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安全な食生活を目指して(3)・・・被曝側の計算
http://takedanet.com/2011/12/post_980e.html
平成23年12月8日 武田邦彦(中部大学)
粉ミルクが汚染されると、「粉ミルクだけでは大したことは無い」ということが報道されています。その記事を見ると、専門家や記者は「なにが汚染されても、法律に違反して安全と言わなければならない」とどこかから圧力がかかっているとしか思えません.
専門家ならこのような場合の食品安全の求め方について十分な知識を持っているはずなのに、奇妙な計算をしているからです。またメディアもこれまでのホルムアルデヒド事件、食品事件、農薬事件などで報道したときには、食品安全の考え方にそって報道していたのに、原発事故だけは「独自の計算」をして「安全」と報道しています.
まず、簡単な専門家の間違いですが、「汚染されたもの以外は一切、汚染されていないか、それとも消費者が食べない」ということと、「放射性物質はセシウムしかない」ということ、さらには「4月から今まで食材の汚染は隠されることなく、すべて公表されていた」という非現実的な前提をおいているからです.
でも、最初のコオナゴの汚染から始まって、水、お茶、牛肉、ほうれん草、小松菜、ワカメ、マダラ、アユ、キノコと汚染がある度に、つねに専門家とマスコミは非現実的な仮定をおいて、個別に計算し被曝量は低く見積もっています.本当に不思議です.
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良心的ではない生産者の立場からはほうれん草が汚染されたとき、「ほうれん草だけを食べてくれれば良いし、第一、牛肉がどのぐらい汚れているか知ったことか!」ということになりました.それが今回の粉ミルクでも同じなのです.それに加えて、被曝で健康を害するのは生産者ではなく、食材を食べる消費者であり、子供たちです.だから、被曝の計算を子供たちの立場で行うのは当然です.
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農薬の規制を考えてみよう.ある農薬が認可され、食材に含まれる許容量が決められると、その値はすべての食材に適応されます.ほうれん草だけに農薬が入るわけでもないので、スーパーで買うお母さんにしてみれば、「ほうれん草を1束と小松菜を3束を買ったから、もう買えない」などと計算するわけにはいきません.すべての食材に農薬が入っているとして規制してくれないと現実には買い物をすることができないのです.
野菜に使う農薬だから、「肉の分は何も入らないとして良い」ということにもならなりません。肉には肉の添加物があり、また、社会には草食主義の人もいれば、体の調子が悪くて肉類などを控えている人もいるからです。食品というのは口に入るものですから、生産者や流通業者は「誰でも大丈夫」という前提が必須ですし、それが日本の誠意、社会的な責任、企業の倫理というものです。
だから、一つ一つの食材の許容量は、「同じものが、すべての食材に同じ量だけ入っていても大丈夫」ということが前提になります。私が「足し算のできない専門家」というのは、何かの汚染が報告されると、「それだけしか食べない.それだけしか汚染されていない.(放射線の場合は、それに加えて)空間からの被曝もない」ということで計算しなければなりません.
ところで、一日で採る標準的な食材は厚生労働省などから示されています.現実に細かく計算するときには食材別に1日で食べる量を計算し、それに1キロあたりのベクレルを考慮し、50年にわたる被曝線量を計算するのですが、そんなことは日常的に不可能ですし、しょっちゅう変わります。それに現代の日本は誠意のない農家や加工メーカーがあるから、「汚染されたものを売ってから発表する」という始末で、事後に計算しても意味はありません.
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専門家の方、記者の方は「被曝する子供側にたって計算する」ということを実施してください.「安全を守る」というのは「業者を守る」と言うことではありません。また、危険すぎる計算も安全すぎる計算もいけません.計算は正確にして、その結果をみて消費者がどのように考えるか、それは消費者の判断です.自分で「安全だ」などと言うこと自体が間違っています.それに法律(外部内部合わせて1年1ミリ。もちろん4月から今まで)を守ってください。もし法律に違反するなら、「違反する」と宣言してから記事を書いてください.
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「被曝する子供を守る」という点では、食品安全では当然ですが、1)セシウムだけが測定されていても他の放射性元素があることが判っているのだから、それを加味するのは(被曝する側で考える)、2)4月から6月頃まで放射性ヨウ素で汚染されていたときに、まったくベクレルが表示されなかった、3)政府の暫定基準値は1キロ500ベクレルと法律違反の値(健康にどのような影響があるか判らない値)であること、4)専門家もマスコミも政府に従うのではなく、法律を遵守することが前提であること、5)同じものが同じ量だけ全部の食材に入っているとするか、それとも他の食品の汚染度で最高に汚染されたものを食べる人を前提にすること、などがまず必要です.
食品安全では、今までの経験や理論から「個別食材では、汚染限度の理論値の100分の1で規制する」と決まっています.日本の食品の安全はこの「100分の1理論」で国民の被害を抑えてきたこと、だからこそ中国食材をマスコミが批判したことも思い出さなくてはいけません.
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