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http://www.47news.jp/47topics/e/222896.php
【原発の不都合な真実】原発は安価か? 建設コストは増加の一途 「リスク大きい」と格付け会社
原発の新規建設への政府の支援を行わないことを決めたスウェーデンはもちろん、政府がさまざまな支援策を導入した米国や英国でも原発の新規建設が進んでいない大きな理由の一つは、原発の建設コストが年々、膨れ上がっていることがある。
原発建設に投資をしようという企業にとって最も重要なものは初期投資、つまり原発の建設費であり、それがどれくらいの期間で回収できるかという問題である。現在、日本でも政府の委員会などの場で、原発の発電コスト、つまり1キロワット時の電気をつくるのにどれだけのコストがかかるかを再検討する作業が進んでいる。事故に備えた保険料や実際に事故が起こった時の対策費や除染の費用、風評被害などを含めた損害額など、どこまでをコストとして考えるべきかによってこれは大きく変わってくるのだが、過去に米国やフランスで行われたごく一般的な分析では、キロワット時の費用に建設費が占める比率は3分の2にも上るとされている。
図は、ウィーンにある国際応用システム分析研究所(IIASA)のグループが昨年発表した論文からのもので、米国とフランスの原発建設コストの変化を示している。横軸は原発の総設備容量、左の縦軸は米国の1キロワット当たりの原発の建設コストをドルで、右の縦軸はフランスのそれをフランで示している。折れ線が平均価格で最大と最低の幅が縦線で示されている。青線が米国、赤線がフランスなのだが、両者の変化はとてもよく似ていて、原発の建設が進めば進むほど、建設費が高騰していることが分かる。両国における年ごとの建設費の推移を示したもう一つのグラフからも程度の差こそあれ、建設コストが近年上昇傾向にあることが分かる。米国では特に1979年のスリーマイルアイランド原発事故以降の上昇が著しい。
累積設備容量(10億ワット)
米国では数年前まで、業界側の試算を基に、原発の建設コストは1キロワット当たり4000ドル(31万円)とされてきた。100万キロワットの原発だと40億ドル(3100億円)ということになる。
この研究のように貨幣価値を補正していないので、単純比較はできないが、日本の110万キロワットの原発でも、1979年に臨界に達した東電福島第一原発の6号機の建設コストが1750億円、キロワット当たりでは16万円弱であったのに対し、2005年に運転を開始した東北電力の東通原発の建設費は4280億円、キロワット当たりでは39万円近くになっている。公表されている建設費を出力で単純に割ると、中国電力島根3号機、北海道電力泊3号機、九州電力玄海3号機など、最近の原発のキロワット当たりの建設費は軒並み30万円を超えている。
日本の場合、電力会社が必ずしも正確な建設費を公表していないので、正確なことは言えないが、1キロワット当たりの建設費はこのように昔に比べて増加する傾向にあり、最近では100万キロワット級の原発の建設費が4000億円を超えることもあるので、状況は米国やフランスと似たようなものだと考えてよさそうだ。
だが、2008年に米国の信用格付け会社ムーディーズは、実際のコストはもっと高く1キロワット当たり7000ドル程度になるとの試算を示している。これは最新の石炭火力発電の2倍、効率がよい天然ガスのコンバインドサイクル発電の3倍という高さだという。ムーディーズが、原発開発を進める仮想の電力会社の財務状況などを想定した格付けシミュレーションも行った。原発建設に積極的な会社は、建設費の出費がピークを迎える建設開始5〜10年後に、資金繰りが厳しくなるなどして、格下げの可能性が出てくる、というのがその結果だった。
実際の電力会社の格付けを調べても、原発建設を進める電力会社の格付けが下がっていることも判明した。ムーディーズは「原発建設への投資は、企業の格下げの要因となりうる」と分析。「新規原発建設をしようとの企業について、われわれはネガティブな立場を取るようになっている」と明言している。巨大な投資が必要で、完成までに長期間を要し、多くの場合、当初の見込みよりも費用が高くなることが多い新規原発への投資に、投資家が二の足を踏むのが理解できる。(続く)
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