し詳しい解説、2011年10月23日更新)
半減期の数学・ベクレルとモル数(半減期の数学についての、やや理数系向けの解説。ベクレルとモル数の関係にも触れる、2011年8月3日更新)
セシウム 137 と 134(減衰率などについてのメモ、理系向き、2011年8月25日更新)
セシウム 137 の降下量(降下量についての文献とリンク、面白くはない、2011年7月21日更新)
ベクレル・グレイ・シーベルト(放射線の基本単位についての、ちょっと理系向けの解説、2011年11月5日更新)
半減期を取り入れた被ばく量の計算(計算メモ、2011 年7月4日更新)
ベクレルからシーベルトへ(pdf ファイル、最終更新日:2011年7月2日)
【理科系大学 1 年生以上向き!】「地面に一様に放射性物質が付着しているとき、空間での吸収線量率をどう計算するか?」という問題の解説。シーベルトやベクレルとは何かといった基本的なところから詳しく書いた。一般向けの解説ではないが、理科系の大学 1 年生レベルの物理と数学の知識があれば読める。
放射線の健康への影響に関するメモや解説(難易度はさまざま)
被ばくによってガンで死亡するリスクについて(解説、2011年12月30日更新)
子供の被ばくに気をつけなくてはいけないのは何故か(重要:「子供は別格」というのは単なる心情論ではなく客観的事実であることを解説、2011年12月12日更新)
食品中のセシウムによる内部被ばくについて考えるために(初等的かつ重要:セシウムの内部被ばくについてそれぞれに考えるための二つの視点を解説、2011年12月29日更新)
内部被ばくのリスク評価について(重要:内部被ばくを実効線量に換算してリスク評価するための基本的な考え方を解説、2011年12月30日更新)
甲状腺等価線量と実効線量について(「内部被ばくのリスク評価について」を補うために書いたミニ解説だが、ヨウ素 131 による被ばくの問題を考える際には重要、2011年11月12日更新)
ぼくの「こだわり」で書いた個別的な解説
被ばくによるガンのリスクについての誤った情報(「被ばくによってガンで死亡するリスクについて」の補遺、2011年12月22日更新)
2011 年 3 月の小児甲状腺被ばく調査について (重要な調査なので、こだわって記録する、2011 年11月29日更新)
内部被ばくのタイミングのモデル化についてのメモ (「2011 年 3 月の小児甲状腺被ばく調査について 」に登場する計算についてのメモ、2011 年11月12日更新)
この解説の利用について
はじめに断っておきたいのだが、この解説の内容について、ぼくの「オリジナリティー」を主張するつもりはまったくない(ちなみに、ぼくの本業での研究の論文はけっこうオリジナリティーがあるつもりです。まあ、読む人はほとんどいないでしょうけど)。上に書いたように、解説の内容のほとんどは、どこかに書いてあることを再構成してぼくなりに分かりやすく解説したものだし、ぼくが自分で計算したものにしても独自の計算というわけではない。
解説の内容や説明の方法などをいかなる形にせよ活用する際に、ぼくの「オリジナリティー」に配慮していただく必要はまったくない。計算方法や計算結果なども、断りなく他のところで利用していただきたい。
また、解説の文章は田崎晴明の著作物だが、有用だと判断した方には様々な形で利用していただければ幸いである。
セミナー、勉強会、授業等でこの解説を印刷して配布していただくのは大歓迎である。また、この解説の全体あるいは一部を、授業、プレゼンテーション、解説、資料、著作などで利用するのも自由である。スペースに余裕があれば出典を明記していただけるとありがたいが、そうでなければ出典を書く必要もない。
なお、この解説で用いた図やグラフは、出典が書いていない場合は、私が描いたものである(なので、あまり大したことない)。これらの図やグラフのファイルをコピーして利用していただくもまったく自由である。
最近の更新情報
細かい修正や加筆は断りなくどんどん行なっています。大きめの変更や重要な間違いの修正などがあったらここに書きます。
2011/12/30 主要な解説「放射線って体に悪いの?」の「後からじわじわと影響がでる場合」を修正。少し正確さを上げ、また、読みやすくしたつもり。しかし、まあ、この解説はちっとも「短く」ないね。
2011/12/30 解説「被ばくによってガンで死亡するリスクについて」を改訂。LSS 集団の調査結果の信頼性についての部分を中心に手直し。また、「子供の被ばくに気をつけなくてはいけないのは何故か」へのリンクも追加。
2011/12/29 解説「食品中のセシウムによる内部被ばくについて考えるために」の付録「放射性カリウムと放射性セシウムの比較」のセシウム 137 のベータ線の平均エネルギーを訂正。ご指摘くださった方に感謝します。
2011/12/28 新しい解説「食品中のセシウムによる内部被ばくについて考えるために」に付録「放射性カリウムと放射性セシウムの比較」を追加。体の中のカリウムとセシウムの量を(ベクレルで測って)比較することの根拠を補足した。
2011/12/27 昨日の解説を少し修正。ついでに、タイトルを「食品中のセシウムによる内部被ばくについて考えるために」に変更。これで過不足なく文章の趣旨が表わされている。「タイトル長すぎ」と言われるのは承知の上(そもそもトップのタイトルそのものが長い・・)。
2011/12/26 解説「セシウムによる内部被ばくについて考えるために」を追加。前から書きたいと思っていたものを一気に書いた。これから重要になる話だと思う。
2011/12/23 解説「10 のべき乗 --- 大きい数と小さい数の表わし方」を書いて追加。これは放射線とは関係のない平和な解説。どれくらい需要があるのかはわからないけれど、前から書こうと思っていたので。
もっと前の更新履歴
Follow HalTasaki_Sdot on Twitter 更新情報を Twitter でつぶやきます(「風呂入ったなう」とかは書きません)。 ぼくがこの「まとめ」を書いた理由(読まなくていいです)
震災と事故のすぐあとは、ぼくみたいに専門知識のない学者がなにか「情報発信」するなんて夢にも思っていなかった。しかし、しばらくして、この中途半端で苦しい状態がダラダラと何ヶ月も何年も続くのだ、これは長期戦なのだということがわかってきて、ぼくも何かしたほうがいいかなと思い始めた。
ネットでの情報をみていると、ぼくなんかよりずっと詳しくて優秀な人たちがいろいろと重要なことを書いている。でも、そういう情報は、ちょっと難しくて多くの人には敷居が高そうだったり、ツイッターとかブログとかホームページの一部とかにバラバラに出ていたりすることが多い。
そういうのはもちろん大事だけれど、少し別の路線で、
いまの状況、そして、これから先のことを考えるために必要な基本的なことがらを、わかりやすく簡潔に一カ所にまとめたもの
があったらいいなあと思い始めた。でも、なかなかそういうのがみつからない。みつからないなら自分で書こうと思ったというわけだ。 ここから先は、この「まとめ」と直接の関係はない個人的なことがら。いよいよ、読まなくていいですよ。
ぼくは物理が大好きで、物理を教え、自分でも研究して少しでも新しいことをみつけるのを、生涯の仕事にしている。でも、ぼくの研究には原子力とか放射線とかはぜんぜん関係してこないので、原子力発電所のことについてはまじめに関心を払ってこなかった。実をいうと、まだ若かった頃、少しだけ勉強したときに「放射性廃棄物があとに残ってどうしようもないのは、困ったことだ」ということは感じていた。ただ、それ以上は踏み込まなかったし、原子力発電所そのものは安全につくられていると(今から思えば大した根拠もなく)思っていた。
「物理が好きで専門に勉強したといいながら、原発の問題に気付かないとはけしからん」とお叱りを受けたら、返す言葉もない。言い訳にはならないけれど、ぼくらが物理学の世界に入ったときには、もう原子力発電というのは基礎的な物理学を離れた、どこか遠い学問分野の話になっていた。要するに、原子力発電については、一般の(あまり関心のない)人たちと同じ程度の情報しかもっていなかったのだ。おそらく、まわりでいっしょに物理を学んでいた仲間たちのほとんども同じだったと思う。
そいういうわけだから、福島第一原子力発電所で大事故がおきたときには本当にショックを受けた。もとをただせば物理学から生まれてきた技術がこんなすさまじい被害と苦しみを人々に与えることには愕然としたし、今まで無関心だったのはまずかったと素直に思った。思ってもどうしようもないし、何の言い訳にもならないのはわかっているけど。
それから、自分なりに原子力について復習しいろいろ考え直したけれど、やはり(事故の直後に反射的に思ったように)「原子力発電所を持ち続けるのは人類には無理だ」という結論に落ち着いた。もちろん、すぐに全てを止めるのは苦しいだろうが、徐々に止めていくしかない。それは多くの英知を必要とする長く困難な道になるが、やるしかないと(おそらく、多くの人と同様)ぼくは思っている。
ただし、この「まとめ」は「原発廃止」を訴えて書いた物ではない。それは誤解しないでほしい。そういう意見や立場とは関係なく、できるだけ公平にわかっていることを解説したつもりだ。
この解説を書くにあたって、多くの人たちの解説を参照し、多くの人たちにさまざまなことを教えていただいた。また、この解説について、何人かの人たちからきわめて有益なコメントや示唆をいただき、それはすでに今のバージョンに反映されている。中には、教えていただいたことをほとんどそのまま書かせてもらった部分もある。
本来は、そういった人たちのお名前をあげるべきだろう。ただ、その人たちがこの解説のすべての記述に賛成されるとはかぎらないので、失礼は承知で、お名前はあげないことにする。
お力を貸してくださったすべてのみなさんに心から感謝したい。
この解説についてのご意見、ご質問、ご提案は、
hal.tasaki.h@gmail.com
あてにメールでお願いします(Twitter のアカウントはありますが、140 文字以内でのやりとりは苦手です)。ただし、上に書いたように、ぼくは放射線や医学のプロではないので、ご質問をいただいても答えられないことが多いと思います。ご了承ください。また、このページは、あくまで大学での研究や教育の合間をぬって作っているので、メールをいただいてもすぐには反応できないかもしれません。これもお許し下さい。
目次 // この事故って / 放射線とか放射能 / シーベルトとベクレル / 放射線と体 / これからの生活 / 原子力発電所 このページを書いて管理しているのは田崎晴明(学習院大学理学部)です。
リンクはご自由にどうぞ。いろいろな人に紹介していただければ幸いです。
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