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2011/12/7 2049号 (転送紹介歓迎)
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Y記者の「ニュースの検証」
□■「原子力協定」承認に突っ走る民・自
──政府の原発政策 国内外使い分けは、国内原発新設・増設につなげる<伏線>
311以降、日本社会は、それまでとは決定的に異なる新たな場所に立っている。
日本は、世界の注視をあびつつも、またその震災と原発事故の甚大さから、一つのモ
ラトリアム期間にもおかれているような「特別」な位置づけにおかれてもいるようで
ある。
重大な事故被害のショックに戸惑う日本の政治。
──そのスキをつかれて強国のサンドバッグにされて言いなりになるのか。
──いやいや日本はそれほどだれしなくない、震災以降の日本の気丈さを忘れるな。
──だが「生き残り」を焦って強国のおこぼれや国際資本・国際産業の事情を優先
し、強国の路線に自ら追従しようとしてしまう可能性はあるぞ。
──日本は重大な分岐点にある。だが、日本は、日本が直面する試練が日本だけのも
のではないことに早く気づく必要がある。
──世界は日本が従来の蛸壺(米国の核の傘というフィクション)から抜け出すこと
も期待しているが、そんな低い時限の話ではなく、国際社会が共生・共存の道を、辛
酸をなめている日本だからこそできる日本流のリーダーシップをもって、身をもって
さし示してほしいのだが…。
京都議定書は、来年いっぱいで期限切れとなる。地球温暖化対策についての唯一の
国際ルールである。それをリードしてきたはずの日本が、なんと、中国やアメリカな
ど大量に温室効果ガスを排出する国が削減義務を負っていない現状では、再来年以
降、京都議定書の第2約束期間には参加しないとの態度で臨み、混乱要因となってい
る。
京都議定書の延長に反対するとして挙げた<中国やアメリカなど大量に温室効果ガ
スを排出する国が削減義務を負っていない>からには関係なく、日本政府の京都議定
書延長反対の姿勢に、日本の産業界からは敏感に賛意の声が出ている。あまりに単純
なロジックと受け止められて当然だろう。理由の如何に関係なく、温室効果ガス削減
の重たい圧し蓋が外れれば、それだけで経営効率が高まるという露骨な独りよがりの
資本の論理を力づくで先行させよう優先されようとすれば、それはそのまま現在の国
際社会のリーダーとしては「不適格」の印を押される時代であるからだ。
先進国の「強さ」の源泉であるアジア・アフリカ地域は、自らの力と地位を着実に
高め計り知れない成長可能力を知らしめるなかで、先進国と国際資本の論理に対する
監視を強め、それぞれの主張・提言力を蓄えてきている。311をうけて国際的な支
援・援助の手、申し出をうけた日本という国。そこできわだったのは「憐憫」ではな
く「リスペクト」だった。その対象は、いうまでもなく「日本の政治」ではなく「日
本の国民」である。
だから日本の政府が、京都議定書の延長反対を唱え、日本の産業界から熱烈な賛意
の声があがってもなお、日本の姿勢は「カナダ」ほどには強烈なバッシングの対象と
はなっていない。少なくとも現段階では。しかしながら、それにも限界がある。7
日、TBSが報じたように、南アフリカ・ダーバンで開催中のCOP17(気候変動
枠組み条約第17回締約国会議)では6日、アフリカ諸国の首脳・閣僚クラスが次々
と演説で京都議定書の延長を求めた。また、細野大臣と会談した日本や海外のNGO
が「日本は立場を再考してほしい」と訴えた。
TBSの報道によると、エチオピアのNGO「環境フォーラム」のメンバーは、
「かつては干ばつは10年に1度でした。今は1〜2年に1度、干ばつが起きます。
第2約束期間がなくなって京都議定書に基づく全ての議論が崩壊すれば、アメリカな
どの国々を引き込むこともできなくなってしまいます」と訴え、環境保全団体WWF
ジャパンのメンバーは、「アフリカというのは、気候変動の影響を最も強く受けてい
る地域でもあるので、その地において話される会議において日本が積極的になれな
い、積極的に見てもらえないというのは、すごく悲しいことだと思っています」と語
っている。
COP17の最終日は9日だ。2013年以降の地球温暖化対策を「空白」にして
いいのか。国連の潘基文事務総長は6日、「地球の将来は危機にひんしており、世界
がリーダーシップを注視している。議定書の次の目標をめぐる議論と向き合うよう各
国に求める」(共同通信)とあいさつして、拍手を浴びている。閣僚級の会合が始ま
るなか、「もはや議定書を継続するかどうかではなく、どのように議定書を継続させ
るかに議論が移っている」(国連のフィゲレス事務局長、NHK)との方向性が示さ
れるなど、日本の京都議定書の延長反対に関わらず、議定書継続のための議論が前提
となってきた。そのため日本としては、京都議定書に代わる新たな枠組みづくりを早
急に始めるべきとの方向に舵を切った。
当初の日本のダブルミーニング(中国やアメリカなど大量に温室効果ガスを排出す
る国が削減義務を負っていないことを延長反対の理由としながら、日本の産業界の削
減抑制の期待実現を目指す)など、京都議定書の延長を求める各国からすれば「ミエ
ミエ」のちまちましたやり方に過ぎないだろう。EUが、中国など主要排出国も参加
する新たな法的枠組みを2020年までに始めることを提言し、中国も2020年以
降であれば新たな法的枠組みに参加する姿勢を示すなかで、日本もその枠組みを20
20年といわず、もっと早めるべきとトーンを変えた。
ここからが本来最初から、いまの日本だからこそできる提言・リーダーシップの発
揮の場となる。日本は311をうけて、新たな立場からの新たな役割を果たすことが
できるのかどうか。いまの日本の素顔、いまの日本のそのままの実力が問われること
になる。NHKは7日の「COP17で日本が新提案」の報道の中で、細野大臣は7
日に演説に立ちますが、アフリカ諸国の前で少々居心地の悪い演説になりそうです」
と無難なコメントを付け加えているが、311にかかわらず日本の政治の劣化がいよ
いよかっきりしてくるなかで、問われているのは細野大臣の居心地などではないこと
は、はっきりしている。
311の大震災と深刻な原発事故をうけて、日本社会はそこから得られた教訓をい
かに世界に発信し、世界との共存・共生をすすめるための資源としていけるのか。独
りよがりの態度をいくら示しても、ああ日本はああやって沈没していくのかと思われ
るだけであろうし、また誤った道へ足を踏み出せば、ああ日本はああやってあがきな
がら国際社会の鼻つまみ者となって退場していくのか、と受け止められかねない。実
力の試される大事な分岐点に立っている。
たしかに多国とかかわる問題だが、それを国際的視点に立たず、国内問題に対処す
るかのような狭い視点で動き出しているのが、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国と
の「原子力協定」の問題である。衆院が6日の本会議で、この四カ国との協定の国会
承認案を、民主、自民両党などの賛成多数で可決、参院へと送った。原子力協定は、
1)原子力関連機材や技術を輸出入する際に締結する協定、2)国際原子力機関(I
AEA)の査察受け入れなどを相手国に確認する、3)核物質の軍事転用を防ぐ点か
ら、協定を締結していない国へは輸出できない。
政府はなぜ、この「原子力協定」承認を急ぐのか。福島第一原発事故を受けて掲げ
た「脱原発依存」の旗はどうしたのか。原発事故の事故原因の検証も、事故の影響の
検証も被害抑止の対策も、これから長期にわたって発生し続ける賠償問題も、事故を
引き起こした東電はじめ原発をかかえる電力企業の今後も、また原発への依存から脱
却した近未来の電力生産・供給システムの姿も依然描き出せないなか、なんら決着も
つかず着地の方法さえ見出せない過渡期をつづけるなかで、政府は「原発輸出」の具
体化のみ、これも前のめりになって動かそうとしている。
毎日新聞の7日付「衆院を通過、来月発効へ 原発事故後初」の記事によると、政
府が協定発効を急ぐのは、「脱原発依存」の方針の下、国内での原発の新増設が見込
めない中、経済産業省や原子力関連メーカーが海外展開に活路を求めているからだと
いう。さらに記事は、4協定の国会承認にめどがついたことを受け、政府は、既に交
渉入りしているインド、トルコ、南アフリカ、ブラジル、アラブ首長国連邦などとの
協定締結を目指すという(インドとは先頃、海上自衛隊とインド海軍による初の共同
訓練を2012年に実施することで合意、今月19日には日米印3カ国協議をワシン
トンで初開催する)。
6日の衆院本会議の採決では、公明、共産、社民、みんなの各党が反対した。民主
党からも京野公子氏(秋田3区)、小林正枝氏(比例東海)が反対を表明、約15人
が退席している。民主党内部も一枚岩ではなく、野田政権は、「原発未練派」の自民
党と連携して強行突破をはかろうとしている。これだけみても、近未来に禍根を残す
ことは明らかだろう。
ところで菅前内閣は原発輸出について、どのような態度を示していたか。2010
年には、官民一体の売り込みでベトナムから原発2基の受注にめどをつける積極姿勢
をとり、原子力協定の交渉も進めていた。311後は、自民党の小野寺五典衆院議員
が質問主意書で見解をただしていた件に答える形で、答弁書を作成している。8月5
日の報道によると、「我が国の原子力技術に対する期待は、引き続き、いくつかの国
から表明されている」とし「諸外国が我が国の原子力技術を活用したいと希望する場
合には、世界最高水準の安全性を有するものを提供していくべきだ」(朝日新聞)と
して、「外交交渉の積み重ねや国家間の信頼を損なうことのないよう、引き続き承認
をお願いしたい」とする姿勢を示し、当面は原発輸出を継続するとの方針を記した答
弁書を閣議決定した。
菅直人前首相は、東京電力福島第一原発の事故をうけて、原発輸出について将来的
な見直しには言及しているが、8月の答弁書では、長期的な方針について「事故原因
の調査や国際原子力機関(IAEA)の検討を踏まえつつ、できるだけ早い時期に我
が国としての考え方をとりまとめる」と記すにとどめていた。署名が済み、国会に承
認を求めている韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシアについては、相手国からの見直し
要求はないことも、この段階で明らかにしている。
とはいえ、「事故原因の調査や国際原子力機関(IAEA)の検討を踏まえつつ、
できるだけ早い時期に」とあるように、311以前の積極姿勢はなく、みずからブレ
ーキをかけながら見直す姿勢がほのみえていた。
しかし、どこかでギアを入れ替える出来事が起きたようで、枝野経済産業相が10
月18日、国際エネルギー機関(IEA)の閣僚理事会で「原子力の安全性を世界最
高水準まで高めるとともに、事故の経験と教訓を世界と共有し、国際的な原子力の安
全向上に貢献する」(毎日新聞)と述べて、原発輸出を継続する姿勢を表明。首相の
野田氏も同じく10月30日、翌31日に官邸でベトナムのグエン・タン・ズン首相
と会談し、ベトナム南部のニントゥアン省で進んでいる原子力発電所2基の建設計画
への技術協力やレアアース(希土類)の共同開発など、昨年10月に菅直人前首相と
ズン首相が発表した共同声明に沿った成果を確認し、今後の協力強化について意見交
換すると発表した。
そして、首相の野田氏は今国会での審議で、「日本の技術が必要だという国には、
個別に事情を判断しながら対応する」と答弁している。毎日新聞の前出記事による
と、首相周辺は「(首相は)何でもかんでも、どこへでもというわけではないが、日
本の技術は海外できっと役に立つという思いはある」と話している。菅政権が漂わせ
ていた「事故原因の調査や国際原子力機関(IAEA)の検討を踏まえつつ」のブレ
ーキ、つまり政権としての矜持はすでに取り外され、「何でもかんでも、どこへでも
というわけではない」と、判断の主体であることを放擲し、相手国の状況などに左右
される姿勢を打ち出すに至っている。
また経産省も「原子力の平和的利用だけで高い技術力を持つ日本への需要は高い」
(経産幹部)との認識から、協定の承認を受けて、原発輸出容認の流れを作りたい考
えだという。311以前の政府の新成長戦略で原発輸出を目玉ととらえていたことか
らぬけ出せないでいるらしいということとわせて、<国内で「脱原発」が進んだとし
ても、稼働中の原発のメンテナンスや使用済み核燃料の扱いなど、安全面で技術基盤
の確保は必須。国内原発の新規建設が極めて厳しい中、海外への輸出が滞ると「中国
や韓国など海外に有望な技術者が流出してしまう」との危惧も強い>(毎日新聞)の
だという。
ただ毎日新聞の同記事は、以下も指摘している。
1)日本としてこれからも原発輸出を続けるのか否かについて、現時点で政府全体の
方針が定まっているわけではない。原発事故を受け、政府は「電力の50%超を原
発で賄う」とのエネルギー政策の抜本的な見直しに入っている。
2)原子力政策の見直しは、原発輸出の考え方にも関わるが、結論が出るのは来年
夏。原発事故の原因究明を担う政府の「事故調査・検証委員会」の結果が出るのも
来夏で、それまでは原発輸出にアクセルを踏み込むことは難しい。
3)国内では、核兵器を保有しながら核拡散防止条約(NPT)に加盟していないイ
ンドへの原子力協力に対し、「核軍縮・不拡散の観点から問題」との批判も出てい
る。
4)衆院本会議の採決では、公明、共産、社民、みんなの各党が反対したほか、民主
議員から2人が反対、約15人が退席した。反対した京野公子氏(秋田3区)は、
「事故収束ができていない中で、日本の議員として賛成しかねる」と説明してい
る。
5)原発事故を受け国内で「脱原発依存」にかじを切った民主党政権が、海外には原
発を輸出することへの批判が与党内にも根強いことが改めて浮き彫りとなった。
だが民主・自民の賛成で衆院を通過した「原子力協定」締結承認案は、参議院に送
られた。参院での熟議、議論の深化が求められる。
11月5、6日実施の毎日新聞の全国世論調査では、外国への原発輸出について
「反対」65%、「賛成」31%だった。同紙が指摘するように「政府は10月末、
ベトナムへの原発輸出で合意したが、福島第1原発事故後の輸出再開には慎重論も根
強」く、「国内では原発輸出への理解が深まっているとは言いがたい」状況なのであ
る。
「日本がやらなければほかの国がやるだけだ。ほかの国に比べれば日本の方がはる
かに技術的に安全だから原発輸出を続ける、と頭を整理している」(原発事故対応に
追われた菅政権を中枢で支えた民主党議員、毎日新聞)として強引に自らを洗脳する
ような議員もいるようだ。そこには世界も未来も頭にないことは明白である。与党内
部がそうした状況で、政権だけが根拠もなく、熟慮もなく、熟議もなく、前のめりに
ただただ突っ走ろうとする政治姿勢では、政権の維持にのみ汲々とする政権や与党
に、いま世界が日本に期待することや、日本の市民が政権に期待することの推進を期
待することはできそうにない。
自公政権にあきれはてて、日本の市民社会が成し遂げた政権交代だが、その担い手
となった民主党の体たらくには、政治の転換を押し進めながら同時に覚めた眼で観察
してきた人にとっては「さもありなん」という状況でもあることだろう。09年の日
本の政権交代は、民主党に飛躍の時を与えず、日本の市民社会に「自らの手で政権交
代」させていく実感と自信を与えたという点に、意味を見出していくことになりそう
である。民主党がもし、最初の首相に小沢氏を選び、そのあとを鳩山氏が引き継いで
いたとしたら、「松下政経塾内閣誕生」への助走でしかなかった菅政権発足はあった
かどうか。
政権を巡る策謀の数々と運不運についてあらためて考えさせられる。政権のめぐり
合わせは市民生活そのものを直撃して止まないのだから、民主党政権がたどりついた
姿をみるにあたり、政権党内の運不運や劣化の問題ではなく、日本の将来、ひいては
その日本が大震災と深刻な原発事故から雄々しく立ち上がることを期待してくれてい
る世界中の人々に対して、なんとも申し訳気持ちに襲われている人も多いことだろ
う。ちなみに9月発足の野田政権は、11月初旬の段階で早くも支持率が50%を割
った。毎日新聞の調査では、すでにこの段階で民主の政党支持率は21%、自民は
19%でしかなかった。
9月から急落する支持率をみて、野田政権は居直ったのか。それとも国民のほかに
政権を支えると約束してくれるところでもあるのか。「原子力協定」の国会承認を急
ぐその姿からは、もはや改革の息吹も世直しの使命感も伝わってこない。
この「原子力協定」承認の動きについて、以下、各紙が社説で掲げた具体的な批判
と警鐘をみておくことにしよう(各社説に重複する一部項目も、各紙の論調を損なわ
ないよう要約に含めることにする)。
中国新聞は12月3日付で「原子力協定承認へ 事故の検証こそ先では」を掲げ、
<「脱原発依存」を掲げたはずの野田佳彦首相が、原発や関連技術の売り込みに率先
して旗振り役を果たしている格好だ>と手厳しく揶揄している。
<首相は「事故の経験や教訓、知見を国際社会と共有するのはわれわれの責務だ」
と強調する。だが事故は収束せず、検証も済んでいない。エネルギー基本計画の見直
しも道半ばだ。拙速な輸出は国民の不信を増幅させるばかりか、各国の信頼も得られ
まい>との指摘は、まったくその通りだと思う。
以下の指摘も大切な点だ。
1)ヨルダンは地震多発国だ。建設予定地は内陸の乾燥地にあり、冷却水の確保が困
難といわれてきた。解決できるのだろうか。
2)経済成長に伴い電力需要が増えているベトナムは、原発2基分を日本に発注する
方針を固めている。だが予定地が国立公園に隣接していることや、事故のリスクに
ついて住民への周知が不十分などの問題点も指摘されている。
3)国際環境団体は「拙速な協定の締結は無謀な原発輸出を促す」と反対している。
4)核保有国であるインドとも原子力協定交渉の進展で合意していが、原発技術は軍
事転用されるリスクがある。核拡散防止条約(NPT)への加盟が大前提だと強く
求めることは、被爆国の責任でもある。
5)民主党政権は輸出の前にやるべきことがある。まずは徹底的に事故を検証し、万
全の再発防止策を講じていくことが、当事国としての責務にほかなるまい。
6)首相は就任直後こそ「脱原発依存」と口にしたが、最近は聞こえてこない。原発
に対する姿勢がぶれてはいないか。
中日新聞は12月3日付で「原発政策 国内外で使い分けるな」を社説に掲げ、国
内向けと外向けの食い違い・使い分けの無理を指摘、事故が起きた際の責任の所在の
不明確さやリスク回避の準備を怠っている実態などを指摘した。
1)福島第一原発が今なお冷温停止に至っていないにもかかわらず、野田政権は原発
輸出にこだわっている。福島の検証も終わらぬうちに輸出では国際社会への説得力
に欠ける。
2)衆院での質疑は国の内と外で原発政策を巧みに使い分ける姿を鮮明に映し出した。
3)国内の新増設には腰を引き、海外には売り込む。こうも国の内外で落差があって
は、国際社会から信頼を得られるか疑わしい。
4)ヨルダンは日本と同じ地震国で、原発に不可欠な冷却水の確保が難しい内陸部の
乾燥地帯が予定地だ。政府は原発の専門家を派遣しての調査もしていない。立地場
所の周辺は、首都アンマンなどの大都市やヨルダンの半数の工場が集中しており、
立地の適否すら確かめずに協定を優先させては怠慢のそしりを免れない。
5)輸出相手国の多くは新興国で、原発の資機材だけでなく運転・保守管理も日本に
求めている。事故が起きた際の責任の所在は明確になっていない。そのリスクを回
避する「原子力損害の補完的補償に関する条約」への加盟も、福島後に慌てて検討
するお粗末さだ。
6)福島の事故の検証が道半ばなのに教訓をどう生かすというのか。安全確保があい
まいでは、立ち止まることも選択肢の一つに加えるべきだ。
愛媛新聞は12月4日付で「原子力協定承認へ 福島事故の教訓を忘れたのか」を
社説に掲げ、<東京電力福島第1原発事故が収束しない中、政府は再び原発輸出への
一歩を踏み出した。事故の反省と教訓を置き去りにしたままの姿勢が許されるはずも
なく、強い疑問と憤りを禁じ得ない>と厳しく糾弾している。
1)国際社会の未来さえ左右しかねない重要な協定だけに、まずは政策決定機関とし
て委員会の見識を問いたい。
2)日本の原発技術への信頼は地に落ち、エネルギー政策の見通しも不透明だ。そう
いう時期に、品質保証のない商品を売りつけるような政策が理解されようか。
3)「協力に意義がある。これまでの外交交渉、信頼関係をふまえた」という野田首
相の姿勢は偏重している。求められるままに協力する姿勢は、理念なき外交そのも
のだ。
4)各国とも、事故を、むしろ原発推進への契機であるととらえているのが実情とい
える。日本が、原発事故の深刻さを国際社会に正確に伝えていないということの裏
返しでもある。
5)事故把握と対応の甘さ、情報公開の不備、自省の欠如。日本は事故後、いくつも
の失態を重ねてきた。その上、原子力協定を結ぶことでさらに恥の上塗りをする愚
かさを、重ねて指摘したい。
6)政府がいま行うべきは、原発先進国の認識を捨て去り、技術と資材の利用を凍結
することだ。原発依存から脱却する勇気を持たずして、日本の再興も信頼回復もな
い。協定の締結は、無期限に先送りすべきである。
北海道新聞は12月5日付で「原子力協定 原発輸出は再考が必要」を社説に掲
げ、<東京電力福島第1原発の事故はなお収束していない。政府の事故調査・検証委
員会の中間報告など、足元の原因究明もこれからだ。そんな中で官民で原発輸出を進
めようとする政府の姿勢には大いに疑問が残る>と切り出した。
1)市民団体からはヨルダンやベトナム両国では放射性廃棄物処理の見通しが立って
おらず、事故対策も不明との指摘が出ている。
2)ヨルダンの原発建設予定地は乾燥地帯の内陸部にあり、緊急時の原子炉冷却水を
十分に確保できるか懸念される。
3)専門家は官民一体の原発輸出のため、輸出先で事故が起きた場合、賠償責任が国
民負担に結びつく可能性もあるとしている。原発管理の責任を長期間、背負う恐れ
もある。事故当事国として、原発輸出を根本から問い直す慎重さが必要だ。
4)野田首相は中長期的には脱原発依存の方針を明言し、「国内での新増設はできな
い」とも述べてきた。原発への不信感が募る国内では新設見送りを掲げる一方、海
外には積極的に売り込み、経済成長のけん引役としての役割を期待する。これでは
国民の理解は得られまい。
5)首相は9月の国連演説で「世界最高水準の安全性の確保」を原発輸出の前提にす
る考えを表明したが、事故の真相究明は済んでおらず、原発の安全基準も見直しの
真っ最中だ。最高水準の安全性が確保されたとは言えない。
6)大事故がなかったかのように原発輸出に向かう政府の姿勢を見ていると、エネル
ギー政策を大胆に改革する覚悟があるのか疑わしい。日本が原発輸出を進めるもと
となっている政府の新成長戦略の見直しも欠かせない。
7)福島の事故を教訓に、脱原発に向けたエネルギー戦略をきちんと策定する。その
うえで太陽光や風力など自然エネルギーの普及を含めた新たな成長戦略を内外に示
すべきだ。
信濃毎日新聞は12月5日付で「原子力協定 事故の教訓はどこへ」を社説に掲
げ、<事故の経験を生かすなら、とりわけ本体輸出に関しては、いまの段階では慎重
であるべきだ。協定の発効は時期尚早である>と厳しき提起している。
1)対象のヨルダン、ベトナム、韓国、ロシア4カ国との協定は、福島第1原発事故
が起きたため、日本側の手続きが先送りされていた。事故前に政府間の署名が済んで
いたとはいえ、すぐに発効させるのは問題だ。
2)原発事故が収束せず、本格的な原因究明はこれから。ほかの原発も安全性が問わ
れている段階である。政府は事故の重大性をどう考えているのか。
3)国内で「脱原発依存」を掲げる一方で、国外では原発ビジネスを積極的に進める
という、使い分けの方針そのものに無理がある。国内では減らすと言いながら、海
外には万全だと言っても、信用されないだろう。
4)米国では1979年の原発事故後、凍結してきた新規着工が決まり、日本からも
機材が輸出される。ドイツ、スイスなど一部の先進国は脱原発に方向転換したが、
新興国は導入に積極的だ。
5)こうした環境で政府が使い分けの姿勢を続けることは、国内の原発の新設・増設
につなげる伏線だと受け取られても仕方がない。国民も事故の痛みを忘れず、忍耐
強く監視していくことが必要だ。
6)ヨルダンは地震国であり、冷却水の確保など立地を問題視する意見もある。保守
管理を求められても安全を保証できるか疑問だ。
7)事故の経験を生かすなら、とりわけ本体輸出に関しては、いまの段階では慎重で
あるべきだ。協定の発効は時期尚早である。
以上、5紙の社説をみてきた。各紙、具体的な言及の方法やトーンに違いはあって
も、いま野田政権が前のめりになって進めようとしているヨルダン、ベトナム、韓
国、ロシア4カ国との「原子力協定」の国会承認は、当事国だけでなく世界各国の信
頼を損なう可能性が濃厚であり、協定の発効を見送るべきであるとする点で共通して
いる。
事故の真相究明も済んでいないなか、安全性・安全基準・リスク管理等々の重要事
項の検証や準備を無視して、「国内の原発新設は厳しい」と原発関連企業のビジネス
チャンスの確保のみを優先して、原発輸出を強行しようとする政府・民主党及び自民
党の愚かな姿勢。目先のことしか見ないこうした姿勢こそが、深刻な原発事故を引き
起こしたことを忘れるわけにはいかない。
私たちはこれ以上、原発ムラの論理、それを形成してきたお粗末、ずさん、欺瞞だ
らけの事業と役所の体質を野放しにするわけにはいかない。国内だけでなく海外へも
その体質に由来する被害をこれ以上撒き散らし、国際的な信頼の失墜、恥の上塗りを
許し、日本の未来を閉塞させるわけにはいかないのである。
また、信濃毎日新聞が指摘するように、政府の原発の国内外使い分けは、後々の国
内原発の新設・増設につなげる<伏線>として機能させようとする思惑を疑ってしか
るべきである。その意味でも、断じてこの「原子力協定」の国会承認を許すわけには
いかない。衆院本会議の採決では、公明、共産、社民、みんなの各党が反対し、民主
党の一部からも反対・保留(欠席)の意思表示が出ている。党派を超えた市民の幅広
い連携を大急ぎで構築して、野田政権のお粗末、ずさん、欺瞞政治を大きく包囲し
て、このまったく愚かな策謀だけでなく、無軌道な増税・軍事連携などの愚政に歯止
めをかけていく必要がある。
COP17閣僚級会合が開幕 最終合意へ駆け引き本格化(共同通信7日)
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011120601002241.html
COP17、各国から日本に厳しい視線(TBS7日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4895873.html
COP17で日本が新提案(NHK7日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111207/t10014457641000.html
原子力協定:衆院を通過、来月発効へ 原発事故後初(毎日新聞6日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111207k0000m010047000c.html
民主議員10人以上が「造反」 原子力協定採決で(朝日新聞6日)
http://www.asahi.com/politics/update/1206/TKY201112060527.html
原子力協定締結案 衆院通過(NHK6日)
12月6日 16時26分 動画あり twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111206/t10014443181000.html
日米印3カ国協議、19日にワシントンで初開催へ(ロイター5日)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE7B502D20111206
原子力協定、交渉ペースダウン 福島第一の事故影響(朝日新聞4月26日)
http://www.asahi.com/politics/update/0426/TKY201104260395.html?ref=reca
原発輸出、当面は継続方針 内閣が閣議決定(朝日新聞8月5日)
http://www.asahi.com/politics/update/0805/TKY201108050150.html?ref=reca
IEA:枝野経産相、原発輸出継続を表明 閣僚理事会開幕(毎日新聞10月19日)
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2011/10/19/20111019k0000m020170000c.html
野田首相:31日ベトナム首相と会談 原発輸出正式合意へ(10月29日)
http://mainichi.jp/photo/archive/news/2011/10/29/20111030k0000m010041000c.html
原子力協定:原発輸出、民主内も疑念 海外、なお技術に期待(毎日新聞11月29日)
http://mainichi.jp/select/seiji/archive/news/2011/11/29/20111129ddm008010052000c.html
原子力協定:今国会成立へ…4カ国対象、民・自が大筋合意(毎日新聞11月29日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111129k0000m010122000c.html
TPP参加「わからない」最多4割 「関心ある」は7割(毎日新聞11月7日)
http://mainichi.jp/select/seiji/yoron/news/20111107ddm001010083000c.html
原子力協定承認へ 事故の検証こそ先では(中国新聞3日)
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201112030068.html
原発政策 国内外で使い分けるな(中日新聞3日)
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2011120302000017.html
原子力協定承認へ 福島事故の教訓を忘れたのか(愛媛新聞4日)
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201112047060.html
原子力協定 原発輸出は再考が必要(北海道新聞5日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/335965.html
原子力協定 事故の教訓はどこへ(信濃毎日新聞5日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20111205/KT111203ETI090006000.html
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