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(SAPIO 2011年6月15日号掲載) 2011年6月23日(木)配信
文=富坂聰(ジャーナリスト)
中国で「原発建設ラッシュ」となっていることは『SAPIO』で繰り返し報じてきたが、やはりそこではいくつもの問題が起きていた。大事故にもつながりかねない、原発をめぐるトラブルについて、ジャーナリストの富坂聰氏が報告する。
現在稼働中の原子力発電所は14か所。2020年までに新たな稼働を予定している原発は28か所、批准段階の計画も含めれば100か所を上回り、さらに2050年までには230基へ増やすという計画もある。
これが原発シフトに邁進する中国の現状だ。
水冷の利便性や大都市の電力需要を考えれば、これら原発が沿海部にズラリと並ぶことは避けられない。一度“事故”ということにでもなれば、福島原発以上の被害が日本を襲っても不思議ではない。
空には、大陸から黄砂を運んでくるほどの強い偏西風があり、海にはエチゼンクラゲを運んでくる海流が日本に向かって流れているからだ。
ただ、その場合、日本より甚大な被害を受けるのは香港と韓国である。
その香港で今、福島の事故を受けて、中国の原発推進政策に批判の声が上がっている。
「香港からわずか50kmの距離にある大亜湾原発で昨年、放射性物質が漏れる事故があったのですが、これを当局はメディアが騒ぐまで隠していた。この対応の不誠実さを、福島の事故で改めて思い出した」(日系企業の香港人)
現状はまだ本格的な反対運動ではないというが、現地のジャーナリストは、中国の原発に隠された問題に対し、もっと深刻な見方を示す。
「10年ほど前、大亜湾原発の建設過程での手抜き工事が話題になりました。太さが規格に満たない鉄骨を使用し、材料費を浮かせようとしていたのです。鉄骨はすぐに換えられ、その後は手抜きもなくなったとされていますが……やはり不安は大きい」
懸念が深まる理由は他にもある。それは、福島で事故が起きるまで中国には原発を「危険」と考える認識がほとんど根付いていなかったことだ。
在北京の記者が語る。
「原発銀座と呼ばれる中国沿海部の浙江省には、2013年に世界初の加圧水型原子炉(第3世代)の完成が予定されています。その『三門原発』の近くには驚くべきことに、原子炉からわずか数百mの距離に5ツ星ホテルが建てられている。こんな事実一つをとってみても、いかに彼らが原発のリスクを認識していないかが理解できるでしょう」
施主がこの調子なら、施工側が他の建設現場同様、手抜き工事に走っても不思議ではない。
91年に中国独自で設計した原発第一号(秦山原発)が誕生して以降、現在までに「手抜き」が原因となった深刻な事故は起きていない。だが、「疑い」を抱かせる傍証は少なからず見つかる。手抜き工事に付きものの汚職事件が、原発建設を巡っても数多く起きているのだ。
中国メディア『新世紀週刊』は2011年3月21日の特集記事で、原発を巡って起きた汚職事件を伝えている。
〈07年末、中国に第3世代原発を導入する過程で、事業に関わった中国技術進出口公司の蔣新生総裁が“双規”(党の規律検査委員会の取り調べ)を受けた。他に事業に関わった中国広東核電集団の元総経理以下20名が取り調べられた。09年には、中国核工業集団の総経理で党書記の康日新氏に(不正入札や公金流用の罪で)無期懲役が言い渡された〉
こうしたモラルの低さが、安全性の軽視につながっていることは言うまでもない。
毎年平均13回の小さな事故が起きていた?
今のところ中国の原発で事故(中国では事故レベルが比較的軽い「一級」から「三級」に属するものを「事件」と呼ぶ)が起きたとの客観的事実は見つからない。ただし、「事故や事件の情報が伏せられているのではないか」との疑念が、いっこうに消えないのも確かだ。前出の香港人ジャーナリストが指摘する。
「昨年の大亜湾の事件で、後に香港政府のスポークスマンが語った事実が衝撃的でした。彼は大亜湾の事件を、『過去6年と同じレベル』と位置付けた上で、『05年からは大きく改善されている』と説明しています。ではそれ以前はどれほど事件が起きていたのかという疑問が湧いてきますが、それに対してスポークスマンは、『00年から04年までは毎年平均13回起きていた。今はそれが平均4回にまで下がった』と言ってのけたのです」
原発でのトラブルが隠匿されていることを匂わせる発言は、中国で原子力発電を所管する幹部の口からも聞くことができる。
例えば、2011年4月29日付の『上海国資』誌の記事だ。福島の事故を受けて組まれた特集記事の中には、こんな驚くべき記述が見つかる。
〈中国の原子力発電事業は概ね順調に発展していると言えるだろう。しかし、その過程では小さな問題は不断に続いて起きている。2010年9月、嶺澳原発3号機の運転開始に際して行なわれた式典で演台に立った中国環境保護部副部長兼国家核安全局の李干傑局長は原子力発電の現状についてこう警告した。
「勢いは素晴らしい。しかし隠れた問題は少なくない。作業に従事する者は頭を覚醒させて臨むように」〉
原文では、「隠患不少」と表現された通り、水面下ではいくつもの問題が起きていることをうかがわせた。
だが現状、中国が「脱原発」に大きく舵を切ることは考えられない。
今年4月、中国電力企業連合会は、「今年の夏は、およそ3000万kWの電力不足に陥る」と唐突に発表、全国に節電を呼び掛けた。「日本ではなく、なぜ中国が?」と思うかもしれないが、世界中の石油を買い漁っても、まだ旺盛な電力需要に追い付かないのが中国の実態なのだ。
「電力不足はかねてから中国では経済発展のボトルネックとされてきたが、今や各省が激しい電力の奪い合いをしている。こんな時に脱原発なんて誰も考えない」(同前)
今年4月、福島の事故レベルの評価が「レベル7」に引き上げられた時も、韓国のKBSがトップニュースで大きく報じたのとは対照的に、中国は胡錦濤国家主席とスペインのサパテーロ首相の会談を伝えた後に、事実を淡々と伝え、「中国が(福島原発の事故から)受ける放射性物質による汚染の影響は、チェルノブイリのわずか100分の1」と付け加えただけだった。
原発を多く抱える広東省では、各地の書記が街頭に出て「放射能に対する正しい知識を持とう」と、過度に原発を恐れるべきではないと啓蒙して回る様子が一斉に大きく伝えられた。しかも、その書記が説明に使ったパンフレットが、地元新聞社の作成だったというオチまでついた。
官民挙げて、原発に邁進する中国。だが、香港政府のスポークスマンが明らかにしたように繰り返し起きてきた「小さな事故」が、いつ大事故にならないとも限らないのである。
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