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ベントと水素爆発の関係について
12月28日のテレ朝報道ステーションSPの番組(以降「番組」と呼ぶ)で、ベントが水素爆発に結びついた可能性について指摘をしていた。番組内容についての簡単な分析を試みたい。
1.福島第一原発は地震でかなり程度被害を受けたはず。3月11日の事故当初、福島第一原発を初めとして地震の激しい揺れに見舞われたはずの女川原発や東海第二原発などの原発内部映像は全く公開されなかった。これに関し原発の内部は安全管理上の秘密という口実が述べられたが、一般市民が原発内部を見学していて、写真さえも一部ではあるが公開されてきている。だから、まったく内部の写真が公開されなかったのは公開できなかったと言う理解が正しいはず。事実、後ほど公開された中央制御室の写真は整理整頓をした後の写真だった。また番組でも地震直後に原発内部で設備の一部の落下があったと言う証言がされている。
2.ところが、原発が地震で被害を受けたことは隠ぺいされた。誰の意思によって隠蔽がされたのかはいろいろな推測が成り立つのでここでは触れないが、東電や政府が少なくとも隠ぺい工作にかかわっていたことは確実だ。それは原子力保安院の記者会見の担当者がメルトダウンを当初認めていたのにその後担当者が交代し、メルトダウンを否定したことからも明らか。
3.実際にはかなりの被害があり、多量の放射能漏れが起きていた。番組ではベントの前の段階で中央制御室の放射能レベルが通常の1000倍になり運転員の方が全面ガスマスクを着けざるを得なかったとか、ベントをするためにバルブを手動で開けるために原子炉建屋に入った時、地下一階で線量計のアラームが鳴りだしやむなく撤退せざるを得なかったと述べていた。この時の被ばく量が106ミリシーベルトだと言う。多分、この時の作業時間は30分もなかったはずで、その短時間で100ミリシーベルトを超えたのは明らかに大量の放射能漏れがされていたと考えざるを得ない。
4.原発のどこが壊れているかについて、東電や政府はある程度把握しているはず。しかし、どこが壊れたかは未だに明らかになっていない。確かに東電や政府はどこが壊れたか完全には把握できてはいないのだろう。しかし、実際は報道に上がっているよりもかなり詳しく現状を把握しているはずだと思う。なぜなら、番組が28日に放送される直前の26日に東電がベント管に他の排気管が接続されていて、そこから水素ガスが原子炉建屋内部へ逆流した可能性があると認めたからだ。普通、マスコミで一定以上の重要性のあるニュースはその対象に対していつどういう内容を報道にあげるかを事前に知らせることが多い。今回もテレ朝から東電に対しそういった話が行き、28日の報道前に自ら発表したほうが良いと考えたはずだから。つまり、ベント管からの逆流のことは多分水素爆発の数日のちには把握していた可能性が高い。
5.核燃料の位置についても把握している可能性が強い。なぜなら原子炉建屋の土台の下へ向けて立坑を掘れば少なくとも土台のコンクリートを突破しているかどうかはかなり簡単に解明ができるのにそれをしていないからだ。仮に土台を突破していたとしても、立坑を掘削するとき、土台の下部へ到達する直前の段階で中性子などの放射線のレベルを測定すれば核燃料に立坑がぶつかってしまうことはない。そんなに費用も時間もかけずに立坑を掘ることが出来るのだから、東電や政府は土台をメルトスルーしていないとするのなら、少なくとも1号機については立坑を実際に掘ってチャイナシンドローム状態になっていないことを証明するべき。
6.原子炉建屋の入り口で靄のような白煙を目撃したとか地下一階で線量計のアラームが鳴って撤退したとかという事態が発生しているので、原子炉の下部にある構造物が壊れたのは確実。ただ、圧力計が動いていて格納容器の圧力が高くなりベント後それが低くなったと言うことだから、少なくともベント実施の時には格納容器自体は壊れていなかったようだ。自分としては原子炉建屋とタービン建屋に共通する配管が壊れたはずだと思う。原子炉建屋とタービン建屋はまったく形状も質量も異なるので揺れ方も異なり、その歪みを受けたはずだからだ。ただ、そういった配管が壊れたら原子炉の圧力が低下するのではという推定も成り立つ。ここがどうなっているのか自分には分からない。
7.水素爆発の直接の原因は何か。番組ではベントの配管が別の排気配管と接合されていたため、そこから原子炉建屋内に逆流して水素爆発を起こしたとしたがこれはガスの移動経路を述べただけ。自然発火するためには温度が500度程度必要で自然発火の可能性はかなり低い。ベント実施時には電源が全喪失していたのだから電気系統からの火花という可能性はまずない。残るのは余震によって原子炉建屋内の設備が破壊されそれが互いに触れ合うことによって火花が散った可能性などだ。ただ、独立したバッテリーなどの電源が原子炉建屋の各地にある可能性もあり、引火の原因が不明なままだ。これについても東電や政府は情報を持っているはずだと思う。自分としては原子炉建屋の上部でかなり大きな金属製の部品が落下した結果火花が散ったのだと思う。
8.観測された放射能レベルは正しい値か。1号機や3号機の爆発直後と2号機の爆発後の観測された放射能レベルを比較して2号機からの放射能漏れが多いと番組ではした様子だ。これは格納容器の破壊が2号機のみで起こったからという理由の様子。ただ、これには疑問がある。なぜなら1号機と3号機では爆発の規模がかなり異なるからだ。番組で示された観測された放射能レベルは1号機と3号機ではあまり差がなかった。観測場所と風向きの関係などがあり発表数値が正しい可能性を否定するものではない。ただ、1号機と3号機では爆発の規模が全く異なるし、3号機での爆発は複数回起こっているはず。また閃光も見えていた。だから少なくとも同じ水素爆発だとしてもその規模が格段に異なるので漏れた放射能の量自体も格段に異なるはず。だから、番組で紹介された公表値は操作されたものだと思う。
9.1号炉の水素爆発は基本的にベント管からの逆流のはず。ベント管はそのまま外の排気塔へつながっている。原子炉建屋内部への配管は途中にダンパーという逆流を防ぐ装置が付いていたのである程度はそこで逆流する分量が減っていたはず。ただ、これは1号炉も3号炉も同条件。3号機はMOX燃料を使っていて使用済み核燃料保管プールにもMOX燃料があったはずだから、MOX燃料が3号炉の大規模爆発の原因である可能性は高い。ともかく、1号機、2号機ともベント機構の一部が地震の揺れや津波によって壊されていた可能性は残る。
10.3号炉の爆発は閃光が見えたし少なくとも2回以上の爆発音が聞こえている。さらに原子炉建屋の鉄骨がぐにゃりと曲がってしまうほどの高温が一瞬の内に発生しているのだから単なるガス爆発であるはずがない。水素ガスの爆発だけならそのエネルギーは単に爆発という体積の急激な膨張に使われてしまい高温を維持できないはず。(断熱膨張で温度は膨脹につれて下がる)このことについても工学関係の専門家なら鉄骨がぐにゃりと曲がるほどの高温が単なる水素ガスの燃焼で生産されるかどうかかなり簡単に確認できるはず。自分に鉄骨を曲げるほどの高温をもたらす熱エネルギーの大きさから爆発の性質を推測する知識がないので明言ができないが、単に水素爆発の規模が異なっただけとは思えない。
11.マスコミ報道ではベント管からの逆流が原因で水素爆発が起こったのは1号機と3号機だとするものと3号機のみ触れて1号機には言及がないものがあった。東電は3号機での大規模な爆発を水素爆発だと断言したいのだと思う。ただ、それだけに実際には水素爆発ではなかった可能性があるように思えてしまう。
12.ベント後に原発敷地境界での高レベルの放射線が観測され、水素爆発の直後には観測されていないことについて。水素ガスの発生には燃料棒の被膜を作っているジルコニウムが700度とか1000度以上になる必要がある。ヨウ素の融点・沸点とも200度以下であり水素ガスが発生する状況では確実にヨウ素も燃料棒から空気中へ出てしまっている。このことはセシウムも同様であり、ヨウ素よりも沸点は高いが水素が発生する状況では確実にセシウムも原子炉内にガス状になって発生していた。だからベント後に水蒸気や水素ガスとともにこれらの放射性物質が大気中へ排出されて敷地境界での放射能レベルが高くなったのだ。そして、もし、ベントのガスが建屋内に逆流したのなら水素爆発でも同様にヨウ素やセシウムが周辺に拡散したはず。もっとも爆発はかなりの高温を伴ったはずで、敷地境界にまで拡散する前に上空へ昇って行ってしまった可能性はある。しかし、1号炉での爆発はどちらかというと横方向への爆発で、敷地境界までの距離である1キロ程度なら爆風で飛ぶような気もする。3号炉の爆発は規模自体が格段に大きかったので、3号炉爆発の直後の放射能レベルが低いままなのは疑問だ。なお番組で写した放射能レベルの表と同じもののと思えるものがhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Fukushima_Dosis_qtl1.svgで見ることが出来る。
13.大量の放射能漏れが2号機の爆発(?)の後観測されていることについて。1号機や3号機ではベントによって排出された水素ガスが建屋内に逆流した結果爆発したことになっている。それに対し、2号機はベントがうまく行かず結果的に格納容器の一部が破損した結果、格納容器内部のガス化した放射性物質が直接大気中へ放出されたという。事実がはっきりしないのだが、1号機や3号機では格納容器内部のサプレッションチャンバーというところにある水を通してベントをしたようなのだ。水を通すことによってヨウ素やセシウムが水に溶け大気中への放出量を100分の1程度に減らすことが出来るようだ。こういうベントをウェットベントというはずで、ウェットベントをしたのならそうと言えばいいと思うが資料によっていろいろな記載がありよく分からない。もし、1号機や3号機でのベントがウェットベントではないのなら、2号機と同様に高い放射線が測定されていなければいけない。自分は3号機のあの大規模な爆発から考えて2号機の爆発と少なくとも同レベルの放射性物質が3号機の爆発で飛び散ったはずだと思う。2号機から大部分の放射性物質が放出されたとするのは避難遅れがあったので、なるべく被曝期間を短く見せたいと言うことが関係しているような気がする。これらのことは番組で3月12日以降ガスマスクをした男からまだ避難していなかった村民の一人が「早く避難しろ」と言われたとしていたこととも符合するのでは。
14.不明なことはまだいろいろある。1号炉の爆発に比べて格段に大きかった3号炉の爆発が本当に水素爆発なのかとか4号炉の爆発がなぜ起こったかなどだ。2号炉の爆発さえいろいろな仮説を立てることは可能で、実態解明はまだまだできていない。また、津波が来る前に地震で原子炉が壊れたと言うことも随分言われていて、1号機だけではなく他の原子炉も規模の違いはあろうが被害を被っていたはずだ。その意味で原発の安全性の確立は全くできていないと言っていい。だから、少なくとも全国の原発の運転再開は時期尚早だ。
15.なお、このテレ朝の番組についてのブログ記事があまりサーチエンジンで引っかからない。かなりいい報道だったので、もっと多く話題に上っていてもいいはずであり、未だにサーチエンジンであまりかからないのは不自然だと思う。またベントが逆流したと言うことはほとんどマスコミのニュースとしても取り上げられていない。テレビニュースとしてきちんと報じたのは番組翌朝の6時のNHKニュースだけのように思う。背後には東電のへまを報道するなという圧力があるのではないか。その点、テレ朝は正面からこのことを取り上げた番組を作成したし、NHKは朝のニュースだけとはいえきちんと報道したのは立派。
*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<931>>
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