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社説:原発コスト 「安価神話」も崩壊した
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20111226k0000m070113000c.html
毎日新聞 2011年12月26日 2時31分
「原発の発電コストは安い」。これまで原発推進のひとつの根拠として繰り返されてきた言葉である。
東京電力福島第1原発の大事故を経て、この「安価神話」が崩れた。
事故後、原発コストの見直しを進めてきた政府の「コスト等検証委員会」の試算によると原発の発電コストは最低でも1キロワット時当たり8.9円。これまで電力会社や政府が提示してきたコストの1.5倍となる。
放射性物質の除染や廃炉、損害の費用など今後の事故処理の費用がかさめば、さらにコストは増す。
石炭火力、液化天然ガス(LNG)火力が10円前後であることを思えば、原発のコストの優位性は大きく揺らいだといえる。風力や地熱も条件がよければ原子力に対抗でき、太陽光も20年後にはそれなりに安くなる可能性が示されている。
政府はこれをきっかけに、「コスト高」を理由に敬遠されてきた再生可能エネルギーへの投資と推進政策を本気になって進めるべきだ。
今回の試算がこれまでと大きく違う点は、建設費や運転維持費、燃料費などに加え、事故リスクや二酸化炭素対応といった社会的コストも勘案した点だ。考えてみれば、これまで事故リスクを度外視してきたことが間違いだった。「安全神話」と「安価神話」はセットになっていたことになる。
検証委は家庭の省エネは発電に等しいという考え方や分散型電源の潜在力も示している。改めて注目したい。こうした試算を踏まえれば、今後原発を減らしていくという政府の「脱原発依存」の実現性が見えてくるはずだ。
現時点で示された数値は不確実性が高いことにも留意したい。試算の過程では、原発事故のリスクをどう評価するかで、専門家の意見が大きく割れた。
今回のような深刻な事故が起きる確率を「10万年に1回」と仮定する専門家もいたが、米スリーマイル島原発、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故に、今回の福島の事故を考えあわせると普通の人の感覚とかけ離れている。
検証委は今回、事故確率を含まない方法で事故リスク対応費をはじいたが、もっとも低い見積もりであることを忘れてはならない。
日本が原子力政策の要とする核燃料サイクルも直接処分に比べ約2倍高いという試算が示されている。これまでつぎこんだ費用は大きいが、ゼロから考え直すべきだ。
今後は、こうした試算をさまざまな立場の人が検証しつつ、エネルギーのベストミックスを考えていく必要がある。試算をそのスタートとしたい。
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