12. 2011年12月16日 00:13:58: 6SZ2bXIIEE
こっちを投稿しろや。ウォール・ストリート・ジャーナル 福島第1原発が冷温停止へ―事故収束への一里塚 2011年 12月 15日 22:01 JST http://jp.wsj.com/Japan/node_361066 東京】日本の当局者は16日、事故を起こした福島第1原子力発電所の原子炉の冷却が進み「冷温停止」の状態になったと発表する予定だ。冷温停止は、旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原発事故以降では最悪の原子力禍の収束に向けた一里塚だ。 原子炉内の燃料がメルトダウンを招く水準まで上昇してから約9カ月が経過した。この発表は3月11日の大震災によって引き起こされたカオスに打ち勝ったことを意味するものになる。 事故対策に関わった各企業が描写する作業の様子はSF小説のシーンのようだ ─ 応急装備のロボットが立ち入り禁止区域や汚染水の中で調査を行い、作業員が爆発で大破した原子炉建屋に覆いをはめ込む ─ あたかもレゴ・ブロックのように。 しかし、こうした前進は断続的で、スピードは遅く、危険をはらむものであり、原発の厳しい現実が投影されていた。問題は依然として山積している。これから、途方もない規模で除染作業が行われる。 東京電力の西沢俊夫社長は14日、これは大きな一歩、との見方を示した。 東電は16日、福島第1原発の原子炉について、核反応が起こらなくなり、放射性物質の大気中への放出がほとんどなくなる冷温停止の状態になったと発表する計画だ。この発表は危機管理の終えんと、除染と廃炉のための新たな工程の開始を意味する。 西沢社長は、人体に害を与えるレベルの放射性物質の放出は止まったとし、東電は再度の自然災害に耐えられるよう、福島第1原発の原子炉を強化する策を講じる、と述べた。ただ、必要なことはすべて行うが、それは「『完璧』を意味するものではない」とした。 福島第1原発の原子炉はがれきに埋まり、測定・制御システムの多くは不調だ。放射線のレベルが高過ぎ、人が原子炉に近づくのは不可能。安全な水準に戻るのは何十年も先だ。このため、エンジニアや科学者は、コンピューターによるシミュレーションや散乱状態のデータ、そして推量により、重大な判断を下している。 このモデルが、いくつかのアセスメントをもたらした。たとえば、第1原子炉において、完全に溶解した燃料が圧力容器を突き抜け、格納容器のセメントの床に落ちた可能性がある、とした11月下旬の発表だ。確実な情報があまりにも少ないため、東電関係者は、メルトダウンが展開した様子や、核燃料の現状は分からない、としている。 最後の燃料が取り去られ、原発が完全に廃止される(専門家は数十年を要する可能性があると指摘)まで解明できないことが多く存在するため、汚染水の流入源の特定や流入の阻止、溶けた核燃料の除去などの重要な問題にいかに対処すべきであるか、当局は確信を持てずにいる。 政府の原子力委員会で福島第1原発の廃炉に関する専門部会の部会長を務める京都大学の山名元教授は「(スリーマイル島原発では計装類などが事故後もすべて生きていたのに対し)福島はまったく何も見えない。すべてのプラントが死んでいる。中がどうなっているか分からない」と述べた。 福島第1原発は毎月、オリンピック競技用プール4つ分を満たすのに十分な汚染水を産み出している。数週間前には汚染水が海に流出する問題が発生したが、こうしたことを防ぐため、エンジニアは10月、1本10トンの鋼鉄製パイプ700本を用いて760メートル余りの地中壁を建設する工事に取り掛かった。 もう1つの喫緊の課題は、事故を起こした原子炉を保護し、外界から遮断された状態にすることだ。施設付近にある、引き続き高い放射線を帯びたがれきやほこりが風雨により飛散する可能性はまだあるのだ。 東電は3月、1号機の原子炉建屋を覆うビニール製の覆いを発注した。建屋の天井と壁は、水素爆発により吹き飛んだ。 覆いを受注した清水建設は、福島第1原発が抱える厄介な問題に直面した。このプロジェクトを担当した同社幹部は、作業員を送りこむには放射線のレベルが高過ぎた、と述べた。 清水建設は、覆いのサイズと重量を抑えるため、建屋の壁から覆いまでの距離を20インチ(約50センチメートル)に設定した。しかし、この場合、建設に従事する溶接工と足場の組立工を時間当たり35〜150ミリシーベルトの環境で働かせることになる。1度の作業で浴びる最大限の放射線量として通常定められる同1〜10ミリシーベルトをはるかに上回るレベルだ。 そこで、同社は鉄骨を取り付けたパーツごとの覆いを事前に組み立てる工法を採用した。通常は鉄骨を溶接とボルトで結合させるところを、今回ははめ込み方式を用いた。 さらに、クレーン操縦者の被ばくを最小限に抑えるため、クレーンの窓を鉛で覆い、作業をモニターするためのビデオスクリーン操縦室に設置した。 より大きな仕事が残されている。構造物全体を数年後、より強固なものに建て替える必要に迫られる可能性があるのだ。 東電はまた、3号機にも覆いを取り付けることを望んでいる。3号機は1号機よりも大きいため、作業はより厳しくなる。 一層大きな課題は汚染水の問題だ。被災した原子炉の冷却のために引き続き1日に何百トンもの水が放水されている。東電はどこからか汚染水が漏れ出ていると判断した。原子炉建屋地下や排水管では高濃度の放射能汚染水が確認されており、パイプの通り道に沿ってホットスポットが発見されている。原子炉建屋のひびのために問題はますます複雑になっており、地下水が流入したり、水位を厳密に管理していないと汚染水が流れ出ることになる。 穴やひび割れの箇所はつかめていない。原子炉関連設備メーカーでもある日立は、同原子炉施設だけでも数百マイルに相当するパイプが張り巡らされているとみている。 全部で数千トンの汚染水が原子炉建屋地下にあふれ、排水管に流れ出ている。それを貯蔵するのは篠原弘之氏の仕事だ。東電社員で水関連技術の専門家である篠原氏は今年3月に海外のプロジェクトから呼び戻されるまで福島第1原発の内部に入ったことはなかったと話す。 篠原氏は、東北地域の貯蔵タンクを全て買い上げることから始めたと話す。全部で944基、それぞれの容量は40〜1000立方メートルに及んだ。同氏は原発周辺にタンクを設置するために、今度は41エーカーほどの森林の伐採を求めた。フットボール場31個分に相当する広さだ。 同氏は、汚染水が福島第1原発の原子炉建屋地下から海に流れ出す前に十分なタンクを設置しようと大急ぎだったと振り返る。土壌の強度をテストする時間的余裕はなかったという。 同氏によると、あるとき台風が去ると、地中に埋めていた数基のタンクが浮き出てきた。また、最も大きな3つのコンテナは、試験的に入れた水の重さで傾いたという。 現在では9万トンの汚染水が貯蔵され、さらに8万トン分のタンクが確保されており、篠原氏はやっと一息つける状態だ。しかし、建屋からの漏出と地下水の流入のため、月に約1万トンの割合で汚染水が発生しており、終わりは見えていない。 篠原氏は、正直言って福島第1原発の敷地内には汚染水を貯蔵する十分な土地はないと話す。 一方、人間が入るには放射能レベルが高過ぎる建屋内で何が起きているかを解明するのは、千葉工業大学・未来ロボット技術研究センターの小柳栄次副所長の役割だ。小柳氏は福島第1原発の原子炉建屋内で使用されている少数のロボットの1つを設計した。また、東電によると、同氏の設計したロボットは上方階の状況を調べるために急な階段を上り下りする唯一のロボットだ。 小柳氏の設計したロボット「Quince(クインス)」は無限軌道(クローラー)のついた小さなカートのように見え、最上部にカメラを搭載した筒状の部品が付いている。コストは人件費を含まず1200万円。小柳氏によると、パイプの溶接やひびを塞ぐことはできない。しかし、放射線量の低いスポットを探すことができることから、こうした作業を行うために作業員が入ることが可能になる。 小柳氏のチームは、クインスを制御するために通常使用する無線信号が原子炉建屋を貫通できないことを知った。クインスは、階段の上り下りや廊下を通るのに、3分の1マイルほどにも及ぶケーブルを引きずって動き、戻る時にはそれを巻き取ってくるしかなかった。 10月20日に2号機の5階から戻る途中、クインスのケーブルが何かに引っ掛かって、通信が途切れた。小柳氏によると、ロボットは3階で立ち往生したが、3階は放射能レベルが高過ぎて、ロボットの回収に作業員が入ることはできなかった。 小柳氏のチームは、再び2号機の5階に次のクインスを送る準備を整えている。ロボットは合計で6台あった。このロボットはそこで、使用中ではないが温度が上がり過ぎると危険性のある燃料棒用の使用済み核燃料プールの周辺部分から測定値を送ることになっている。 水が漏れ出ている原子炉建屋地下の調査には、次世代のロボット――おそらく、潜水艦のように水中を航行できるタイプ――が必要だ。小柳氏はその時になっても課題は残るだろうと話す。建屋地下の泥水のために、ロボットにはひびを探し出すために音波探知機が必要となる。ひびが見つかった後はエンジニアが放射能汚染水の中でも溶解しない接着剤を使用してひびを密閉する方法を考え出す必要がある。 小柳氏は、潜水ロボットが開発されるにしても、誰が地下に持って行って水の中に置くのか、と問う。地下の汚染水の放射能レベルは非常に高く、作業員は汚染水量の測定機器の設置さえできないほどだという。 福島第1原発から最後の燃料が除去され、同原発が完全に廃炉となるには数千人の作業員と最長で30年ほどもかかると専門家らは見積もっている。 |