http://www.asyura2.com/11/genpatu19/msg/599.html
Tweet |
検証 福島原発 冷温停止/「収束」は言葉のトリック/元中央大学教授(核燃料化学) 舘野淳さんに聞く
「しんぶん赤旗」 2011.12.25 日刊紙 14面
東京電力福島第1原発事故で政府は16日、炉心溶融が起こった1〜3号機が「冷温停止状態」になったとして、事故の「収束」を宣言。地元の福島県をはじめとする多くの国民に不信と批判の声が広がっています。専門家はどうみるのか。舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)に聞きました。
1979年3月に発生した米国のスリーマイル島原発事故で、大統領直属の事故調査委貞会(ケメニー委員会)が事故発生の7カ月後の同年10月に提出した報告書には「事故は冷態停止(冷温停止)で終わったわけでなく、まだ当分終わる見込みもない」と記載されています。福島第1原発の現状は、燃料の状況も放射性物質による汚染も、けた違いに深刻です。
「事故収束」というのは、危険のおおもとである溶融した燃料を原子炉から取り出し、その処理についても技術的に決着がついた時点で言えることです。ケメニー委員会の報告書に照らしても、今回の事故が「収束」したという認識は、まったくおかしい。
100度以下の維持に疑問
「冷温停止」とは本来、健全な原発で正常に運転を停止するさいの状態を指す専門用語です。それを炉心溶融という深刻な事故を起こした原発にもあてはめて「原子炉底部の温度が100度以下の状態になったら冷温停止だ」と、それで「事故は収束した」と、“二段論法”でもっともらしく言う。悪質な言葉のトリックです。原子力の研究に関わってきた者として、大いに違和感があります。
現状をみると、100度以下をずっと維持できるのか疑問です。もし冷却が止まれば、たちまち100度以上に上がります。余震など突発的なことが起こっても大丈夫だと政府や東電は考えているようですが、何の保証もありません。
私は、事故処理は熱と放射能と水素とのたたかいであり、処理を誤れば破局的な事態を引き起こすと指摘してきました。現在も燃料は莫大(ばくだい)な発熱を続けています。建屋地下などに高濃度の放射能汚染水が大量にたまっているうえ、雨が降ると流れ込んで増え、浄化装置からの漏えい事故も発生しています。水素爆発の危険も残っています。
東京電力自身が中期的な取り組みとして、より安定的な冷却システムをつくることを検討していますが、これは事故収束の課題であって、廃炉の課題ではありません。収束宣言と矛盾した話です。
そこまでして急いで「事故収束」を宣言したのはなぜか。
私は、野田首相が世界にむけて約束を果たしたと宣言し、世界への原発輸出や建設を推進するためだとみています。米国やフランスなど、原発を推進したい関係国には歓迎されるものです。一方、国内の原発の再稼働への布石という狙いもあるでしょう。
科学より政治方針を優先させてはいけないという教訓は、原子力の歴史の中で証明済みです。しかし政府は、こりもせずに“安全宣言”を出してしまいました。
いったん事故収束を宣言すれば、後で何か起こっても「事故ではない」と強弁するより他はなくなります。手を打つにしても、話が食い違ってしまう。結局、何かあれば撤回せざるを得なくなるのではないでしょうか。
燃料の状況 未知の領域
今後の本来の収束にむけての作業は、さまざまな困難が予測されます。溶融した燃料が原子炉圧力容器内にとどまったスリーマイル事故でさえ、燃料の取り出しが終わるのに10年もの年月を要しました。福島原発では、燃料は圧力容器から格納容器の床のコンクリートに落下し、現在もどういう状況にあるのかわかっていません。もし冷却ができなくなれば、高温になった燃料がコンクリートと反応して爆発的な現象が起こる可能性も否定できません。未知の領域に入ったと言えます。 (聞き手・中村秀生)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素19掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。